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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第3章 商人の国 ~遺跡を探検するピアニスト~
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49話 覚醒 許せない人間の類い

3人、真相に気付き始める。




 響介達は通路を進み突き当たりの扉の前にいた。その扉は金属製の重厚そうな造りをしていて横の壁にプレートが掛かっていた。


「何て書いてあるの?」


「『兵装実験場』だな」


「「へーそーじっけんじょう?」」


「武器とか道具とか作って試す場所だよ。多分、人造人間(ターロス)用の武器も作ってたんだろう。それに中なら鋼鉄も沢山あるだろうからな、アイアンゴーレムを造るのにも材料はあるから最適だろうな」


 そう言うと響介は扉に耳を当て中の音を聞き始めた。暫し聞いて耳を離して2人に


「間違いないな中にいる。よし、開けるぞ」


 ライミィとエリーはこくりと頷くのを確認すると響介は兵装実験場の扉を蹴り破り中へと入ると広い室内には沢山の瓦礫や鉄屑がありその中心に


「ちっ!まさか見つかるなんて…」


 中にいたのは響介とライミィと変わらない位の赤い髪をした女だった。周りには多くのアイアンゴーレムが未だ錬金術で量産されていたが、その女に響介達は見覚えがあった。


「こいつ、あの時の、臭いの」

「あんた、確かジュリアとか言ったよね?」


 冒険者のジュリア。インパルスのメンバーだったがメンバー内で揉めて抜けたと響介達はアランから聞いていた。そのジュリアは響介達を見ると


「あらぁ、あんたらは期待の新人さんじゃなぁい?」


 ニヤニヤと以前より増して嫌らしい笑顔で喋りかけてきたがそんなことより響介はジュリアが身に付けていた錬金魔法の魔道具が気になり鑑定スキルを使い見てみると



邪神兵のアルケミストキット


アイテムランクS

魔法媒体不可

材料があれば魔力に関係なく強力なゴーレムを錬成可能なクリエイトゴーレムを行使可能。

錬成したゴーレムの稼働制限、個体制限無し。

しかし使う度心を侵食され欲望に忠実になる。



「その道具はどうした?」


「これ?何何?知りたい?知りたい?」


「ウザッ」

「その様子からお前がこの騒動を起こした張本人なのはことは分かった」


「はあ?何いってんのぉ?」


 何言ってんだこいつ見ないな表情をしたジュリアに響介は


「遺跡を捜索しそこから得た情報や発掘したお宝は勿論、見つかったS級アイテム等は原則早いもの勝ちが冒険者ギルドのルール。お前はこの遺跡を誰よりも最初に見つけたにも関わらず何も得られず他の冒険者にお宝を獲られるのが気に入らないんだろう」


 響介のこの問答に先程までふざけた態度でニヤついていたジュリアはピタリと動かなくなり表情が消えた。


「は?何そのガキみたいな理由。要はコイツ自分の思い通りにいかないからって駄々こねてるの?エリーでもそんなことしないよ?」


「うん」


「ま、俺の推測だがな。だがこいつは典型的な身の程知らずの業突く張りだ。何もかも「…るさい」ん?」


「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!!どいつもこいつもどいつもこいつもうるさいのよぉぉぉぉ!!」


 突如発狂したかのように喚きはじめたジュリア、その表情は鬼気迫るように喚き散らしているが響介にはただの子供の癇癪(かんしゃく)にしか見えなかった。


「ここは!私が見つけたの!だからここのお宝はぜーーんぶ私の物なの!!それなのにあのオッサンとビビりと腰抜けエルフはぴーちくぱーちく言いやがって!!それもこれもあんたらが出てきたせいよっ!!上手くいかないのは全部あんたらのせい!!!」


 赤い髪を振り回しながら身勝手な事ばかり喚き散らすジュリアに響介とライミィは呆れるしかなかった。


「うわぁ、ドン引きなんですけど」


「こいつ余程あの道具使ってるようだな、だがこいつを抑えればこいつが錬成したゴーレムは止められるだろうな」


「うん、あのへんな臭いの道具壊せばゴーレムいっぺんに壊せる」


 エリーがアルケミストキットを指差した時に喚き散らしていたジュリアが気付きピタッと喚くのを止めて話始めた。


「これ?これね、あのオッサン共と別れた時に闇市にいた白いローブ着た女に貰ったのよ。これはいいものよぉ、私の思った通りのゴーレムを造れるんだから。私に逆らわない意見しないなんて最高だわぁ、そうよそう私はこんな仲間が欲しかったの」


 いきなり恍惚な表情で喋るジュリア。その様子はまるでミュージカルの舞台のようなのか大袈裟なオーバーリアクションでその時の感動を表しているのだろうが


「こいつ、改めてドン引きなんですけど。私からすればただの寂しい女ね」


「は?」


「寂しい女はお家に帰って一人寂しくそのお人形とお人形遊びでもしてたら?みっともないし情けないわ」


 ライミィのドストレートな問答にジュリアは顔を真っ赤にして歪ませていた。


「取り敢えずこいつ黙らすか、御託は飽きた」


 戦闘体制を取る響介達。それを見たジュリアは臨戦体制を取ると


「ふん!丁度いいわぁ今までの借りを返してあげる。でもその前に」


「ん?」


「あっ」


 ジュリアが指を鳴らすと突如エリーのいた場所の床が抜けエリーが落ちてしまった。


「「エリー!」」


 エリーが落ちた床はいつの間にか元通りになっておりもう手は届かなかった。


「きゃははは、あんたらは自分よりも仲間に手を出される方が嫌でしょぉ?だからあのガキをなぶり殺しにしてあげるわぁ。下にいるから間に合うかしらね?うふふ」


「こいつ……!」


「でぇもぉ、あんたらの相手はここのゴーレム達よぉ。頑張ってねぇ~」


 そう言ったジュリアは自分の足元に穴を作りその穴に飛び込み穴もろとも消えていった。


「あのアマァ!!!!!」


 頭に血が上ってしまった響介が、エリーがいた部分を殴って下階層への道を無理矢理作ろうとし右腕を振り上げた響介に


「ストップキョウスケ!!」


 腕にしがみついて止めに入るライミィ


「ライミィ!?」


「壊しちゃ駄目!ここはダンジョンだよ!殴ってもエリーのいる所には分からないし、それにもしも下にエリーがいたら下敷きなっちゃう!!」


「……ッ!」


 そう、ここはダンジョン。普通の構造物とは違いマナが満ちている関係か空間が歪み下への通路を無理矢理作ろうものならダンジョン全体が歪み最悪二度と出れなくなる可能性がある。だがエリーの場合、ジュリアも同じ方法で移動している事からおそらく第3階層の何処かだろう。だがライミィの言った通りもし下にエリーがいた場合最悪崩れた瓦礫の下敷きになる。

ライミィの身を呈して止めに入った事で響介は何とか冷静になることが出来た。


「すまない、ライミィ」


「ううん、焦るのも仕方ないよ私もキョウスケがいなかったらパニックになってたから、それよりも」


 ライミィはおもむろに弓を構える。部屋の中にはいつの間にかアイアンゴーレムやロックゴーレムがわらわらと起き上がり始めていた。


「いっぱい沸いてきたねぇ、どうする?」


「雑魚に用はない。下まで最短距離で突破するぞ」


「オッケー!」






「ううん、ここ、どこ?」


 2人から離されてしまったエリーは起き上がり辺りをキョロキョロと見渡す。そこは先程と同じくらい広い室内でそこも同じように瓦礫や鉄屑があちこちにあった。違う点はさっきの部屋とは違い密室の様になっているのと明かりがついておらず真っ暗だったが暗視能力があるエリーには問題なかった。どうにかして2人と合流しようとしたが


「わっ」


 いきなり後ろから突飛ばされてしまい転んでしまった。そこへ顔に光が突き付けられ


「きゃははは!みいつけた」


 そこにいたのはジュリアだった。当たり前だ響介もライミィもエリーと同じ暗視能力を持っている為ジュリアが持っているランタンは必要無いから直ぐにわかった。エリーは起き上がろとしたがジュリアは腹部目掛けて蹴りを入れる


「がっ…」


 まともに喰らってしまい蹴られ地面をゴロゴロと転がり思わずごほごほと咳き込んでしまうエリー、その時


「ん?こいつ…!?」


 深く被っていたフードが外れエリーの素顔を確認すると胸ぐらを掴みエリーを罵倒し始めた。


「あんた、ダークエルフのくせに、魔族モドキのくせに何人間と冒険者やってんのよ!?マジありえないんだけどぉ!?親の顔が見てみたいわぁ、あっでもぉ、どうせ死んでるかダークエルフだしぃ。あんたといたあいつらもどうせ」

「……!」


 その時エリーはポケットに手を突っ込み中に入っていたビンを自分にかからない様に顔を背けジュリアの顔目掛けて投げつけた。


「…!何を、ッ!痛い痛い痛い!このガキァ!何しやがった!?」


 投げつけたのは響介お手製の目潰し。小麦粉と石灰、白色の玉子の殻、砕いたビンの破片等を混ぜて作った目潰しは何かあったら遠慮なく相手の顔面にぶちまけろと響介から持たされ教わっていたため忠実に行ったエリー。効果は覿面でジュリアは思わず持っていたランタンを落とし壊れてしまい周囲は暗闇に戻る。


 しかしそんなジュリアよりもエリーはずっと気になっていた事がある。


(何でだろう?あいつの臭い匂い、何処かで、知ってる?)


 ジュリアから滲み出ている臭いが気になった。この表しがたいような匂いは、まるでゲロ以下の臭い匂いを自分は知っている様だった。思い出そうとすると頭が痛くなる、しかし確かに知っている。すると


「あっ……」


 何かの光景がフラッシュバックした。

 そこは何処かのお城の中だった。綺麗な部屋に人がいたが様子が変だった。

 赤子を一人の女性が必死に庇っていた。その女性の後ろにいた男は女性に暴力をふるって何か言っていた。音が無かったがエリーはその女性を知っていた。


(お母さんだ)


 その内容は衝撃的だったがエリーは理解してしまった。自分の母親に暴力をふるっている男は父親だろうと

 その瞬間、エリーは全てを理解した。


この女はあの男と同じだ。

自分の母親を傷つけた父親と、

自分の大好きな母親を苦しめた父親と、

その父親と同じ匂いのこの女は自分の大切な人達を傷つけると、

 この女に対してエリーはふつふつと自分の中で沸き上がる怒りの衝動のままに腰のアルケミストキットを取り出し自分の魔力を込めてゴーレムを錬成した。


「このガキ!ぶっ殺して…ッ!?」


 視界がなんとかとれるようになったジュリアが見たのはエリーが錬成した一体のロックゴーレム。ロックゴーレムだが所々に歪な石の塊が装着されているゴーレムに呆気にとられるジュリア。

 そのジュリアを見据えていたエリーは頭の中で綺麗な声が聞こえていた様な気がした。






『達成条件を満たしました。アビリティを完全解放します』



空間魔法適正

ダークエルフの感性

???→先祖返りのエルフ NEW!!


先祖返りのエルフ 効果

詠唱完全省略

魔力増幅効果(効果量最大3倍及び範囲拡大)

同時詠唱可(最大5つ)





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