134話 家族会議 世界樹の管理ってどうすんだ?
五神教会動きあり、狼王魔王も動きあり
響介達が世界樹を復活させ組にマルコシアスを迎えてから早一週間が経った。あの後日から響介達は世界樹の森と命名された群生地に趣き調査を続けていた。ネロは辺りを見回しながら羊皮紙にペンを走らせておりサラサラと書き加えて
「よぅし!マッピングおーわり!」
ペンで羊皮紙を叩いてんーと伸びをした。手に収まっている羊皮紙には復活した母なる大樹こと大きな世界樹を中心にした世界樹の森からマルコシアスが作った凶悪な魔物蔓延る森ダンジョン、間にある草原地帯の細かな詳細を記載した見事な地図が出来上がっていた。
「我ながらいい出来だ、仕事したぜ」
自画自賛しながらネロは森を歩く。半分吸血鬼の血が流れているダンピールの体質的に太陽の元を苦手としているが
「にしてもこの森は居心地がいいな、普段太陽登ってると調子悪いのにそんな違和感ねぇ。これも世界樹が関係してんのか?」
この世界樹の森に居るときに限っては何時も身体に来る倦怠感を感じられなかった。これも世界樹が影響していることかと考えていたが意外と単純な所があるネロは
「まっ、難しい事はわっかんねぇからいいか、ん?今日はあっちか」
森は奥から聞こえるピアノの音に気が付きネロはそちらに足を向ける。整地されたかのような歩き易い森道を少し歩くと少々開けた場所に出たネロが見たのは母なる大樹と呼ばれた大きな世界樹の麓で演奏する響介と
「〜♪」
響介の演奏に合わせて歌を歌うライミィの姿だった。元々から良く通る声を高らかにして歌うライミィの姿や鮮やかに演奏する響介の姿、時に2人で歌う姿は世界樹をバックにしているのもあるのか何処か引き付けられるような、魅入られしまうような感覚になってしまう。そんなネロに
「あっ、ネロだー」
「ネロ、そんな所に突っ立ってないで紅茶とテーブルを準備しましたからこちらへ」
一角にテーブルセットに設置し紅茶を淹れるステラと魔法で小型犬サイズになったマルコシアスと同じくらいのぬいぐるみサイズになったリーゼを抱えるエリーがいた。ネロは招かれるままテーブルに着きステラが淹れた紅茶を口にする。
「あっ、美味っ、いい茶葉使ってんな」
「ハリエットさん達から頂いたものです」
「なら納得だ。ちなみにこの茶葉はミルクとか砂糖に合うぞ」
「ご心配なさらず、既にエリー様は増し増しでお飲みになってますから」
そう言われエリーのカップを見るとミルクを多く入れたのかアイボリーに近い色のミルクティーが、そんなエリーは響介達の演奏をじっとスマホ片手に見て聴いており
「主も御使い殿もなんと…」
特に抱えられているマルコシアスは響介とライミィの2人の演奏を見て聴いて感銘を受けているかの如く感動し魅入っていた。
世界樹の葉から溢れる木漏れ陽が差し世界樹の側に出来ていた泉のほとり、世界樹をバックに軽やかな曲調を弾く響介とそれに合わせてテンポの良いの曲を歌い上げるライミィ。その2人姿に皆饒舌に尽くし難いようで静かに聴き入っていた。そして響介が最後の一小節を弾き終わり2人は
「「ご静聴ありがとうございました」」
エリー達と世界樹に揃って礼をした。終わった後響介は賢者の懐中時計にピアノを仕舞うとライミィは響介に抱き着くと
「お疲れ様キョウスケ」
「ありがとうライミィ。お疲れ様」
お互い労い抱き合う2人は見つめ合う。
「おーい、昼間っからイチャつくなー」
「「あっ」」
ネロの指摘に生暖かい視線に気が付き更にはパシャパシャと効果音が
「巫女殿、先程からすまほとやらで何をなさって?」
「しゃしーん、お兄ちゃんと、お姉ちゃん、仲良しだから、撮ってるの」
当たり前かの如く動じないエリー。スマホの使い方を響介から教わってからというものすっかり使いこなしており慣れた手付きでスマホの写真機能を使って仲睦まじい響介とライミィの様子を撮影していた。それに気付き照れていた2人だが
「もういいだろ、見せ付けてやるか」
「きゃっ、もうキョウスケだいた〜ん♪」
思い切って開き直りライミィをお姫様抱っこする響介。ライミィは満更でもないどころか寧ろ喜んでおり響介に抱き着く、そしてその様を嬉しそうにしっかりと撮影しているエリーと穏やかに微笑むステラ、そしてやれやれと言わんばかりのネロ。
鴻上家は何時も通りである。
そんな2人もテーブルに着きステラの淹れてくれた紅茶を飲む。そんな響介にネロが
「なあ、キョウスケはこの一週間いろんなとこでピアノ弾いてたけどどうしてだよ」
「ん?ああ、それは世界樹からのお願いだよ」
「お願い?」
一体何を言っているんだと言わんばかりにネロが響介に尋ねた。ネロの言う通りこの一週間響介はこの世界樹の森や草原、屋敷周辺のあちこちでピアノの弾いている響介が目撃されていた。当人響介の言い分は
「ああ、一週間前なんだけどここでピアノを弾こうとしたら不思議な魔力をライミィが感じてな、それが気になって世界樹に気功術と聴覚スキル使ったら世界樹の声が聞こえたんだ」
「世界樹の声?」
「本当に世界樹の声かは俺も知らねぇけどな、でもあの時『私の為に頑張ってくれた子達を労って欲しい』って言ってたような気がしてな、でも頼まれたなら無視は出来ない。だからあっちこっちで弾いてたんだよ」
隣でうんうんと頷くライミィ。どうやらライミィも感覚的に同じ事を感じ取ったようだった。
「それなら色んなとこで弾こうって話になってさ~」
「で、色んなとこで弾いてたって訳だ。けど」
「「「けど?」」」
「私がさ〜、見てるだけなのがなんか手持ち無沙汰になっちゃって何か出来ないかなぁって思ってた時にエリーのすまほ見てピアノの伴奏で歌ってないかなって思いついてエリーにお願いしてすまほ見てたの、そしたらいっぱいあってさ!もう何歌うか迷っちゃって〜」
えへへと笑うライミィを見てネロは察しこの日2回目のやれやれと肩を竦めた。そこであることに気が付いた。
「じゃあ世界樹の前ならもう終わりってことだよな?」
「ああ、ここで最後だ」
そうこの辺りのあちこちで響介がしていたピアノ演奏は一応一区切り着くと言う事。自身のマッピングや皆のフィールドワークも大体終わりどうやらのんびり出来そうだと思っていたネロだが
「なに考えてんだキョウスケ?」
どうやら当の響介はそうでもないらしく何処か悩んでいるようだった。
「ああ、別に対した事じゃないんだ。ただ
な」
「ただ?」
「ここの管理ってどうすりゃいいんだ?」
この響介の言葉に皆ああ〜と言わんばかりのリアクションを取った。
「世界樹を復活させたのはもう終わった話だからいいけど問題はその後だ。森周辺の警備はマルコシアスに頼んでやってもらってるが森自体の管理はどうすればいいんだ?」
ここはアルフォンスから貰ったもので今は響介預かりの土地、警備は響介の言った通りマルコシアスが作った森ダンジョンの魔物達に任せているが肝心とも言える世界樹の管理体制がまるでないのだ。響介の指摘に皆頭を悩ませる。
「世界樹の管理かぁ」
「エリーが、やりたい」
マルコシアスとリーゼを抱えているエリーが手を挙げ立候補する。が響介は
「エリーの気持ちは有り難いんだが出来れば常駐して欲しいんだ」
「じょーちゅー?」
「そこに住んで管理して欲しいと言う事ですよエリー様」
「なるほどー」
「主、申し訳御座いませんが巫女殿にさせるのは吾は」
「安心しろマルコシアス、俺も却下だ」
皆うんうんと頷き満場一致のようだ。流石にエリーにやらせる訳にはいかない、そもそも寂しさを感じたらエリーは間違いなくテレポートで跳んでくる。
「でもどうするよ?ハリエット達から人員別けてもらうか?」
「もっと却下だ。ただでさえアルには便宜を計って貰っている以上人員まで別けてもらうのは不味い。ラヴァナ達の動向もあるから避けたいところだ」
「ですが、どうしますかキョウスケ様?常駐となると好んで森に住む種族なんて…」
皆頭を悩ませてしまう。しかし何気ないステラの言葉に
「あっ」
その時ライミィが何か天啓が降りたかのように声を上げた。
「どうした?ライミィ」
「キョウスケ、お母さん達呼ぼうよ」