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145話 屋敷にて このメイド達はどちら様?

響介達、ドライアド達と出会う。




 響介達が帰ったら突如鴻上家の屋敷に現れたコンバットメイドドレスに身を包む美少女メイド4人。響介達が不在の中何があったか、


 時を戻そう。






「ステラはん、そんなやり方あかん。そない力任せにしたらステラはんの力じゃ痛めてまうで」


 響介達が原初の世界樹に向かっている頃、洗濯用魔導機を使い洗濯を終え庭先へ洗濯物をステラに教えながら干しに来ていた潤樹。潤樹はシーツをバサッと音を立て慣れた手付きで干していく。


「こないやって完璧に脱水せずにやればシワも少なくアイロン要らずや」


「ジュンキ殿はかなり手慣れていますね」


「ああ、俺部屋住みやったからなぁ。カチコミは勿論やけどこない雑用もやっとんたんや」


「部屋住み?」


「一言でいや住み込みの木っ端使いや。俺は高校出てから若のいる鴻上組の門を叩いて組に入ってな、俺は実家から縁も切られて住むとこも無こぉたし助かったわ」


「えっと、ジュンキ殿のようなキョウスケ様の舎弟さんは皆様部屋住みとやらを?」


「そやな、若の舎弟の俺と津上と乾はみんな若切っ掛けの組入りやったから組本部の部屋住みやったんや。まっ、津上は料理やっとたから作るもん美味かったし乾は掃除や経理やっとたし俺等3人は上手く役割決めてやっとたわ。あっステラはん、汚れんで」


「も、申し訳ありません!」


 その後も潤樹はテキパキ指示しながらステラと洗濯物を片付けていると


「ステラちゃーん、ジュンキくーん、いいかしらー?」


 庭で掃除をしながらアリスとお茶をしたくティーセットを整えていたオリビアから呼ばれる。ステラと潤樹は残りの洗濯物を手早く片付けオリビア達の元へ


「以下がなさいましたかオリビア様」

「どないしたんやオリビアの姐さん」


「忙しいところ悪いわね、実はアリスちゃんとこんなのを見つけちゃってね」


 そうして案内された庭の隅っこ、屋敷家屋の直ぐ側の地面をまじまじと見ているアリスが


「お待たせ致しましたアリス様」

「アリスの姐さん、何見とるんで?」


「ステラさん、ジュンキ君、これなんです」


 2人が見たのは伸びに伸びた雑草や土に覆われていたであろう錆て汚れた鉄製の蓋だった。


「何でしょうか?人1人分の大きさありますが」


「点検口ちゃうんすか、これ」


「それが分からないのよねぇ。それにしてはやたら厳重そうだし」


「まぁ確かに」


「オリビアさんどうします?」


 どうしましょうかと首を傾げてしまう姿が絵になるアリスお母さん(ハイエルフ)。そんなアリスに


「キョウスケ君達に手間かけさせるのも悪いしこの際私達で調べちゃいましょうか」


 何処かウキウキした様子なオリビアお母さん(ラミア)。屋敷で見つけた以上放置するのは得策ではない、それに響介達に手間をかけさせたくないと言うのは一理あり調べる事にし潤樹は蓋の取っ手に手をかけ持ち上げようと力を入れる。しかし


「ふぅぅぅん…!おっも!!なんやこれ!?」


 鉄製の蓋は錆付いて固着しているからか重く手応えも潤樹では開ける事が出来なかった。すると


「ジュンキ殿、私がやってみます」


「ステラはん頼むわ、ステラはんのほうが力あるやろ」


 次は単純な腕力なら鴻上組現トップのステラがやってみることに、ステラは蓋の取っ手に手をかけると


「ふん!!!」


 その持ち前のパワーでピクリと動かなかった鉄の蓋をこじ開ける事に成功。


「流石ステラちゃんね」


「お褒めの言葉ありがとうございますオリビア様」


「なんや?階段か?」


「下に続いてますね…」


 アリスと潤樹が見つけたのは下へと続く階段。如何にもな雰囲気が出ているが


「…取り敢えずなんの気配もないですわ」


 覗き込んだ潤樹が簡単に確認するのを見てどうやら魔物が蔓延るダンジョン化はしていないと察するオリビアは


「取り敢えず降りて見ましょうか」


「明かりも何もなさそうですね、なら私は私とジュンキ君に暗くても大丈夫なように『オウルアイ』をかけときますね」


「えらいすんませんアリスの姐さん。ステラはん自分先行きますから後ろ頼んます」


「畏まりました」


 4人は意を決し降りて見ることに。階段は一本道のようで真っすぐ続いており4人はどうやら屋敷の地下室以上の深さがあるようだというのが分かり階段を下る。階段を下っていくと1つの鉄製の扉が現れ


「ここで終わりみたいやな」


「ここは何なのでしょうか?」


「ダンジョン化はしていないみたいね、ただ魔力が凄いわね」


「魔力が凄い?」


「そうですねオリビアさん。どうやら空間魔法の魔力が集まっているみたいです」


 魔力を感知出来るオリビアとアリスが何らかの魔力を扉の先に感知したようでその反応から魔物の類ではなさそうなのは分かった4人。潤樹は扉に手をかけ


「ほな開けまっせ」


 扉を開いて中へ入る。そこにあったのは


「なんやこれ?銀色の筒?」


 いくつかの魔導機と人1人入れそうな4つの銀色の筒だった。淡い光を湛え静かな駆動音がするそれを見て最後に入ってきたステラは呆然とする。


「何かしらこれ?」


「空間魔法の魔力はこれみたいですね。何処からか流れているみたい」


 オリビアとアリスが魔力を確かめ考察する中、様子がおかしいステラに気が付いた潤樹。


「ステラはん?どないしました?」


 潤樹の声に反応しオリビアとアリスもステラを見る。呆然としていたステラは我にかえると


「待って下さい。これ、プレイスじゃないですか…!?」


「「「ぷれいす?」」」


 聞き慣れない言葉を受けて3人は狼狽えていたステラを落ち着かせプレイスなるものの説明を聞いた。


 プレイス。それは人造人間ターロスを産み出す魔導設備である。かつて魔導機技術絶頂を迎えたが500年前に起きた神災しんさいによって技術が失われてしまい


「で、今現存する人造人間ターロスとやらはステラちゃんと専用の魔石に封じ込められたものと魔物化したもの」


「はい、概ねその通りで御座いますアリス様」


「じゃ、なんでその人造人間ターロス造るもんがここにあるんや?」


「それは分かりませんジュンキ殿。ですがひょっとしたらこのお屋敷は人造人間ターロス技術関係者が暮らしていたのかもしれません」


 自分でいったがそう考えると今更ながら合点がいったステラ。屋敷の中にあった魔導機設備、魔導機に詳しいネロが修理したから使う事が出来ているがそもそも何故あるのかを考えていなかった。つまる所魔導機を扱う事が出来る者で尚且つ人造人間ターロス技術に精通していた者が住んでいた事を意味する。目の前のプレイスを見ていたオリビアが


「でも、動いてるって事は中に人造人間ターロスがいるのかしら?」


「そうですねオリビア様。何処かにコントロールパネルが「これかしら?」ちょっ、アリス様!?」


 流石エリーの母親と言うべきか、中々にマイペースなアリスがコントロールパネルを操作してしまいプレイスを起動させてしまう。プレイスが空き始め中が僅かに見えた時中身が判別出来たステラにやるべき事が


「ジュンキ殿申し訳ありません!」

「!?」


 潤樹の目を手で覆い視界を遮る


「な、なんやステラはん!?」

「申し訳ありませんジュンキ殿!プレイスの中でスリープ状態の人造人間ターロスは全裸であり、尚且つ4つのプレイスにいた人造人間ターロス全てが女性タイプの為申し訳ありませんが視界を遮らせて頂きました!」

「なんで裸やねん!わこうた!もう目ぇ瞑ったから手を離してもええで!後は外に連れてもらえたら」

「わ、分かりました!」

「ステラさん、私が連れていってついでに何か着る物持ってきます!」

「私も手伝うわ」


 そうしてオリビアとアリスが潤樹を連れて屋敷へ戻って階段を上がっていった。プレイスから開放された人造人間ターロス達は皆目覚めたようで身動ぎし瞳を開くと皆ステラを認識し


「「「「おはようございます、マスター」」」」


 揃えてステラに挨拶をした。それに対してステラはカーテシーを披露し挨拶を返す。


「おはようございます。私の妹達」


 ドタバタしたが取り敢えずステラは事情を知りたく目覚めたばかりの人造人間ターロスと対話を試みる。


「貴女達は第何世代目の人造人間ターロスになりますか?」


 ステラの質問に暗い灰色の髪に緑目の美少女と言うに相応しい見えの人造人間ターロスが口を開く。


「はっ。私達は第二世代後期生産型になりますマスター」


(第二世代後期生産型、どうやら彼女達が生み出されたのは私より前という事でしょうか?少なくとも私と同じ神災前みたいですね)


 第二世代後期生産型とは激化する当時の国家間の戦いの中、戦闘用に改良された第二世代型の人造人間ターロスを前線への対応力及び対人対魔族を想定し各種防御力を向上させた人造人間ターロス。その高い防御力から主に拠点防衛や要人警護で運用されたとプトレマイオス遺跡の資料に記されていたのを思い出した。

 だが今はそんなことは些細な事、彼女達の間違いを正す事から始める事にしたステラは思案を中断し彼女達に向き直る


「貴女達に訂正があります。まず私も人造人間ターロス、貴女達のマスターではありません。私の名はステラ・コウガミ・プトレマイオス。主であるキョウスケ様に仕える従者です」


人造人間ターロス…、貴女も?」


「はい」


人造人間ターロスなのに、名前…」

「いいなぁ…」


 彼女達の反応をステラは知っている。番号でしか呼ばれない人造人間ターロスにとってヒトのように名前で呼ばれることは憧れなのだ。

そしてステラは知っている。それが存在意義になることを


「主であるキョウスケ様から賜りました。貴女達もキョウスケ様達に仕えるなら必ず名前を頂けるでしょう」


 そう彼女達に諭すように優しく微笑み語ると使い道無かったからとコンバットメイドドレスを持ってやって来たオリビアとアリスが人造人間ターロス達全員に着せ屋敷へと案内する。その時に表にいた潤樹とアングリフ城から帰って来たネロを響介と間違えた戦闘用の人造人間ターロスの美少女達が有り余る力で押し倒す勢いの如く殺到したりと響介達がいないがため騒がしい鴻上邸だった。






 時を元に戻そう。

 そして場面は冒頭の響介達3人が屋敷へ帰って来た時点へ、4人のメイド達の事を響介達に説明するステラを


「この屋敷の下に」

人造人間ターロスのプレイスがあって」

「そのお姉ちゃん達、いた」


「その通りでございます」


 見事三行で纏めた鴻上夫妻と妹分。よもや稼働していたプレイスがあるなぞ露も思わなかった響介はどうするかとライミィ達に相談しようとした時


「なあライミィ」


「なに?」


「あの人造人間ターロス達、めっちゃ俺の事見てんだけど…」


「だよね〜」


 それは人造人間ターロスからのもの、4人の美少女の人造人間ターロス達は皆熱い羨望の眼差しで響介を見ており、それに加え何やら期待しているような感情も混ざっているのを響介は感じた。


「なあステラ」


「はい、キョウスケ様」


「なんであの人造人間ターロス達は俺の事をあんなに見てるんだ?」


「彼女達はキョウスケ様達に名前を付けて欲しいのかと」


 ステラが言うには彼女達と会話をした時に名前の話題になった時の食い付きが強く名前を付けて欲しいのだそうだ。その中で


「で、俺と間違えて押し倒されたネロが全身むち打ちで動けなくなり潤樹に担がれたと」

「その前科があってしっかり言い付けて大人しくしてもらってるってわけね」

「ネロは犠牲になったのだー」


 時折不憫に遭遇するネロに心の中で合掌をし本題に、名前を付けると急に言われても犬や猫に付けると訳が違うのだ


「名前か…」

「取り敢えずエリー?ゲロシャブは禁止ね?」

「むぅ」


 然りげ無く先にダメ出しをするライミィとむくれるエリーを横目に見て響介はふとステラを見て


「閃いた」


 天啓が舞い降りた。それを見てエリーは尋ねる


「どんなの?」


「ステラの時思い出してな、こんなのどうだろう」


 その後3人にも話して概ね好評で彼女達の名前が決まりステラに彼女達を呼んでもらう。メイドの格好をした彼女達は何処か嬉しそうに響介達の元へ


「皆の事情はステラから聞いたが、俺達が付けても良かったのか?」


 響介の問にこの4人のリーダー格らしいステラと主に対話したチャコールグレーの髪をした緑眼の人造人間ターロスが口を開いた


「はいキョウスケ様。ステラメイド長の貴方様方に対しての会話を聞いて私達に対しても真摯に向き合って下さるお優しい方とお見受けしました。それであれば私達も貴方様に名を賜りたい所存です」


 いつの間にメイド長に就任したのかとライミィが軽く突っ込みを入れる中彼女達の真剣な名眼差しを、すべてを委ねる覚悟を見て響介は


「分かった『アステル』これから宜しく頼む」


「『アステル』…?」


「君の名前だ」


 アステルと名付けられた人造人間ターロスは一つアステルと呟くとチャコールグレーの髪を揺らし何処か嬉しそうに微笑む


「はーい!キョウスケ様ぁ!私は私は?」


 今まで黙っていた青みが入ったアッシュグレーの髪色をした人造人間ターロスが心房堪らずといったように響介に橙色の瞳を上目遣いでねだるように聞いてきた。今まで黙っていた分大人しいと思っていたが彼女は以外と口を開けばテンションが高い人格のようだと察した響介は


「君は『シュテル』だ」


「『シュテル』、素敵なお名前です!ありがとうございます!」


 やったぁと花が咲いたように笑うシュテル。どうやら彼女は感情表現が特に豊かなようだと響介は伺えた。最後に響介に話しかけたのはホワイトグレージュの髪を鏡合わせのようにアシンメトリーに整えた双子のようにそっくりな容姿の人造人間ターロスの二人はモスグリーンの瞳を揺らし響介を見る。


「キョウスケ様」

「私達は?」


「右側に髪を流しているのが『エスト』、左側に流しているのが『レア』だ」


「ありがとうございますキョウスケ様。良かったね『レア』」

「良かったね『エスト』」


 うふふと揃って笑うエストとレア。4人共響介からの名前は皆気に入ってくれたようだ。


「良かった。皆気に入ってくれて」


「みんな女の子っぽい名前だもん。気に入るって言ったでしょ?」


「ああ、ありがとうライミィ」


「どういたしまして♪」


「ねぇねぇ、お兄ちゃん」


「どうしたエリー?」 


「なんで、ステラお姉ちゃん、見て、思い付いたの?」


 エリーの質問にライミィとステラも反応し響介を見る。しかしライミィが


「ステラの時って確か絵本だよね?確か…」


「恒星伝説ですね」


「そうそれ、ステラって星って意味だよね?」


「アステル、シュテル、エストレア、みんな『星』って意味なんだ」


「そーなの?」


「ああ、だからステラ見て思い付いた」


「キョウスケ様、本当にありがとう御座います」


 この日新たにメイドとなってしまった人造人間ターロス4人を屋敷に引き入れ更に賑やかになった鴻上邸。翌日から彼女らを率いるステラを彼女らから『ステラメイド長』と呼ばれ親しまれる姿を見ては穏やかに見ている響介達だった。



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