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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第3章 商人の国 ~遺跡を探検するピアニスト~
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45話 親子 再会した商人に感謝される響介

響介、覗き被害に遭っていた。




「「この度は、誠にありがとうございました!!」」


 響介達は戸惑っていた。それもそのはず朝の、賑やかになってきた朝市のど真ん中で、今目の前で2人の男から土下座をされていた。土下座をしていたのは


「私達のみならず娘も危うい所を助けて頂きなんとお礼申し上げたら…」

「妹を助けて頂きありがとうございます!」


「わ、わかりました。わかりましたから!」

「お二人共頭を上げてください!」


 慌てながら頭を上げてもらうように頼む響介とライミィ。3人に土下座している相手は5日前マルシャンに入る時にお世話になった行商人のヒューズ父改めてショーン・ヒューズとヒューズ息子改めてジョセフ・ヒューズ。その横で


「ちょっ、ちょっとパパ、ジョセフ兄」


 いきなりの事でおろおろとしていたのは奴隷商人に捕まっていた所を響介達に助けられたマリオン。なんでこうなっているのかと言うと10分前にばったりとマリオンに出会った時の事






「キョウスケさん!ライミィさーん!」


 朝市で賑わう商店街に良く通る声に気付く3人は朝食を朝市の屋台で食べようとした時に声をかけられた。ふりむくと


「マリオンさんおはようございます」


 一行を呼んでいたのは奴隷商人に捕まっていた行商人の女性マリオンだ。そしてマリオンの後ろには彼女に良く似た金髪の年配の女性を遅れて


「ちょっとマリオン急いで行かないで、もうあなたは落ち着きがないのだから」

「あっごめん母さん」


 てへへと笑うマリオンとやれやれと呆れる母さんと呼ばれた女性は3人に向き


「娘から伺っております母のカーラです。キョウスケさんとライミィさんですね。この度は娘を助けて頂きありがとうございました」


 深々と頭を下げて響介達にお礼を言った。


「カーラさん、頭を上げてください人として当然の事をしたまでですから」

「そうですよ~」


 朝が弱い為歩きながら寝そうになるライミィと、少し照れながらも対応に困ってしまう響介。二人は他人から感謝されたい為にやった訳ではないので取り敢えず頭を上げてもらおうとした。


「それにしても良かったですね。直ぐにご家族と再会出来て」


「はい、母が昨日からリュインで商売をしに来てくれて助かりました!」


「本当にこの子は心配ばかりかけて、みんな心配したのよ、いきなり冒険者ギルドから連絡があって驚いたわ」


 やれやれと呆れるカーラ。どうやらマリオンはこのようなトラブルを起こしているようだ。


「でも今回は腰抜かしたわ。奴隷商人に捕まっていたなんて耳を疑ったわよ」


「あはは、まさか私も仕入れ先で巻き込まれるなんて油断してた…」


「…はあ、お父さんも向かっているからしっかり叱られなさい」


「え゛っ、パパが来るの!?」


 その時だった。響介は後方から急速に何かが近付いて来ているのに気が付いた。


(ん?この声…)


「マァリィオォォォォォン!!!」


「パ、パパ!?」


「えっ?あの人って」


 眠気眼だったライミィも目が覚めた。それもそのはずマリオンに飛び付く様な勢いで抱き締めた男性は


「マリオォォォン!ケガはないか!?体は大丈夫か!?酷いことはされなかったか!?」


「パパ!だ、大丈夫だから!私は大丈夫だからぁ!だから離してぇ~、恥ずかしいよ~」


 顔を真っ赤にして悶えるマリオンにお構い無しにハグする男性に響介とライミィは呆然としてしまい


「お兄ちゃん、お姉ちゃん?」


 唯一状況を飲み込めないエリーが困惑していた。往来のど真ん中で娘に抱き締める夫を見かねたカーラが


「ほらショーン、この方達よ。マリオンを助けて頂いたのは」


 カーラの言葉にハッと我に帰るショーンと呼ばれた男性はババッと身だしなみを整えると響介達に頭を下げ


「この度はありがとうございました!私は家族で行商をしているシ」


 ここで頭を上げたショーンは響介達の顔を見て固まる。響介達もこの白髪混じりの短髪、口顎髭ダンディに見覚えがあった。


「やっぱりヒューズさんでしたか」

「ご無沙汰してます。ってかキョウスケ気付いてたの?」

「家族で行商人、ヒューズってまさかなって思った位だよ」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、知ってる人?」

「ああ、実はな…」


 響介とライミィがエリーに説明している前で未だ固まっている父を見て不思議に思うカーラとマリオンは


「あなた?」

「パパ、知ってるの?」


微動だにしない父に戸惑い始めていると


「父さん、先に行くなよー、ったくどうしたんだ…?」


「あっ、ジョセフ兄」


 マリオンの兄でジョセフが近付いて来たが響介達を視界に入りこちらも固まった。


「ジョセフ、この方達知り合い?マリオンを助けて下さったキョウスケさんとライミィさん」


 その瞬間、ショーンはジャンピング、ジョセフは全力疾走からのスライディングから


「「この度は、誠にありがとうございました!!」」


 往来のど真ん中でダイナミック土下座をかまし冒頭へと繋がるのだった。






 そして時を戻しなんとか響介達はヒューズ親子に土下座を解いてもらい近場の食堂へと入りマリオンとカーラに事情を説明した。


「成る程、つまり夫と子供達はキョウスケさん達に助けて頂いたと」


「はい、成り行きで…」


 この場を取り仕切るカーラの静かな圧に少し気圧されてしまう響介とライミィ、その横で何事もないようにちょこんと座るエリー。ちなみにここは例の食堂で奥の個室を借りておりマリオンがいるからかエリーはフードを外していた。


「いやぁ、まさかキョウスケさん達にまたお世話になるなんて!なぁジョセフ!」

「だな!人の縁なんてホント分かんないもんだな!なぁマリオン!」

「だ、だね!まさかパパ達もお世話になってたなんて」


「あ、な、た、た、ち?」


「「「はい! 」」」


 ピシャリと空気が変わる、どうやらノリと勢いでなんとかしようとしたショーン達だったが3人は表情を変えず静かに聞いていたカーラに冷や汗をかいている様子。見ている響介とライミィも緊張してきた。そしてカーラから


「キョウスケさん、ライミィさん」


「「は、はい!」」


 して緊張してしまう。静かな声で呼ばれ尚更緊張感が増した


「この度はありがとうございました。こうして私達家族が誰一人欠けず今も居られるのはお二人のお陰です」


「い、いえそんな」

「こちらも事情がありましたから、頭を上げてください」


「ありがとうございます。この三人には私から『キツく』言っときますので」


 この言葉を聞いた三人はさっきより冷や汗の量が増えていたが


「あの、カーラさん程々でいいと思いますよ」


 ショーン達三人が少し可哀想に思いカーラに説得を試みる響介、ちなみにライミィは母のオリビアと重なる所があるのか緊張しっぱなしである。


「他所様のご家庭事情なので口を挟むのは筋違いなのは重々承知ですが、ご主人やお子さん達がご無事でしたからそれで手合いで…」


「キョウスケさん」


「は、はい!」


「貴方の仰りたいことはわかります。ですが家族だからと言っても良い事と悪い事があります」


「仰る通りです…」


 響介も萎縮してしまう。

 生意気な同年代の奴やクソみたいな輩相手なら腐る程相手をしてきたが、この様な家族を本当に心配して怒っている『母親』という物に対してどうしていいか分からなかった。しかしそんな響介を見かねたカーラは少し表情を和らげ


「でも、キョウスケさんに免じて今回『だけ』は多目に見ましょう」


 カーラの言葉を聞いて安堵するショーン達とホッとする響介とライミィ。


「ありがとうございますキョウスケさん!」

「「本当にありがとうございます!」」


「全く、調子が良いのだから」


 少し呆れながらも穏やかに笑うカーラにショーンはいい笑顔になり


「そういえば皆さんお食事はまだでしたね?ここは私達がご馳走しましょう!さあさあ好きなものを頼んでください!」


「うふふ、もう本当に調子がいいんだから」


 仲良く笑い合うヒューズ一家を見て和んでしまう3人。そして実際の親子を知らない響介は少し羨ましそうに見ていた。





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