37話 クエスト 最初の依頼
3人、ステータスを知る。
「お兄ちゃんお姉ちゃん、いっぱい採れたよ」
そう言ってエリーは両手いっぱいに摘んできた薬草を2人に見せる。
「良く頑張ったなエリー」
「さっすがエリー!いい子いい子」
そんな可愛い妹分をこれでもかと言わんばかり褒める響介お兄ちゃんとライミィお姉ちゃん。薬草学のスキルを持っている2人は摘んできた薬草を確認するとどれも良く育ったものばかりで納品するのに申し分ない。2人の側にも摘まれた薬草があった。
3人がいるのはリュインから徒歩1時間程のところにある森で薬草採取の仕事をしている。
何故この仕事を受けているのかと言うのも「まず選り好みせず一つ一つやってみよう」というもの、せっかくだからいろんな仕事を受けてみようと昨晩宿で話し合い決めたのだ。
「このくらいで大丈夫かな?」
「大丈夫だライミィ。エリーの分で規定量分はあるからこれで依頼終了だ」
摘んできた薬草を一纏めにして袋に入れる響介。辺りに魔物もいない事を確認しリュインへと3人仲良く帰路へ着く。
「でもまたギルド行くのかぁ……」
「ああ、だがパーティーは組まず3人でやることはアランさんには昨日のうちに伝えているから上手くやってくれるだろ」
「そうだといいね…」
はぁと溜息を付く2人。と言うのもあの後ステータススキャナでの測定をライミィとエリーも行っていた時の事。
「クリ坊、ディモルトよくやった…!」
奥でガッツポーズをするアラン。横にいて響介のステータスを聞いて呆然とするジュリア達とアラベル、そしてざわつき始めた冒険者達。何か嫌な予感がした響介は依頼掲示板に貼ってあった『薬草採取』の依頼書をひっぺがしすぐに受領。ついでにステータスの事も聞いているとライミィが
「キョウスケ終わったよー、私は生命力A、攻撃力B、防御力B、スピードS、知力A、魔力SS、魔力保有量Sだってー」
「お兄ちゃんお姉ちゃん、エリーも終わった。生命力D、攻撃力E、防御力D、スピードB、知力B、魔力S、魔力保有量Sって書いてある」
スキャナが終わり響介に教えていた。しかしこれが不味い事になるのはライミィとエリーは気が付かなかった。すると突然一人の冒険者が
「なあ!あんたらうちに入ってくれないか!?」
響介達に勧誘したのを切っ掛けに次々と
「抜け駆けなんてさせないわ!ねえあなた私達のとこ来ない!?」
「何言ってるE級冒険者共が!悪いことは言わねぇ、うちに入らないか?」
「黙ってろてめえら!なあ姉ちゃんうちこいよ」
「何言ってんのよ!?ねえお兄さん」
「じゃあかしぃ!うちなら3人全員歓迎するぜ!?」
勧誘の嵐を受ける事になってしまった。しかし
「申し訳ありませんが全て辞退させて頂きます!」
と、響介がライミィとエリーを担いで脱兎の如くギルドから逃げ出した。表のレイドモンスターを飛び越え昨日とまんま同じ方法でとんずらかました響介。ステータスの事を聞いた所向上系のスキルは反映されなく本当の素のステータスが測定される。それに7つの項目に1つでもAがあれば十分らしい。
ぶっちゃけ新人冒険者のステータスではなくS級冒険者でもいるかいないかのレベルだと言うことなのだ。年齢やレベルも関わってくるがそれでも3人は規格外らしい。
ちなみに響介をこの世界に送った神様が見て唖然としたのは適応するようにしなくてこのぶっ壊れステータスだったからである。
「お兄ちゃんって、何でも出来て何でも知ってる、何で?」
唐突なエリーからの質問、響介は
「うーん、俺の実家の家訓に文武両道って有ってな、それを忠実にやった結果だな」
響介はかつての生活を懐かしそうにエリーに答えた。
実は響介。性格も顔も良いのは勿論頭脳明晰スポーツ万能、おまけに実家が大地主で金持ちと天が二物も三物も与えたような人間なのだ。しかも当人は祖父と同じ任侠の道を進むに当たり「それでも足りない」と現状で満足せずに勉学を始め心身を鍛えまくった結果才能と努力が合わさり能力が突き抜けてしまった。極めつけは目の前で困っている人を助けたり、誰にでも穏やかで謙虚、自分に厳しく人に優しくを地で行く好青年。
しかし、その良さを実家の任侠一家で全部帳消しにしており、祖父の鴻上孝蔵も実家のせいで友達がいない、人となりを評価して貰えていない響介に対して内心申し訳なく思っていた。
だがこの世界に来て家柄というデメリットが無くなった響介はただのハイスペックで漢気があり優しいイケメンピアニスト。
初めてのまともな友達ライミィ(今は恋人)始めラミア達からの人気っぷりは勿論ニューポートでも慕われたのは義理人情を通す響介の人柄故である。
「文武両道?」
「要は良く勉強して良く運動しましょうって事だ」
「キョウスケは勉強出来るからね~集落の時もみんなに教わったらすぐに纏めて復習してたし、いっつも狩り参加してたし」
「お兄ちゃん。最初に出会ったの、ライミィお姉ちゃんと、お姉ちゃんのお母さん達だよね?」
「ああ、そうだな」
「恐くなかったの?」
「うーん、あん時はライミィ襲ってたバカ共締めた後だったし、ライミィとはちゃんと話出来たから気にしなかったな」
「あの時かぁ、嬉しかったなぁ女の子扱いしてくれて」
「そうなの?」
「うん、私も今はラミアのアミュレット使って人間になってるけどあの時は素の状態だったから、ラミアってすぐ化け物扱いされるから尚更、ね」
「そうなんだ」
ちょっと種族がらみのデリケートな話になりそうだったので響介が話を少し変える事に
「それよか朝ライミィもスキル割り振ってたな雷属性魔法覚えたのか?」
「うん!まだレベル1だけどね~」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ポイントいっぱいあるのに、使わないの?」
「うん、ちょっと気になることがあってねー」
「気になること?」
「うん。後で教えてあげるね?今は厄介な奴ら来たから」
「わかった」
そう話を切り上げたライミィはリュインの街がある方を見る。
「数は4」
「話声からしてさっきのジュリアとか言った奴らか」
街道の先にはジュリア達冒険者パーティー『インパルス』の4人が響介達を待ち構えていた。