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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第3章 商人の国 ~遺跡を探検するピアニスト~
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39話 接触2 定食屋へ

3人、ジュリア達インパルスに警告する。




 初めての依頼が終わった次の日の3人は


「おばさん、猫ちゃんいたよー」


 逃げた飼い猫の捜索をし


「クリーニングをかけましょう、シスター掃除終わりました」


 町外れの古ぼけた教会の掃除をし


「ライブラ。この人は『結核』って出たよー」


「アースヒーリング」

「治癒功、あとは安静に休むことをお薦めします」


 人手の足りていない病院を手伝い多くの病人、負傷者を治し


「こちらが品物です。サインお願いします」


 荷物運び等々の依頼を魔法や自身の能力を駆使しサクサクこなし午前中だけで10件程の依頼をこなした。報酬も合わせても銀貨5枚程だが皆に感謝された。


「冒険者のお仕事って色々あるんだね~」


「ここまでくると何でも屋みたいだがな、まあ需要があるからいいんだろ」


 街で安くて大盛が評判の食堂で注文した料理を呑気に待ちながら話すライミィに横でちょこんと座って待っているエリーにテーブルの対面に座る響介。食堂でも奥にある座敷の個室に案内されていて3人は寛いでいた。


「でも、なんでエリー達、奥に案内されたの?ここ来るときの建物の絵あったけど、関係ある?」


 エリーが疑問に思ったようで首を傾げている。当然だろう、いや、ここであれに疑問を持ってくれた事を考えるとやはりエリーは頭が良いことが改めてわかった響介。


「ここはね、ちょっと変わっているんだよエリー。それと」


「?」


「ここでの話は俺達以外には誰にもしちゃいけないよ」


 響介は口に指を立ててシーッとジェスチャーをした。


「わかった」


 こくりと頷くエリーに「良い子良い子」と言い撫でるライミィ、そうしてるとノックがし一人の女性店員が入って来た。耳が長いことからどうやらエルフのようだ


「失礼しますお客様。…Pの塔」


「Qの星」


「私達『セフィロト』のご利用ありがとうございます。おや?ダークエルフのお嬢さんもご一緒とは」


「!?」


 咄嗟にライミィの後ろに隠れたエリー、顔を見られないようにいつもフードを深く被っているはずが一回で看破した店員にエリーは警戒する。それを見たライミィと店員のエルフは慌てて


「だいじょぶだよエリー。この人はだいじょぶ」


「大変失礼致しましたお嬢さん。誤解させてしまうような発言をして申し訳ございません」


 頭を下げて謝罪する。それを見たエリーは恐る恐るながらも警戒を解いていった。


「なんで?」


「エルフがみんなダークエルフに差別意識を持っている訳ではございませんよ。私個人は肌の色が違うだけで貴女を蔑むつもりは毛頭ありません。それにご安心下さい。この部屋には強力な防音魔法が施されています。その為外部にこの会話は聞こえておりません」


 優しくエリーに接するエルフの女性、その女性の対応を見た響介は懐中時計から金貨袋を取り出し


「ありがとう。これは俺の気持ちで、後この間の気持ちの追加だ」


 そう言って響介は金貨を300枚と298枚に分けてエルフの女性に渡した。


「流石はキョウスケ様。情報の大切さを良くお分かりで」


 うふふと笑いエルフの店員は軽く指を振ると金貨を消してみせた。恐らく空間魔法だろうと思っているとライミィが響介の服をグイグイと引っ張る。


「ちょっ、ちょっとキョウスケ!なんであんなにお金を」


「落ち着いてくれライミィ。これはな」

「情報料の目安でございます。ライミィ様」


「目安?」


「はい、かなりはしょりますが要はライミィ様とエリー様の情報を私達『セフィロト』から他の方が買う時の目安になります。特にキョウスケ様達の情報の価値はかなり上がっておりキョウスケ様はライミィ様とエリー様の情報の値段を吊り上げたのでございます」


「吊り上げる?」


「ええ、今のキョウスケ様とのやり取りでライミィ様とエリー様に関する情報料はそれぞれ金貨1000枚でも足りないでしょう」


「「えっ!?」」


「二人の安全が金である程度保障出来るなら安いもんだからな。だが店員さん今は聞きたい事がある」


「何でしょうか?」


「人を探している」


「どのような方でしょうか」


「エリーの母親だ。種族はエルフ、特徴は白髪に緋色の瞳で肌色は白、で良かったか?」


ここまで言うと響介はエリーに話しを振る


「あと、耳に神話の本みたいな太陽の飾り着けてて、オレンジ色のキラキラした、宝石のペンダント持ってた」


ここまで話を聞いたセフィロトメンバーの店員はエリーを見て暫し思案し口を開く


「…金貨100枚」


「払おう」


 響介は即答しテーブルに金貨100枚置き店員は確認すると


「私共で把握している情報では、特徴だけで申しますとエリー様のお母様は『ハイエルフ』でしょう」


「ハイエルフ?」


「エルフの中に高い魔力を持って産まれるエルフの事でございます。種族的特徴が銀に近い白髪で色白な方が多い為ハイエルフの可能性が高いと思われます。そして」


「?」


「エリー様が申し上げた耳飾り、エルフ国で該当するものはリイニッジ王家に伝わる『地母神の耳飾り』だと思われます」


「……!?」

「王家って…!?」


「私の推測になりますがエリー様はリイニッジ家の血筋の出の可能性があります。エリー様、お母様のお名前は?」


「アリス」


「その名前の者はエルフ国リイニッジ家にいるのか?」


「はい、アリスの名で該当するのは11年前に失踪し行方不明のハイエルフ、アリス・リオネルド・リイニッジ王女ただ一人になります」


「失踪?行方不明?」


「まさかとは思うが失踪理由は…」


「キョウスケ様の想像通りだと思います。私も当時エルフ国におりましたからエリー様の存在で当時の王家の噂も合点がいきました」


「当時の噂?」


「当時アリス様の子供は死産と言われておりました。しかし産まれた子供は実はダークエルフ故存在を消されたのではないかというまことしやかな噂が出回りアリス様の失踪で有耶無耶になりました」


「なにそれ……!」


 エルフにとってダークエルフは『忌子(いみこ)』。そうなると当然王家はエリーの事をなかった事にしたいはずだ。しかしそれが嫌で抵抗した母親のアリスはエリーを失うくらいならエリーと共に全てを捨てて逃げたと考えるとしっくりくる。そして響介とライミィは腹の底に行き場のない怒りを感じたと同時にエリーとその母親にひどく同情した。それを察した空気の読める店員は話題を変える


「そのオレンジ色の宝石というのは恐らく『サンクォーツ』でしょう」


「サンクォーツ?」


「エルフ国で発掘される鉱石で魔力を蓄えることが出来る宝石です。蓄えた分魔力濃度が濃い程緋色に光輝くと言われ恐らくその状態ですとかなりの魔力を蓄えてたのでしょう」


「成る程…」


 エリーの母親の事はこれ以上情報は出て来ないだろう。だが、これは響介の想像の話だが恐らくエリーの母親のアリスも『空間魔法』を持っているだろうと考えている。ライミィから聞いた話でレベルの高い魔法使いの魔法は子供に遺伝する事があるらしい。だからエリーはスキルを割り振ってない状態にも関わらず4種類の魔法を扱える理由だ。と言う事は恐らくアリス自体も相当の使い手と推測出来る。ただ


(王家か…)


 どうもキナ臭さを感じる。しかしここで言っても意味はないと響介は判断し


「大体わかった。ありがとうございます」


「いえいえこちらも商売になりますから、まだございますか?」


「いえ、また料理を下げて頂く時にお願いします」


「畏まりました」


 エルフの店員が部屋を出るときすかさずライミィが「あ、お小皿とお茶碗とお箸一人分多くお願いします」と付けたし店員が部屋を完全に出たのを確認して


「王家って何?」


 首を傾げるエリーは自分の事とはいえ全くピンと来ていない様子でどう説明しようかと響介とライミィは若干困ってしまう。


「ええとなエリー」

「なんて言えばいいかな?」


「?」


 二人が困っている時にノックがし店員が料理を持って来てくれた。このタイミングに二人は若干安堵し


「お待たせしました。牛焼鳥(オックスバード)定食良く焼き特盛二人前です」


 と、特盛ご飯とボリューム満点のステーキとチキンステーキが乗った大皿がやって来た。定食が来るや否や


「お小皿ありがとうございまーす」


 響介とライミィはお小皿やお茶碗を受け取ると自分たちのところからご飯やステーキを分けてエリーの目の前に持ってきて


「ではご一緒に」

「「「頂きます」」」


 こうして3人は仲良く食事を楽しみ食事後もエルフの店員から情報を買うのだった。ちなみにこれは食べている最中の事


「ところで接触する符丁って何だったの?」


「符丁は店に入って『牛焼鳥定食特盛』って言って店員が行く前に『良く焼きで』って言うと『時間が掛かるから奥の座敷にご案内します』と言われるから座敷で待って店員が来たら合言葉」


「お兄ちゃん、それって」


「来る度にこれ食わなきゃならない」


「でもこれくらい私とキョウスケはだいじょぶだよ。私もだけどラミアはみんな大食いだしキョウスケめっちゃ食べるし」


「出来れば夜にこの量は食いたくねぇぞ、太る」


「私はだいじょぶ!ラミアはみんな胸に栄養行くから」


 食べながらどこかこの世の理不尽さというものを初めて感じたエリーだった。






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