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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第3章 商人の国 ~遺跡を探検するピアニスト~
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32話 遺跡の街へ 道中で考える身の振り

2人、レイド化したグランドドラゴンを倒す。




 ドドドと、二頭の黒馬が猛スピードで駆ける馬車が一両マルシャンの地を進む。御者台には若い男性と女性が乗っており男性は馬の操作に慣れているようでそつなくこなしている。その後ろの荷台から


「お二人共、助かります」


 響介が二人分のスープが入った器を持って御者台にやって来た。スープは作り立てのようで湯気が立ち、塩コショウのいい匂いがして肉がゴロゴロと入っている。


「あっ、キョウスケさん!」


「これ、今後ろでライミィが作ってるさっきのグランドドラゴンの肉で作ったポトフです。良かったら召し上がってください」


「ああ、ありがとうございます!もう何から何まで…」


「いえいえ、気になさらないで下さい」


「いい匂い、私ドラゴン初めて食べますから楽しみです!」


 響介が隣に座っていた女性に二人分のスープを渡していると後ろからガタイのいいおっちゃんが出て来た。おっちゃんは若い男性に対して


「兄ちゃん飯食ってこいよ、その間変わっててやる」


「えっ?ですが…」


「俺だって馬に止まれ位は出来るさ、それに早くいかねぇと食いっぱぐれるぞ」


 おっちゃんは後ろに向かって指をくいってやると後ろの荷台では


「ぅんまああぁぁい!!」

「うめぇ、五臓六腑に染み渡る…!」

「ドラゴンの肉うめぇぞ!?なんだこの上質な肉は!?柔らかくて噛めば噛むほど旨味が出てくる!?」

「お肉も美味しいけどスープもいいわぁ。お肉の旨味がしっかりと出てそれを損なわないあっさりした塩味のスープ、出汁はきのこでしょうか?」

「干しきのこと干し野菜だわ。それがお塩と胡椒だけでこんなに美味しい…」

「奴隷にされる為に拐われた時は絶望しましたが、まさか助けて頂けるだけでなくこんなに美味しいものを食べさせて頂けるなんて…」

「お姉ちゃん、おかわり」

「はーい、エリーさっきぐらい食べる?」

「うん」

「皆さーん!まだまだいっぱいありますので言ってくださいねー」

「「「「ありがとうございます!」」」」


 後ろの荷台ではさっき叩き潰したレイドグランドドラゴンの肉を使ってライミィが炊き出しをしていた。ニューポートで買った調理器具セットと寸胴を早速使い、火属性魔法の応用で魔力を調節して作っており荷台の中はいい匂いで充満している。干しきのこや保存食の干し野菜で出汁を取り、塩や胡椒で味を整えたポトフは好評で拐われてから何も食べられなかった人間達は揃ってがっついて食べていた。

 炊き出しは響介の案でこういったことは元の世界でもあったのと、せっかくドラゴンを仕留めたので何か使えないかと考えてたら腹が空いたのがちらほらいたのでみんなで食べるならと提案した。ライミィも集落以来の料理ということで張り切って作ってくれている。


「マジでなくなるぞ。俺は4杯食ったから早く行ってこい」


「すいません、それではお言葉に甘えて」


 若い男性は申し訳なさそうに握っていた手綱をおっちゃんに渡し、女性からスープを受けとると荷台に移っていった。


「このまままっすぐでお願いしますね」


「あいよ!」


 手綱を預かったおっちゃんにスープを食べながら指示をする女性。周りの景色を見ながら


「あそこに見える山がマルシャンで一番高いレイソル山になりまして次いでに言うと首都はあの麓になります。この高速馬達なら後三時間位、日が暮れる前にリュインに着けますよ」


 今の状態から後どれくらいで街へ到着するかを教えてくれた。


「詳しいですね。マルシャンの方ですか?」


「はい!実は私一家でマルシャンを中心に行商してまして、今回仕入れで出た所出先であの奴隷狩りに襲われてしまって」


それを聞きながら響介は


(ん?なんだかおんなじ話どっかで聞いたな)


 なんて事を考えていた。そうしてるとおっちゃんから


「兄ちゃん達はどっから来たんだい?」


「俺達はオウレオールから来ました。遺跡が有ると聞いて観光がてらに」


「観光ですか?冒険者で遺跡に潜るとかじゃなくて?」


「はい」


「やけにつえぇな、冒険者になればいいじゃねえか」


「それも今考えてます。遺跡に入るのは冒険者でないとと聞きましたので」


「そうですねー、遺跡の中はモンスターが出ますから戦えることが前提条件ですからねー」


 ズズッとスープをすすり飲む女性。響介は女性とおっちゃんにどうしても確認したいことがあり後ろに聞こえないように声を抑えて尋ねる事に


「すいませんお二人共、つかぬことをお伺いしますがこの国はあの子の他にダークエルフっているんですか?」


 響介のこの質問に2人は難しい顔をした。その理由はと言うと


「わりぃ兄ちゃん。俺は知らねぇ。そもそもダークエルフなんて初めて見た」


「ごめんなさい、マルシャンにはエルフや獣人族の人もいますがダークエルフは見たことないですね」


「そうですか…」


 2人からの返答はある程度予想はしていたがその通りになった。それはそうだエルフならまだしもダークエルフは滅多なことがない限りシマの外に出ないとオリビアさん達から聞いていた。そこに女性から補足が


「ダークエルフは魔族領の未開の地で暮らしてると聞きますから、まず人族領にいること自体が…」


「成る程」


「それにリュインにはエルフの方がいますがもしエリーさんがダークエルフだとわかったら何をしてくるかわかりません」


 ここではっきりわかったのがエリーは身寄りが不明どころか最悪は天涯孤独な上見ず知らずの所に来てしまったという事だ。そしてまだ最悪の懸念材料がありマルシャンにいるエルフの差別意識が高かった場合どんな目に遭わされるかわかったものではない。何でここに来てしまったのか?だがそれは今言うことではない。響介は改めて尋ね


「教えて頂いてありがとうございます。えっと」


「ごめんなさい、私はマリオン・ヒューズっていいます」

「おっさんはロイ・ロッサだ。それでキョウスケは何を言いかけたんだ?」


「後で後ろの皆さんにもお願い申し上げますがエリーの素性の事は伏せて頂けないでしょうか?」


「つまり?」


「エリーのことを聞かれても身寄りのない子どもだったと発言して頂けませんか?」


 エリーの身の安全を確保する事。取り敢えずこれが一番の優先事項だと思いまずこの2人にを頭下げて頼む響介


「いいぞ」

「ロイさん?」


 ロイのおっちゃんがあっさりと了承してくれマリオンが呆気にとられた。


「命の恩人が頭下げて頼んでるんだ。二つ返事で返してやるのが筋ってもんだろうが」


 ロイのおっちゃんの清々しい程の返事にマリオンは


「激しく同意。恩人に恩を報いなければ行商ヒューズ一家の末代までの恥!」


「何もそこまで言わなくても」


「何を仰いますキョウスケさん!こういった一種の礼儀のメリハリは我々行商人には必要不可欠なんです!」


「そうっすか」


「それはいいが、素性隠すとして結局あの嬢ちゃんはどうすんだ?」


「さっき俺達2人で話しまして俺達で面倒見ようって決めました」


「それなら大丈夫そうだな。兄ちゃん達責任感ありそうだし後は嬢ちゃんがいいなら文句はねぇよ」


 ロイのおっちゃんは納得したようで馬を操る事に集中したように何も言うことはないという意思表示なのか無言になった。


「私もそれならいいと思います。キョウスケさん達みたいな強い方と一緒の方が心配ないですね」


「お二人共。ありがとうございます」


 響介はもう一度二人に頭を下げて後ろの荷台へ移っていった。それを見計らってからロイが


「今時珍しいもんだな、あんな兄ちゃん」


マリオンにも聞こえないくらいの独り言を溢した。





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