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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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65話 入国 今度はちゃんとに入ったから大丈夫だろ

響介、エリーに諭される。




「って、事があったんだライミィ」


「成る程ね、エリーらしいって言えばエリーらしいや」


 メテオラを飛ばし昨日の夜、夜番交代するときエリーと何を話していたのかと後ろに乗るライミィに聞かれたのでありのままを話す響介。


「キョウスケが誕生日がらみのことでちょっと複雑そうにするのはそういう理由だったんだね」


「複雑そうにって俺、顔に出てたのか?」


「うん。最初の頃だからホントにビミョーにだけどね、最初に気付いたお母さんが私や皆とキョウスケの前では誕生日関係の話しはやめようって言ってたの」


 あっけらかんと話すライミィ。それを聞いた響介は運転しながらも肩を落とし申し訳ない気持ちになった。


「ごめんな、ライミィ達に気を使わせてたのか」


「気にしないでキョウスケ。私達だってキョウスケに気を使わせてたからおあいこだよ~。それに突っ込んで聞かなかった私達も私達だし」


にへへと笑いぎゅっと響介に抱き着き直すライミィ、一瞬ドキッとしたが今出来る限りで慰めてくれようとしているのが分かる


「ライミィの優しさが沁みるな、ありがとう」


「どういたしまして♪キョウスケの誕生日かぁ、キョウスケの好きな食べ物いっぱい作ってあげるね♪」


そんな時速200キロ前後でバイクを飛ばしている中いちゃつき始めた人間とラミアのカップルを後ろから見ていたエリーとステラは


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、仲良し。エリーも嬉しい」

「ホントですね、見ている此方も微笑ましくなります」


 楽しそうに笑って見ていた妹分と従者であった。






「見えてきたな」


 その後も時速200キロ前後でぶっ飛ばしていると見えてきたのはアルス共和国の関所。ここマルシャンとの関所は大陸人族国家のど真ん中、山が多い地形を上手く利用した所にピンポイントに配置しており密入国しようものなら険しく魔物が蔓延る山を越えなくてはならない。

 響介達は関所からある程度離れ人目につかない所でエアバイクを停車して懐中時計に仕舞う。手間だが要らぬ注目を浴びるよりは良いだろうという判断をした響介の案である。


「皆、準備はいいな?」


「「「はーい」」」


 返事と共に3人はギルドカードを出す。これが人族国家では身分証明になるので必須である。しかも

 

「キョウスケー、ランベール卿のお手紙はー?」


「大丈夫だ。しっかりあるぞ」


 そう言って響介は自分のギルドカードとランベール卿から貰った手紙を出した。

 ランベール卿についてはセフィロトからの情報によるとアルスの貴族の中でも発言力がある人物であり10年前に起きた革命、通称『ルーブル革命』にも関わったとされ、その優れた手腕で民を纏めたと言われこれから行くオルセーの自治にも携わっている人物だ。

 つまり、そんな大物から貰った招待の手紙はアルスでは身分証明にもなりうる物になるのだ。だが響介は


「まあ、色々突っ込まれたらこれを出せば良いだろう」


何かあった時用に出す程度しか思っていない。素性が分かってペコペコされるのはもう元の世界でうんざりしているのだ。


「そだね、あんまり騒がれたくないし」


「じゃあ皆、朝の打ち合わせ通りに。ステラにギルドカードを」


「わかった、はいステラお姉ちゃん、お兄ちゃん、抱っこ」


「ああ、フード取れないようになエリー」


「はーい♪」


 フードを目深に被り直し顔を見られないようにしてから響介はエリーを片腕で抱え上げる。

 ダークエルフのエリーは嫌でも偏見を受けてしまう為基本的にこの様な時は響介に抱えられて寝たフリをする。アルスの兵士は皆礼儀がなっていて余程の事でも無い限り寝ている子供を起こす等の無用な詮索はしない事も調査済みだ。


「オウレオールの兵士とは違って手荒な事はしないしキョウスケがエリーを守ってるからダイジョブだね。ステラもしっかりね」


「はい!」


 こうして一行はアルスの関所へと移動する。商人の国マルシャンとの関所なだけに人の行き行きが盛んなようで昼過ぎの関所は行商の馬車や冒険者が多く皆自分の順番を待っている。響介達も並んで順番を待っていると前にいた冒険者達の話声が聞こえてきた。


「聞いたか?少し前に発見された遺跡、ものすげえ腕の立つ新人冒険者が踏破して山のようなお宝を持ち帰ったって話」

「Sランクアイテムも見つかって話しだろ?聞いた聞いた」

「その踏破した冒険者な、ドラゴンすら蹴り殺すらしいぞ」

「いやいやまさか」


と、こんな声が聞こえてきた。しかし


「まぁ、ドラゴンを蹴り殺すなんて凄い方ですね」


 その事情を知らないステラは他人事のようにのほほんと言っていた。その横では


(キョウスケ、ステラに言った?)

(言ってない、言う必要無いと思って)

(だよねぇ)

(取り敢えず、振られたら合わせよう)

(はーい)


 響介とライミィがアイコンタクトで会話しているのを楽しそうに見ているエリーだった。そんな事をしていると響介達の順番が来た。


「次の方どうぞ」


「はい、よろしくお願いします」


 受け付けをしていた人の良さそうな担当騎士にステラはギルドカードを渡す。アルスは国境の関所に配置している騎士や兵士は自国の顔と考えており皆優秀な者が配置されているとの事だ。その騎士は一つ一つ丁寧にギルドカードを確認していく


「ええっと、B級冒険者のキョウスケさん、ライミィさん、エリーさん、ステラさんでお間違い無いですね?」


 実はプトレマイオス遺跡の踏破の件で響介達は加えたステラとまとめてB級冒険者にランクが上がっていた。プトレマイオス遺跡の踏破に加えその後も様々な依頼やダンジョン攻略、特に討伐の類いを全て成功させた結果昇級したのだ。

 ギルドカードを確認していた騎士は


「すいません、このエリーさんはどちらに?」


「申し訳ございません。エリー様は今お休みになられております」


 ステラがそう言うと受け付けの騎士は響介が抱えていた少女に気が付いた。改めてギルドカードに顔写真が無い事に安心している響介とライミィ。騎士は特に怪しむ事も無くうんうんと確認しギルドカードをステラに返却すると道を開け


「確認終わりました。ようこそアルスへ」


「ありがとうございます」


 確認が終わり入国許可が降りた響介達は騎士や兵士に軽く会釈をすると長々と確認作業をされている行商の横を通り大門をくぐり抜けアルスの地にへと入る。整備された街道を行き関所からある程度離れ見えなくなったことを確認するとライミィがふうと息を吐いた。


「いやー、無事に入れて良かったねー」


「しかも合法的にな」


「合法的以外にあるのでしょうか…?」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、この間、密入国」


「まあ、あの時は他に方法無かったしオウレオールで痕跡残したくは無かったからな」


「なるほど」


「さて、オルセーまではと」


 響介はリュインで買ったアルスの地図を広げる。自分達の現在地を確認しながら目的地のオルセーまでの道のりを見ると


「大体徒歩で3日掛かりそうだ。だが」


「私達にはバイクがございますから今からですと夕暮れ時には着けますね!キョウスケ様!」


「ああそうだ。オルセーに着いたら取り敢えず宿をとって明日会いに行くことにしよう。皆それでいいか?」


 「はーい」と3人から返事を貰い響介とステラはメテオラとミーティアを出しエンジンに火を入れそれぞれ乗った事を確認するとまたフルスロットルでバイクを出した。

 アルスの綺麗な山々の景色の中を2台のエアバイクが疾走する。

 響介達のアルスの旅が始まるのだった。





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