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138話 制裁 マウロの末路

響介一行、コンバーテの騎兵団を壊滅させる。




 自身の戦果の為にラミアの一団を襲撃しあまつさえ生贄と吐き捨てたマウロを始め戦いの国と呼ばれるコンバーテ王国の騎兵団。しかしその暴挙も鴻上組と協力者である魔王アルフォンスの親衛騎士団である亡霊騎士団の奇襲により指揮官であるコンバーテ王国第4王子マウロを除き全滅、一人残らず殺される事になった。そしてそのマウロも


「おい、起きろ下衆」


「ごはっ!?」


 下の肌着のみの姿で両手をロープで木に吊るされ足には死んだコンバーテ兵士が身に着けていた鎧を剥ぎ取り急拵えで作った重りを着け宙釣り状態で拘束されていた。その状態ですやすや眠るように気を失っていたマウロの顔面に拳を入れ叩き起す響介。折れ曲がっていた鼻は更に折れ曲がり歪むと痛みで気が付いたマウロ。周りは響介達、デュラハン、ラミアに囲まれていたがそれを知らないのかぎゃあぎゃあと喚き散らす


「お、お前ら!何をしているのか分かってるのか?!ぼ、僕にこんな事をして「うるさいわ」ぶふぉ?!」

「口には気をつけろよ、潤樹は俺以上に気が短いからな」


 聞くに耐えなくなった潤樹が頬に右ストレートを入れて歯を折る。

 下衆や外道といった連中は歯があると喋る、大人しくさせるのにも後に行う事を考えても丁度いいだろうとボロボロと口から血や歯を落とすマウロを一瞥する響介。

 潤樹に何発か殴られようやく静かになった所で響介は改めてマウロに問う


「おいマウロ・バカラテ・コンバーテ。てめぇはこのラミア達を襲いその命を奪わんとした。それだけではない。てめぇは以前から自身が王位を得るためあの騎兵団をけしかけて異教者狩りや魔女狩りを行っていた。その犠牲者達に対して悔恨の念はないのか?」


 響介の言葉通りマウロが行っていた愚行はこれが初めてではない。その辺りの裏も響介はネロを通じてセフィロトを使い調べて上げていた。

 コンバーテ王国はオウレオールでも信仰されている五神教会が信仰されておりそのうちの2つが主に信仰の対象とされている。


 一つはエルフの国フルドフォルクで主に信仰されている勝利の女神ミネルヴァ。

 もう一つはラヴァナに加担し魔族達に内部抗争をけしかけた戦いの神アイゴーン。


 オウレオールでは全て信仰されているがコンバーテは戦いに関する五神が信仰されている為友好的な関係らしくそのコンバーテ王国は王位を優れた武勲を建てた者に代々継承すると言うらしい。セフィロトの調べでマウロは年齢差を埋める為に武勲や戦果を稼ぐ為に積極的に異教者狩りと称した貧民狩りや魔族領で隠れて暮らしていると聞く魔女に対しての魔女狩りも行っていた。

 本来ならそんなものには兵は付かない、しかしそれは王家に繋がりがある兵だけの話しであり響介達が殲滅したあの第2騎兵団は平民若しくは準々々貴族の階級通称ヨーマンで構成されており全員が下卑た出世欲の持つ集団だった。


 類は友を呼ぶ。正にこいつらに相応しい言葉である。そのマウロに改めて悔恨の念を問う響介。だが


「ふざけるな!僕はコンバーテ王家のマウロ・バカラテ・コンバーテだぞ!その僕の輝かしい将来の礎にそこの蛇女共や魔女が生贄になれるこそが名誉だろうが!!」

 

 その後も戯言をほざき悔恨の念の欠片もなく再度唾棄すべき発言をするマウロ。その発言を受け改めて情けを捨て


「潤樹、始めるぞ」


「ダボに相応しいやり方しましょか」


 徐ろに響介と潤樹は吊るされ身動がとれないマウロに近付く、すると


「ふん!」

「はぁ!」


 吊るされたマウロを二人がかりで全力で殴り始める。


「ぎあぁ?!」


「おいおい。あんま喚くなや、その貧相なボディを鍛えてやってんやろ?」


 そう言う潤樹はマウロの腹に痛烈な蹴りを


「ぶふぉ?!」


「今更もう鳴き事は聞かねえぞ」


 潤樹に蹴られくの字になった身体に強制的に真っ直ぐにさせるように腰に飛び蹴りを入れる響介。

 これは鴻上組の兄貴衆の一人美藤がよく半グレなどの敵対勢力の口を割るのに行っていた拷問。足に重りを着けた対象を宙釣り状態にし殴り続けるという至ってシンプルなもので美藤曰くタイで実際に行われていた拷問を参考にしたものだそうだ。


「まだまだ序の口やで」


「ひぎゃぁ!」


 潤樹はローキックでマウロの膝を蹴り折る。するとマウロは悲鳴と共に苦悶の表情を濃くした。それは足に付けた重りが膝を蹴り折られた事で抑えられなくなり重りの自重により痛みを与え始め


「気を失えるとは思うな。ずっと殴ってやるからよ」


「おごぉ!」


 マウロの顔面に前蹴りを喰らわし残っている歯を折りにかかる響介。二人が殴っている間


「キョウスケ〜!」

「ジュンキく〜ん!」

「やれやれー!」

「ナイスヒット!」


 ライミィ達ラミアや亡霊騎士団のデュラハン達、ステラやネロが観客と化し歓声を上げる。その様は中世の処刑の如く、目の前の下手人マウロが殴られ悲鳴に近い声を漏らすたびに場は盛り上がる。そうして淡々と殴り続けていると


「ご、ごめ゛んな゛ざい゛……」


 殴られ続け顔面の原型を留めていないマウロが謝罪の言葉を漏らした。それを受けて


「なんや?まだ5分も経ってへんで?」


「ごめ゛んな゛ざい゛、もう…魔女狩りも…異教者狩りも…しません…王位も諦めます…だがら゛…だずげで……」


 あまりもの苛烈な責苦に耐えられなくなり僅か5分で音を上げたマウロ。涙を流し必死に響介達に許しを乞う。しかし



響介の答えは決まっている。



「お前は彼女達が平穏に暮らす為の必要な生贄なんだよ。お前が死ねば彼女達の平穏な将来が約束されるんだ。分かるだろ?」


 響介の言葉はマウロが吐き捨てた言葉だ。響介の言葉を聞いたマウロの表情は一瞬にして絶望の色を色濃くさせ染まる。


「お前が言っていた論理だ。勿論納得してくれるよな?」


 ドス黒い笑顔を向けて語りかける響介に対し絶望のあまり引き攣ったような声しか出せなくなり


「いくらでも泣き叫べ、オドレが出来るのはそれだけや」


 嘲笑うかの如く潤樹が冷酷で獰猛な笑みを浮かべてマウロに告げると再度響介達は殴り始める。

 響介と潤樹に殴られる度骨が折れ肌が裂けマウロの悲鳴上がり全ての音が合わさってその様はマウロのエレジーとなり奏でているよう、しかしどのような楽曲にもフィナーレは存在する。

 殴り始めて10分、マウロの息も絶え絶えになった時


「キョウスケくーん!」

「準備出来たぞキョウスケー!」

「キョウスケさんお待たせしましたー!」


 ベラ達が笑顔で手を振り例の壺をデュラハン達に協力してもらい持って来た。壺からは何やら蠢くような音が聞こえているがズタボロで前後不覚のマウロはただ水瓶を持ってきて何だと見る。


「じゃあ潤樹。そいつを降ろせ」


「了解や、手足はどないしましょ?」


「結んだままだ」


「あいよ」


 慣れた手付きで潤樹はマウロを降ろし響介に引き渡す。響介はマウロを担ぎ壺の入口へと向かって登り壺の中を確認する。


「おーおー、活きのいいのが揃ってるじゃあないすっか!皆さんありがとうございます!」


 マウロを担いだ状態でラミア達を始め協力してくれた皆に感謝の意を述べる響介。そこへ壺の中身が気になったライミィが身体を伸ばして中を覗くと


「うっわっ!なにこれ!」


 あまりの光景に驚きのあまりつい笑みが溢れた。それが気になったステラやネロ、潤樹がよじ登りライミィに続いて中を見ると


「これは、なんと面妖な」

「うわぁ…、夢に出てきそうだな…」

「ははっ、こりゃたまげたなぁ組でも見たことあらへんわ!」


 三者三様のリアクションを取るとラミア達やデュラハン達は共感したように頷いていた。そして困惑しているマウロに響介は中を見せると


「ひいぃぃぃぃぃぃ!?!?」


 身の毛がよだつ光景とは正にマウロが見ている光景だろう。顔色はすっかり青色一色に染まりガタガタと震え始めた。中身は


 蛇だ。それも一匹や二匹ではない


 壺の中は蛇蛇蛇蛇蛇蛇蛇蛇蛇蛇蛇


 蛇だらけで大小様々な蛇が壺の中を埋め尽くし蠢いていた。何匹かがマウロに気が付いたのかシャーと威嚇するとマウロは情けない声を上げた。そんなマウロに響介は告げる。


「これは蛇責めと言って昔俺の国にあった刑だ。対象を蛇の詰まった壺にいれて蛇の餌にするもので蛇は穴があったらそこに入る習性があってな、文字通りお前の穴という穴に入ってを内側から喰ってくれるって寸法よ。あっ、下の穴は力入れとけよ、ケツから蛇が入って内蔵喰われるのはキツイらしいから。あっはっはっ!」


 ここまで話すと響介とライミィ達皆が笑った。響介はマウロを改めて見ると最初の威勢は何処へやらその面は顔面蒼白と言う言葉を疑いたくなる程青を通り越し白くなっていた。そして響介を見るとパクパクと口を動かしていたが響介はにこやかに、そしてドス黒い笑顔を振り撒き殺意で満ちた深海よりもドス黒い青い瞳をマウロに向けて一縷の望みすら潰すかのように黙らす響介。そして無抵抗になったのを見逃さず大量の蛇がいる壺へとマウロを押し込んで叩き落とし蓋をすると


「ライミィ!」

「オッケー!固着リジット!」


 即座にライミィが蓋と入口に固着リジットを詠唱し蓋と壺を溶接するようにくっつけ外れないように固定する。壺はガタガタと動いたが


「おー、暴れてる暴れてる。無駄なのにね〜」

「泣き喚いたところで全ては手遅れだ。蛇も腹減ってたみたいだし一時間で御陀仏だろ」


 マウロの仕置は終わり後は死ぬのを見届けてだけとなりライミィと壺を眺めていると赤色の髪のラミアツバキと数人のラミアが響介達の元へとやって来ると


「キョウスケくんごめ〜ん、間違えて毒持ってるベノムスネーク入れちゃった」

「私も〜うっかり毒持ち調教魔法テイムしちゃった」


 テヘペロコツーんと笑って謝るラミア達を見てギョッとする潤樹。笑って誤魔化すということが嫌いな響介を知っているからか先程とは明らかに違う緊張感が潤樹に走る。潤樹の脳裏に浮かんだのは組に入って1年目、言い訳を重ねた挙げ句笑って誤魔化そうとヘラヘラ笑った新人組員にヤキを入れていた当時15歳の響介の姿。その事件以降『響介の若に笑って誤魔化すことはやってはいけない』と同期の津上と乾の三人で暗黙の了解が出来たのは言うまでもない。


 その若にととその時放った蹴りのキレを思い出した潤樹だったが


「まぁ、うっかりなら仕方ないっすよね、短期間で集めてもらった手前申し訳ありませんでした」

「ごめんね〜、ぶっちゃけあそこまで言われたらねぇ?」

「お気持ち、お察しします」


「へっ?」


 なんと響介は普段と変わらない様子でラミア達と談笑し始めたのだ。響介の様子に戸惑う潤樹に


「俺だってちゃんと理由あれば笑って誤魔化すのも許すぞ潤樹」


 少し困ったように説明する響介だった。響介はベラ達に向き直ると


「それならヤツは30分も保ちませんよね?」


「そうだな、キョウスケとジュンキがあんだけ殴ってたし10分で死ぬだろ」


「じゃあ、待ってる間に皆さんの撤収準備しましょうか」


「本当?助かるわぁ」


 そうして苦しむマウロを他所に響介達はラミア達の撤収準備を手伝う事に、ハリエット達も手伝ってくれ30分もしないうちに全ての準備が整った。


「皆さーん、揃いましたかー?」


「だいじょぶだよキョウスケ!」

「亡霊騎士団!こちらも全員揃っています!」

「こっちも大丈夫よキョウスケ君」


 皆準備が出来たようだ。響介は巨木によじ登り数を確認すると改めて見ると中々に壮観だが取り敢えず皆が揃っているのを確認したので仕上げに入る。巨木から捻りを加えながら飛び降りると


「よしエリー」


「はーい」


 良い返事を返したエリーに響介はマウロと蛇が同居している壺をペチペチと軽く叩く。ライミィ曰く「もー冷たくなってるよー」との事で響介も中から人間の呼吸音がしていないのは確認済みだ。そんな壺を


「このツボをここに転送してくれ」


 そう言って響介が見せたのは人族国家を記した大陸図で指を差していたのはコンバーテ王国の王城だった。響介の意図を理解したエリーは


「はーい。せんせんふこくだー♪テレポートー」


 事切れたマウロが入った蛇壺をテレポートで跳ばし壺は一瞬のうちに消え去ったのを見てどうやら上手くいったようだ。それもエリーが日夜魔法の訓練を積み空間魔法に磨きをかけたからなのは言うまでもない


「取り敢えずよし」

「よし」


「お前はなんちゅう事を…」


「気にすんなネロ。俺等がやったって証拠はねえんだから」


「まあな」


「ところでキョウスケ君?」


「はいはいなんでしょビオラさん」


「あいつらの死体はあのままでいいの?アンデットになっちゃうわよ?」


「ああ、その辺りは考えてますよ。リリスさん」

 

 響介は徐ろに黒みのあるピンクの髪の妖艶なラミア、リリスに声をかけた


「あらぁ、何かしら?」


「セフィロトにここの情報を流すことは出来ますか?」


 響介の真意を理解したリリスは含んだ笑いを見せ


「勿論よぉ」


「じゃあお願いします。後ありますかー?」


「悪いキョウスケ」


「どうしましたかベラさん?」


「…コイツラも連れってっていいか?」


 茶髪のラミアベラが差したのは響介達が来るまで戦ったのだろうベラ達が調教魔法テイムをかけ面倒を見ていたラプトルを始めとした魔獣の亡骸。亡骸は一箇所に纏められており皆眠るように佇んでおりそれを見た響介は穏やかに


「勿論です。向こうで弔ってあげましょう」


「ありがとな」


「じゃあみんなだいじょぶかな?」


 改めてライミィも確認する。


 響介、自分、エリー、ステラ、ネロ、潤樹、ハリエット達亡霊騎士団、母親ラミアのみんな、テイムした魔獣達と仲間達の亡骸、生き残ったラプトルの背中で眠るエリーの母親アリス、母親が道中で拾った魔女フランと面倒を見ていた幼いラミアの双子。みんないることを確認すると


「だいじょぶだねキョウスケ」


「よぉし、エリー頼む」


「うん!」


 エリーは自分達周辺を対象にテレポートを詠唱。皆は無事アングリフ城へと転送され響介達はオリビア達ラミアと改めて再会を喜ぶのだった。



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