22話 対決 ピアニスト対勇者一行round2
響介、勇者に一撃を入れる
響介とライミィが注目を集めどんどん人が集まる中で騒ぎを聞き付けたトリウス教会のシスター、アシャや他の教会関係者も来たが
「これはどういう事ですか!?クオリア様!ナンシー様!」
「申し訳ありませんアシャさん。今回は黙って見ていて貰えませんか?」
「そーそー、アシャちゃん達悪いけど出張らないで」
2人の勇者とその仲間達が教会関係者をきっちりブロックしていた。そんな中ゲロまみれの勇者がようやく口を効けるようになったようで
「お前ら、僕にこんな事をして、どうなるかわかってんだろうなぁ……!パパに言い付けて」
「勇者や貴族が怖くて任侠者などやれるかこのダボがっ!!」
何か言っていたがそれを遮り響介が一喝した。腕を組み立ちはだかる姿は威圧感と風格がありまさに強者の姿。
それが気に入らないロンはギチギチと歯を鳴らし
「ニック!もういい!こいつらをぶっ殺せ!」
「へい、おいお前ら!」
「へい!兄貴!」
街中にも関わらず武器を抜き今にも襲い掛かろうとする勇者一味、観衆は混乱し止めに入ろうとするクリスとワッケインだが
「まあまあ、皆様落ち着いてください」
観衆達に対して落ち着いた対応をする響介。
「どうするのキョウスケ?」
「まあ、俺が本気出せば指一本で十分だな」
ライミィは勿論観衆達からも歓声が上がり中、明らかに分かりやすくバカにされたズボフ達
「はあ?指一本で俺達が倒せるのか」
「嘘だよ」
「は?」
「嘘に決まってるだろ?バカかてめえちっと考えれば分かるだろうが」
「真に受けてんのーバッカじゃないのー」
ここぞとばかりに煽る響介とライミィ、観衆からもクスクスと笑われ響介は笑いながら本当はと切り出し
「指二本で十分だよ」
「は?指が一本二本かわ」
「また引っ掛かってやんの、嘘だよダボが」
「バーカバーカ」
このやり取りを端から見ていたクリスとワッケインは
「あのお二人」
「人をおちょくるの上手ね」
「ですがこれは」
「ええ、明らかに自分達のペースに持っていってるわね」
「あああ!もういい!てめえら殺っちまえ!!」
さんざんコケにされたズボフ達が手下をけしかける。すると響介は
「嘘だって言うのも嘘だよ。正解は一本で十分」
おもむろに右手でデコピンの形を作り中指を弾いた。すると
「へがっ!」
ロンとズボフの近くにいた男がいきなり吹っ飛んで白目を剥いて気絶していた。まるで銃で撃ち抜かれたかのように吹っ飛んでいったのを見ていたズボフ達は勿論クオリアやナンシー、クリスとワッケインは
「え?」
「は?」
「今のは!?」
「!?」
驚愕とした表情となり今目の前で起こった事がわからなかった。
「安心しろ、十二分に加減はしたから伸びてるだけだ」
これは響介の気功術で、功弾の応用だ。拳で飛ばす功弾に対して指で飛ばす技「指弾」と響介は呼んでいる。モーションの大きい功弾に比べ今のように指先と少しの気だけ使えれば繰り出せる飛び道具である。
流石の事に戸惑うズボフだったがそれでも何か企んでいるようで
「ちっとは変わった事するみてぇだがてめえ残念だったなぁ!?」
まるで勝ち誇ったように言い始めたズボフだったが響介とライミィは
「何がだ?」
いきなり背後の何も無い空間をガシッと掴む響介と
「うりゃ!」
後ろの空間を蹴り上げたライミィ。
「一体何を…?」
響介達が何をしているのか理解が出来ないクオリアやその仲間と観衆だったがその答えは直ぐにわかることに、すると何も無い所からカランカランと剣が落ちる音がすると
「あ、あが……」
響介が掴んだ先で男のうめき声が聞こえた、すると何もない空間から男が響介に首を絞められた状態で現れた。そしてライミィの足の先は
「お、お、」
股関をブーツで思いっきり蹴られ悶絶する男が、それを見ていた
「ぜってえ痛ぇよ……」
ドーンを始め容赦無く男の急所を蹴り上げるライミィに男共は戦慄した。これが何なのかクオリアやドーンと共に神官達を押さえていたヤコブが気が付いた。
「まさか、隠蔽魔法か!?」
「隠蔽魔法?」
「本来の姿を変えたり今みたいに姿を消す魔法だ!多分あれはレベル5の光学迷彩」
「ご明察、そう隠蔽魔法はあの勇者の十八番だ。どうせ使ってくると思っていたが、いざ使われても対した事無いな」
「な、なんだと!?」
自分の得意魔法をいとも簡単に看破され信じられないという表情をするロン。そこに響介が
「この魔法には欠点がある。この魔法は対象者の姿を消す、その状態での対象者の物音も気配も消す。意味が分かるな?」
「確かにそうだ。でもそれが…?」
「消した事でこの男がいる方向の後ろの喧騒が聞こえない」
「喧騒?」
「俺とライミィは人より耳が良くてな、良く聞こえるんだ。だから本来聞こえるはずの音が聞こえないんだよ」
「まさか、その微かな音を聞き分けたのかよ!?」
「正解」
驚愕するクオリア達リュミエールの面々。まあ、半分嘘だけどなと内心思う響介。響介は聞き分けたがライミィは違う。ラミアであるライミィはそんなめんどくさいことしなくてもアビリティの蛇の感性を使いピット器官を利用して手下の熱源を探知し特定。油断して襲い掛かって来た所に一撃入れたのだった。
この魔法、姿形と魔力は誤魔化せても熱まで誤魔化せないのは把握済みだ。
「まだ気絶しないでよ~」
がしっと股間を蹴られ悶絶する男の髪の毛を掴みずるずると引っ張り響介の前に連れて行くライミィ。そして響介の前に連れていき響介はその男の首を掴み2人同時に持ち上げ
「ふんっ!」
チョークスラムの要領で2人まとめて地面に叩き付け片付けた。受け身も取れずまともに喰らった2名は口から泡を吹きピクピクしている。
「どうした?もうおしまいか?」
ロンとズボフに対してまるで仁王像のように立ちはだかる響介。必死に打開策を考えていたズボフに
「どうした?勇者一行。お前達の得意な戦法も勇者と言うアドバンテージも通用しない事は想定していなかったか?」
「!?」
この言葉を聞いたズボフは全てを察した。目の前の男は恐らく全てを知っている。いや、調べ尽くしている。自分の正体も、勇者の親と裏取引をして通じている事も、強盗時代からの戦法も、何もかもを
「このガキャァァァァァァァァ!!」
追い詰められたズボフは破れかぶれと言わんばかりに突撃、剣を振り上げあろうことかライミィに向かって振り下ろしてしまった。
人間、追い詰められると本性が出る。弱いものを虐げる事しか出来ないズボフの浅ましい本性だ。しかしその剣はライミィに届くことはない。何故なら
「!?」
響介に止められた。それも親指と人差し指でまるで摘まむように、必死で振り払おうとしてもピクリともしない。
しかしズボフの今の行動は、ライミィに剣の振り上げるという行動は響介を怒らせるのに十分だった。剣を握り潰し
「俺の女に手ぇ出すな!!!!!」
怒りの右ストレートがズボフの顔面にクリティカルヒット!弾丸ライナーのように勢い衰えず吹っ飛び300メートル程先の中央公園の噴水にドボォンと大きな音をたて見事着水し犬○家状態に。今起きた目の前の光景、犬○家と化したズボフを見て言葉を失うクリス達
「さてと、勇者殿。覚悟はいいな」
ツカツカと近づいて行く響介に腰を抜かし、響介の威圧感と恐怖のあまり別の物まで漏らし始めた勇者ロン。その姿は人々を守る者とは程遠く、その表情も絶望に染まっていた。
「ま、待て!待ってくれ!今までの無礼は許す!だから」
「喧しい」
ゴンっと、ロンの脳天に重たい拳骨を落としKO。謝るくらいなら最初からやるなと言わんばかりの拳骨は見ていた者にも痛みが伝わる様な重く響く音だった。こうして勇者一行の制圧が完了し
「ここからが勝負だ」
これで終わりではない。響介の言う通りここからが勝負なのだ。