53話 お休み2 何故何エリーとピアノの子守唄
響介、大道芸変わりにパルクールをする。
レストランに入り思い思いの物を注文した3人。時間帯は少し早いものの徐々に店内は賑わって来た中、楽しそうに料理を待っていたエリーが何かを思い出したかのように響介とライミィに聞いてきた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、先祖返りってなあに?」
エリーの口から出た思いもしない言葉に響介とライミィは顔を見合わせる。それを見たエリーは頭にハテナマークが浮いたみたいに首を傾げた。
「なあエリー、質問を質問で返すのは悪いんだがそんな言葉どこで覚えたんだ?」
「えっとね、朝ステータス見たら、『???』だったアビリティが、『先祖返りのエルフ』ってなってたの」
「先祖返りのエルフ?」
エリーにつられたのかライミィも首を傾げている。そこで響介は出来るだけ分かりやすく答える事にした。
「先祖返りって言うのは、産まれた時お父さんとお母さんに似るんじゃなくておじいちゃんやおばあちゃん、はては御先祖様の特徴に似る事だな」
「御先祖様の?」
「そうだ。先祖返りとは違うけど例を言うと俺とかライミィとかの瞳の色は遺伝って言うんだ」
「そうそう、私も瞳の色はお母さん譲りなんだよ。キョウスケもお母さんからの遺伝って言ってたもんね」
「ああ、だからその『先祖返りのエルフ』と言うのは多分エリーは御先祖様の特徴を持って産まれたんだろうな」
響介の説明を聞いてエリーは「そっかー」と取り敢えず納得してくれたようなので説明した響介だけでなく横で聞いていたライミィも内心ホッとしていた。そうしていたら店員が料理を運んできた。
「お待たせ致しました。こちらパンケーキセットのお客様」
運ばれてきたパンケーキはふっくらと焼き上げられ、上にはフルーツやクリームが丁寧にトッピングされたもの
「あっ、はーいエリー」
エリーが頼んだパンケーキを始め響介とライミィが注文した料理も運ばれてきた。
「じゃ、食べよっか」
「そうだな」
「「「いただきます」」」
3人は仲良く食事にする。響介とライミィが頼んだ料理はピザやサンドイッチ等みんなで摘まむ様なサイドメニュー等の料理でみんなで仲良く食べる姿は端から見るとまるで仲良し兄妹より周りにいるような一組の仲良し親子のようだった。
「すぅすぅ」
「ふふっ、エリーぐっすり眠ったよ」
眠ったエリーの頭を優しく撫でながらまるで母親のように微笑むライミィ。あの後も3人で買い物をしたり街を見て回ったりして休日を過ごしていた。その中でもエリーは色々な物を見ては普段表情が解りずらいポーカーフェイスながらも目をキラキラさせていた。エリーが眠るまで子守唄代わりにピアノを弾いていた響介は最後の一小節を弾き終わると
「そうか、それなら良かった」
穏やかに笑う響介にライミィは
「ねぇキョウスケ、何考えてたの?」
不躾に質問をぶつけた一瞬、響介が強ばったのをライミィは見逃さなかった。
「ああ、明日の遺跡についてな」
「本当?」
そう言うとライミィは響介に抱き着いた。
お互い就寝前で薄着だった為響介はライミィの行動に焦ったがライミィは意を返さずに響介をぎゅぅと抱き締め自分の頬を響介の頬に当て
「嘘。キョウスケのこの体温は嘘ついてる」
「温度でそこまで分かるのか…?」
「ん~多分キョウスケ限定」
「ライミィには敵わないな」
観念したように笑う響介。嘘を看破されたのはじっちゃん以来だなと思いながらライミィに話始めた。
「エリーの事で、な」
「エリーの?」
「さっき見せてもらったエリーのアビリティ『先祖返りのエルフ』で考えてたんだ。その先祖返りした特徴ってもしかして肌の色何じゃないかってな」
「肌の色?」
「ああ、俺はエリーの両親は知らないがエリーが産まれた時、俺はエリーの母親は托卵を疑われたんじゃないかってな」
「たくらん?」
「鳥である習性なんだ、ライミィに分かりやすくいえば浮気相手との間に出来た子供を隠蔽して育てる事だ」
「そんな…!まさかエリーは……」
「勿論確証はない、多分エリーの母親は白だ。俺の想像だけど多分どっちかの祖先にダークエルフがいたんだろうな、それでたまたまエリーにその特徴が先祖返りとして出てしまった」
推測の域を出ない話だが響介は続けて話す
「恐らくそれが原因でエリーの母親は味方がいなかったんだろうな。ダークエルフは忌子、だからエリーを連れて失踪した」
「…」
「で、ここからが本題だ。エリーは匂いで人の善し悪しを判断すると言っていたけど、その判断基準って母親と父親なんじゃないか?ってな」
「どういう事?」
「要は母親と同じ匂いの人種はエリーからすれば好い人。父親と同じ匂いの人種はどうなろうと知ったことじゃなく許す事が出来ない人」
「それって…」
「俺もおんなじ事を考えたよ。言うなれば王家内暴力か」
元の世界でも良く聞く話だった。家庭内暴力だのモラハラだののトラブル、だがそれが王家内で、父親を主立てて容認されていたのならゾッとする事だ。
「ねぇ、キョウスケ。私もエリーの事で気になってたことがあるの」
「ん?」
「エリーって、弱音吐かないし泣かないの。だってお母さんと離れ離れになって不安なはずのになんでだろうって思ってんだけど、今のキョウスケの話聞いてもしかしてお母さんが酷い事されてたのを無意識に覚えてるのかな、って」
ライミィの意見を聞いて頬に手を当てて考える響介。確かに今までエリーから弱音らしい弱音を聞いた事がない、確かに不自然だ。
それに、その可能性は十二分にある。もしエリーが母親が受けた仕打ちを覚えていて父親を恨んでいる場合、同類と判断したジュリアをあんな風に殺したのも説明がいく。エリーは普段純粋ないい子だが反面ジュリアに行った事を考えると冷酷無比と言ってもいい、当然父親も許す事はしないだろう。
…俺は、今後エリーが父親と対峙した時どうしてやればいいのだろう?
「キョウスケ」
ライミィが響介の両手を取り優しく握ると響介に優しく微笑み
「2人で考えよ?1人で抱えちゃ駄目だよ?」
「顔に出てたか?」
「うん。ばっちし」
「…ライミィには誤魔化せる気がしないな」
自分にうんざりしたように肩を竦める響介。それを見たライミィは横で眠っているエリーを気遣いながら穏やかに笑い
「ん~響介って意外と分かりやすいよ」
「はは、もう笑うしかない」
以前ならもっと無愛想だった。
『人は一人では成長しない』とじっちゃんに教わった事を思い出し全くその通りだなとそれとあわせて笑いおもむろにライミィをお姫様抱っこし
「きゃっ、キョウスケ大胆♪どうしたの?」
「久しぶりに一緒に寝ようか」
「キョウスケからのお誘い!?じ、じゃあ…」
「今はまだ寝るだけだぞー、エリーが起きたら教育上良くない」
ライミィは少し残念そうにしていたが響介の頬に軽くキスをし
「明日もあるから今日はこれだけしてもいいでしょ?」
悪戯っぽく笑うライミィを思わず愛しくなりライミィをベッドに押し倒すように入った響介。しかし響介は直ぐに眠りに入ってしまいその中でも微かにライミィの声が聞こえた気がした。
「キョウスケ、大好き」