6話 休息 それぞれの想い
響介、鍛える、学ぶ。
ライミィの胸の内。
「キョウスケお帰りなさーい!」
狩りから帰った俺達にライミィが出迎え俺を見や否や抱き着いてきた。
「おっと、ライミィありがとう。だがオックスを両肩に担いでるから抱き付くなら後にしてくれ」
「そうよー、危ないわよ」
「てかキョウスケ、ライミィが抱き付いても照れたりしなくなったわね」
「…流石に慣れました」
「まあ、何かある度抱き付いてるからねぇ。今度は私達が抱き着いていい?」
「はい!?」
「だーめー!」
「そんなことより姉さん、早く捌きましょ。捌くのは私と姉さんでやるからキョウスケは今日はいいわよ」
「ですが…」
「いや、キョウスケ。貴方はほっとくと際限無く働くじゃない。だからたまにはゆっくりしなさいな」
「わかりました。リリーさんリリアンさんお先に失礼します」
「ほら、行こ!キョウスケ」
俺は担いでたオックスを吊し上げた後2人に挨拶をしライミィの手に引かれて居住の自分に用意して貰った部屋に戻った。
たまにはゆっくりしろと言われたのでさて、メシの時間もまだあるし何をするかと思ったがスキルツリーで気になるのがあったのを思い出した。
「この気功術っていうのを取得出来るな」
スキルツリーを開き身体強化の所から伸びた「気功術」。
気功と言えば元の世界でもそんなのがあった。確か体内の気を循環させて気を高めコントロールする「内気功」と身体に合う気と合わない気を交換して傷や病を癒す「外気功」だったか?でも俺の知識は元の世界のものでこの世界のものと違うかもしれないな。
少し期待をしながら早速1割り振り取得する。すると
「おっ?」
身体の中の気の流れを感じる。恐らくこれが初歩何だろうな、そこで良くその手の事であるように集中して気を溜めてみることに
「はあぁぁ……!」
身体の中心が熱くなるのを感じ、それを右手に集中するようにイメージをする。そして握り拳ではなく掌底で前に突き出したら「ドン!」と拳一個分先に衝撃が起きた。
「おおっ!成る程成る程」
1人で納得していると音を聞き付けたライミィとオリビアさんが慌てて入って来た。
「ちょっとキョウスケ何してるの!?」
やっべ。
流石に部屋の中は不味かったな。2人共慌ててたみたいでエプロン姿のままだった。
「すいません!気功術ってのを習得しまして試してみたら予想以上に」
「気功術?」
「気功術ですって!?」
ライミィはピンと来ていない様だがオリビアさんは驚いている。
「ちょっとキョウスケ君。スキルツリーを見せて貰えるかしら?」
「はい。直ぐに」
俺は直ぐに自分のステータスを開きスキルツリーを表示しそれを2人に見せた。
「まさか気功術を習得出来るなんて……」
オリビアさんはそうこぼしたが、えっ?そんなに珍しいのか?
「珍しいんですか?」
「ええ、かなり珍しいわ。人族でも魔族でも習得している人は一握りでしょうね」
「何でですか?やってみて結構コツ要りますけど難しくはないですよ?」
「そう。感覚的なものが必要なのよ」
「感覚的?」
「魔法や武術と違って知識や技術の問題じゃないの。流れに身を任せると言えば良いのかしらね」
流れに身を任せるか、俺だったらピアノか?ピアノを弾いている時がそれだからか容易にイメージがしやすいな。
「それにしてもキョウスケ君は本当に人間の枠じゃないわね」
やべぇよ。人外の方に人外認定されたぞ。
どうなってんだ神様よ。色付け過ぎではないですか?
「ねぇねぇキョウスケ。もう一回やって?」
「へ?ああ、いいけど」
ライミィにアンコールをもらい再び集中し気を集める。右手に溜まる感覚が出来たら今度は握り拳
でやってみた。するとまた「ドン!」と音が響く。響いたがさっきより距離が伸びた。
「おおー!」
「これに関してはもうマスターしたわね。気功術は応用が効くらしいと聞いた事があるわ」
「応用、ですか」
ならスキルレベルは上げなくていいか。ポイントは使わなくても学習や鍛練でも上げられる様なので気功術に関しては修行しよう。もっと考えれば色々出来そうだ。そんな事を考えていたら
「ん?なんだ?焦げ臭い…… 」
「あぁー!?火掛けっぱなしだよお母さん!」
「まあ!大変だわ!」
「もう!キョウスケのせいだよ!」
「本当に申し訳ない!ごめんなさい!」
その後3人でわちゃわちゃしながら昼御飯を作り直すのだった。
昼御飯も食べ終え響介は日課と化したピアノを弾く。いつも真っ先にイメージした曲を弾くそうで今日は軽やかでリズミカルな曲だ。聞いていて楽しい。
「ねぇライミィ」
「何?お母さん」
「キョウスケ君がここを立つってなったらどうするの?」
お母さんからの質問に私は言葉に詰まる。そうだ響介は何時までもここにはいない。恐らく近いうちに旅立つだろう。
「私は…」
言葉が詰まる。でももう答えは決まっていたと思う。
「私は着いていきたい。キョウスケと一緒にいたい」
「わかっていたわ。でもライミィ分かる?今の貴女はただの足手まといよ」
我が母ながらはっきり言うなぁ。でもわかってる、私が実力も種族としてもただの足手まといだって。
「うん、わかってる。わかってるけどそれでも私はキョウスケと」
私は母の目を真っ直ぐ見て伝えた。すると母は穏やかな表情を浮かべ
「貴女がここまで我が儘を言うなんてね。ライミィ正直に答えて頂戴な。キョウスケ君の事、好き?」
母からのド直球な質問にドキリとした。多分私の顔は赤くなってたろうなぁ。
「…うん」
「まさか娘の恋を知るなんてねぇ。いいでしょう。アミュレットは何とかしてあげるわ」
「ほんと!?」
「でもその代わり」
「えっ?」
「キョウスケ君をしっかり支えてあげなさい。あの子はまだ若いわ。あの子は自分からどんな障害も立ち向かう、だから貴女がしっかりと支えてあげるのよ」
「うん!」
「わかればよろしい。明日から魔法の訓練は厳しくするわね。しっかりと叩き込んであげる」
「お母さん怖いー」
「ん?どうしたんだ?」
丁度1曲弾き終わった響介が私達が会話しているのに入ってきた。
「何でもないよキョウスケ!ねぇねぇ次の曲は?」
「次は」
こうしてまた楽しそうに響介は弾き始める。私は楽しそうに弾く響介に見とれながらも響介の隣に立つ為に頑張ろうと改めて決めた。
だって、初めてだったから、私の事女の子って言って助けてくれたの。女の子って言って接してくれたの。
だからそんな響介と一緒に世界が見たい。一緒に旅がしたいから。