56話 対決2 四天王『音速のウィクル』
3人、カードキーを見つける。
危ない危ないと内心で呟き軽く冷や汗が出た。最近あらかじめ練った気をストックする事が出来るようになって試しに今玄武甲盾で使ってみたが強度も十分でなかなかに使い易かった。おかげであの女のフリーズランサーらしき魔法を防ぐ事が出来た。
いくら俺でも魔法の判別くらいは出来る。いつも魔法を教えてくれるライミィに感謝。
そのお返しに功掌で伸ばした手で1発ずつビンタした。ただノーモーションかつ瞬時に行ったからか反応出来てないようだったのかよろけて呆然としている。
…こいつら攻撃されることを予測していなかったのだろうか?
やられたらやり返される。
喧嘩じゃ当たり前の事だ。そんな事を考えていたら状況を理解したのか怒りを露にし
「こいつ…!舐めているのかっ!!」
まあ、そうなるわな。さっきの口振りからするにあの女達はどうやら人間は格下とでも思っているようだ、
何故だか分からないがこいつらを見ているとイライラする感覚が少しだけあるのは何故だろう?
俺はこいつらに言ってやることにする。
「ああ、弱い者いじめは嫌いなんだ」
そうはっきり言ってやると後ろにいたライミィは吹き出して声をあげて笑い、エリーはクスクス笑い出した。
「あはは!もうキョウスケはっきり言い過ぎだよ~!」
「ふふふっ」
この態度に戦士風なのかやけに露出している鎧らしき服を着た魔族の女は顔を真っ赤にして激怒し
「こいつら!人間のくせに!!お前ら皆ごろ」
「待ちなさいウィクル。お前ダークエルフだな。何故人間と一緒にいる!」
剣を抜こうとした魔族の女を制して魔導師風なのかこちらもやけに露出した格好をしたダークエルフの女はライミィの横にいたエリーを指差した。
「そこはお前の居場所ではない!お前もこっちに「嫌」は?」
「嫌。オバサン達、ドブ臭いし、加齢臭臭い、此方来ないで」
顔を見なくてもしかめっ面に冷ややかな目で言っているのが容易に想像できこれには俺もライミィも思わず
「くくくっ、すまないな、うちの、くくくっ、妹分が、あっはっは!」
「あははっ!オバサンて!エリーはっきり言っちゃ駄目だよ~!!」
敵の目の前だと言うのに爆笑してしまった。ライミィもそうだがエリーも敵を煽る事になんの抵抗もない。むしろ物怖じせずはっきり言うため直にくる、
ってかエリー、加齢臭なんて言葉何処で覚えた!?
そこへライミィが
「ごめんね~、私達まだピチピチ10代だからさ~」
笑いながら追い討ちをかける。するとダークエルフのほうがおもむろに杖を構えたと同時にエリーに対して先程のフリーズランサーよりも強力な氷の魔法を放ってきたので射線上に入り再度玄武甲盾で防ぐ
「やれやれ危ないな」
笑いながらも同じタイミングで後ろからライミィに対して剣を振り降ろした魔族の女の攻撃を伸ばした功掌で剣を受け止め捌く。
笑っていても気を練るのも周囲の探知を怠らない。特に魔族の女戦士は速いみたいだが十分反応出来るスピードだ。
「このガキ共……!」
「気を付けろリオレン、この男少しはやるようだ」
ここからでも分かるくらい歯軋りをするダークエルフの女、リオレンと呼ばれた女は恨めしそうにライミィとエリーを見て
「気に入らない…!気に入らない!守られてる女の癖に!」
どうやら私念が入っているようだな。まあダークエルフとして生まれた境遇を考えればこれがこの世界の普通かとふと考えると
「落ち着けリオレン」
もう1人の、魔族の戦士ウィクルと言った女が前に出て名乗りを挙げる
「少しはやるようだな人間!我は我らが魔王様、ラヴァナ様に遣える四天王が1人!音速のウィクル!命が惜しくないのであれば…なっ!」
いちいち待ってられるか。口上が長くなりそうだったので隠密スキルを使い目の前まで近付き顔目掛けて蹴りを放つ
「ふん!所詮は人間!こんな蹴り止まって見え」
俺が蹴りのモーションに入った瞬間。パァンと打撃音が遺跡に響いた。
喰らったウィクルと見ていたリオレンは訳が分からないと言わんばかりの表情だが蹴られた事だけは理解したようだ。
それはそうだろう。『一発目』の蹴りは『光速』で蹴ったのだから。
これは俺が元の世界から喧嘩の時にトドメを刺す時に使ってた上段回し蹴りだがこの世界で鍛えていたらいつの間にか光の速さで蹴りが出来るようになっていた。
ウィクルという女は音速で調子に乗っていたようだが音より光のほうが速い。そして俺の右足が地面から離れた瞬間にまたパァンと響く。奴の目が動いていたようだから『二発目』の『音速』の蹴りは見えたようだ。
そして『三発目』の蹴りが見事に頭を捉え蹴り抜きウィクルを蹴り飛ばす。しかしいつの間にか移動していたリオレンが蹴り飛ばされたウィクルを受け止めると突如足元が光出し
「お前達の顔と匂いは覚えた…!次に会うときに殺してやる……!」
ダークエルフのリオレンは恨めしそうにそう吐き捨て抱えたウィクルと共に消えた。どうやら転送魔法で逃げたようだ。
…引き際をわきまえてることから怒り狂っていると思っていただけ意外な展開だ。
「なんだったんだろ?あいつら」
「何か、探してた」
「さあな、魔王がなんだか言っていたが今は気にしなくていいだろ」
「ま、そうだね。キョウスケ全然本気出してないみたいだし、早く先いこー!」
「おー♪」
邪魔が入ったが文字通り一蹴した俺達は先へ進む為に動力室を探す。
……ジュリアの件は言わなくてもいいだろう。
気を取り直して探すこと10分
「あったー」
動力室を見つけた。扉は固く閉ざされており横の壁にあったカードスロットのランプは赤く光っている
「ここでさっきの『動力室のカードキー』をつかうんだね!」
「いや、こっちの『カードキーlevel2』だろう」
「「えっ?なんで?」」
ライミィとエリーは揃って疑問の声を上げた。それもそのはず、動力室の鍵なら動力室の扉を開ける鍵と思っていたようだった。俺も同じ事を考えたが俺は自分の考えを2人に話す
「この『動力室のカードキー』は多分中で機械を動かすのに使う奴じゃないかって思ってな。だからこっちのカードキーから試してみていいか?」
「成る程、うーん私良くわかんないからそれでやってみよ!」
「みよー」
2人からお許しが出たので室長用のカードキー、カードキーlevel2をカードスロットに差し込む。すると警備室の時と同じ様な機械音がして扉が開いた。
「おおっ!開いたー!やったねキョウスケ!」
「うん。俺もびっくりした」
ホントにびっくりした。まさかホントに開くとは、そうしているとエリーが服をちょいちょいと俺達の引っ張り
「なかいこー」
エリーは早く中を見たい様で目をキラキラさせていたので俺達は中へと入る。中は大きな機械、多分発電装置だと思う物や他にも沢山の機械などがあったが、ほとんど動いておらず沈黙していた。
「全然動いてないねー、どうすればいいんだろ?」
「このカードキーを使うんだろうがどれだ?」
俺とライミィが辺りを見ていたら
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、これなあに?」
エリーが何か見つけた。そこの机にディスプレイとカードリーダーがありディスプレイに映し出されていたのは
「なになに、『カードキーを挿入してください』か、エリー良くやったこれみたいだ」
俺はエリーの頭を撫でカードリーダーに動力室のカードキーを挿入する。するとディスプレイには『カードキーを確認、動力供給を開始します』と表示され発電装置が動きだした。