52話 お休み 良く晴れた日にと一方その頃
3人、報酬として遺跡を好きなだけ探検出来る様になる。
救出クエストの翌日。昼前のリュインの商店街に近い開けた広場では
「「「「おおー!」」」」
響介が軽業を披露しており行き交う人の注目を浴びていた。この広場では時たまこういった見せ物をする者もいるがこの街で暮らしている者からすれば響介は恐らく初めて見る顔だ。
この辺りでは珍しい黒髪青眼の青年から繰り出される軽業はレベルが高く次から次へ技が出る度歓声が上がる。そしてラストに差し掛かると響介は壁を蹴って大きく跳び
「おおっ!」
「すごい……っ!」
「あれは人間技か……!」
得意技の月面宙返り3回転捻りを綺麗に決め喝采を浴び
「ありがとうございました」
まるで品のある執事がお辞儀をするように一連の所作には美しさがあり最後まで称賛を受けた。
「お疲れ様キョウスケ!」
「お兄ちゃん、カッコ良かった」
「ありがとう2人共」
何故こんな事をしているかと言うと、リュインに来てから今日までまともな休みなかった事と、書類と諸々の関係上遺跡に挑めるのが明日という事で今日は休みにして3人でゆっくりしようと言う事になり響介は久しぶりに運動として軽く身体を動かそうとラミアの隠れ集落でやっていた様な軽業をやっていたら人が集まってしまい急遽大道芸みたいになってしまった。
「うーん」
「どうしたのキョウスケ?」
「さっきのコークスクリュー、ダブルいけたなーって思ってな」
「ダブル?」
「こうするんだ」
すると響介は予備動作無しのその場で跳躍しダブルコークスクリュー、空中2回転横捻りを慣行、見事に成功させるとまたも歓声が挙がった。
「すごい」
「いやー、上手くいったな。ロンダートやスクートから入んないと綺麗に決まらないから」
こういった軽業は元の世界でも良くやっていた。エリーよりも小さい頃にテレビで見て見よう見まねでやったら一発目で着地に失敗して腕を骨折したのはいい思い出である。それからは恐怖心があったが何回もやっていくうちにその恐怖心すらも楽しむようになったと思い出しているとライミィとエリーが目を輝かせていて
「キョウスケ!私にも教えて!」
「エリーも、やってみたい」
「ああ、最初は基礎から教えるけどその前にズボンか何か買ってからな、中見えるから」
「「あっ」」
響介に言われてライミィとエリーはつい自分のスカートを見て手をやる。そしてその後
「もう、キョウスケったら~」
わざとらしく照れて響介に抱き着き頬をツンツンしだしたライミィ
「ライミィ、流石に人前は止めような。それにそんな事したら」
と、響介が言い切る前にエリーが反対側の頬を目をキラキラさせながらツンツンしだした。
「…エリーが真似するから」
「「はーい♪」」
ライミィとエリーは息を合わせたかのように同じタイミングで返事をした。もうこうなると仲良し姉妹に思えてくる。そうして響介も笑っているとぐぅ~と
「お腹、空いた」
エリーがそうポツリと言って響介とライミィを見た。その様子に
「なら、ちょっと早いがメシにするか」
「そだね、何食べよっか?エリーは何食べたい?」
「えっと、」
キョロキョロと周りの店を見渡すとエリーはあるオープンテラスのレストラン、そこにいた親子連れの子供が食べていたものに目が止まった。
「お姉ちゃん、あれは?」
「ん~?あれはパンケーキだよ」
「食べてみたいか?エリー」
「うん」
「じゃ、彼処で食べよっか。他に何があるかな?」
一方その頃
ここは人族国家から離れた魔族領の深い森の中、日の光も届かない森を進む70人近い女性の一団がいた。その一団は深く薄暗い森の中であってもまるで整備された街道を歩く人間以上のスピードで進んでおりその先頭には
「ウノ、トリ、フェム先見てこい」
「「「わう!」」」
3頭のグランドウルフに指示を出して周囲の警戒をする弓を携えた女性がいた。いや、確かにその女性は綺麗に整った容姿に流れるような茶色の髪、猟師が身に付ける上着からでも分かる豊満な膨らみがあるが下半身はまるで大蛇のような蛇の姿をしていた。
そう彼女を初めこの一団は皆人間ではない、ラミアと呼ばれる下半身が蛇の姿をしている種族だ。
「ベラ、どうかしら?」
「オリビア様」
声をかけられ振り向くベラと呼ばれたラミア。そこにいたのはオリビア様と呼ばれ魔導師のローブを羽織り綺麗な銀髪のラミアでこの一団のリーダーだ。穏やかな笑みを浮かべ、ベラに訪ねる
「ここいらは大丈夫そうです。それに私達もですがみんな強くなっていますからちょっとの事ならウルフ達で大丈夫ですよ」
「そう、それなら良かったわ」
「オリビア様ー!ベラー!食事にしましょーう!」
「わかったわリンドウ」
2人のラミアは紫髪のラミアリンドウに呼ばれ、他の皆が待つ方へと移動するとそこには大きな牛の姿をした魔物が何頭も狩られ数人のラミアが手際良く捌いていた。
「あら~、見事な大牛鳥ねぇ」
「近くに山ダンジョンがあるみたいでそこから出てきたみたいです」
「人数多いから助かるな」
数人がオックスを捌いている横で長い桃色の髪を色っぽくかき揚げたラミアがおもむろに口を開いた。
「そう言えば面白い話を仕入れたのだけど、聞きたい?」
「何何リリス?」
「キョウスケとライミィの話よ~」
リリスのこの言葉にラミア達は皆リリスに注目した。
「「おっ!」」
「聞きたいわね」
「そういうんだからあいつら何やったんだ?」
「オウレオールで不良勇者をぶちのめしてブタ箱送りにしたのよぉ」
聞いた瞬間、皆がドッと沸き皆から笑い声が挙がる。
「あっはっはっ!マジかあいつら!」
「やることがぶっ飛んでるわ。流石キョウスケ君ね」
「ライミィもどんどんキョウスケに染まるなぁ」
「もう、あの二人やんちゃだわ」
うふふと笑い楽しそうなオリビア。それを見ていた周りのラミア達は
「やんちゃで済まさせるオリビア様流石ですわ」
「まあ、実質オリビア様にとってキョウスケは義理の息子みたいなものじゃない?」
「そうね、リリスー因みにキョウスケに他の女出来たって話ある?」
「無いわよー。ライミィをお姫様抱っこしてマルシャンの国境に消えたって話が最後ね」
「「「うん、心配ない」」」
こう皆で笑っていると1頭のグランドウルフがベラの元へ戻りわうわう吠える
「ん?どうしたウノ、何かいたのか?」
ウノと呼ばれたグランドウルフに連れられるベラ、暫くして
「誰か来てくれ!何か見っけた!」
その声を聞きオリビアとリンドウ、リリスがベラの元へと移動するとベラと3頭のグランドウルフが
「どうしたの?ベラ?」
「オリビア様、それが…」
ベラに促されオリビア達が見たのは行き倒れなのか気を失って倒れていた1人の女性。服が至るところボロボロで足には何も履いていなく素足で歩いていたのか見るのも憚られるほど血だらけであり全身傷だらけだがオリビアがこの女性を見て
「あら?この人、エルフ?いや、明るい銀髪にこの色白の肌はハイエルフかしら?」