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148話 動向 敵の動き

太一郎と憲剛、エガリテに来た。




「で、さっきアルのとこのラヴァナ達の動向探ってるヴーレさんからなんだけど、どうやらエルフ達の方含め動きがあったようだ」


 魔王アルフォンスに報告に行って帰ってきた響介がリビングに皆を集めてアングリフ城で聞いてきた事を話し始めた。


「まずラヴァナ達。奴らはこっちの意図通りアンデット化したコンバーテの騎兵団の兵士達を操霊魔法ネクロマンスで操り始めた」


「操り始めた。って事はまだ完全じゃないのねキョウスケ」


「そのようだライミィ。アルによると二週間前に俺達が壊滅した騎兵団を見つけたラヴァナ側の魔族が発見し先日から操霊魔法を行使し始めたようでアルの見立てじゃ全てを管理化に置くのに一ヶ月はかかるそうだ」


「一ヶ月?そんなにもかかるものかしら?」


操霊魔法ネクロマンスは詳しくないけどある程度魔力があるならそこまで時間はかからない筈」


 響介の言葉に魔法の造詣が深いオリビアとアリスが声を上げた。一流の魔導師と言える母親二人は違和感を感じるのが速い。流石だと響介は心中で納得し


「オリビア義母さんとアリス義母さんの疑問は最もです。時間がかかるのはラヴァナ当人の魔力の低さに起因しています」


「「魔力の低さ?」」


「うん。まおー言ってた。あの犬面、魔力ないって」


「犬面?」


「ラヴァナの事ですジュンキ殿。ラヴァナは人犬の人獣族ライカンスロープなんです」


「ライカンスロープ…、動物人間かいな。しかも犬て、そこは狼ちゃうんかい」


 響介達が魔族領に来たばかりの頃にラヴァナの事を聞いて最初に思った言葉を潤樹が口にすると響介達はウンウンと頷き何処から笑い声が溢れた。


「まぁ犬面なのは一先ず置いといて、ラヴァナは自身の魔力保有量の低さが起因して一日に操霊魔法ネクロマンスを行使するのに限りがある。それに管理下に置いたとしてもまずこっちには来ない」


「あら?どういう事かしら?」


「それは俺から話すよ」


「ネロか、どういうこっちゃ?」


「まずラヴァナが手を組んでるのは魔族領の西側で人間と戦ってるキマリスって魔族がいてよ。まぁこれ見てくれ」


 そう言ってネロが広げたのが大陸図で魔族領を記したもので所々に線引がされているものだ。魔族領中央に魔王アルフォンスが収めるアングリフ城とその西側を中心に集合都市カサブランカとダンジョンが広がりカサブランカやダンジョンが無い東側に響介達がいる鴻上組の本部である鴻上邸と世界樹の森がある。

 その中でネロが示したのは人族国家と魔族領との間に区切られて広がる森と魔王アルフォンスの統治外と思われる西側の空白部分。そこに『キマリス』と書き込むと


「キマリスの野郎はこの間俺達が壊滅させた騎兵団がいたコンバーテと何年もやり合ってんだ。前までは膠着状態だったんだがラヴァナ達の合流とラヴァナの操霊魔法ネクロマンスで戦力が増えた事で好機と見て、コンバーテはコンバーテで王族が殺られたってんで今バチバチに殺り合ってんのさ」


 そう語るネロ、どうやらあの騎兵団が壊滅した場所を流したのはこの為のようだとライミィ達は理解し


「ははっ、エゲつないなぁ若。潰し合いって事っすか」


 潤樹は愉快そうに笑う。渡世でも争っている両方の陣営が敵なら漁夫の利を狙うのは勿論の事、常識である。日本なら横槍が入れば頭いい奴らが何か裏を勘繰るだろうが争っている当人達は明確な敵同士。

 方や戦力が手に入りの侵略、方や仇討ちや信仰による大義名分、戦わない理由も歩み寄る理由も無いのだ。


「敵の敵なら味方ってのは定石だが、それは双方に歩み寄る姿勢がある時だけで絶対ではない。気付いても奴らが手を組むなんて考えられないからな。逆に考えればいい戦わせちゃってもいいさってな、好きなだけ戦わせてヘトヘトになった所を俺達が横から掠め取りゃあ万々歳さ」


「アルフォンス様も同じ意見だ。ラヴァナの野郎は確実に潰すが使えるものは使う、ラヴァナがいなくなったらどうせ次はコンバーテの人間共がこっちに仕掛けてくるんだ。ならこっちの準備が整うまでラヴァナ達には派手にやってもらおうぜ」


 戦いが長引けばその分消耗する。

 人も、物も、神経も、そのことを実家で目の当たりにしていた響介ならではの立ち回りだ。


「まぁ、ラヴァナ達はアル達が目を光らせてるからいいとして俺達が当面の敵としてみるのはエルフ達だ」


 響介の言葉に皆緊張感が走りアリスの表情が固いものになった。そんなアリスに気が付き響介は以前言った事を思い出し改めて宣言する。


「国から追われ、追い詰められているエリーとアリス義母さんを見捨てるなど任侠者の恥晒しだ。鴻上を名乗り組を作った者として、鴻上の人間として五神の息のかかっているエルフ共がこの地に武力をもって侵略すると言うのなら例外なく叩き潰す」


 この言葉にアリスは驚いておりふと潤樹が口を開いた。


「若の意向なら俺は異議あらへん。組の者として、敵としてうちと事構えるなら殺るだけや」


 そう口にした潤樹の目は覚悟が決まっている目をしていた。先日自身の身の上を話した後アリスから身の上話しを受け潤樹はエリー親子に同情していた。

 立場は違えど肉親かぞくから虐げられていた身、他人事とは思えなかったようで静かに怒っていたのが印象的だった。


「大丈夫よキョウスケ君。私達ラミアは皆戦う準備は出来てるわ」


「申し訳ありませんオリビア義母さん。守ると大見得切った身でありながら助力を頂いてしまい」


「そんな事言っちゃ駄目よ。自分達の住処は自分達で守るもの、それにユグちゃん達ドライアドの協力もあって回復アイテムは沢山あるわ」


 ドライアド達は戦う事は苦手だ。しかし世界樹の精霊故『精霊魔法』なるものを持っている。精霊のみが扱う事が出来るこの魔法は謎が多く全容は判明していないがドライアド達の精霊魔法は回復に関わる物であれば治癒魔法でも回復薬ポーション生成など幅広くサポートに適しており彼女達にも回復薬ポーション生成を手伝ってもらい定期的なアルフォンス達の納品を除いてもかなりの備蓄が出来たのだ。


 戦う上で物資は問題ない。


「ラミアのみんなはレベルも40を超えてる娘しかいないわ。背中は任せて頂戴」

「大丈夫だ。アルフォンス様に話しを通してハリエット達亡霊騎士団を何時でも派遣してくれるってよ」


 戦力も申し分無い。

 戦う覚悟はもう出来ている。


「ま、でもあの森抜けるのは厳しいでしょ?」


 ライミィが言っているのはマルコシアスが作った森ダンジョンだ。凶悪な魔獣系の魔物蔓延る森を突破するのは容易ではない。それにその森と世界樹の森の間にはラミア達の要望で作った狩りの森と呼ばれる森もあり、その森には森ダンジョンから侵入した場合に発動する対侵入者用のトラップが仕掛けられており発動した場合世界樹の森にいるラミア達とダンジョン主であるマルコシアスに知らされるようになっている。

 

「ライミィの発言は最もだ。だが最近マルコシアスの作った森を越えようとして部隊を編成しているとの情報があってな」


「何ですって?」


「いきなりそんな森が出来たんです。調査もされますか」


「セフィロトによるんだけどよ、派遣した調査隊二つは例外なく全滅。三つ目の調査隊が全滅した調査隊の遺品を持ち帰った事で本腰を入れるってさ」


「ああ、だが奴ら近いうちに必ず仕掛けてくる。皆には負担をかけるが身勝手な仁義外れを許す事は出来ない」


 静かに話す響介に皆が静か注目する。

 その響介の今の姿は組長と名乗るだけの風格、否威圧感があった。


「もう一度言う。エルフ共がこの地に侵略すると言うのならば誰一人例外なく叩き潰す。皆、頼むぞ」


 そう言い切った響介にライミィ達は首を縦に振り答えた。話しが終わった時に


「おーい!キョウスケー!」


 外から誰かが響介を呼んでいる。外にはマルコシアスとリーゼがおり通されている点でも顔見知りのようだが


「あの声は、ベラさんか?」


「だね〜、どしたんだろ?」


 普段狩りの陣頭指揮を執っているベラが来るのは珍しく、何だろうと思いつつ出る響介達だった。



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