表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
74/174

71話 話合 懐かしい面影を重ねて

リノ、響介達を勘繰る




 ラミアがいる。リノはそれをアラン達に伝えると


『だろうな』

『やっぱり』

『順当ですよね』


「あれ~?」


 想像をはるかに下回る反応に肩透かしを食らった気分になったリノ。それを見てクリスが口を開く


「なんか反応薄くない?ラミアがいるんだよ?」


『だってライミィさんと初めて会った時彼女ラミアのアミュレットを付けてたもの。冒険者でもないのに付けてたから不思議だったけど納得だわ』


「えっ?そうなのかい?」


『そうよ、今は隠してるみたいだけどね、それに彼女無詠唱で魔法を使ったってクオリアさんのとこのヤコブ君が言っていたわ』


『そういやケインも言ってたな。確かにラミアは種族柄例外無く詠唱無しで魔法を使うから納得だな』


『キョウスケさん達はコレクターを討伐しています。遺体もギルドで確認していますし、コレクターが調教魔法(テイム)していたと思われる魔獣も討伐しているようでかなり素材として沢山持ちこんでいたとワッツが言ってたわ』


「コレクター?あのイカれポンチか、でもコレクターが関係あるのかい?」


『ええ、これは僕が仕入れた情報ですがコレクターが当時の近い者達に「ラミアが手に入る」と言っていたそうです』


『ははあ、読めたぞ』


「何がだい?アラン」


『キョウスケな、弱い者虐めをするやつや女性に乱暴するやつが心底嫌いなんだよ。つまり嬢ちゃん達ラミアを物扱いして搾取しようとしたコレクターはキョウスケの逆鱗に触れて返り討ちにされたのか』


『その線が高いでしょう。それにラミアは元々狩猟民族。死んだ魔獣を剥ぎ取るなんてのもお手のものですからコレクターの懸賞金と魔獣の素材をお礼代わりにキョウスケ君が受け取ったとしたら商会に持ってきたあの量は納得出来ます』


『ラミア達からすれば命の恩人だからな。なぁリノ、お前は何を問題視してんだ?』


「いや、問題だろ!?ラミアが人族国家に紛れてるなんてヤバすぎるだろ!?」


 リノはアラン達に改めてその危険性を説こうとする。

 ラミアは人族魔族の間では魔力が他の魔族やエルフ以上に高く狡猾で無慈悲、例外無い見目麗しい容姿を利用して男を誘惑して喰い物にする。人間や魔族を魔法の実験台にし無惨に殺す事を楽しむ等々言われているがそこにワッケインが口を挟んだ


『こちらと比べるのは論外ですがアルスはかなり穏便に片付くと思いますよ。キョウスケ君とライミィさんはズボフ捕縛に貢献してますし、今回オルセーを訪れたのもランベール卿との面会です』


「そういえばランベール卿との接点ってなんなのさ?」


『マルシャンの奴隷商人に拐われた娘のメアリー嬢をあの二人が助けたんだ。だからランベール卿は直々に礼をしたいらしくキョウスケ達はそっち行ったんだよ』


「そ、そうだったんだね…」


『『『はぁ…』』』


 揃って溜め息を吐いたアラン達。向こう見ずなリノの行動は冒険者時代からのことだがあまりの健在っぷりに久々に食らった3人。


『リノリノ、貴女は変わらないわね…』


 特にクリスは頭を抱えている。いつの間にか眼鏡を外し鼻根を摘まむように押さえて呆れているとそれを見てリノも「クリスも相変わらずだねぇ」と笑って返す。ここまでがテンプレである。


『それにライミィの嬢ちゃんがラミアって言ってどうするんだ?言っとくが何かしようもんならキョウスケは黙ってねえぞ』


「…あの子、そんなにヤバいのかい?」


『普段は誰に対しても謙虚で話しが出来る良い奴なんだ。だがよぷっつんいったらヤベェ。俺が聞いた話だとウイングタイガーを片手で仕留められるらしい』


『いざって時は道理や常識を理解した上で平気で蹴り飛ばす人間よ』


『そうですね、公衆の面前で平然と勇者や教会をコテンパンにしてましたから。その影響でニューポートは今凄いことになってますよ』


「凄いこと?」


『住民達が教会に対しての不信感を隠さなくなり今まで嫌々払っていた寄付金を貴族と商人以外の住民がほぼ払わなくなりました。まあ商人達も以前より払ってる寄付金の額は落ちましたがね』


『そりゃ寄付しても行く先が貴族の懐で私利私欲で使われてるなら誰も払いたくはねぇよな』


『ええ、教会も今回の事があって住民達に強く出れなく、この間パスクの聖女のお供が子供相手にトラブルを起こして聖女の評判も揺らいでもう酷いものよ』


「あらま、まさかあの聖女の評判にも影響出たのかい?」


『そうよ。元々何不自由無く育った貴族の箱入り娘ですもの、こういった時の対応が人任せで自分じゃわかってないから全然駄目だわ』


『キョウスケと大違いだな。この間うちで救出クエストがあったがキョウスケの奴が陣頭指揮執って采配したお陰で被害0で済んだぞ』


「地のカリスマ性が雲泥の差だねぇ」


『いえ、キョウスケ君の場合それもありますが、恐らくキチンと周りや人を見ているんだと思います』


『そうだな、その時も護衛が得意なアトラス達もだがピーター商会や乗馬ギルドに伝がある冒険者をしっかり把握した上で指揮してたからな俺もスゲエやりやすかったし助かった』


『私の時も指示が的確だったからキョウスケさん自体かなり場慣れてるわね』


『恐らくライミィさんの為という側面もあると思いますが、基本的に下調べを抜かり無くしっかりしているというのもありますね』


「成る程ね…」


 うーんと考えこむリノ、少し複雑そうに悩む姿を見て何かに勘づいたアランが口を開いた。


『なあリノ』


「な、なんだいアラン?」


『お前さ、キョウスケとタブロイド重ねてるだろ?』


「!?」


 アランに指摘されるとリノは途端に顔を紅潮する。その姿を見て


『ああ、そういう事ね』

『納得ですね』


 クリスとワッケインも納得した様子で穏やかな表情を浮かべる。


「も、もう!揃ってそんな顔するなよ~!」


 反論するリノだが全く説得力が無く、子供のように素直に反応してしまった。

 タブロイド。その人物はかつてリノやアラン達とパーティーを組んでいた男でパーティーのまとめ役でリノの良き理解者だった男でありリノにとっては兄のような人であり想い人でもあった。

 その様子を見てまたアランが


『あのなリノ、俺達がパーティー組んでた時タブロイドや俺達が周りから何て言われてたか知ってるか?』


「え?」


『なんでお前らあんな獣人を連れてるんだ?ってな』


「は?なんだよ、そんなのあたし聞いたこと無いよ!?」


『当たり前よ、タブロイドや私達が絶対にリノリノに聞かせない様に立ち回ってたから』


「そうなんだ……」


『リノ、今の貴女はかつて貴女の事を良く思っていなかった冒険者達と同じですよ』


「え?どういう事ワッツ?」


『当時の人族国家は種族差別や偏見があったのと貴女が浮浪獣人ということで貴女を追い出そうとした冒険者はいました。しかしタブロイドの周囲に対しての説得と貴女自身自分が優秀な冒険者であり精霊魔導師な事を立証した事によってその次第に動きも鎮火していきました』


『それにあの頃はルーブル革命が起こった時でもあってアルスやマルシャン、クオーコにいた亜人や獣人に対する認識も変わっていったのは分かるわよね?』


「当たり前だろ。じゃなきゃ実力あるからって狼人(ワーウルフ)が冒険者ギルドでマスターなんて出来っこないよ」


『もしタブロイドがいたならどっちに付く?』


「そ、そんなの決まってるだろ!?タブは、あ…!」


 クリスのこの質問の意味が分かりはっとしたリノは顔を青くする、自分が一体何をしようとしていたのか、ワッケインが言った意味を理解してしまったからだ。


『確かにラミアはまだ分かってねぇ事は多いが、ハナっから全部決めつけるこたぁねえだろ?ライミィの嬢ちゃんとは俺も話した事あるが茶目っ気あって面白い奴だぞ』


『そうね、私から見てもあの娘は悪い娘には見えなかったわ』


『キョウスケ君もそうでしたがとても礼儀正しい娘でしたよ』


『まあ結論としては、まず話してみろそれからでもいいだろ?』


 アラン達からそう諭されるとリノも幾分落ち着いたようで柔らかい表情になり


「まぁ、みんなが言うならそのほうがいいや」


 何時もの調子に戻ったようであっけらかんと耳をピンと立てて笑っていた。それを見たアラン達はやれやれと思いながらもどこか安心したようだ。


『全く相変わらずだなぁお前さんは』


「言ってくれるよ、こっちだってずっと考えてたんだからさぁ」


『まあ、気持ちは分からなくないですね。確かにキョウスケ君はタブロイドに似てる所がありましたから』


『そういえば、キョウスケさんが言ってたわ「自分は任侠者だ」って』


「ニンキョウモノ?なんだいそれ?」


『確か、仁義を重んじ弱き者を護る事に一命を尽くす。だったかしら?』


『成る程な、確かにラミアは弱いな』


『そうですね、社会的地位的にみればかなり弱いですね』


「……ますますタブに似てるねぇ」


『だよなぁ』

『そうね』

『ですよねぇ』


 そうして一頻り笑い合う4人。もうこの世にいない2人の仲間を、リーダーで兄のように慕っていたタブロイドを密かに思い出すリノなのだった。

 そして最終的な結論として響介に関しては最悪治外法権として処理することにしたリノだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ