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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第2章 神聖王国 ~ピアニストと駆け出し勇者達~
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23話 後始末 決別する者達

響介、勇者一行をワンパンする。




「キョウスケ!あとはあの噴水の奴だけだよ!」


 後ろからライミィの声が聞こえた。ライミィはズボフの手下三人が手足を縛り転がしており俺はロンを蹴り飛ばしライミィの近くへやる


「時間がもったいない」



やむを得ず俺は功掌(しょうてい)を使い噴水の中のズボフを引っ張り上げ瞬時にライミィの元に引き寄せる。


「な、何だあれ!?」

「キョウスケさん今のは!?」


「説明は後にさせて頂きます!ワッケイン副支店長!準備は!」


「もうすぐ着きます!」


そうこうしていると2台の馬車が来た。ピーター商会か所有する高速馬車が俺達の近くに停車、すぐさまロン達を荷台に押し込み始め


「ナンシーさんお願いします!」


「オッケークオリア!みんな行くよ」


 勇者ナンシー率いるパーティ「ハイペリオン」がもう1台の馬車に乗り込み


「ちょっと待ちなさい!ロン様達を何処に!?」


 無理矢理入って止めようとするアシャとトリウス教会の神官達と体を張って阻止するクオリア達。そこに俺がニックことズボフを引っ張りだし手配書を取り出した。術者のロンが気絶した事でズボフ達の隠蔽魔法も解除されて素顔を晒しているからだ。


「ニック・ハルパーの正体は(ブラック)狼団(ウルフ)のリーダー、ズボフ・コッドだ。そして勇者ロン・ハーパーはズボフ達の素性を知っていてこいつらに協力していたため犯罪(はんざい)幇助(ほうじょ)及び犯人(はんにん)蔵匿(ぞうとく)の罪で突き出させて貰います」


「突き出す……!?」


 困惑する神官達だったがその中から神官長らしき女が出て来た。大体40手前っぽい女性は俺を見据え


「無駄です。この国で勇者を裁けるとお思いですか?確かに勇者も人間であり罪を犯します。ですが」

「罪と言うのはこのようなものでしょうか?」


 俺は神官長の言葉を遮りジャケットの裏ポケットから神官長に一枚の写真を見せるとそれを見た神官長は顔を真っ青にさせた。そしてライミィが嫌悪と軽蔑を込めて大声で


「浮気なんてさいってー!もう性職者に改めなよ!」


 その写真はハーパー卿とこの神官長の不倫の証拠写真である。ハーパー卿の事を探っていたらあのセフィロトメンバーのマスターが教えてくれた。

 と言うのも俺が一番気になったのはトリウス教会の金回り。きっかけとなったのはクオリア達と会った日、それはピーター商会の一階でロン達が揉めていた日だ。同じ勇者にも関わらず装備に差があった。クオリアのほうが冒険者ランクが上なのにだ。金を集めていた教会の動向が気になった俺がマスターから買った情報はこれ、どうやらハーパー卿はあの手この手で自分に有利になるように周囲を丸め込んでいるのがわかった。


 そして神官長は神官長であわよくば貴族の愛人になるのを狙っていたようで現にハーパー卿から裏金も貰ってロン達を黙認していた。


「ち、違うの、これは…」


「あんたがどうなるかは後ろの神官達に一任する。身内のことは身内で面倒を見な」


 神官長は振り返り自分達の部下を観衆を見た。例外なく皆に軽蔑と侮蔑の目で見られており、どんなに口が達者でも聖職者としてあるまじき事実を暴かれもう言い逃れは出来ないだろう。


「そして、勇者ロン一行はこれからアルスに移送されアルスの法で裁かれる。見届け人はピーター商会ニューポート支店のワッケイン副支店長。移送中の護衛は俺が雇ったナンシー・ディクル率いるハイペリオンだ」


 これも情報収集していた時に俺が考えていた事。と言うのもこのオウレオールで裁判した場合必ずハーパー卿、奴の父親が出て来て権力を使い揉み消すのは容易に想像出来る事為考えた対策だ。

 それに手配書がアルスから発行されていてズボフ達がアルスでも犯罪を犯し逃げて指名手配されている事と。なによりアルスは勇者関係無く犯罪者は犯罪者として裁く為だ。


 これはラミアの隠れ集落にいた時に学んだ事だ。オリビアさん達にこの世界の事を教わり各国の歴史も教えてもらった。その中でもアルスは元々王国制だったが王族やその側近達の政治的腐敗が酷く、10年前にある貴族達を中心に革命が起きて当時の王族達を放逐し共和制となった。

 その前身がある為か政治的不正に厳しく裁判も貴族だろうがなんだろうが徹底して行われる。ズボフ達を匿った形になったロンやその父親は裁かれ、この神官長にも追及が来るだろう。これを聞いた神官長は呆然としていたが、ここにクオリア達リュミエールの一行がやってきた。


「神官長」


 声をかけられた神官長はまるですがるようにクオリアにすり寄った。


「クオリア様!惑わされないで下さい!この者が言っているの事は全てでたらめで」

「ナンシーさんからの伝言です」


「え…?」


「『勇者の称号は返上します。このアバズレ女!』」


 怒りの籠った声ではっきりと言い切ったクオリア。この言葉に目を見開き衝撃を受ける神官長と神官達。そこに追い討ちが


「そして(わたくし)クオリア・シュタインバークも一冒険者として、正しき貴族として勇者の称号を返上致します。今までお世話になりました」


 これには俺とライミィも驚いた。昨日オロスでのクリスとの話合いの後ギルドへ行きクオリア達とナンシー達を呼んでもらい今回の事を写真や資料を開示して説明、クオリア達にはトリウス教会の抑制の為に、ナンシー達には移送の護衛にギルドを介して2組に正式に依頼をしたのだった。

 確かに不倫写真を見たナンシーは何か思い当たる所があったようなのと、クオリアも何か考えているようだったがこんな展開になろうとは、その証拠に返上を言い渡された神官長は膝から崩れ落ちていた。こんなことは前代未聞だろう。

 こうして勇者ロンを発端としてニューポートでのトリウス教会の黒い腹のうちを暴く事になり幕を閉じた。





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