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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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67話 道中 所変わっても品変わらず

4人、ご当地グルメを堪能する。




「いや~美味しかったね~♪」


 牧場でご当地グルメに思う存分舌鼓を打った響介達は改めてオルセーへ向かってバイクを走らせていた。


「俺達みんな2人前は食べたしチーズやミルクもいっぱい買ったな」


「目移りしちゃったよ~あんなにいっぱいあると選ぶの楽しかった~」


「結局チーズも全種類買ったし、ミルクも買ったらエリーも喜んでたな」


 あの後響介達はみんな一人前では足りずおかわりし、ロッジ内の売店で売っていたチーズやミルクを半分程買い占めた。

 チーズ大好きライミィはホクホク顔。牧場の人達もいつも以上の売り上げにホクホク顔。

つまりwinwin。


「私みたいなりたいって言ってたけどなんだろ?」


「さあ?」


 わかっているがあえて口にしない響介。理由は明白でありわざわざ口にするのは流石にデリカシーが無いと思ったからである。


「ありがとねキョウスケ♪」


「どういたしまして」


 にへへと嬉しそうに笑い響介に抱き着き直すライミィ。メテオラにタンデムしている間ずっとライミィは響介に身体を預けて抱き着いている体勢であり自身の天然グレネードを惜しげなく当てている状態だ。確実にエリーが言ってるのはこれだろうなと思いながら今日も響介の脳内は鬼の形相で理性が本能をマウントポジションから必死にぶん殴っている。

そんな時にライミィから話しかけられた


「ねぇねぇキョウスケ、さっきロッジで何を聞いたの?」


 ライミィが言っているのはロッジでの事、隣に座っていた冒険者達の話しに聞き耳を立てていた響介が聞いていた時に一瞬表情と熱が変わったのをライミィは見逃さなかった。

 響介もオルセーについて一息着いたら改めて切り出そうとしていたのでエリーとステラより先にライミィに話す事にした。


「ああ、それがな」


 と、響介はロッジで聞いた話しをライミィに話す事に、話していくうちにライミィの表情が曇り険しくなっていき遂に


「は?あの短足お漏らし勇者脱走したの?」


 不機嫌MAXな表情でライミィは響介に尋ねた。その気持ちは分かる、ぶっちゃけ響介も同じ気持ちなのだ。


「刑務所への護送中にな、脱走後は行方をくらませたようで今は指名手配中だそうだ」


「成る程ね~」


「…、だからあの時言いたくなかったんだよ」


「うん、ありがと」


 流石に響介の胸中を察したライミィ、確かに美味しい食事前に聞きたい話しではないのは明確である。気になって聞いたのは良かったものの内容が思っていたのと違い少し複雑な心境だ


「確か、ロンっていったっけ?どこ行ったんだろうね?」


「さあな、もうアルス内では手配済みらしく国境沿いの警備を強化されいるようだ。ただな、」


「?、どうしたの?」


「ただな、まさかアルスの堅気の方々にこんなご迷惑をかけてしまうとはと考えてな、こんな事になるなら後腐れなく殺しとくべきだった」


「違うよキョウスケ、悪いのはキョウスケじゃないよ。あの時だってこれが一番良いってクリスさん達も言ってたじゃん!悪いのはあのお漏らし勇者と脱走を助けた何処ぞのスカタンだよ!」


「ライミィ」


「確かに殺しとくべきだったのは私も同意するけどさぁ、でもそれはやった事はちゃんと償えっていうキョウスケの最後の優しさじゃん」


 『反省はしてもいいが後悔はするな』

 これも教わった大切な教えの一つ。

 失敗しないヒトなどいない。大切なのは失敗しない事ではなく失敗から何を学んで気付き戒め、前を向き今後に生かせなければならないと言うことだ。

 今回のロンに関してはアルスの法的機関にて正当な裁き受け自身の行いを省みて反省するなら響介はもう何も言わなかった。

 しかし奴は脱走した。それだけでもアルスの皆様にご迷惑だが恐らく奴は反省のはの字もないだろう。


「もうあのお漏らし勇者に死んで償わそう。うん」


 底冷えするような冷たい目で言い放つライミィ。弱肉強食の世界で生きているラミアであるライミィにとって人間を殺す事は狩りで獲物を殺すと同じ感覚であり罪悪感は無く、今までの盗賊に対しても出来れば手を汚して欲しくないという響介のお願いを聞いたから9分殺しに留めているだけである。だからこそライミィは響介の情けを無下にしたロンに対して軽蔑と嫌悪感しかなかった。

 不機嫌なライミィを見て察した響介も今回はライミィと同意見であり


「そうだな、状況によってはそれも辞さん」


 響介も同じようた冷たい目をしていた。しかしここで疑問が生まれ考える響介


(俺もライミィと同意見だが、問題は誰が奴の脱走を手引きした?目的はなんだ?ロンにはもう後ろ盾もなければ奴には人脈も無いはずだ)


 ロンには人脈は無い。それは奴の傲慢な性格が災い勇者になっても周りにいたのは雇っていたズボフ達しかいなかった。しかしそのズボフ達も後ろ盾だった父親も今は刑務所の中でロン自体も対して実力もなかった。そう考えているとライミィが興味深い事を話す


「キョウスケ、私考えたんだけどさ、またあの魔族が絡んでるのかな?」


「ん?続けてくれ」


「うん。あの魔族達が勇者っての有効活用出来る方法を知ってるんじゃないかって思ってさ、考え過ぎかな?」


 ライミィの言う事も一理ある。

 と、いうのもオウレオールの五神の勇者に関しては全容が明らかになっていなくセフィロトにも情報が無かったのだ。それを踏まえて考えると神聖王国は国ぐるみで勇者の情報を徹底して隠していたという可能性が浮上する。そしてそれを天敵でもある魔族が勇者の情報を調べていても知っていても不思議ではないと響介は考えた。

 それに奴は紛いなりにもまだ勇者だ。こちらが知らない力が有るかもしれない、そんな事を考えていたがそれを中断する事になる


「…!」


「どうしたのキョウスケ?」


「音がした」


 この言葉を聞いてライミィは素早く辺りを見回し熱探知を始める。「音がした」は敵がいる若しくは近くで何かが戦っているという意味で2人旅の時から使っている符丁だ。そして


「見つけた!彼処からだよ!」


ライミィが指差した方向に対して響介は聴力を絞り確認すると


「馬車が襲われているようだ。方向は左前方約3キロといったところか。ライミィ、エリーとステラに伝えてくれ、今寄せる」


「オッケー!」


 響介は減速しステラのミーティアの横に着けるとライミィが指を差して伝える。その方向をステラが目視で確認すると


「盗賊は男10人女16人、馬車は護衛が8に非戦闘員3人、護衛対象が1人。賊は手練れが多く護衛が全滅するのも時間の問題のようです!如何なさいますか!」


「決まってるだろ?ライミィエリーしっかり掴まれよ!」


「はーい♪」

「うん♪」


「ステラは俺についてこい!一気に突っ込む!」


了解(ウィルコ)!」


 響介は馬車方向にハンドルを切り調整すると先ほど以上に速度を上げる。


「おおっ、速度上げたね。どうするのキョウスケ?」


 ライミィのこの質問に響介は不敵な笑顔で


「カチコミだよ」

「イケイケゴーゴー♪」


 よりスピードが上がりはしゃぐライミィを背に響介は聞こえてきた馬車の会話を冷静に聞きながら細かな角度調整をする。そして響介は


「ライミィ掴まっててくれよ!」

「うん!」


 メテオラを思いっきり吹かすと音を聞いた盗賊や馬車の人間達が一斉に此方を向くがあまりのスピードに反応出来ていない。響介はメテオラに着いていたブースターを起動させるとメテオラをウィリーさせ


「「「ypaaaaaaaaaa!!」」」


 響介が雄叫びを挙げると同時にライミィとエリーも続いた。そしてウィリー状態で突っ込み盗賊団の中でも派手な格好をした女にそのままメテオラをぶちかまし撥ね飛ばす。


「お頭ぁ!?」


 後に続いたステラも2、3人轢き飛ばし2台は馬車に横付けしバイクから降り仕舞うと狼狽えている盗賊達に対峙すると


「ライミィ、エリー、ステラ馬車のヒトら頼むな」


「じゃあキョウスケ、パターンBでいい?」


「おっ、そうだな頼むわ。エリーは好きにやっていいぞ。ステラ、後ろは任せる」


「はーい♪」

了解(ウィルコ)


 ニッと響介は笑いライミィ達は馬車へ向かい、響介は相手の体勢が整った事を確認すると首を一度鳴らし改めて盗賊を一瞥すると


「なんだ?良く見たらガキじゃねえか」

「あらぁ?カッコいいお兄さんじゃない?」

「ホントね、食べたいわぁ」

「おいてめぇ!俺達にこんな事してただで済むと思ってんのか!?」


 口々に言っているが響介は異に返せず


「なんだ、揃いも揃って頭ハッピーセットか」


「な、何ですってぇ……!」

「頭ぁ!」


メテオラに撥ね飛ばされた頭と呼ばれた女が息も絶え絶えに他の盗賊の肩を借りてやって来ていた。その格好も見るも無残で派手で着けていた服や装飾品の類いもぼろぼろでセットしていた髪もバサバサになり鼻血は垂れ流しと、まるでホラー物の幽霊みたくなっているが響介は鼻で笑いながら


「だから脳ミソにマダニが突き刺さってんかって聞いたんだよババア共が、耳遠いのか?」


 この言葉に盗賊団の女達全員が反応し鬼の形相となると頭が金切り声で喚くように


「なぁんですってぇぇぇ!!トサカに来たわ!!こいつらを皆殺しにしちまいな!!」


 おおおと怒声を上げて向かってくる盗賊達を響介は冷めた目で見ていた。


「…数が足んねぇな」


 ふと呟いてしまう。

 たかだか20数人相手に喧嘩にもならない。どうせバカな奴は後ろに行くから20人も相手出来ないだろうなと思い少し残念がる、向こうでの「青い瞳の悪魔」と呼ばれる切っ掛けになった喧嘩をつい懐かしがった響介だった。




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