128話 昔話 キョウスケの家族達
エリー、枯れ葉からハイポーションを錬成する。
「皆様お手をご拝借」
「「「「「いただきます」」」」」
今後の調査方針も決まり皆で食卓を囲む鴻上家。この晩の献立は
「美味しい♪」
「うっめえぇ!美味えぞ!」
エリーとネロは絶賛し
「ありがとうライミィ、ステラ…!」
響介も肩を震わせ感激し
「やりましたねライミィ様!」
「だね〜ステラもありがとね〜♪」
響介達3人の喜ぶ顔を見て喜ぶライミィとステラ。「いや〜調合凝っちゃったから上手くいって良かった〜」とライミィは口にするとネロが反応する。
「調合?調合ってなんの?」
「香辛料の調合だよ〜。集落にいた時お母さんの手伝いで薬の調合の手伝いしてたからそのノリでついね〜」
薬の調合と聞き響介は集落にいた時を思い出した。
(そういえばオリビアさん、魔導師としても凄い方だったが腕の良い薬剤師でもあったな。それにお香にも詳しかったし)
ライミィの母でありラミア達の長であるオリビアは優秀な魔導師なのと同時に博識な薬師でもあった。勿論一団にはビオラを始めとした治癒術師もいればラナのような錬金魔法の使い手もいる。だが彼女達はもしもの事を考えて用心深く用意周到、魔法が使えない状況に陥る事も考慮して一団の長であるオリビアの方針で魔法に頼らずに生活する術を皆習得しておりオリビアは薬や毒に詳しく調合も得意だ。
実は響介とライミィが薬草学のスキルを習得したのもオリビアの影響があったりする。
「スパイスって今日の料理でか?この美味い料理何って料理だよ?」
「『カレーライス』ってキョウスケの世界の料理だよ〜。香辛料見ててキョウスケが「カレー作れそうだな」って言ってね、だからキョウスケのすまほってので作り方調べたの〜」
上機嫌に話すライミィ、みなが美味しそうに食べるのを見て嬉しそうに声を弾ませている。というのも
「それにしても米を食べるのは久しぶりだ…」
ネロもびっくりするくらい感激している響介を見たからだろう。
「まさか鬼人族の連中がコメっての作ってるのは知らなかったな」
「米は酒の原料にもなるからな、多分そっち目的で栽培してたんだろうな」
「成る程、勉強になります」
「お兄ちゃん、美味い?」
「マジで美味い。また食えるとは思わなかった」
「んふふ〜良かった〜♪」
そんな響介を見てさらに上機嫌になるライミィ。鴻上家の食卓は賑やかに進んだ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
食事も終わって後片付けも済んだリビングでみんなで寛いでたらエリーがキョウスケにすまほ片手に声かけてた
「どうしたエリー、もう錬金魔法はいいのか?」
そのエリーの後ろには例の枯れ葉から作ったハイポーションが山のように積まれ(数は大体100個位)、私の脱皮した皮から錬成したラミアのアミュレットが80個位あったの、それ見て
(そいえばお母さんってどうやってラミアのアミュレット用意したんだろ?まさか…)
横でそんな事を考えてる私をさておいてエリーはすまほを操作して画面をキョウスケに見せた。
「この、おじいちゃん、だあれ?」
「その人は俺のじっちゃんだ」
「お兄ちゃんの、おじいちゃん?」
「えっ!どれどれ!」
キョウスケの言葉にいの一番に反応した私は勿論ステラやネロも一緒にその写真を見た。
キョウスケの隣にいたのは見たことない着物を着たガッチリとした体格で灰色の髪を後ろに整えた右目のとこに剣で切られたような傷のあるおじいちゃん。
「その人が鴻上孝蔵、俺のじっちゃんで鴻上組7代目組長だ」
自分の肉親を紹介するキョウスケは何処か穏やかな表情、それを見た私は
(キョウスケ、おじいちゃんの事好きなんだなぁ)
率直にそう感じた。なんだか私がお母さんの事を話す感じなのと親近感を感じたからかな?そうしているとエリーは別の写真に切り替えていてみんながキョウスケに聞く
「キョウスケ様、この方達は?」
「その男性は組のナンバー2の京町の頭だ。その横にいる女性は奥さんの弥生の姐さんにそっちの金髪の方は兄貴衆の1人天城の兄貴だ」
「こっちのキョウスケと仲良く写ってる3人は?」
「その3人は俺の舎弟だよ。色黒のデカいマッチョが津上太一郎、眼鏡掛けてる仏頂面が乾憲剛でそっちの美型の兄ちゃんが天堂潤樹。みんな俺の年上だけどなー」
「この写真のヤバそうな感じの兄ちゃんは?」
「その人は兄貴衆の1人で組きっての狂人矢代の兄貴だ」
なんか不穏な単語が出てきたね〜、エリーに聞かせてもだいじょぶかな?でもエリーは興味出ちゃったみたいだしな〜
「せっかくだ、俺の実家の話しをしようか」
パンと手を叩いてキョウスケは話しをしてくれたの
「まずうちの組はトップにじっちゃんである組長がいて次は頭の京町さん、その下には頭補佐って幹部が安藤さん伊達さん南部さんって御三方達がいる。その下に兄貴衆がいて後は末端組員だ。鴻上組は界隈じゃ『コロシの鴻上』何て名で通って他の同業に事構えたらヤバい武闘派として恐れられてる」
「「「「ふんふん」」」」
「何度も出てるこの兄貴衆ってのは言うなれば幹部候補の呼び名で現場指揮を任されてる組員だ。主な仕事はシノギ管理とシマの治安維持にちょっかいかけてきた他の組や犯罪グループの粛清、末端組員の教育だな」
「キョウスケ様『しのぎ』とは」
「シノギってのは経済活動、ようは金稼ぎだな。シマの中で飲み屋や風俗この世界だと娼館だな、そういうとこで守代払ってる店の用心棒業務だったり港湾業務の元締めもやってたし後はかなりの土地持ってたから地主としても利益もあるしで実家の組は他と比べてまだ穏やかだ」
「比べて?」
「じゃあキョウスケ、他はどうなんだ?」
「他のとこは殆ど犯罪に手を染めてる。麻薬取引だとか恐喝だとか密輸だとか果ては人身売買とかな」
あー、成る程何となく分かった。キョウスケがお家の事で恐がられてたって話してたのってそういう事か、同じニンキョウでも悪い事やってるとこがあれば自分達がやってなくてもみんな同じに見られる。
私達ラミアのように
「特に恐喝に関してはうちの末端組員も他所の組の奴も自分の組の名前出すバカがいてな。世間様にかなり問題になったんだ」
それも前言ってたね。そんなのも分からない人にお家の名前を汚されたからシビアだったんだね。何時ぞやのナンパ野郎にあんなに怒ったのも納得
「その時は警察っていう国家権力の組織となんとか穏便に済んだがその組員はしっかりと京町の頭がヤキ入れて対処したらしい。話しを戻して兄貴衆の話しをしよう」
少し声が弾んでるのを私は見逃さないよキョウスケ
「さっきも言ったように兄貴衆は幹部候補の呼び名で俺がいた時は20数人がその名を連ねてる。まずは兄貴衆のリーダーで稼ぎ頭でもあるうちの御三家の1人山賀の兄貴。二つ名は暗器の山賀またの名を卑怯の天才」
「卑怯の天才?」
「凄いんだか凄くないんだかわかんねえな」
「頭が良いだけでなく頭の回転が凄い人なんだよ。シノギ上手さもだけど一番はリスクヘッジだな」
「リスクヘッジ?」
「リスク管理の事で山賀の兄貴は天才的に上手いんだよ。だから下手打たないし大きなシノギも成功させてくるからじっちゃん達からの信頼も厚い。ただ教育方針は魔族もびっくりの生き死に教育だ」
「生き死に教育?」
「下に付いた舎弟はミスは直ぐさま死を合言葉に徹底的に教育されるから」
「うわぁ…」
ネロが引いてるー。それに比べてエリーはふつーに聞いてるの面白い
「山賀の兄貴は幼少期が悲惨だったお方でな、それがあって付いてきた舎弟の面倒見はいい人なんだ。だから下からの人望あるしじっちゃんに拾われて組員になったのもあるから組に対しての忠誠心は深いし義理人情溢れる侠気ある方で舎弟が殺られたとなれば報復の指揮も執る。話しも面白くって俺も慕ってた」
俺が目潰しや棒苦無とか使うのも山賀の兄貴の影響なんだよとはキョウスケ談だよー。納得
「御三家から2人目は釘宮の兄貴二つ名は日本刀の釘宮」
「ニホントー?」
「アル助ける時にライミィ達と乗り込んだイリウスって鬼人族いたろ?そのイリウスが使ってたカタナって武器を俺の国じゃ日本刀っていう名前なんだ」
へー、あの武器キョウスケの国じゃ有名なんだー
「元はどっかの流派を免許皆伝した実力の持ち主でな、極道になったのも人を斬る環境にいたかったって理由で組に入った人で少し気難しい方だけどいい人だよ」
「なんかイリウスさんみたいですね。自分にストイックと申しますか」
「だね、釘宮の兄貴は間違いなくストイックな人さ。独自でシノギもしてて正規ルートでの日本刀の売買をして組に貢献なさってる」
「ニホントーの売買?武器売ってるのかよ?」
「日本刀はな、俺の世界じゃ武器ってのもあるが調度品としても評価されてて海外の金持ちからの人気があるんだ。それに一本の値段がこの世界だと金貨数100枚からだとかで儲かるらしい」
前キョウスケが言ってた「所変われば品変わる」ってやつだね。まあお金持ちの趣味なんてわからないからいいけどー
「釘宮の兄貴は子供好きでな、子供を使った悪事が大嫌いでやった奴らは問答無用でダルマにされてたよ」
「ダルマ?」
「この間俺がレオエッジにやったの、手足斬り落とす事だ」
「あー、あれか…」
「じゃ御三家最後はさっき俺と写ってた矢代の兄貴二つ名はコンバットナイフの矢代だ」
「「こんばっとないふ?」」
「戦闘用ナイフの事だ。矢代の兄貴は幼少期から傭兵として戦場で日常的に殺し合いをしてたから相手をナイフで滅多刺しにして殺すのが大好きな方でヤキ入れもヤバいから兄貴衆の中で一番恐れられてた」
「俺はそれを笑って話すキョウスケが怖ぇよ」
「不思議とウマが合ってさ、すっげぇ仲良くさせて貰ったしよく矢代の兄貴から「若〜手合わせしよ〜ぜ〜」って喧嘩鍛えて貰ったから怖いとは思わなかったな」
「お兄ちゃんの、お師匠さん?」
「になるかな、矢代の兄貴やじっちゃんもだけどやっぱ一番鍛えてくれたのは京町の頭かな。いざ喧嘩したら同年代の連中じゃまず相手にならなかったし組の若いも俺は負け知らずだったし兄貴衆の大半には腕っぷしじゃ負けなかったな。でも矢代の兄貴にはいつも負けてたな俺」
「つまりキョウスケは自分より強いやつを知ってるから調子に乗らなかったと」
「そういう事、矢代の兄貴もだけど天城の兄貴に釘宮の兄貴に大河の兄貴に後は美藤の兄貴には勝てなかったな。ギリで山賀の兄貴とは引き分けたけど」
成る程〜それがキョウスケの強さのルーツなんだ。自分の強さを知って弱さを知ってるから
「矢代の兄貴はシノギはほとんどしない方でどっちかって言うと戦闘専門の人だったな。まあ1人で中規模程度の組に正面から乗り込んで壊滅させる位強かったしじっちゃんや京町さんに恩義があって動く方だったから他の幹部の方らも異議はなかったみたいだったな」
話し聞いてて分かったのはキョウスケ並みに、いやキョウスケより強い人って事だね
「それに矢代の兄貴は女性にモテたからよく嬢と飲んで悩み聞いてたりってケアしてたから何もやってないって事はないぞ」
「へー」
「まだいっぱいいるぞ、岩永の兄貴に能登の兄貴に南川の兄貴に天城の兄貴に谷原の兄貴に喜多沢の兄貴、大村の兄貴に海藤の兄貴に大河の兄貴に美藤の兄貴に室屋の兄貴に黒部の兄貴に上村の兄貴、俺の舎弟分も言っていいなら太一郎に憲剛に潤樹だろ、それから」
「長えよ!何処まで言うつもりだ!」
ネロが突っ込んで私達はみんなで笑っちゃった。
それに私は改めてキョウスケがもっと好きになったの、だって楽しそうに話すキョウスケはもう会えない組の人達を家族みたいに紹介してるのが本当に今でも大切にしてるのが聞いてて分かったから。
それにキョウスケの話し方や熱を見ても負けない位私達を大切にしてるのも分かったから
お母さん達元気かな?
フリガナを振った人物は今後登場予定です。お楽しみに