4話 集落で 初めての演奏
響介。招かれる
やっとピアノに日の目が……
「ライミィ達って何処に住んでるんだ?」
尻尾で引っ張られるのを解いてもらいライミィと並んで歩く響介。するとライミィは
「彼処だよ!」
と、指を指したのは上にある穴だった。
……大体3階位の位置だろうか?
「ライミィはいつもどうやって入ってるんだ?」
「私達は木登り得意だから大丈夫だよ。キョウスケは?」
「大丈夫。俺も得意だから」
そう言うと響介は地面を蹴って木を登り始めた。木を蹴り上がり、手頃な所に掴まったと思いきやまた蹴り登りとまるで軽業師の様に木を登りあっという間にライミィ達の居住の入り口に到着した。
「すごーい!」
「あらあら、確かに見事ねぇ」
ライミィと遅れてやって来たオリビア、それを見ていたラミア達が口々に感想を言っている。
「昔から慣れてまして」
中学時代にパルクールにドハマリしてた事がここで役に立つとは思わなかったなぁとしみじみ感じる響介。そして時期にライミィ達も登って来て中へ案内される。
「へえ、中はこうなってるのか」
中はまるでお高いマンションのような広さで明るかった。広めのリビングに個々の部屋は勿論各種必要な設備が整っている。
「これも魔法の応用よ、考えて使えばこれくらい簡単に出来るわ」
魔法。
やっぱりあるのかと感心する響介。やっと別の世界にやって来た事を実感した。
本来ならラミアを見た時点で感じるべきだがあのような暴漢共は元の世界にもいたためそんな気分は吹っ飛んでいた。
「直ぐにお夕飯にしますから2人は寛いで待っててね~」
「はーい」
オリビアはキッチンへ向かって行きライミィと2人っきりになる。
その間ライミィからは何で彼処にいたのか?何でそんなに強いのかとか色々質問されたのだがそのうちにライミィからこんな質問が
「キョウスケ、ぴあにすとっているなあに?」
「ピアノっていう楽器を演奏する人のことだよ」
「ピアノ?」
ライミィは頭に?マークを浮かべんかの如くだった。馴染みがないのかなと思いつつせっかくだから
「じゃあ、実際に演奏してみようか。広めの場所借りてもいい?」
「いいよー」
そう言って響介はライミィに案内してもらい開けた所に連れて行ってもらった。神様に実演してもらってピアノの大きさが分かっているので出来るだけ広い所が都合が良いからだ。着くと懐中時計を取り出し神様がやった様にピアノを出した。
「すごーい!今のどうやったの!?」
はしゃぐライミィを尻目に席に着く響介。
響介は曲を決めた途端頭の中にメロディーが浮かんだ。成る程、神様が言ってたことはこういう事かと響介は感じた。選んだ曲は自分がピアノに興味を持ち動画サイトでも幾度となく、関連CDを買い漁って色々なバージョンも聴いた曲だ。そして響介の演奏が始まる。
その曲は終始ピアノを高速で弾くハイテンポな曲だが響介は高い完成度で弾きこなした。そのうちに響介自体もテンションが上がり夢中になって弾いていた。
「わぁ…!」
響介のピアノを弾く姿に、奏でられる音にライミィは釘付けになった。ピアノを弾く響介の姿は絵になりまるで絵画を見ている様な感覚になり
「まぁ…!」
お夕飯準備中だったオリビアも聞き入ってしまう。その中曲は最後のサビに入る前のCメロに入りハイテンポに拍車が掛かるかのような高速ピアノので最後のサビに入り一気に駆け抜ける様に弾き続けた。最後は名残惜しそうにスローテンポで締めた。すると
(拍手?あれ?聞いてたのライミィだけじゃ……?)
拍手が聞こえる。1つや2つじゃないもっと多くの。弾き終えた響介が改めて見てみるとライミィとオリビア、そして入り口がある方には多くのラミア達が拍手をしていた。
「え……?皆さん?」
「キョウスケ君。言う必要ないから言って無いのだけれどみんなこの大木で暮らしてるの、だから音とかって結構響くのよ」
「と言うことは?」
「みんな、演奏を聞きつけて来たのよ?」
最初に響介達に出会った茶髪のラミアのお姉さんも来ており笑いながら話していた。
「な、成る程…」
皆からの喝采を受ける中、オリビアは響介とライミィに対して質問をされた。
「所でどうしてここにピアノがあるのかしら?」
「キョウスケが持ってた時計からピアノが出てきたの!」
「時計?キョウスケ君その時計見せて頂けないかしら?」
「どうぞ、これになります」
響介から懐中時計を受け取ったオリビアは時計を調べる。そして時計を見るオリビアの顔が徐々に厳しい顔になっていき
「キョウスケ君。この時計はどこで手に入れたの?」
「これですか?これは気が付いたら持っていました」
うん、嘘は言っていない。と言うかそれしか言い様がない響介。
「本当に?」
「はい」
「お母さん、どうしたの?」
「ライミィ、キョウスケ君も聞いて。この時計は…」
改めてオリビアからこの懐中時計の説明をされた。その全貌が
賢者の懐中時計
アイテムランク S
魔法媒体可
リターン処理済み
任意で登録した物を5つまで専用の空間に保管出来る懐中時計。なお登録、再登録、登録解除は持ち主であれば容易である。
と言うものだった。更に言うにはランクSのアイテムはかなりのレア物であり、さらには所有者から一定の距離が空いた時や盗難にあった時用なのか、登録した者の元に戻る『リターン』という魔法がかけられていると言う。
「何かすごいんだね~」
「呑気に言ってる場合じゃないのよライミィ」
「すごいってものじゃないわよ」
ちゃんと理解しているのか分からないライミィに対して突っ込むラミア達。それからオリビアは
「キョウスケ君。貴方のステータスボードを見せてくれないかしら?」
「ステータスボード?」
聞き慣れない言葉だが、要は自分の状態を目で見える形で確認出来ると言うことなのか?
「うーん、口で言うよりこれは見てもらった方が早いわね。ライミィ、貴女の見せて上げなさい」
「うん!キョウスケこうするんだよ」
ライミィはパッと手を開くとブンと音を立ててボードが出てきた。そこには情報が記されており
ライミィ
16歳
レベル 7
ジョブ 魔法射手
余りスキルポイント 5
固有アビリティ
人間化
蛇の感性
暗視能力
成る程。
このように自分の情報を見れるのはちゃんと自分を理解することでも便利だなと響介は感心し
「こうすればいいのか?」
響介もライミィと同じようにステータスボードを出してみる。ブンと音を立てて響介の情報が出てきたのだが
「え?」
オリビアは呆気に取られたように呆けてしまい
「は?」
「うそ…」
「本当に?」
他のラミア達もざわざわとざわめき始めていた。そんな事を知らない響介とライミィは
「求道者ってなんだ?」
「キョウスケすごーい!」
その響介の出てきた情報が
鴻上響介
17歳
レベル 58
ジョブ 求道者
余りスキルポイント 1711
固有アビリティ
揺るぎない信念
青い瞳の悪魔
天性のピアニスト
青い瞳の悪魔ってこれ、1対50の喧嘩した時に終わった後に言われてたやつだな。無傷かつ息切れ1つせず相手共をボコボコにした翌日に言われて困った記憶がある。
ってかスキルポイント余りすぎじゃねぇか?と考えながら眺めていると
「キョウスケ君」
呼ばれて振り返るとオリビアは真剣な顔で響介を見ており周りのラミア達も緊張していた。
「教えてくれないかしら?貴方は誰で何処から来たのか」
ここまでで流石に自分でも分かる。だから響介は
「分かりました。信じて頂けるかは分かりませんがお話します」
そうして響介は自分は元の世界で事故に巻き込まれ死の直前だった事、神様に拾われた事、ピアニストの才能もその懐中時計もその神様に貰った事、転移されて気が付いたらあの森の中だった事など全て話したのだった。