36話 ギルドへ ステータスを知る
3人、買い物とギルドへ行く。
「買い物でどこ行くってなったら取り敢えずここだよな」
「どこ?」
「ピーター商会だよ」
中世ヨーロッパのような街並みを楽しそうに喋りながら歩き3人が来たのはマルシャン発祥のピーター商会だ。本国マルシャンは他国にある支店とは規模が違い本国では幅広く商売をしており日用品から衣服、冒険者装備などありとあらゆる物が揃っている。早速3人は衣服を買いに行くが
「キョウスケは待っててね」
こればっかりは仕方ないと響介は待ってる事に、女物の服は良く分からない為力になれない。その為響介は自分の予備の服類を買いながら待つこと30分
「キョウスケお待たせ、ほらエリー」
ライミィに連れられたエリーの格好は淡い灰色のブラウスと赤いキュロットスカートにレギンスとブーツ、治癒術士の深いフード付き白いローブを羽織り手袋と外から肌を隠すようにしている。中でもローブは防御魔法を付加した物を、ブーツには疲労回復の為の治癒魔法を付加した物だ。
「どう?」
深く被ったフード越しから上目遣いで響介に聞くエリー。響介はしゃがみエリーに目線を合わせて
「良く似合ってるよ。次はマジックバックや必要な物買いに行こうな」
「うん!」
この後はエリーに錬金魔法用の魔道具キットとそれを納めるホルスターベルト、治癒魔法用のロッドにアイテムを仕舞うワンショルダーバック型のマジックバックを購入し、ライミィもアイテムを納めるポシェット型のマジックバックを買った。
そうして必要な物を買い昼御飯を食べたり街を観光して3人は冒険者ギルドへと向かうとかなりの人だかりになっていて
「大騒ぎだな」
「だね~」
「うん」
他人事の如く呑気な3人だった。大騒ぎになっている理由は勿論ギルドの前を占領しているレイドグランドドラゴンだ。何十人かの治癒術士によるアンデット化防止策をとっている真っ最中で、それ以外はグランドドラゴンを一目見ようと集まった野次馬である。響介達はそれを横目で見ながらギルドの中へ入ると
「あっ、キョウスケさん!」
声をかけてきたのは昨日対応してくれた受付嬢のアラベルだ。アラベルは3人を手招きし受付へ
「アラベルさんこんにちは!」
「ライミィさんこんにちは。ちょっと待ってて下さいね、今」
「よう、来たな…」
アラベルが呼んだ後ろの扉からギルドマスターアランが来た。しかし
「おじちゃんどうしたの?疲れてる匂いがする」
「臭い?悪ぃな嬢ちゃんちぃーとばかし忙しくてな…」
「お疲れですね、アランさん」
「ははっ、気にするなライミィの嬢ちゃん。たった30時間寝てねぇだけだ…」
徹夜明けのようで顔が疲れきっており目が充血し目の下にはしっかりとクマが出来ていた。
「…お疲れ様です」
「ありがとよキョウスケ。悪いんだがレイドモンスターの支払い待ってくれ金貨が万単位確定したから。アラベル後でまたエナジーポーション追加で」
「駄目ですよ。昨日から何本飲んでるんですか…?」
「まだ7本だよ」
「飲み過ぎです!」
元の世界で言うエナジードリンクみたいな物だろうか?と思う響介。世界は違えどおんなじような物はあるんだなぁと考えていると
「ギルマス!なんですかあの表のは!?」
後ろから大声がして3人は振り返った。そこにいたのは身軽な格好をした盗賊風の女性と鎧を着こんだ戦士風の大男、それと治癒術士のローブを羽織ったエルフの女性と魔法使いの男の4人。先頭の盗賊風の女性は響介達に目もくれずアランに尋ねる。
「ああ、ジュリア今帰ったか。あれは昨日討伐されたレイドモンスターだよ」
「討伐された!?あれドラゴンでしょう!?」
「全くだ、グランドドラゴンのようだがいつ現れたんだ?」
「昨日の昼過ぎだブライアン」
「昨日の昼過ぎって、ご冗談をグランドドラゴンを1日で討伐出来るはずないでしょう?嘘も休み休み言ってください」
「冗談言ってるようにみえるか?メンフィス」
彼女達4人とアランがこんな事の他にも言っている横でアラベルに
「彼女らは?」
「ジュリアさん達はB級冒険者チーム『インパルス』の皆さんです。彼女達は一昨日見つかった遺跡ダンジョンの調査から帰って来た所みたいですね」
新しい遺跡ダンジョンの調査か、面白そうだなと思って聞いていると横のアランは面倒になったのか頭をガリガリとかきながら適当に切り上げ始めた。
「もうお前らうっせぇわ!徹夜明けに響くから声のトーンを落とせ!第一現に討伐されてんだからうだうだ言うな!それにこっちが先だ!こっちが終わったら報告を聞くから待ってろ!」
「ちょっ」
「悪いなキョウスケ。じゃコレがギルドカードだ。お前とこっちがライミィの嬢ちゃん、これがエリーの嬢ちゃんのだ」
アランからギルドカードを受け取ろうとした時、後ろから忍び寄ったジュリアがくすねようとしたが
「わっ!?」
響介に避けられたと同時に顔面から床にダイブした。大きな音をたててスッ転んだからかギルドにいた冒険者達が全員響介達に向く
「随分熱烈なキスだな。発情期か?」
この言葉にドッと笑いが起き、ライミィやエリーは勿論、中でも徹夜明けのアランは大爆笑である。一方でいい笑い者にされたジュリアは顔を真っ赤にして
「なんなのあんたっ!」
「何って冒険者になりに来たんだが?」
「そうだけどそうじゃない!あんた足引っ掛けたでしょ!?」
「は?」
このやり取りに横で見てたライミィが溜息混じりで口を開いた。
「あんたが勝手にキョウスケに突っ込んで勝手に転んだだけでしょ?いくら自分が惨めだからって人のせいにしないでくれる?」
「はあ!?」
これにはジュリアは怒りを露にした表情でライミィに詰め寄るがライミィは呆れた表情で
「あほくさ、そんなんでビビると思ってるの?滑稽だね」
「こいつ……!」
冷めた目で見るライミィと一触即発になりそうな所だったがジュリアの仲間の大男のブライアンがジュリアに拳骨を落とした。
「あでっ!?」
「頭を冷やせ、これはお前が悪い」
「ちょっ、ブライアン!こんな舐められっぱなしで……!」
「本音はただ八つ当たりしたいだけだろ、いい加減にしろ」
「ぐっ……」
一喝されるジュリアを見て状況がある程度響介には見えてきた。どうやら自分達が思っていたより調査が滞り満足のいく結果を出せなかったのだろう。そこに表のレイドモンスターの討伐が気に入らないんだろうなと、それで八つ当たり変わりに新人イビリとは響介は呆れた。
実際はライミィがジュリアに気づかれないように部分的に固着をかけただけ。踏み出した時に右膝と左足首にかけあたかも響介が引っ掛けたみたいに感じたのはおそらく左足首に違和感があったからだろう。
…元の世界でもこんな奴はいた。立場の弱い下のもんに威張り散らしからかい目的で人を弄り果ては恐喝始めかつあげ行為をしてた『先輩』という人種だ。まあ響介はそんな奴を必要以上にぶちのめし全員病院送りにしたがと思っているとアランが
「あいつらはほっといてステータススキャナするぞー、キョウスケからこの水晶玉に右手乗せてくれ」
「わかりました」
横で騒いでいるジュリア達を放置して響介達は昨日行うはずだった自分のステータスを測定する。一度渡されたギルドカードをアランに渡し右手を水晶玉に乗せて測定を開始する。すると
「は?」
アランが呆然としながら響介にカードを返却する。
「どうしましたアランさん?」
「マジか…クリ坊よくやった」
何か呟きながら笑っているアランに首を傾げて受け取る響介。
「どうキョウスケ?」
「見せてー」
ライミィとエリーに見える様にスキャナされたステータスを3人で確認する。
「えっと、生命力S、攻撃力SS、防御力S、スピードSS、知力A、魔力A、魔力保有量Sか、なあライミィこれって強いのか?」
響介のこの言葉にギルド中にいた冒険者は騒然とするのだった。