新たな依頼
2人、旅を再開する。
「やっと街かぁ、長かったぜ」
夕暮れのニューポートの街に入って来た4人組、その1人の色黒の青年がいの一番に口を開いた
「お前さんはいちいち騒がしいぞ、レイモンド」
「でもよ、ウィル爺さん。あんな片道2週間近く掛かる辺鄙な森で捜索してやっとぶりに街にみんな生きて帰って来たんだからいいじゃねえか」
大袈裟なリアクションを交えながら喋る拳闘士のレイモンド、そこには全員で生きて帰って来た以外の意味も混じっていたのを神官のパメラは察した。
「確かに、一週間近く捜索して結局『コレクター』の消息は掴めず仕舞いで骨折り損ですからね…」
「パメラ、それ言うな…」
言ったパメラとレイモンドが落胆した。
それはクエスト失敗を意味していた。彼女らが国王から受けていた依頼はコレクターの捕縛もしくは討伐であり、そのコレクターがいたと情報のあった国境付近の森へ赴いたが捜索しても何の成果も挙げられず、支給された分と自分たちで用意していた物資が底をついた為捜索を中断して街へ帰って来たのだった。
「今回は不特定な情報しかありませんでしたから仕方ありませんよ」
「聖女様」
鎧を着た女の子が肩を落とす2人に優しく声をかける。聖女と呼ばれたこの女の子はアリシア。この神聖王国の五神の一神、平和を司るパクスに選ばれた勇者であり、希代の聖女とも呼ばれている女性だ。
「そうじゃのアリシア嬢の言うとおりじゃ。こんな度し難い情報でやれとは国王も切羽詰まっているようじゃ」
顎を撫でながら魔導師ウィルがやれやれと言わんばかりに顔を横に振る。今、この神聖王国は五神がどんどん勇者を選んでしまい管理が行き届いていないのが現状で国王はその対応に日夜追われているらしい。
しかし皆それよりも
「それよりも、さっさとパクス教会に行って報告して休もうぜ」
「同意じゃ」
そうして一行はパクス教会へ向かう、その向かっている最中に
「なんだあれ?」
「どうしましたか?レイモンドさん」
「トリウスんとこ、騒がしくね?」
「そうじゃの」
「人だかり、でしょうか?」
4人が見たのはトリウス教会に出来た人だかり、それは貴族や貧民街の住民など街の大半の住民がガヤガヤと集まっており、馬車もあった事から教会の重役が来たのだろうかと思い4人はその場を後にパクス教会へ向かうと
「アリシア様!お帰りになられましたか!」
「え?貴方はブルーノ助祭」
向かっている途中に出会ったのはパクス教の神官で助祭のブルーノ、何処にでもいるメタボ体型の中年男性の信者でアリシア達を見つけると近くまでやって来た。
「お帰り早々申し訳ありません、よろしければ教会まで来て頂けませんか?」
「はい、私達も教会にご報告がありますから行きましょう」
こうしてブルーノ助祭に連れられパクス教会へ向かうことに、ブルーノ助祭に訳を聞こうにも「司教様からお聞きください」と言われてしまった。そうこうしているとパクス教会に着き聖堂に案内され
「司教様!アリシア様達がお帰りになりました!」
「おお、本当ですか?ブルーノ助祭。案内ありがとうございます」
助祭の声に答えた落ち着いた声の主はこのニューポートのパクス教会の神官長でもあるクラウン司教だ。壮年の男性だがそれを感じさせない若々しい容姿と年相応の気品を兼ね備えた司教はゆっくりと歩みよると助祭に下がる事と聖堂に誰も入れないようにと指示を出し下がらせる。助祭はアリシア達に一礼すると聖堂から出ていった。
「お疲れの中申し訳ありません。ですが対応しなければいけない案件が出来てしまったのです」
「対応しなければいけない案件?どういうことでしょうか?」
「その前に一つ、『コレクター』が討伐されました」
「なんじゃと!?」
その話も含めアリシア達は司教の事情を聞いた。司教の話だと発端は15日程前に遡り、旅人風の2人組が冒険者ギルドを訪れコレクターの遺体を引き渡した事、先程のトリウス教会前の騒ぎはその2人組が神官長と出資者の貴族の悪事を暴いたことで本国からの審査官含む視察団が来ている事、そしてトリウス教の勇者ロン・ハーパーがアルスにて裁判沙汰になっていて他の勇者2人が勇者を返上して1冒険者として活動している事など彼女達が街を空けている間に起こった事を説明した。
「そんな事が…」
絶句している一同、余りにも衝撃的過ぎて疲れなど気にしている場合ではない。
「これを受けて私達パクス教会も他の教会も対岸の火事だと言っている場合ではありません。勇者聖女アリシア様、神官パメラ、魔導師ウィル、拳闘士レイモンド。いえ冒険者『タプヒューレ』皆様に次の依頼が国王より届いています」
司教は咳払いを一つし、一枚の書状を読み上げる。
「ピアニストを追え、これが皆様に届いた新たな依頼です」
読んで頂き誠にありがとうございます!
作者のみえだと申します。
年を跨いでしまいましたが第2章が終わりました。この聖女パーティーが響介達に出会うのは当分かかります。頭の中では構想は練れてるのですがいかんせん文章力が足りずつい長々となってしまいました。
気が向いたらでよろしいのでブックマークや評価を頂けたら今後の励みになりますのでよろしくお願いします。
第3章も近々投稿します!
改めて読んで頂きありがとうございました!