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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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63話 旅路 バイクの旅とプロレス講座

聖女、ピアニスト調査が難航する。

オリビア、アリスを拾い話しをする。




 ステラを加えた響介達は遺跡の街リュインに別れを告げ次の地へ旅を再開した。と言うのもステラを加えてから4日後、依頼を終え宿へ帰って来た時の事


「キョウスケ様、先ほどアラン様からキョウスケ様宛のお手紙を預かりました」


「ステラお姉ちゃん、誰から?」


「差出人はランベール卿という方ですね」


「えっ?誰それ?」


「取り敢えず見てみよう。ステラ、手紙を」


 ピアノを弾いていた手を止めステラから手紙を受け取った響介は中身をつらつらと改め確認する。


「差出人はメアリーさんの親御さんのようだ。無事メアリーさんが帰って来たようで助けて頂いたお礼を是非させて欲しいという内容のようだ」


「あっメアリーさん家か。そう言えば貴族だって言ってたね」


「あの、エリー様。そのメアリー様と言うのは?」


「エリーと、捕まってた、貴族の人」


「ふむ。みんな、今日のメシなんだが予定変更させてもらっていいか?」


「どうしましたか?あの、私が作るお料理がお口に合わなかったのでしょうか?」


 響介達と共に旅をする事を決めたステラは響介達に相応しい従者になるために勉強は勿論家事や料理など響介達の身の回りのお世話をしている。しかし料理はまだ勉強中で失敗する事もある為不安になるステラ。そんなステラを見て響介はいやいやと首を振り


「違う違う。ステラの作る料理は上手いからそうじゃない。セフィロトに行きたいんだ。貴族の方に対しての手紙の書き方とあと対応の仕方の情報が欲しい」


 この言葉を聞いてライミィ達3人は「あー」という顔をして納得した。ここにいる皆誰も貴族に対しての礼儀なんてものを知らないからだ。

 特に響介に至ってはまともな手紙の書き方なんて知らない。(書いてもカチコミの予告文程度)高校含む今までは送っても年賀状位なものでそもそも文明の利器が発達した現代では基本スマホ一台あれば事足りる為、普通の手紙をしたためるような経験が無いからである。

 『礼を重んじ礼を尽くす』これも祖父からの教えである。この手紙を読んでみても貴族としてではなく一人の親としてお礼がしたいという旨が書いておりそれに対し純粋に答えたいと思った響介であった。そして4人は例の定食屋(セフィロト)へ行き手紙の書き方や礼儀作法と次いでにランベール卿に関しての細かな情報を買ったのだった。


 それから2日後、漸く手紙を書き上げた響介達は冒険者ギルドへ行きアランに事の次第を説明すると手紙はアランの好意で冒険者ギルドからアルス共和国の最寄りの冒険者ギルドへ転送してもらえるように取りつけてもらえた。ギルドから出る時にアランとアラベルから声をかけられ


「行っちまうのか?」


「はい」


「残念です…キョウスケさん達はいろんな依頼を受けてくれましたから」


「まあ最近は他の連中もキョウスケ達見習ってなのか雑用的な依頼も受けてるから大丈夫だろ」


「そうなんですか?」


「ああ、特に銀翼(シルバーウィング)の奴らがあれ以来あいつらすっかり大人しくなったからな」


 楽しそうに笑うアラン。銀翼の連中とは先日たまたま会った時すっごいペコペコされたのを思い出した。


「行き先はオルセーか、あそこの冒険者ギルドのマスターは俺達と組んでた奴だから話しておくよ」


「アランさんと、組んでた、冒険者?」


エリーが首を傾げる


「ああこの間キョウスケには話したクリ坊と両膝付いた奴、なんだか奇妙な縁だな。クリ坊の紹介で俺んとこで冒険者になって次はリノんとこか」


「リノさんという方なんですか?」


「ああ、リノリノって青い髪の女で気の良い奴でな、ライミィの嬢ちゃんみたいな奴だよ」


 そう笑いながらライミィを指差して教えてくれたアラン。なんだかんだこの人も融通を効かせてくれたので感謝しかない。響介はアランに手を差し出し


「アランさん、ありがとうございました」


 握手を求めるとアランはそれを返し


「おう、楽しかったぜお前ら。また会えるのを楽しみにしてるぞ」


 そうしているとマクレイン兄弟やヒューズ一家もやって来てくれ別れの挨拶を交わすと響介とステラは魔導エアバイクを懐中時計から出してエンジンを掛けるとリュインを発った。






 魔導エアバイクの旅は快適だった。

 見た目は一見響介の元の世界でもあった現行のスーパースポーツ系のバイクを彷彿とさせるが注目する部位はエアバイクの名前の通りタイヤの変わりに装着された魔導機と車体後ろのブースターで地上を滑空するように進み、水の上も悪路も物ともせず速度も時速200キロは余裕で出せる正に昔にやったアクションゲームの乗り物の様なバイクだ。更にはステラ曰くこのバイクには空間魔法を応用した装置「半重力ドライブシステム」なるものが装着されているらしくそのためか乗っている響介達に風圧はある程度しか感じなく飛来物等の接触した感覚が無い。

 そして必要なエネルギーはバイクの動力部横に装着されている大型のサンクォーツに魔力を充填するシステムで一台当たりMP2000で満タンとなるが5桁を越え魔法も今の所クリーニングしか使わない響介が2台分の充填をしている為最初からブン回しても全く問題無い。


「すごいねー!はやーい!」

「舌噛むなよライミィ!」

「はーい!」


 一台分先に走る響介のエアバイク「メテオラ」


「エリー様、大丈夫ですか?」

「うん。ステラお姉ちゃん、お兄ちゃん達に、負けない位、飛ばして」

「かしこまりました!」


 追従するステラのエアバイク「ミーティア」。二台のバイクはマルシャンの地を疾走し目指すはアルス共和国第2都市オルセーに向け多くの魔物の群れや馬車を追い抜き駆けていく。






「で、お前らこんな事して恥ずかしいとは思わねぇのか?」


 楽しいバイクでの旅の途中、何頭かの馬達に乗った男達に襲われた馬車を助けた響介達。どうやら男達は盗賊のようで馬車を襲っていたようだった。そして今はしめた後で馬は放ち野郎共は全員正座させて並ばせていた。

 特に響介は楽しい気分が害されご機嫌斜めで盗賊達に詰問している。


「ありがとうございます…なんとお礼を…」


「「いえいえ、慣れてますから」」


 馬車の御者と中に乗っていた人達が口々にお礼を言う中をライミィとエリーが笑顔で対応していた。その横で


「おい、黙りか?」


「「「「「…………」」」」」


 ご機嫌斜めの響介に一方的にボコボコにされた10人近くの盗賊達は皆痛々しい傷をそのままに口を閉ざしている。それを見たステラは背負っていたバスターブレードを音を立てて地面に叩きつけた。


「「「「「!?」」」」」


 地面が砕く音が響きわたりステラは冷たい眼光で盗賊達を睨み付ける。


「貴様ら、キョウスケ様が聞いているんだ。何か喋ったらどうですか?」


「なんだと…!っ!?」

「っ!?身体が、動かねぇ!?」


「あんたら全員口以外に固着(リジット)かけてるから動けないよー」

「諦めろー」


 助けた人達を相手しながら動けない理由を教えているライミィ。どうやら正座させた瞬間に固着(リジット)をかけていたようだ。しかも口以外にかけるとは芸が細かいと思う響介。しかし盗賊達は


「く、くそが……!」

「ふざけんじゃねぇガキ共が!」

「こんな事してただで済むと…!」


 大人しく観念すれば良かったものの懲りずに悪態をついていた。ご機嫌斜めの響介ははぁと溜め息を付くと盗賊達に近付き


「な、なんぶふぉ!?」


 一番生意気に悪態をついていた盗賊の顔面に前蹴りを喰らわした。固着(リジット)をかけられていたため正座の体勢のまま20メートル程蹴り飛ばされゴロゴロと転がる姿はシュールだ。その光景に盗賊達は戦慄し馬車の人達は何事かとざわつくが響介は突如にこやかになると


「よし丁度いい、ライミィ、エリー、ステラ。これから対人用にプロレス講座始めるぞー」


「はーい!じゃ、まずはこいつからでいいよねっと!!」


 既に経験しているライミィが元気よく返事をするとライミィは響介が蹴り飛ばした男を固着(リジット)を解除し起こすと響介に向かって突き飛ばした。突き飛ばした男を響介はキャッチと同時に持ち上げると勢いよく背中から地面に叩き付けた。


「ぐあぁぁ」


 まるで背中を、脊椎を砕かんとする衝撃と共に潰されたような声が漏れ余りの痛みに気を失いかける男


「これはスパインバスター。このように正面から相手を持ち上げて背中を叩き付ける技だ」


 響介はライミィ達に教えるように言うと「百聞は一見にしかず、もう一度やってみるな」と言ったと同時に叩き付けた男をもう一度抱え直し持ち上げ地面目掛けてブン投げる。


「ああああ!!」


 先ほど以上に勢いつけて叩き付けられた男の絶叫が響き渡る。するとエリーがその男にアースヒーリングをかけ始めた。


「エリー、何で回復させたの?」


「成功した」


「成功?」


「うん、傷治して、骨と痛覚そのままに、出来た」


 男を見ると最初響介にボコボコにされた傷とスパインバスターでの傷はなくなっているが今だに苦悶の表情でのたうち回る男。どうやら見て分かる外傷だけを治し内傷をそのままにしたようだ。器用にやるのはライミィだけじゃない、エリーも成長しているなと思っていると


「キョウスケ様、私もやっていいですか?」


 ステラが名乗り出た。どうやら早速スパインバスターをやってみたいようでウズウズしているようだ


「ああ、それじゃやってみようか」


 響介は投げていた男をステラに向かって突き飛ばすとステラはキャッチし持ち上げ


「どおぉりゃあぁぁ!!」


渾身の力で男にスパインバスターを極めると


「ぎゃやああぁぁぁ!!!!」


「あっ」


 その光景は正に脊椎(スパイン)破壊(バスター)。叩き付けた瞬間男の悲鳴と共に何か粉々に砕ける音が聞こえた響介。一応響介は手加減してあのレベルだったのに対しステラは全力でぶちかました結果叩き付けた場所にクレーターが出来男は顔を青くして口から泡が吹いて痙攣していた。そしてエリーが近付き泡吹いている男を見て杖でツンツンすると首を横に振る


「こいつ、背骨、砕けた。1年は、ベッドの上」


 つい響介とライミィにエリーも2人につられて合掌してしまう。脳内で「チーン」という音が余裕で再生出来た4人に馬車の乗客達は唖然としており盗賊達に至っては目の前で瀕死の仲間の惨状を見て顔面蒼白である。そして響介とライミィは揃って


「「ステラ、やり過ぎ」」


「も、申し訳ありません!つい…」


「大丈夫、命に、別状無い」


「「「「「どこがっ!?」」」」」


 つい突っ込んだ馬車の乗客達。目の前の惨状はただただ惨い。そこへ響介からの追い打ちが


「次はちゃんと加減するように、もう一回だ」


「はい!かしこまりました!」


「はい、次はあなた」


「へ?」


 ライミィが盗賊の一人にタッチしたと思いきや間髪いれずに響介とライミィがその男を投げるとステラはまたキャッチしスパインバスターを極めた。今度はちゃんと手加減したようで響介と同じくらいになったが男は泡を吹いて気絶していた。


「うん、大分良くなったな流石ステラだ」


「私めに勿体無い御言葉でございます。キョウスケ様」


「次の技に移る。次も投げ技だ。ライミィ次を」


「オッケー!」


 次と言われたライミィはまた男を響介に向かって突き飛ばす。すると響介は今度は男を肩に担ぎ上げると力を込めて男の下半身部から放り投げ背中から叩き付けた。しかも叩き付ける前に自分の身体を浴びせながら落としており然り気無く威力を上げていた響介。


「決まったー!キョウスケのデスバレードライバー!」


 ものの見事に極めた響介に思わず歓声の上げたライミィに拍手をするエリー。極められた男は言わずもがな泡吹いて気絶している。


「この技はデスバレードライバーと言う技で今のように相手を肩に担いで横方向に投げ捨てる技だ。最後の浴びせは俺の思い付きになるからしなくていい」


「成る程」


「次に移る。次は」


「「「「「もう勘弁して下さい!!」」」」」


 命乞い虚しくこのおぞましい私刑は続き投げ技は響介のチョークスラム、ライミィのダイヤモンドカッター、2人のDDTから締め技になった時、正に阿鼻叫喚となった。


「ぎゃあぁぁぁぁ!!!」


「これはクロスフェイス。腕間接を軽く極めた状態で顔面を締める。ただやり過ぎると首の骨が折れるから気を付けるように」


「ガクッ…………」


「こっちがコブラクラッチねー、相手の腕一本使って頸動脈締め上げるのー、ん?あっ落ちた」


「離してくれぇぇーー!!」


「腕肘十字固め。エリーでも、出来た」

「じゃもう片方は私が掛けますね!」


「「うおああぁぁぁぁ!!」」


「これがアナコンダバイスになる。少し複雑になるがまず片腕で相手を抑え込みこう腕をVの字を作るようにし肘と頸部をまとめて極める技だ」

「キョウスケーこうー?」

「goodだライミィ!」


「痛い痛い痛い!!ギブギブギブ!!!!」


「これはアンクルロック。単純な足首を締め上げる技だ。エリーもやってみるか?やるなら反対側空いてるからやってみるといい」


「うん♪えいっ」

「じゃあ私は先程キョウスケ様が極めたクロスフェイスをしますね」

「じゃあ私は空いてる左腕に腕肘裏十字固めを」


「「「「「もう止めてあげて!!盗賊達のライフはゼロよ!!!」」」」」





第4章スタートです!

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