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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第3章 商人の国 ~遺跡を探検するピアニスト~
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38話 訓告 インパルスに対する予防線

3人、初めての依頼をこなす。




「私達のパーティーに入りなさい!」


 開口一番、ジュリアが自分たちのパーティーに勧誘をしてきた。その表情は自信で満ちており、長い赤い髪をなびかせそれを表したかのような赤みかかった瞳はキラキラと輝き、断られるとは微塵にも思っていないのだろう。響介達はというと


「エリー、晩御飯何食べたい?」


「えっと、お肉がいい」


「ならギルドへ報告が終わったら商店街へ寄ろう。肉屋の品揃えも良かったから色々あるからエリーが食べたいの買おうな」


「うん!」


 完っ壁なスルーを決めジュリア達の横を素通りしリュインに向かっていた。

その手を繋いで帰る姿と会話内容はお出かけ帰りの親子の如く


「待ちなさぁぁぁあーーい!!」


 まさかのスルー対応に怒り心頭のジュリアは顔を髪の毛と同じくらい赤くした。その様子を察した響介はうんざりしながらいい加減面倒になり溜息を着きながら半ば振り向き


「お断りします。それにアランさんには何処にも所属はしない、俺達は俺達で冒険者をすることを伝えた筈ですがまだ聞いていませんか?」


「聞いたわよ!でも納得出来ないわ!」


「何故?」


「当たり前じゃない!?聞いたわよマリオンから!貴方と貴女!グランドドラゴンを倒したそうじゃない!?」


 まさかマリオンと繋がっていたかとふと思う響介とライミィ。まあ本当のことなので否定する気はない。エリーはささっとライミィの後ろに隠れた。


「ええ、そうですね。それが?」


「隠す気はないみたいだな」


 言うは鎧の大男ブライアンだ。何処か意外そうな顔をしていた。


「隠す必要性が見当たらないね」


 響介とライミィにはとっては本当の事だから隠す必要が全く無い。エリーの素性に比べれば月とすっぽん位明白なのだ。


「そんなに強いなら何故こんな新人冒険者がやるような依頼をしている?」


「「いや新人だから」」


 魔法使いのメンフィスの言葉を揃って白けた目で答える響介とライミィ、エリーは頷いている。


「そもそも、ギルド契約執行法では加入離脱の際は双方の合意が必要で強要、脅迫は禁止されている筈ですが?」


「それに明らかにランクの違う冒険者を勧誘することも禁止だよね?」


 ギルド契約執行法とは冒険者になるに至って義務とされている冒険者ギルドのルールである。

 と、言うのも強い冒険者が新人冒険者を勧誘しダンジョン等で囮にし見殺しにする、女性冒険者をダンジョンに誘い込み自力で逃げられなくして性的暴行をするなど非人道的な案件がいくつも発覚し多数の人族国家で問題となったからだ。それを受けて冒険者ギルドは多くの規則を作り冒険者育成と独自の法整備に乗り出した。

 その一つと照らし合わせるとB級冒険者のインパルスがF級冒険者の響介達を無理に勧誘していることは問題行為なのである。


「申し訳ありませんが俺達は勧誘等のお誘いは全てお断りしておりこの事はアランさんも了承していますしなんら問題ないはずですが?」


「ええ、そうね何にも問題はないわね。だからはいそうですかって引き下がる訳ないでしょ!?」


「ダンジョン攻略を失敗したからですか?」


「……っ!わかってるなら私達のパーティーに入りなさい。さもなければ…!」


 そう言ったジュリアは腰のナイフを取り出そうとした。しかし響介は慌てることなく口を開く


「偉そうな事言う訳じゃないが言わせて貰う。だからといって俺達を引き込んで攻略出来たとしてもそれはあんたらの為にならない」


「はあ?なんでそんな事を」


「簡単だ。それで攻略して結果を残し名を残せたとしてもそれは一時的なもの。いざと言うときになったらあんたらは他人を頼る事しか出来なくなる。素手での喧嘩で負けそうになったら隠し持ってる刃物に頼るみたいにな。他の冒険者の奴らも同じだ」


「なっ……!」


 明らかに動揺したジュリアとそれはそうだと言いたげにはあと溜息を吐くブライアンとメンフィス、そこに今の今まで状況を黙って見ていたエルフの女性が口を開いた


「だから言ったじゃないですか~。ただ理由も無しに言った訳じゃないって~」


「ヴァレリー…」


 ヴァレリーと呼ばれた金髪碧眼の物腰柔らかそうなエルフの女性が間延びした喋り方でジュリアを宥めに入る


「それに~ブライアンさんも同じような事を言ってたじゃないですか~」


「うっ……」


 その一言にジュリアはばつが悪そうに顔を歪ませる。すると追い打ちが


「何度も言っているだろう。冒険者は実力主義だと、一時的なもので調子に乗っていると直ぐに足元をすくわれると、何度も教えたはずだ」


「冒険者に必要なのは一時的な結果ではなく継続して結果を残すことです。目標にたどり着いたからはい終わりではありません。大体ジュリアは…」


と魔法使いのメンフィスがジュリアにお説教を始めてしまい此方との話どころではなくなってしまう。一向に終わる気配がなくブライアンが


「すまなかった。ジュリアには俺達から言って聞かせておくから勘弁してもらえないか?」


「申し訳ございませんでした~」


 ヴァレリーと共に頭を下げて謝罪を響介達にした。しかし


「謝って済む問題と思ってるか?こっちは今の会話をサウンドセーバーで録音している。出るとこ出てもいいんだが?」


 予想外の言葉にジュリア達4人は衝撃を受けた。特にジュリアは顔を顔を青くしている


「だが、俺達は別にアランさんに提出するつもりはない。有望な冒険者が居なくなるのは冒険者ギルドとしても損失だからな」


 冒険者でもなんでも舐められたら終わり、それは任侠でも同じだ。厳しい実力主義の世界だからこそ使えるものは最大限利用することで生き残る事が出来る。


「…私達にどうしろと?」


「必要以上に俺達に関わらなければそれでいい。簡単だろ?」


「要は相互不干渉ということか?」


「察しがよくて助かる」


 響介にとって一番の目的はライミィとエリーの素性が発覚することを防ぐこと、味方は増やせるなら越したことはないが現状秘密を共有することが出来る者が好ましい。その点だと3人はともかく ジュリアは信用出来ない。響介自身の勘もそうだが一番はエリーの反応だ。

 エリーは匂いで人の善し悪しを判断していると言っていた。響介とライミィについてきたのも母親と同じような『優しい匂い』がしたかららしい。

匂いの判断基準の具体例は


『優しい匂い』は無条件で信用していい

『いい匂い』は信用していい、ただ様子を見る

『臭い』は信用しては駄目

『○○臭い』は敵


 ちなみにジュリアは『臭い』、マリオンやケイン、オットー、メアリー等あの馬車にいた人間達は『いい匂い』と言っていた。


「わかった。わかったけど信じていいの?」


「俺はこういう時の嘘は嫌いだ」


 そう言って響介達は立ち尽くすジュリア達と話を切り上げリュインへと戻っていった。






「戻って来たね~」

「ああ、さすがに騒いでもないな」


 響介達はギルドへ戻るとグランドドラゴンの処置が終わったようで来た時のような騒ぎはなく、治癒術士も管理の為一人残っている位なもの、響介達はギルドへと入るとさすがに注目はされるが誰も勧誘には来なかった。もしかしたら受けた依頼の事が気になっているのかも知れない。響介は察したのか受付に行き、袋を机に置く、周りの冒険者達は皆何事ないようなフリをして聞き耳をたてる。そして


「薬草採取終わりました」


 冒険者達は一斉に、盛大にずっこけた。壮大な肩透かしをくらった冒険者一同は色んな所から笑い声が上がる


「「「?」」」






「なんでみんなずっこけたのかな?」


「さあな」


 報告終わってここは商店街、夜ご飯の買い出しだ。夕暮れ時の商店街は沢山の人で賑わっており3人がいるのは肉屋


「兄ちゃんらお待ちどう!ボアの肉1キロにボアとオックスの合挽き肉1キロ!」


「ありがとうございます」


 肉を買っていた。ボアとは響介の元の世界でいう猪に当たりこの世界では一般的な肉で豚肉感覚で食べれる肉で、オックスは言わずもがな隠れ集落で良く食べていた肉だ。


「今日は頑張ったからハンバーグにしようねー」

「わーい」


 ライミィは晩御飯の献立を考えていたようで1品はハンバーグが決まったようだ


「あと何にしよっか?」


 この後もあれ食べたいだのこれ食べたいと言い合いながら冒険者として初めての依頼をこなし宿へと向かう3人だった。




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