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129話 荒野 真実は炙り出すもの

響介、組の話しをする。




 屋敷周辺の森林地帯の調査から翌日、響介達は森を抜けて広大な荒野地帯に足を踏み入れていた。


「ここが例の…」


 上空から見ていた響介とエリーは1度見ていたからかある種の覚悟は持っていたが初めて目の当たりにするライミィ達3人は思わず息を飲んだ。



 酷く荒れ果てた風景

 ひびが割れ激しい戦闘でもあったかのようなクレーターだらけの大地

 かつてあったであろう僅かながらに残る草木の痕跡

 


 見ていて悲しくなるような虚しい光景が広がっていた。雲の無い透き通るかの如く晴れた青空がより荒野の虚しさを強調させる何も無い光景。だが


「ここに何かがある」


 目の前の光景には騙されない。森の養分や魔力、地下水脈の水の全てが集まって来ているこの地には何かが隠されている。


「じゃ、どしよっかキョウスケ」


「先ずはフィールドワークだな。ステラ」


「はい!」


「ミーティアに乗って一帯をひとっ走り頼む。ネロは後ろに乗ってマッピングな」


「畏まりました!」

「分かった!」


 ステラは賢者の懐中時計を取り出すと中に収納していた魔導バイクミーティアを目の前に出し跨って魔導機に火を入れた。エンジンが掛かり淡い光を湛える横で


「カッケー!これがキョウスケ達が言ってた魔導バイクかぁ!!」


 初めて見た魔導バイクに目をキラキラさせてテンションがブチ上がり興奮していた。今朝荒野地帯の調査をする際ステラにミーティアで周辺の探索を検討していた所


『魔導バイク!?そんな魔導機があんのか!?なんでもっと早く教えてくんねぇんだよ!?』


 魔導機大好きダンピールネロが直ぐさま食いついた。その目はそんな面白い物を言わないなんて有り得ないとでも言わんばかりに訴えていたが


『『『『だって聞かれなかったから』』』』


『んな質問あるかこのスカタン共ォ!!』


 と、ネロの魂からの突っ込みが炸裂した。


 そんなことが朝っぱらからあったがもうネロは微塵も気にしておらず目の前のミーティアのタンデムシートに跨がると子供のようにはしゃいではステラから注意され


「まったく子供なんですから、それではキョウスケ様行って参ります。ネロ?気を入れてないと振り落としますからね」


 任せとけ!とネロの返事を皮切りにステラはミーティアを出した。初速からグングンと速度を上げてあっという間に水平線の彼方へと消えていった。


「さてと、俺達も始めよう」


「「おー♪」」


 ステラ達を見送った響介達3人も荒野の調査を始める。ライミィとエリーは魔力感知のスキルを使い周囲の探索を始め響介は聴力スキルをONにすると


「はぁぁ…!」


 自身の気を練り地面に当て地下水脈や大地の魔力の流れを調査する。


(…聞こえた。水の流れる音だ)

 

 荒野の地下深くに流れる水脈を感知した。流れる方向、水の量を全て気を通して音に変換し耳に届くように調整し確認する。そして地面から手を離すとある一点を見つめる。


「…向こうか」


 響介の声に反応するライミィとエリーも響介に続いて同じ方向を見やる。


「どうだった?」


「キョウスケの予想通り、荒野の真ん中に向かってるね〜」

「うん、木の魔力、あっち向かってる」


 それぞれ魔力の流れを感知したライミィとエリーも同じ意見のようだ。しかし上空から見ても何も無かった。この状況から導き出されるのは


「何らかの方法で隠されてるな」


 隠されている。しかも意図的に、この場合は『隠蔽』と言っていいだろう。

 隠蔽とは故意、意図的に対象を覆い隠す事であり響介はこの状況を隠蔽だと確信出来る感覚があった。


 臭い物に蓋するような感覚だ。

 例えるなら組員が抗争吹っ掛けた組織の死体処理するような自分達にとって発覚したら都合の悪いものを隠す。ちなみに鴻上組では死体処理の方法は少なくても2パターンあり一つは息の掛かってるコンクリ工場でコンクリに混ぜ焼却、もう1つは兄貴衆の1人ドスの大河と呼ばれている兄貴が管理している水産加工工場で凍らしてからバラして海に撒く方法がある。

 閑話休題つまり


「奴さんはここに隠したもんを余程見つけて欲しくないみたいだ」


 誰が何を隠したかは知らない。だが余程バレたくないブツがあることは間違いないことは確かだろう


「何があるんだろう?」


 疑問を口にするエリーだがその声色は弾んでいる。どうやらエリーの知的好奇心を刺激してしまったようだ。しかしその気持ちも分からなくはない理由は錬金魔法でハイポーションとなったあの枯れ葉、枯れ葉の状態でハイポーションが出来る位の植物だ。余程治癒力に特化した植物があるのかもしれないと思ってか楽しそうだ


「エリー楽しそうだね~」


「うん♪」


 そんなエリーを優しく頭を撫でるライミィも何処か楽しそうだ。エリーの頭を撫でながら


「でも、今まで誰も調べなかったのかな?」


「元々この大陸の何処かにあったのをアルが適当に転送魔法で入れ替えた土地だからな、ヒトは勿論他の種族が立ち入らないようなとこにでもあったんだろう」


「「あ〜」」


 疑問を口にしたライミィだが響介の推測に納得した2人。この地は魔王アルフォンスがラヴァナを始めとした反抗する魔族達に対抗する為今では魔族都市カサブランカの一つとなったクラナダがあった場所、それとピュセル平野の一部と入れ替えさらに大陸の何処かの土地を入れ替えた土地だ。未踏の地だったとしてもおかしくはない。

 それにこれは気功術で地面を調べた響介の見解だがこの土地は元気がない、端的にいえば土に栄養が極めて少ない不毛の地なのだ。

 響介達はエリーの母親探しの為に食料をアルスで約3ヶ月分は用意していた事、水は屋敷にあった地下水脈の水を汲み上げる魔導機をネロが修復したことで辛うじて確保出来た事、更にはアルフォンスの支援もあって何とか住めるが魔導機を扱う事が出来ないと水が確保出来ない事と生物が確認出来ない事を考えるとこの地で住む事は難しいだろう。そう響介が自身の見解と考察を合わせて説明していると


「あれ?ステラお姉ちゃん?」


「えっ?」


 ふとエリーが何かに気付いて響介達も振り向くと荒野のど真ん中を突っ切ってミーティアが此方に向かってくるではないか、向かってくるステラも響介達を視認したようで真っ直ぐ響介達の元へと、ミーティアを停め


「皆様?どうして?」


「おいステラ?どうなってんだ?」


「どしたの?2人共」


 ライミィが2人を落ち着かせて話を聞くことが出来た。およそ1時間程前に別れたステラ達は荒野と森の境目に沿って走行していたらしい






「まてステラ」


「どうしましたか?」


「かなり向こうなんだけどあっちの背の高い木分かるか?」


「あの背の高い針葉樹のような葉の付いた木の事でしょうか?」


「しんようじゅってのは分かんねえけどあの木は獣人族の連中が育ててる木であっちは獣人領なんだ」


「という事は…」


「丁度反対側に来たな。それにしてもホント凄えなミーティア、300キロ近く出たと思ったら風圧も感じねえし約1時間で反対側なんて、なんて高性能なんだよ」


開発者(おとうさん)が作ったんです。当然です」


 ふふんと得意げに説明するステラ。その様子は鼻高々といったようだがネロは手に持ったペンを走らせながら


「なら今度は真ん中突っ切ってみるか」


「真ん中をですか?」


「ああ、マッピングしてた分かったが荒野の広さは凡そ200平方キロメートルって程度だ。それに中心部も調査したい」


「成る程、それはそうですね」


 ネロの進言でステラは方向転換し中心部へ向かいアクセルを回す。そうしてミーティアを走らせていると


「…?」


「どうした?」


「何でしょう?今前の風景が?…えっ?」


「何かあったか?」


「いえ、キョウスケ様?」






「成る程、2人は中心部を調査がてら入ったらいつの間にか俺達を視認したと」


「はい、その通りですキョウスケ様」


 ステラ達の報告を受けた響介はステラ達が来た方向を一瞥し


「これで間違いなく中心部に何かあることが確定したな」


「そだね〜」


「間違いないな」


 一行は響介が見ている先を見る。皆この荒野に何か隠されていることを確信したのだ。


「お兄ちゃん、どーするの?」


「簡単だエリー」


 そう言って響介は不敵に笑い


「真実は炙り出すもんだ。どんな手使ってもな」



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