29話 遭遇 冒険者?
2人、マルシャン公国に入る。
無事マルシャン公国に入った響介とライミィは別れた行商人親子とは違う道を行く。取り敢えず目指すは目先の宿場村に向かうことにした。その道中
「ねえキョウスケ?」
「どうしたライミィ?」
「本当にこっちでピアノ弾かないの?」
「正確にはここでピアニストを名乗らないってだけだよライミィ。多分だが神聖王国からすれば面子を潰されたからと俺に対して動くだろうからな」
響介が懸念しているのは神聖王国の動き、さすがに今朝の事で今日の今日こちらにアクションは起こすことは無いだろうが向こうの事態が落ち着いた頃に追々動いてくる事を考えての事だった。
「そっかー」
少し残念そうにするライミィ、いつも間近で聞いていた分寂しく感じてしまったようだ。そんなライミィを見て響介は慌てて取り繕う
「あー、でも全く弾かないって訳じゃない、オロスみたいに弾かせてくれるとこがあったら弾くさ、今は取り敢えず冒険者志望の若者ってやつだよ」
冒険者志望と言ったのは遺跡に入る為だ。今から向かうリュインはマルシャンのみならず人族国家の中でも有数のダンジョン街として有名な街。
ダンジョン。
元の世界では地下牢を始めとした城などの地下施設を指す言葉だが、この世界では地下迷宮や遺跡を意味している。ダンジョンは一般人には危険な為冒険者ギルドが一括で管理しており入るには冒険者として登録しなければならない。しかし響介達は冒険者になっていないので入る事は出来ない、しかし
「早速クリスさんのお手紙を使うことになったね」
「ああ、貰ってて助かったな」
ライミィが言ったのはオウレオールでクリスから貰った手紙、その中身はギルドへの推薦状。
冒険者になるには登録の時に登録費とそのための試験をし合格しなければならないが、響介達はクリス所長の推薦、特例処置と言う事で無条件で冒険者になることが出来る。
「どうせならクリスさんのとこで冒険者なってあげたかったねー」
「そうなんだけど向こうで色々やっちまったから迷惑かけらんないしって考えたらなぁ」
「あはは、確かにー」
そう言って笑い合った2人、暫し歩いたその時だった。街道から外れた森から突如剥き出しの武器を持った男達が走って来た。皆一様に何かに追われているのか後ろを気にしているようだ。
「!」
「ライミィ下がれ」
ライミィを下げて男共に向き合う響介、4人の男は響介に気がついたようで近寄り息も絶え絶えながら話しかける。見たところ戦士風な男2人、盗賊風な男と弓を持っている男が1人ずつ
「すまねぇ、あんたら冒険者か?!」
「いや、冒険者志望だが何か?」
「この際なんでもいい!頼む!仲間が襲われてんだ!助けてくれ!」
男達は冒険者だそうでクエストであの森に赴いて魔物討伐をしていたようでレイドモンスターに出くわし命からがら逃げて来たとの事。
レイドモンスターとは本来その地に生息していない突然変異したモンスターが沸いてくる事で総じて強い事で知られている。聞くとこの男達は5人で組んでいるらしくレイドモンスターから逃げる時にはぐれてしまったらしい。
「いいぞ、案内してくれ」
応じる響介とライミィの反応に安堵を浮かべる男達
「じゃあこっちだ!いそ」
「その前に」
響介達を急かしていた男に響介は男達に質問をする
「どんなモンスターなんだ?」
この響介の様子に何かピンときたライミィ
「そんなの聞いてる場合か!?急がないと」
「だからどんなモンスターだ?特徴は?それと後一人の特徴は?」
「あとはぐれた時の状況とここまでの大体の時間は?」
最もらしい質問矢継ぎ早にする響介とライミィに苛立ち始める男達
「てめえらいい加減にしろ!!こうしてるうちに仲間が死んだらどうすんだ!?」
「だからこそ冷静になって確認するのだろう。で、その仲間の特徴は?男?女?ジョブは?得物は?何が目的だ?はぐれた時の状況は?」
「そ、それは…」
しどろもどろになる男、そこで響介は
「まあ、わかんないよな、嘘だから」
「「「「!?」」」」
「そうだよね~、でもなんで話し聞いてあげたの?」
「そこの盗賊風の男が「またよさそうな奴隷見つけた」って言ってたから少し気になった。ああ、俺人より耳良いから聞こえてたぞ」
「くそっ、こうなったらぐほっ!」
正体がばれ男達が体制を整える前に近くにいた戦士風の片割れを殴る響介。見事顔面にグーがめり込み一撃で叩きのめし
「ファイアーボール!」
「「「ぎやああああ!」」」
響介が殴ると同時にライミィはファイアーボールを男達にぶちこみ戦闘は終わった。そして比較的喋りそうな弓使いを叩き起こし『お話』をする。
勿論釘とトンカチを見えるようにライミィがちらつかせている
「正直に答えろよ?お前らは奴隷狩りだな?」
「はい……」
トンカチを顎に添えて喋りやすくしてあげている響介とそれを見て楽しそうに笑うライミィ。弓使いは顔面蒼白である。
「ヒューズさん達も言ってたけどマルシャンじゃ普通なの?」
聞くはライミィだ。マルシャンの事はニューポートにいた時から調べていたのもあるが一番はヒューズ親子からの情報だ。
マルシャンは商人の国と言うこともあり様々な物が「商品」として存在する。しかしその中には「奴隷」と言う非合法の商品が存在する。10年前、アルスでの革命を機にマルシャンでも改革が起き奴隷売買は全面禁止となった。が未だに売買ルートは存在しているらしくそれらを調達するのが奴隷狩りと呼ばれる者達でその実態は冒険者ギルドから追放された者達や犯罪者が中心である。
口を割っていくとこの弓使いは元冒険者で後の連中は犯罪者らしく、こいつらを雇った奴隷商人がさっき出てきた森にいるらしい
「大体分かった。じゃあもう行っていいぞ」
「はい、ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」
そう言った弓使いは響介達に頭を下げて何処かへ去っていった。
「今度は全うになっててもらいたいもんだな」
「そうだね。キョウスケこいつらはどうする
?」
ライミィが指指したのは顔パン食らって未だに伸びてる男とファイアーボールが直撃し黒焦げになった男2人。全員辛うじて息はあるようだ。ライミィ曰く「だいじょぶ!キョウスケみたいに9分殺しにしたから」とのこと
「ほっといても大丈夫だろ。まあ取り敢えず」
男達を縛っといて転がしとく、運が良ければ生きてるだろ。一通り終わった後
「よし、ライミィ悪いんだけど」
「うふふ、皆まで言わないで」
笑顔で答えてくれたライミィを見て少し安心した顔をする響介。そして響介の言った言葉が
「よし、奴隷商人締めるぞ」
「おー!」