2話 出会い その女の子は?
響介、森の中でホットスタート
「ぐぎゃ!」
男は顔面に右ストレートが綺麗に決まり殴り飛ばされた勢いのまま木に激突し気絶した。
「よしよし、体は大丈夫だ。良く動く」
目が覚めたばかりで不安だったがいつも通り、いやいつも以上に動く自分の身体に違和感を覚えながらも確認する響介。だが仲間がやられたことで男達は
「このガキやりやがったな!」
「もういい、このガキも殺せ!」
殺る気となり持っていたナイフを構え二人が響介に突進してきた。
「握り方が違う」
男達のナイフの握り方を指摘しながら一人目をいなし二人目の腕を掴みそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした。
「「ぎゃあ!」」
響介が投げ飛ばした先には突進してきた一人目がおり投げ飛ばされて宙を舞っていた男がそのまま二人は頭を勢いよくぶつかりゴッツン!と良い音がした。その結果仲良く目を回して気を失い
「馬鹿共がこんなガキ相手に……!」
リーダー格の大柄の男が携えていた剣を抜き響介に斬りかかる。が
「やっぱり大振りになるんだな」
剣はナイフと違いモーションが大きくなる。喧嘩していたときは良くナイフを隠し持っていた奴もいた為、ナイフでの攻撃に目と体が慣れてしまっていた。
そのためなのか真っ正面から剣で攻撃をされても焦ることがなかった響介は難なくかわし
「ぶへっ!?」
素早く相手の懐に入り込み顎目がけたブーメランフックをお見舞いしノックアウト。見事暴漢共に勝利した。
「危ねぇからこれ没収な」
伸びた暴漢共からナイフや剣などをひょいひょいと没収していく響介。そして
「大丈夫?怪我とかしてない?」
襲われてていた女の子に努めて優しく声をかけた。
「いや、いや、こないで……」
すっかり怯えてしまい響介に対しても恐がっている女の子。その様子を見て響介も困ってしまうも女の子を見て響介があることに気が付く
「あっ」
ジャケットのポケットを探りながら女の子に接近、女の子は諦めたかの様に恐怖のあまり目をギュッっと瞑った。
「血が出てるよ」
「えっ…」
響介が気付いたのは逃げてた拍子なのかその女の子は左手手首の部分を切っておりその部分に取り出したハンカチを当てて手当てをしてあげた。
「手首だから分からないけど取り敢えず結んでおけば大丈夫か、出血少ないし」
そう言いながらハンカチを結んでいると女の子から声をかけられた。
「ねぇ、あなた人間よね…?」
「ん?そうだよ?」
「何で助けてくれたの?」
「えっ?」
「私、人間じゃないよ。ラミアなのに…」
自分の事をラミアと言ったその女の子は確かに上半身は人間で綺麗な金髪ロングの美人と言うのに相応しく宝石のような綺麗な紫の瞳の可愛らしい女の子。だが下半身は大蛇のような4メートル近い白い蛇の身体をして明らかに人間ではない。しかし響介は
「困ってる女の子を助けるのに理由はいらない」
「困ってる人がいたら助ける」これは尊敬している祖父から教わった数ある教えの一つであり響介が大切にしている教えの一つだ。ただ今回は人間じゃないと言われてしまったので人ではなく女の子と言い換えて女の子に答えた。
「え……?」
自分の予想もしていなかった答えなのか面を食らったかのような表情を僅かに頬を赤らめて浮かべた女の子。よし、と響介は手当ても終わり
「俺は響介。鴻上響介。君は?」
「ライミィ」
響介はライミィに手を差し伸べた時ふと、ここまでの事を思い出していた。
「お前が鴻上響介だな」
目を開けると辺りは真っ暗で身体がふよふよと浮いて宇宙空間にいるような感覚だった。目の前には凛々しいと言えば合っているだろうか整った綺麗な顔立ちで鎧を着た人物がいた。
「そうだけど、あんたは?」
「私か?私はお前達の世界で神と言われている存在だな」
「神様?その神様が俺に何の用だい?直々に天国にでも連れていってくれるのか?」
「安心しろ、お前は死んでいない。死の直前でこっちに転移させてもらった」
「マジで!?」
「マジで。救急車とやらに担ぎ込まれた瞬間にな、後5分もしない内に死んでたから傷は治させて貰ったぞ」
そう言われ響介は全身を触って確認する。車に打ちつけれた身体もアスファルトに叩きつけられて割れた頭も痛みは無く着ていた服も新品みたいに綺麗になっていた。ここで疑問が
「どうしてここまでしてくれたんだ?」
「お前という存在に興味を持った」
「は?」
「お前はあの世界では困ってる人間に必ずと言っていいほど手を差し伸べ助け、そして誰が相手だろうと弱き者の為に立ち向かい打破した。それに今回も幼子を助ける為に自らを犠牲にし助けた。何故だ?」
「なんでって言われてもなぁ」
響介は答えに困った様に頭をガリガリとかいて考えた。
「一番は後悔したくないから、だな」
「後悔を?」
「ああ、後悔したくないって考えがあるかもな。やっぱり見て見ぬフリをしたくない、ここで見逃して許したら一生後悔しちまいそうで、多分理屈じゃねぇな。後はじっちゃんが教えてくれた任侠の教えもある」
「任侠とは?」
「仁義を重んじて困ってる人や苦しんでる人を助ける為に身体を張ること、かな?色々あると思うけど俺は俺が出来る範囲でやって来たつもりだ」
「そうか」
目の前の神様はふふっ、と満足そうに笑い改めて響介に向き合った。
「そんなお前に特典付きで異世界に言ってもらおうと思ってな」
「特典付き?」
「お前の願いを叶えてやろう。それに加えお前の身体を反映してステータスには色付けといてやろう」
「マジで?」
「マジだ。何でも言ってみろ」
「そうさな、ちなみにいくつまで?」
「3つだな、それ以上やるとおかしくなるから3つが限度だ」
「わかった。じゃあ1つ目は楽器演奏の才能をくれ」
お願い事が自分が想像していたものと違うものに鳩が豆鉄砲を食らった様な表情をする神様。
「楽器演奏?」
「ああ、昔から下手で諦めてた。願いが叶うならくれ」
「ふふふ、わかった。ならあらゆる楽器を完璧に演奏出来頭で思い描いた曲を演奏出来る様な才能を与える。2つ目は?」
「楽器をくれ」
「まあ、そうなるな。楽器は何がいい?」
「そうだな。出来たらピアノだな」
「なら空間転移能力をもったこの懐中時計型のマジックアイテムに納められるピアノをやろう。こうすれば取り出せ、こうすれば懐中時計に納められる」
神様は響介に実演してみせその懐中時計を響介に渡した。
「これで2つ目。3つ目は決まっているか?」
「ああ、3つ目は……」
さっきまでと様子がうって変わって響介は神様に頼むように言った。
「俺の死の原因の状況を変えて欲しい」
「状況を変える?」
「車が子供じゃなく、最初から俺が一人でいたときに突っ込んだ事にして欲しい」
これが響介の中で一番叶えて欲しい願いだった。響介は目を閉じる前の光景を思い出した。自分が庇った子供とその母親が自分に駆け寄り何度も何度も謝罪の言葉を言っていた事。
それだけじゃない。誘ってくれた友達も自分が誘ったばかりにと言わん表情で見ていた事。
自分のせいで彼らに悲しい思いをさせてしまうことは響介には耐え難いものだった。
それを聞いた神様は優しく微笑み
「お前はそういう人間だったな。わかった」
「ありがとうございます」
「では転移を始める。向こうの世界で貴殿に幸あらんことを」
こうして響介はこの世界に転移したのだった。転移した神様は改めて響介のステータスを確認するがここで問題が発生した
「さてと彼の能力は、へ?」
響介のステータスを見てすっとんきょうな声をあげ素に戻ってしまい
「えっ?ちょっとまってこの子、いくら反映されるからって色付け無くても滅茶苦茶強くない!?」