61話 成果 報告とお披露目
4人、ターロス達を埋葬する。
「これが今回の遺跡調査の報告書になります」
「ご苦労だったなキョウスケ」
遺跡調査から翌日。ここはリュインの冒険者ギルドのギルドマスターの執務室。先のプトレマイオス遺跡調査の報告で響介は改めてアランに呼び出されていた。ちなみにライミィとエリーはステラの買い物中である。
響介の報告書を手に取り目を通しアランは
「で、見っけてきたのでお前らが手に入れたのがステラの嬢ちゃんに500年前の魔導書計134冊に賢者の懐中時計1個に魔導エアバイク2台その他Sランクアイテム諸々、見っけてきたなぁ!おい」
実はその後倉庫を探したら色々出てきた。賢者の懐中時計やマジックアイテムもだが一番は空間魔法「スクトーデ」がかかっている一室に当時のまま保管されていた当時の最新式の魔導エアバイク(ステラ談)だ。
元の世界のバイクと操作方法がほぼ同じだった為運転経験のある響介と一台がステラ用になっていた為ステラが使う事を決めた。
「はい、そちらにお渡しするのはあの遺跡のカードキー類と人造人間に関する資料とレポートですね」
そう言って響介はその書類と3枚のカードキーをアランに渡す。
「おう!ありがとうよ!」
「?、アランさん、なんだか上機嫌ですね?」
響介は不思議そうにアランに尋ねた。普通ならこんなお宝を冒険者に独り占めされたなら例えアランの立場でももっと悔しがるかと思っていたが目の前のアランは嬉しそうだ
「なに言ってんだ!久しぶりにこんなにすげぇお宝が出てきたんだぞ!?この地にはまだまだ発見されてない、調査が済んでいない遺跡はごまんとある。現に今回の事で他の奴らのやる気が上がってんだよ。お前ら以上のお宝見つけてやるってな」
成る程、そんな考え方もあるかと響介は納得した。
人を羨むだけ終わるのではなくて次は俺達が名を上げてやるというやる気がみなぎったということだろうと考えていると
「ただな、魔道具ギルドと魔導師ギルドから打診があってよ。キョウスケ、悪ぃんだが」
「なに言ってんですかアランさん。遺跡で見つけたものは」
「「早い者勝ち」」
これに響介とアランは声を揃えて言うと男二人声を上げてバカ笑いする。
「OKだ。あいつらは一蹴しといたし一応釘も刺しといたから無理にはこねぇだろ。あんまりしつこいとリアルに釘刺されるぞって言っといたから」
「それは失礼ですね、まるで自分が人に釘打つみたいに」
「お前はやるだろ。聞いたぞブライアン達から、エリーの嬢ちゃん殴ったジュリアに釘打とうとしたんだってな」
「でもそれは未遂ですよ?やる前に死んでましたし」
「ニューポートじゃ聖騎士にマジで釘打ったみたいだが?」
「おや、ご存知でしたか?」
「ちょっと調べればわかるさ『ピアニスト』」
そう言って含んだ笑いをするアラン。それを見て改めて響介は思う、やはり喰えない人だと、話していて楽しい人だとも
「情報なんてもんはちょっと意識すれば意外と集まるもんさ。でここだけなんだがその『ピアニスト』の後を『聖女』様が追っているそうだ」
「『聖女』?」
「オウレオールの五神の頭、パスクの聖女勇者アリシアだ。どうやらあそこだけは静観決め込まずに調べてるみたいだぞ」
響介はその名前に聞き覚えがあった。ニューポートで勇者の事を調べている時に出てきた勇者だ、ロンとは教会が違うことから気にも留めていなかったが新たな疑問が
「パスク?トリウスではなくてですか?確かトリウスにはまだニューポートにエリックとかいう勇者がいたはずですが」
「お前に教会の黒いとこの一部を曝されて全教会はてんやわんやしてんだよ。特に今回の事でトリウスは信用問題になってどんどん支援者が離れちまって神聖王国のトリウス教所属の全勇者は一度聖都に召集されてんだ。その中でパスク教会が国王命令で調べてるって事だ」
「成る程、じゃあそろそろ俺達も次の所行かないとですね」
「別に居てくれてもいいんだぜ?」
「は?」
「俺はお前らが気に入ってるからな。それに俺は神聖王国が嫌いでね」
思わず響介は吹き出してしまった。個人的にはいいんだろうがギルドマスターの立場で言うのは流石に不謹慎ではなかろうか
「胡散臭くて嫌いなんだよあそこ、それにお前らみたいに短期間で色々やってのけた奴を冒険者ギルドは簡単に手放したくはねぇよ。ここだけの話、クリ坊のとこのクオリアやナンシーなんかも冒険者としては優秀だから正式に冒険者になったことはギルド本部も喜んでる。少なくても俺はお前やライミィの嬢ちゃん達をはいそうですかって神聖王国に渡す気は毛頭ない。まあ向こうは情報が少な過ぎて難航してるみたいだから放っといても大丈夫だろ。この話しは終わりだ、それより」
先ほどのおちゃらけた様子とうって変わってアランは真面目な様子になり響介に向き直る。
「報告書にもあったが、魔族がいたのか?」
「はい、魔王ラヴァナの配下の四天王だとか言ってましたね」
「魔王ラヴァナ、聞いた事無いな。最近出てきたやつか?」
「最近ってそんなにポンポン出てくるもんなんですか?」
「出てくるもんなんだよ。魔族領はこの大陸の3分の2に渡ってるんだが全容がわかってない。わかってる部分で言えば大陸の反対側はエルフ等の亜人と獣人が国作ってるってとこと魔族は群雄割拠で魔王が何人もいるんだよ。まっ、話せる魔王もいるがな」
「話せる魔王がいるんですか?アランさんはお会いしたことが?」
「ああ俺がクリ坊達と組んでた時な、確かアルフォンスっていう吸血鬼公爵の魔王だ」
「アルフォンス…」
「中々話せる奴だったな、吸血鬼の中でも滅多にいない公爵だったからあん時は死を覚悟したよ」
アランはその時の話をここだけと言ってとても懐かしそうに響介に語る。
10年程前、当時冒険者だったアラン達はあるダンジョンの攻略中に罠として仕掛けられていた転送魔法陣によって魔族領に飛ばされた時に出会ったと語った。アラン達はアルフォンスと出会った時は戦おうとしたらしいがアルフォンスは拒否。その理由が「顔が良くても筋肉ばかりの女の血は不味い、それならばアイスワインが飲みたい」と言われたらしくそれを聞いたクリスともう1人の女冒険者は両膝ついて凹んでいたと笑いながら話していた。
その後少し話した後アルフォンスの転送魔法で探索中のダンジョンに送り返されたそうだ。
血のようなドス黒い赤い瞳に色白な肌の綺麗な白髪でクリス達が目を奪われる程の線の細い美形の男だったという。
「ですがアルフォンスは何をしていたんですか?」
「なにしてたんだっけな…?鎧着た連中もいたが戦う感じが全くしてなくてな、取り敢えず争う気は毛頭ないと冷めた目で言われた」
「でも俺が言うのも何ですが、変わった奴ですね」
「それな、俺が思うにキョウスケとアルフォンス馬が合うと思うんだよな。見た目反対だが馬が合ったらとんでもない事になりそうだが」
そう言って響介とアランはまた声を上げてバカ笑いし笑い合った。
「随分話したな、3人共はと何処だ?」
アランに報告を終えた響介はピーター商会へ向かっていた。ステラの服や装備を買いたいとのことで3人で買い物中のはずだと響介はさっき話しに出てきた魔導師ギルド等に絡まれるのを嫌って屋根伝いを見事な身のこなしで跳び移りながら移動する。住人達の注目を集めながらピーター商会に到着し中へ入ると
「あっ、キョウスケ!」
丁度ライミィ達の買い物中だった。そしてライミィはエリーと見繕った服を響介に見せようとステラを呼ぶと
「キョウスケ様。如何でしょうか?似合いますか?」
照れながら響介に披露するステラ。スカートの裾を引っ張りお辞儀をする姿は多分教わったのだろうと思い少し微笑ましいが、響介は目の前のステラの姿に目が点になっていた。
「あの、キョウスケ様?」
少し心配になったのかステラが不安そうに響介の顔に近づき覗きこんだ。人造人間のステラの容姿は美形そのものでズイッっと顔を間近に近付かれたら大体の男はドキッとするだろう、しかし
「すまない。似合ってると思う。似合ってるんだがちょっと待ってくれ。ライミィ、エリー、カモン」
「はいはーい」
「ウラー」
無邪気に近づくライミィとエリー、ステラは頭の上にはてなマークが浮かんで首を傾げていたがステラの装いに響介は突っ込まずにはいられなかった。
「どうしてステラはメイド服を着てるんだ?」