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151話 再燃 若、エルフの国潰して来て宜しいですか?

鴻上組、外道エルフ共を皆殺しにする。




「うわぁ〜、凄いね〜」

「うん」

「なんと圧倒的な…」

「本当にアイツラ人間か?」


 潤樹達三人に戦闘を任せていたライミィ達は目の前の圧倒的な戦いに感嘆の声を漏らしている。その後ろで


「「「ジュンキく〜ん!」」」

「あの眼鏡イケメン、涼しい顔して首へし折ってるのカッコいいわぁ」

「凄いわ!あの筋肉イケメン、筋肉で剣を受け止めたわよ!」


 面食いラミア達は先程の殺意は何処へやら皆黄色い声を上げて潤樹達を応援する位一方的で手出し不要な殺戮劇であった。


「安心しろネロ。俺含めてみんな人間だ」


「お前が一番人間じゃねえんだよ!お前含めてあいつらの戦闘力おかしいだろうが!」


「戦闘力高いのは仕方ない。実家の組はいいとこの土地も随分持ってたし稼いでる店の守代貰ってる分狙ってる連中が多いから必然的に強くなるし、何よりも兄貴達の戦闘訓練は本当に地獄みたいだったからな」


 まあ、俺は四歳の時から教わってるからなんともないがと語る響介にネロはそれ以上触れなかったしなにより


(どんだけだったんだよキョウスケの実家…、魔族より殺伐としてるだろ…!)

 

 響介の実家、任侠一家鴻上組に対して畏怖の念を抱かずにはいられなかったネロであった。そんな事を考えてるうちに


「若ぁー!終わりましたぜー!」


 一番派手に暴れていた太一郎が使っていたエルフの兵士の成れの果てを投げ捨て手を振り知らせて来た。黒光りする筋肉には生傷が多いがその全てが皮が切られているだけで全て筋肉で防いでいた。


「…他愛もない」


「日本の極道のほうが手応えあるやろ?」


「…ああ」

 

 エルフ共の骸を足蹴にし涼しい顔をして駄弁りながら潤樹と眼鏡を掛け直しながら憲剛が太一郎と肩を並べて響介達の元へ戻る。

 その姿は堂々たるもの。響介の前に来ると潤樹が頭を下げ


「若、外道共の粛清終わったで」


「ご苦労さん。助かったよ」


 響介が労いの言葉を掛けた瞬間、三人は声援を送っていたラミア達に囲まれてしまう。皆一流モデルのような美貌を持つ彼女達に迫られ


 相変わらず顔を赤くする潤樹

 満更でもなく対応する太一郎

 パニックになり表情筋が更に強張る憲剛


 三者三様のリアクションを微笑ましく見ていた響介だったが何かに気が付いた。


「ん?」


「どしたのキョウスケ?」

「どうなされましたか?」


 ライミィとステラに声をかけられた響介が見ていたのはエルフ共が持っていた遠征用の荷物だ。響介は何かを察し聴覚スキルを使うと


「…あの荷物の中に何かいるぞ」


 そう呟くとライミィも熱探知スキルを使う


「…ホントだ。あそこの木箱の中に何かいる」


 賑わうラミア達から離れて響介達は反応があった木箱へと近付く、見た所人一人分入れそうな箱であれだけ潤樹達が暴れていたはずだが無傷で原型を留めていた。響介達の行動に不審に思ったオリビアとアリスも付いていくと


「…この息遣い、寝てるな。しかもこれは」


「やけに体温高いし子供?」


「キョウスケ様ライミィ様どうしますか?」


「取り敢えず中を改める。ステラ開けてくれ」


「畏まりました」


 響介の指示を受けステラは木箱の蓋に手を掛けて恐る恐る開く、中を見てステラの顔色が変わる。


「皆様大変です!中に衰弱した子供が!」


 そのステラの慌てように反応した響介達が中を見るといたのはまるで浮浪児のようなボロボロの身なりに痩せこけて泥のように眠りについているエルフの子供だった。






 その後、このエルフの子供を保護し屋敷へと戻った響介達。保護したエルフの子供はアリスとエリー、アステルが看病しており一行はリビングにて


「でも、どうしてあんな所に子供が?」


「それはわからねぇ。でもあの様子は」


「どうみてもホームレスやんな、あれ」


「…ああ」


 考えれば考えるほどあの娘が置かれている状況が分からずぐるぐると回る。その様は会議は踊るされど進まずの如く、そんなリビングとは対象的にキッチンでは太一郎と太一郎から教わっているシュテルが料理を作っている。あの少女が起きた時に何かしら食べるだろうと言う太一郎の言は正しいと響介を始め皆理解しているから誰も異論は無い。そんな時にアリスがリビングへとやって来た。


「アリスお義母さん?どーだったのあの娘?」


 ライミィがアリスに尋ねるがアリスの顔色はよろしくない。複雑な感情が入り混じるその表情に憲剛はただ事ではないと感じアリスを席まで案内する。


「どうしたんですか?アリス義母さん」


「…あのエルフの娘にヘリッヌリングを使ってみたの」


「ヘリッヌリング?なんだそれ?」


「確か人の記憶を見るって魔法よねアリスちゃん」


「ええ、そうよ」


 そう肯定しアリスは一つ深呼吸をして平静になろうと努めている。その様子に響介達はアリスが口を開くまで静かに待つとアリスは意を決して話し始める。


「あの娘、どうやらエリーの妹みたいなの」


 場に衝撃が走り響介達皆は酷く驚いた。そこにライミィとオリビアの母娘が矢継ぎ早にアリスに尋ねる。


「ちょっと待ってアリスちゃん、エリーちゃん以外にも子供はいたの?」

「いいえ、私が産んだのはエリーだけよ」

「じゃあなんでエリーの妹なの?」

「それは…」


 アリスが言い淀むがその答えを理解した響介達日本から来た男達がアリスの変わりにライミィとオリビア、アステル達に説明をするべく会話に割り込む。


「みんな落ち着いてくれ。アリス義母さんの言い分を汲むとエリーの腹違いの妹ってことだと思うぞ」


「「腹違い?」」


「ようは異母姉妹ってやっちゃ。父親が一緒なんやろ」


「…つまりは今のフルドフォルクの国王の娘か」


 そう補足するとアリスが続きを話してくれる。


「あの娘の名前はアイリス。キョウスケ君達の言う通り元夫と一緒に私を罵って地位を追い出してくれた愛人のうちの一人との娘よ」


 当時を思い出したのかアリスの声色には怒りが混じる。しかしその後の話しで怒りの理由が語られた。


 あのエルフの娘アイリスは生まれ持った魔力が弱くそれに対し元夫は憤慨し愛人はそんな国王のご機嫌を取る為アイリスに対して酷い虐待を繰り返していたようだ。食事も着る物も満足に与えず、生まれてからずっとアイリスは地下室で軟禁生活を強いられていたようだ。

 アイリスと名付けたのも虐待しても罪悪感が湧かないようにあえてアリスに近い名前を付けたそうだ。


 アリスからの話しを聞いた響介達はフルドフォルクの現王家に対し激怒した。しかし響介には一つ疑問が


「アリス義母さん、こんな事を聞くのを失礼の上質問します。何故アイリスは生かされたのですか?エリーの時は死産として処理されたと伺いましたが?」


「それはねキョウスケ君、王家が死産だと連続して流布するのは体裁として許せなかったのよ。元夫はプライドが無駄に高くてね、良からぬ噂を立てられるのを嫌がってアイリスは病弱な子として城から出さず、一部のエルフしか存在を知らず隠蔽していたのよ」


「アリスお義母さん私からも率直に聞くけどいい?じゃあなんでエリーは死産ってされていても殺されなかったの?」


「それはエリーは生まれ持っていた魔力がとても高かったからなの。それを惜しいと思いエリーから魔力を抜き取る方法を詮索していたの」


「クソが…!」


 憲剛が皆の胸中を表すように怒りを吐き捨てる。だが響介達以上に憤りを感じているものがいる。


「あの男は…!何度同じ事を…!子供を、命を何だと……!!」


 アリスだ。銀色の瞳を怒りの感情一色にさせて怒髪天を衝いていた。

 エリーのみならず自分の子供を見栄や体裁の道具としか捉えていない元夫やそれを否定しない自身の両親始めとした王家に心底怒りを通り越し呆れを通り越し一周回って完璧にブチ切れていた。その時ふと憲剛から


「…若」


「なんだ憲剛?」


「エルフの国潰して来て宜しいですか?」


 この言葉に驚きはしなかった。寧ろ響介も出来ることなら今すぐ出向き王家事国を叩き潰したい所だが


「落ち着け、今は情報が必要だ」


 響介は努めて冷静に口に出して諫める。しかしそれに対し声を上げたのは潤樹だった。


「なんでや若!こんな外道野放しにすることなか!今すぐ「落ち着けと言っている」

…!」


 荒げる潤樹の言葉をドスの効いた響介の言葉がピシャリと遮るとリビングは静まり返り潤樹と憲剛に至っては顔からつーと冷や汗が流れ緊張感が漂う。


 2人には響介のその姿が響介の祖父である組長孝蔵と重なったからだろう。


「言い分は分かる。ライミィ達も同意見だろうし俺もそうだ。だが向こうの情勢やアリス義母さんが保護していたダークエルフ達の安否が分からない以上下手に動けば奴等げどうは何をするか解らん。だからセフィロト伝いになるが今は情報を精査する必要がある」


 淡々とこれからの方針を話す響介の言葉を皆が静かに聞いている。響介の懸念しているのはアリスが保護していたダークエルフ達だ。外道というものはたちの悪い外道程下衆な行為を平然と行う。ダークエルフ達を迫害していた奴等だ盾代わりや人質に使ってくる可能性もある。

 響介の考えとしてはこれらの事に裏取りをし目処を立ててから


「状況がある程度判明次第こちらも動く。その時は潤樹、憲剛、二人には改めて動いてもらう。頼むぜ」


 響介の言葉を受け潤樹と憲剛は納得してくれた。そこへ厨房にいた太一郎が焦ったように


「えっ、若!俺は!?」


「太一郎はオリビア義母さんとアリス義母さんと協力してアイリスの食育だよ!しっかり美味いもん食わせてやってくれ!」


「おう!任せとけ!」


 即座に二つ返事で答えていた時、ふとリビングの扉が開かれた。入って来たアステルは深くお辞儀をすると


「失礼致します。皆様アイリス様がお目覚めになりましたのでお連れ致しました」


 エリーに連れられてリビングへやって来た栗色の髪をシニヨン風に纏めエリーと同じ青みかかった銀色と群青色の刺繍が入ったラミアの民族衣装を来たアイリスだ。アイリスは不安そうにキョロキョロとしていたが


「アイリス、大丈夫」


 そう言ってアイリスを勇気付けるとエリーはアイリスを席に案内し丁度響介の前に座らせると


「アイリス、お兄ちゃん」


 アイリスは不思議そうに正面に座る響介を緑色の瞳を真ん丸にして見据える。アイリスは響介に対して何かを感じ取ったのか怯えたり怖がったりといった様子は見られない。そんなアイリスに響介は努めて優しく語りかける。


「初めましてアイリス。俺の名前は鴻上響介、響介で構わないよ。俺達は衰弱した君を見つけアリス義母さんから事情を聞き保護させて貰った。これからはこの屋敷を自分の家だと思って暮らしてほしい」


 そう優しく言い伝えるとコクリと頷くアイリス、その直後ぐぅと音が鳴る。それを察し


「まぁ、細かい話しは後だ。今は美味しいものを食べて欲しい。太一郎」


「お待たせいたしやした!アイリスのお嬢卵雑炊になります!」


 太一郎がお盆に乗せ持って来たのは作りたてが一目で分かる程湯気が立つ卵雑炊。アイリスの体調を考え食べ易く栄養も考え今ある調味料でさっぱりとした中華風に味を整えた一品だ。


「アイリス、熱いから、ちゃんと冷ます」


 アイリスは緊張しつつも雑炊の側にあったスプーンを取ると恐る恐る掬いふーと冷まして一口食べて一言


「おいしいです。ごはんってあったかいんですね」


 頬を綻ばせて喜ぶアイリスのこの一言で一同の怒りが再燃したのは言うでもない。




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