40話 先輩へ イキッテると締めますよ?
3人、セフィロトと接触しご飯を食べる。
ボリューム満点のランチと情報収集も終わりギルドへ入ろうとする3人、すると
「皆さーん!」
後ろから声をかけられた。3人は振り向くとそこにいたのは
「あっ、メアリーさん!」
あの時助けたアルスの貴族令嬢メアリーだ。後ろには馬車が控えていて御者台にはあの時助けて高速馬車の御者をしてくれた青年マルコフが3人に気付き会釈をしてくれた。
「アルスにお帰りになる目処がたったんですね」
「はい、両親が捜索願いを出してくれていたおかげで私とマルコフ、それにアルス国籍の方々は帰れる事になりましたわ。私達がこうして国に帰る事が出来るのも皆さんのお陰です。ありがとうございます」
メアリーは改めて響介達にお礼を言いすっと手を差し出してきた。響介から順に握手を交わし
「ではキョウスケさん、ライミィさん、エリーさんごきげんよう。このメアリー・シャルム・ランベールまたお会い出来る事を楽しみにしていますわ」
明るいブロンドの髪を優雅になびかせてメアリーは馬車に乗った事を確認したマルコフは馬車を出す。それを見送りながら
「ねぇキョウスケ」
「…どうした」
「メアリーさん、乗り込んで扉閉める時『メシッ』って聞こえたんだけど…」
「ああ、ばっちり聞こえた」
「エリーも聞こえた」
3人はただ馬車が脆いだけかと思っていたがメアリーと再会した時にその真実を知るのはまた後のお話。
馬車を見送り改めてギルドへ入ると今度は
「皆さーん!お待ちしてましたー!」
一行に声をかけたのは受付嬢のアラベルだ。彼女はブンブンと手を振り響介達を呼んでいる。
「アラベルさんこんにちは。午前中に終わった依頼の依頼書です」
響介はアラベルに依頼書の束を渡す。アラベルは依頼書に依頼主の完了サインを確認し
「いやぁ流石ですね!これなら冒険者ランクの昇格も認められますねギルドマスター!」
そう言うアラベルは後ろを振り向くとギルドマスターのアランがいた。
「そうさな、それで色々あるんだがまずレイドモンスターの買い取り値が決まった。ほい金貨5万枚」
「「「「「5万枚!?」」」」」
ギルド内にいた冒険者が受付机にドサッと置かれた金貨袋に驚愕するなか響介とライミィは
「まあ、そんくらいにはなるよね~」
「心臓部と頭部以外に外傷はないからな、ポトフ作るのに使ったのも心臓近くの赤身くらいだ」
冷静に分析していた。響介からすれば日本円換算5億なのだが冷静だったのはドラゴンの素材等の適正価格を事前にセフィロトに教えてもらったことで冷静にいられた。初めて聞いた時は流石の響介もリアクションが出来なく位絶句してしまいそれを見たライミィとエリーが心配した程だ。ちなみにエリーはお金の大きさがわからなく頭にはてなが浮かんでいるようで首を傾げている。しかしアランは
「まあ、素材としてもなかなかお目にかかれない『龍の天鱗』や『地龍の大牙』もあるんだが一番は『魔石』だな」
「「「魔石?」」」
「魔石ってのはレイドモンスターの一番の特徴で通常のモンスターが濃い魔素、要はマナだな。濃いマナを長時間受け続けるとレイドモンスターになるんだ。そして体内で魔力が溜まり魔石になる。モンスターによって個体差があるが特にドラゴンの魔石は稀少価値が高いんだ。しかも無傷のグランドドラゴンの魔石は前例がなかったから聞きつけた魔導師ギルドや国の研究会が名乗りを上げていくらでもいいから買い取るって言い出したお陰で値段交渉がすんなりいったんだよ」
金貨袋を懐中時計登録して閉まっている時にほくほく顔のアランに言われた。どうやら彼自身にも恩恵があったようで何よりだが触れないでおく。ここでアランがこんな話を
「それでギルド本部からなんだがお前達の功績から冒険者ランクをCランクからスタートにしろって言われてな、お前達は飛び級でCランク昇格が決まった」
これは嬉しい知らせだ。と言うのもダンジョンに入る事が出来るのがDランクから入ることが出来る為響介はコツコツこなすと平行してダンジョン対策の勉強、外に出て実際の魔物と戦闘系の依頼をと3人で話合って決めていたのでこれなら少し予定を繰り上げられると考えていた時
「おいおい、そんなの納得できねぇよギルマス!」
後ろから怒鳴り声を上げて5人程の冒険者がやって来た。声を上げたであろう戦斧を背に携えた男が
「昨日今日冒険者になったひよっこがふざけんじゃねぇ!」
そうだ!そうだ!と取り巻きの男達も響介達に対して罵詈雑言を吐いていたが響介とライミィはどこ吹く風の如くスルーしアラベルに確認する
「アラベルさんこいつらは?」
「おい、クソガキその態度はなんだ?」
斧男の取り巻きの背の小さい男が響介に因縁をつける。が
「うっせぇぞ、あっちいってろ短足」
皆響介より身長が低かった事が災いし凄みを効かせても響介は怯むどころかこの返し、こんな奴は元の世界には掃いて捨てる程いてなんの怖さも感じないのと凄みなら現役任侠だった祖父のが一番ヤバかった。そのこともあり目の前の連中はただのチンピラ位にしか感じなかった。
「あんだと……っ!」
「ああ、悪い全員短足だったな。失礼した」
至るところからクスクスと笑われている男達、そこでずっとライミィの側で見ていたエリーがちょいちょいとライミィの服を引っ張った。
「どうしたのエリー?」
「お姉ちゃん、こいつらドブ臭い」
どっと笑いが起きた。響介とライミィはエリーと接してわかった事はエリーは意外と物怖じしないところだ。今のようになかなか辛辣であり感情表現が乏しいところもあるが今のエリーは眉間にシワを寄せてしかめっ面で男達を見ていた。一瞬にして笑い者にされた男達は顔を真っ赤してぶちギレ
「このガキ共が!このトニー様率いる銀翼に向かって舐めてんのかっ!?」
シルバーウィングってなんだよそのどこぞのスクーターみたいな名前はと胸中にしまう響介。俺以外だれも知らないしなと思いながら
「最初に舐めてかかってきたのはあんたらだろう?そもそもシルバーなんたらが何の用だ?」
「昨日今日冒険者になったひよっこが俺達と同じランクなのが気に入らねえんだよ!」
「こっちは言うなれば先輩ってやつだ」
「先輩は敬うもんだろぉ?」
どうやら自分達新人が気に入らないらしい。そしてこいつらは響介にとって『先輩』と呼ばれる人種のなかでも特に嫌いな分類が該当する連中だ。
「敬って欲しいならそれ相応の態度取ったら?」
響介が言う前に言うはライミィだ。響介同様にこのような輩は嫌いなライミィは
「そんなバカ丸出しなのに何を敬えですって?貴方のハゲ頭でも拝めばいいのかしら?」
「なにぃ……っ!」
「何?」
あの男共と丁度後ろにいた他の冒険者達が一斉に怯む。どうやらライミィが睨みを効かせたようで怯んだようだ。
ラミアの睨みは言うなれば冷たい威圧だ。まるで首筋に這いよられ目の前で無言の威嚇されているような不気味さと悪寒を感じたのだろう。関係の無い冒険者達はいいとばっちりである。このまま終われば良かったのだが
「お兄ちゃんお姉ちゃん、早く行こ?こいつらドブ臭いから嫌」
エリーが混ぜっ返してしまったのだ。匂いで人の善し悪しが判断出来るエリーにとって目の前の連中から滲み出ている悪臭は耐え難かったようでライミィの服をちょいちょいと引っ張っていた。その言葉に連中の一人が逆上し
「ガキがうるせえぇんだよ!!」
エリーに向かって拳を振り上げようとした時だった
「先輩」
いつの間にか目の前にいた響介が拳を受け止めており
「イキッテると締めますよ?」
と笑顔で言って男の手首を握り潰し文字通り粉砕。男の絶叫がギルド内に響くなか響介はアランに
「アランさん、どこかで戦えるところないですか?」
「裏手に訓練場があるからそこ使え」
「わかりました」
響介の不気味な程の冷静さに戸惑いを覚えるアラン、しんと静まりかえり響介が出口へ行くとふと足を止め銀翼の連中に指をちょいちょいと
「先輩方、表出ろ」
涼しい顔していい笑顔で笑っていたがライミィとエリーはその意味がしっかりと分かった。
「お姉ちゃん」
「あーあ、キョウスケまた目が笑ってないよ」