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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第1章 始まりはいつも突然に、またの名をホットスタート
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5話 滞在 世界を知ること

響介、己を知る。




 この世界に来てから1週間が経った。俺はというと


「今日も良い天気だ」


「あらキョウスケ。おはよう」


「あ、ベラさんおはようございます」


 すっかりこの集落に馴染んでおり今日も今日とで日課と化した散歩の為出てきた所にベラさんというラミアに頭を下げて挨拶をした。

 ライミィ達の住居からひとっ飛びして宙返りから3回転捻りを決めて着地。うん、今日も身体の調子はいいな。


「本当に身軽ねぇ」


「まあ、慣れっすよ」


「どんな慣れよ」


 茶髪のラミアのお姉さんことベラさんはそんな俺に若干呆れながら挨拶もそこそこに


「あ、キョウスケだ」


「おはよー」


「リリーさん、リリアンさんおはようございます」


 この白髪ラミアの2人は双子のリリーさんとリリアンさん。ボブヘアの人がお姉さんのリリーさんでハーフアップにしているのがリリアンさんだ。


「キョウスケー、今日の狩り当番私達だからよろしくねー」


「分かりましたー」


 この2人もベラさんも弓使いで狩人。他にもライミィ含め何人もおり俺は狩りを手伝っている関係で全員と顔見知りである。


「あら、おはようキョウスケ君」


「ビオラさんおはようございます」



この人はビオラさん。黒髪ロングヘアのラミアのお姉さんでタロットカード含め占い師をやっている。ミステリアスな雰囲気と格好含めガチな占い師さんだ。


「今日も狩りに行くのね?今日は、あら隠者の逆位置だわ」


「辛抱強く待てって事ですか?」


「それもだけど後は忠告や助言の無視ってのもあるけど、キョウスケ君なら心配ないわね」


「ありがとうございます」


 ビオラさんに付き合った事でタロットの意味も分かるようになったなあとしみじみ思う俺であった。このように皆とは良好な関係を築けている。元の世界では自分の出生を言っただけで敬遠されることが常だったので別の意味で過ごし易さを感じる。と言うのもあの後の話合いである。






「……成る程、だから強い事には自覚はあると」


「はい」


 俺のステータスを確認した後のこと。ライミィとオリビアさん、それと集落の半数のラミアの皆さんに自分の事を説明した後の事。

 いまいち状況が読めない俺にオリビアさんは1つずつ説明してくれることに


「まず1つ目としてはレベルの高さね、58というのは驚きました」


「そんなに珍しいんですか?」


「まずレベル50以上というのが滅多にいないわ。かつてこの世界に現れた邪神を討伐したと伝えられている勇者のパーティですら平均52、勇者は54と伝わってるわ」


 ああ、成る程。要は伝説の勇者よりも強い可能性があるのか俺。あの神様色付け過ぎだろ。


 ……しかし実際はこの世界に適応するよう反映したらこんなぶっ壊れたのは神だけの秘密である。


「オリビア様。確か求道者って」


「ええ、格闘系のジョブで一番高位のジョブよ」


「そうなんですね、ならまだなっているのが他にも居そうな」


「いないわ」


「え?」


「今はいないわ。求道者とは強いだけではいけないの。強い信念と進むべき道をしっかりと見据えある種の境地に立たないとと言われているわ」


「そのオリビアさんの口振りだと」


「ええ、この何年もいたと言う話は聞いていないわ」


 どうやら俺はかなり珍しいジョブになっている様だ。なんでそれにしたあの神様。


「お母さん、それってキョウスケの言ってた任侠っての関係あるかな?」


「関係あるでしょうね」


 任侠としての生き方か、まだじいちゃん見たいに出来てるか分からないけどな。

……それを含めて求道者なのか


「でもキョウスケ。固有アビリティこの青い瞳の悪魔ってなあに?」


「勝手に付けられたあだ名。喧嘩でボコボコにした奴らみんなに言われたんだよ。これも反映されたのか?」


「効果がこれなに、『戦闘時相手の数が多い程戦闘能力上昇』って」


「まあ、基本的に喧嘩は1人でやることがもっぱらだったからなぁ。1対50ってのもあったし」


 あったな、カツアゲとか恐喝で(いさ)めたり仲裁したりした時に因縁付けられて手上げられたからぶっ飛ばしたら今度は仲間引き連れて来てからの乱闘。まあ売られた喧嘩は全部買って全部勝ったけど


「キョウスケ君って本当に人間?」


「安心して下さい人間です」


「それにこの揺るぎない信念ってアビリティの効力が…」


「洗脳催眠呪いを始めとする精神異常の完全耐性って…」


「これ強過ぎよ」


 本当に色付けてくれたなあの神様。これ、俺って友達が言ってたふうに言うとチートキャラと言う奴じゃないのか?

そんなことを考えていたら


「でも、そんなのいいじゃん。キョウスケはキョウスケだし」


と言い、ライミィが俺にガバッと抱き付いてきた。


「うぉ!?」


「ライミィ?」


「いくら強くても凄くてもキョウスケなんでしょ?ならいいじゃない」


 そう笑いながらぎゅうと抱き絞めるのに力を入れるライミィ。俺の事をちゃんと見てくれるのはありがたい、そんなの数える位しかいなかったと感慨にふけるところなんだろうけど


「ラ、ライミィ!そんなくっつくな、当たってる!」


 ラミアとはいえ普通に服着てたから気が付かなかったけどライミィ着痩せするタイプだったみたいで結構デカイぞ!女の子に抱きつかれるということが初めてだった俺は今かなり照れてテンパってる。それを見てか


「ウフフ、照れてる~カワイイ~」

「この子よく見たらカワイイわよね」

「無表情と言うかぶっきらぼうなのね~カワイイけど」

「むしろ色々ぶきっちょよね、カワイイけど」


「リリスさんキキョウさんメリアさんアヤメさんカワイイカワイイ連呼しないで下さい…」


 こっぱずかしい!ラミアと言っても皆さんモデル級に顔整って綺麗で美人のお姉さん達にカワイイカワイイ連呼されたら恥ずいわ!ライミィも抱きつくの止めてくれないし、もう面倒だからそのまま話を進める事にしよう


「このスキルポイントってなんですか?」


 とてつもなくあるポイントに疑問がありオリビアさんに質問する。


「名前の通り技術や技を習得するためのポイントよ。レベルが上がる度にそのレベル分上がるのだけど」


 どうやら1レベルから始まる為上がる度にそのレベル分足されている様だ。にしても1711ってどうなんだ?有りすぎだろう


「キョウスケ、どうせなら割り振ってみたらー?スキルツリー開こー?」


「だな、取り敢えず見てみるか」


 いまだ抱き付いているライミィに促されて俺はスキルツリーを開く。


「いろいろあるな。うーん」


 色々割り振る事にした。技とか有るがそんなものには目もくれず俺は今後必要と思われる言語能力や文献能力を取得し後は適度に10ずつ割り振りをした。


「ちょっとキョウスケ君!何に振ったの!?」


 オリビアさんから待ったが掛かり手を止める。割り振ったのをライミィが読み上げた。


「えっと、探索スキル、探知スキル、気配察知スキル、危機感知スキル、警戒スキルにそこから生えた隠密スキルと鑑定スキル、全部10にしてたからまだ110位しかキョウスケ使ってないよ。そもそもキョウスケのスキルツリー見てると家事スキルは料理以外7位あるし、料理ですら4あるよ。反射神経スキルは10、身体能力系も大体7だし軽業師スキルも8ある」


「え?魔法とかは?」


「いえ、ここでお世話になるなら狩りの手伝いもするだろうし、こういうスキルが役立てると思いますから、それにこれからのことも考えてもこっちの技とかで大量に使うよりいいだろうと」


「この子良い子だ…」


 リンドウさんあたりから聞こえた。これから世界を回るのならまず必要だろうと考えて割り振った。それに実力があるからこそ斥候(せっこう)の能力を持つべきだと考えての割り振りだ。


「魔法は取らないの?キョウスケ君」


「取らないのと言うかそもそも俺って魔法使えるんですか?」


 ありふれた疑問だった。魔法という概念がない世界の人間が使えるのだろうか?


「大丈夫よ。ざっくり説明すると魔法は媒体があれば使えるわ。キョウスケの場合『賢者の懐中時計』があるじゃない?あれを媒体にして使えば問題ないわ」


と、橙色の髪のラミア、マリーさんが教えてくれた。成る程、要は媒体を介して行使するのか。


「どんなのがあるんだ?」


 ブンとスキルツリーを確認すると、属性魔法だの、補助魔法だの色々あった。すると俺は


「これにしよう」


と、目についた魔法に5程割り振った。


「あら?何にしたの?」


「生活魔法だって」


「生活魔法!?」


 ライミィ以外が驚いて何でそれにしたのかを確認された。


「いや、スキル5のクリーニングって魔法、あれば直ぐに綺麗に出来るなぁと思って」


 うん、やっぱり清潔感って大切だよな。それに対象は自分だけでなく部屋から空間まで選べる為便利そうだなぁと思っただけである。と言うのも組の野郎連中は片付けが苦手な奴が多かったから良く俺が片付けをやっていたからである。後は追々慣れていこう焦りは良くない。それにさっきから気になっていたことがある


「そういえばさっきライミィのステータス見せて貰った時の人間化ってなんですか?」


「私達ラミアは『ラミアのアミュレット』と言うマジックアイテムがあれば人間に化けることが出来るのよ」


 そんなのもあるのか。確かに下半身は蛇だが上半身はまんま人間だ。特段鱗があるとか耳が尖ってるとかはないから確かに下半身だけ化けれれば人間になりすますことが出来ると


「もしかしてなりすましたりして人間の街とかにも行くんですか?」


「そうよ~、必要な物買い物しに行ったりね。だけど一番は情報が欲しいからね~」


「情報?」


「私達って、見栄えが良いのと物珍しさで狙われることがあるのよ。そういう事する怪しい人の情報を情報屋さんから買うのよ」


「成る程、虎穴に入らずんば虎児を得ずって事か」


 ライミィを助けた時もあいつら売り飛ばすとか言ってたからな、自分の身が危険に晒される分必要だろう。それは俺にも当てはまる


「キョウスケはどうするの?これから」


依然として解放してくれないライミィの質問を俺は


「取り敢えずこの世界の事を知らないとな。動くにしたって状況が分からないと動けない」


「じゃあじゃあこのまま此処に居てよ。私が教える!」


「ライミィはこのように言っていますがオリビアさんよろしいですか?」


「ええ、いいわよ」


即答だった。


「そんなあっさり決めて良いんですか?」


「ええ、それにライミィだけじゃ無くてみんなもキョウスケ君に興味津々よ」


「え?」


「ねぇライミィ。いい加減替わってよ」


「私もキョウスケ君ハグハグしたいわぁ」


「いーやー!キョウスケは私の!」


「ちょっと待て。いつ俺がライミィのになったんだ?」






 こんな感じでこの集落の方々に受け入れられて頂きこの世界の事や魔法の事など色々教わった。

 このノルン大陸は神聖王国オウレオールを始めとする大陸西方にある幾つもの人族の国家。それに対し大陸東方に存在する魔導師の王こと魔王と魔族達の国があり。南から東、海を渡りスレート諸島にエルフを始めとした亜人族や獣人族。北方にはドラゴンやドラゴンから人型に進化した竜人族などが存在する。


 ここは丁度人族国家と魔族国家の国境付近の未開の地らしくここにライミィ達が住んでいると言う。聞いた話だとラミアは魔力も高く人間化の能力もあることから度々人族魔族両陣営に目を付けられており、その為時には渡り鳥の様に移動し隠れ住むと言う。


……自分達の私利私欲の為に他人を食い物にする。人間だろうと魔族だろうと皆同じ事をしてるようだ。もし俺が人族国家に放り込まれていたらと考えると俺はライミィやオリビアさん達と出会えたのは幸運だったのかも知れない。

 まあ、旅先で蛇に出会うと良縁があると言うし、そういや元の世界の時一家で良くお参りに行った神社の神使って白蛇だったっけな。そんな事を思いつつ今は


「リリーさん静かに左方向にオックスがいます」


「さっすがキョウスケ」


「どう仕掛けようか?」


 今はリリーさんリリアンさんと狩りの真っ最中。俺は探索スキルを常時展開して獲物を探し、丁度オックスと言う牛の魔物を見つけた。この魔物は闘牛の様な風貌だが食用としても重宝されていて美味い。干し肉にするにも良くいれば狩りたい魔物だ。既に1頭狩り済み。


「どうする姉さん」


「ご飯中だから今だね」


「分かりました。俺がやります」


 俺は隠密スキルを展開して獲物に接近、息を潜め死角からまるで蛇の様に近付きそして、


「ッ!」


 一気に距離を詰めオックスの頭頂部に強烈な蹴りを入れ一撃で仕留めた。


「ひゅ~」


「流石キョウスケ~」


「うーん」


「どうしたの?」


「もっと鋭く打ち込めたなと思いまして」


「あれ以上?」


 そう言ったリリアンはオックスを見た。地面に頭がめり込む所か完璧に土の中に頭を突っ込んでいるオックス。呼吸も確認出来ない為完全に息絶えている。


「まだまだ学ぶ事が山積みですから、さあ戻りましょう」


「そうだね。私達はオックス2頭にノルラビットが6羽。上々よ」


「帰ろー」


 やることは山積みだ、だけど何かを学ぶのは大切だ。初心を忘れず謙虚にじっくりと行こう。






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