127話 発見 エリーの錬金魔法
響介一行、森の調査を始める。
「ただいま、リーゼ」
調査が一段落し屋敷へと戻った一行。留守番をしていたシルバーゴーレムのリーゼに駆け寄り声を掛けるエリー。声に反応したリーゼに響介達もリーゼに声を掛けるとリーゼはコクリと頷くように動いた。それを見たネロが
「ちょっと待てエリー、お前のゴーレムヒトの言葉理解出来るのか!?」
驚くネロに今更と言わんばかりに顔を見合わせる響介達3人。
だが驚く事は仕方ない、本来魔物のゴーレムはヒトや他の魔物の言葉を理解することが出来なく自分たち以外の種族を見つけたら本能的に襲いかかる魔物だ。例外として錬金魔法で生み出されたゴーレムが存在するがそのゴーレムも術者の言葉位しか反応しないそうだがエリーは
「うん、リーゼ、お利口」
「だよね~、エリーみたいに賢いよねリーゼ」
「錬金魔法で生み出すゴーレムは術者の知力に比例して賢くなるそうだ」
「つまりエリーがお利口さんだからリーゼもお利口ってことよ」
「激しく同意」
「流石エリー様です!」
「それほどでもない、謙虚なエリーは、格が違った」
響介達に褒められフフンと得意げに金色お目々をキリッとするエリーと後ろでサムズアップするリーゼ。言葉を理解している所かしっかり自我があるのを見て呆れるネロ。
「…しっかりとエリーの影響受けてんのは分かった」
あははと皆で笑うとふと響介はフライトジャケットを脱ぎ
「リーゼ、手合わせをしてくれ。エリー『バランスタイム』を頼む」
「はーい」
「…!」
エリーがバランスタイムを詠唱すると響介はフライトジャケットをステラに預けリーゼに対して構え対するリーゼも両手を握りガァン!と拳を打ち付け音を鳴らし相対すると
「始めっ!」
ライミィの合図で屋敷の庭で殴り合いが始まった。響介の倍以上の大きさを誇るシルバーゴーレムのリーゼが響介の間合いの外から鋭い一撃を放ち先制攻撃を仕掛ける、響介は間一髪躱し懐に潜り込もうとするがリーゼは蹴りを放ち自身の間合いを保ち響介を近づけさせない。響介はその攻撃を見切りバク転で躱すと一人と一体はジリジリと一進一退の攻防を繰り広げる。端から見ていたネロは
「なあ、リーゼってあんなに速かったか?それにキョウスケ動き重そうだけど」
「それはエリー様がリーゼにはヘイストをかけてキョウスケ様にはスロウをかけてますから」
「は!?」
「エリーの考えた魔法、バランスタイムだよ。対象2人にヘイストとスロウをそれぞれ同時にかけるって魔法だよ。キョウスケ素のまんまだと強過ぎて手合わせが出来ないの、だからエリーにスロウかけて貰って相手にヘイストかけてやっとなんだよ」
「なんだその荒技!道理でリーゼ速ぇと思ったよ!」
「エリー、思い付いた。それに、自分で試したから、だいじょぶ」
「実証済みかい!?」
「うん。ちっちゃいおじさん、やっつける時に、試した」
エリーがピースして説明しているとズズンと地鳴りのような音がし見てみると仰向けに倒れ地に伏しているリーゼの姿だった。
一瞬の出来事だった。
皆が目を離すのを見計らったかの如く一瞬のうちに決着が着いてしまったのだ
「悪くない動きだったリーゼ。だがまだ攻撃に意識が乗ったことで短調な動きになって攻撃が読めるぞ。次はもっと意識を切り離して攻撃してみろ」
響介の言葉を受けてコクリと頷くリーゼ。それを見て
「おいキョウスケやめろ!ゴーレムに技術を教え込むな!!」
リーゼに問題点を平然と指摘する響介に突っ込みをいれるネロにまた一同は笑うのだった。
「で、じゃあ明日は荒野の調査か」
「ああ、それが定石だろう」
屋敷へ戻り今は皆綺麗にリノベーションしたダイニングキッチン付きのリビングに居た。ライミィとステラがキッチンで食事の準備をしている傍らリビングにある食卓用の机に森での調査結果を記したメモ帳や羊皮紙を広げて響介とネロは今後の行動を打ち合わせしていた。
森林地帯を調べた一行は木々の養分や魔力、そして地下水脈の水が全て荒野を目指していることから荒野に何かあるだろうと断定し改めて調査資料をまとめていたが
「でも何があるってんだ?何もねえ荒野によ」
ネロの疑問は響介達も最もだ。特に空から一帯見た響介はエリーと共に見た光景に抱いた疑問は強かった。
一面一帯に広がる荒野。
そして先の戦争の傷跡らしいクレーター。
謎が謎を呼んでいるという言葉が相応しいだろう。
なんでなんもない荒野がなんで森林地帯の養分を吸い取っているのかとネロが溢したが響介は
「ネロはそう感じたのか?」
「ん?どういう事だよキョウスケ?」
「いや、俺はただ単に荒野が吸い取っている様に思えなくてな、気功術を使って探索した時の感覚になっちまうから説明が難しいんだが何だかその考え方に違和感があるんだ」
「違和感…」
「じっちゃんの言葉に『徹頭徹尾、信念は物事を行う上で成功に基づく意志となる』って言葉がある」
「…つまり?」
「木々が何かしらの『意志』を持って行動したとしたら自分達自ら養分を送っているって捉えられるんじゃないか」
「…そういう考え方もあるか」
何か考えるように背もたれに体を預けて天井を見上げ顔に両手を覆うように当てるネロ。そして考える
(木の意志か、よくそんな発想出来るもんだ)
ホントに面白い人間だと思った。ネロは元より魔族には無い発想だからだ
(アルフォンス様がキョウスケ達に付いて行くように言ったの、今なら分かる気がする)
朧気ながらもアルフォンスの真意を垣間見る事がネロはつい笑ってしまった。それを見た
「ちょっとー、何気持ち悪く笑ってんのネロー?ご飯だよー」
少し引き気味なライミィが指摘した。両手に湯気が蓋の隙間から出る鍋はスパイスの効いた香辛料の香りが漂わせ目の前の机に置かれ後ろにいたステラが釜と食器を並べる。先程まで広げていた資料はどうやら響介が綺麗に片付けたようだ。
「悪ぃ悪ぃちょっと考えてなー、飯なんだ?」
「今日は自信作だよー、あれ?キョウスケエリーは?」
「エリーか?エリーは…」
響介は部屋を見回してエリーを探す。リビングにあるソファに腰掛けているのを見つけたのだが
「どうしたんだ?ずっと枯れ葉を眺めて」
先程拾って集めた枯れ葉をずっとじーと見入っていた。普段なら食べ物の匂いに釣られてテーブルにやってくるのだがこの時に限っては枯れ葉をまじまじと見ていた。そんなエリーを見ていた四人はエリーを観察する。すると徐ろにエリーはアルケミストキットを取り出した
「エリー?どうしたの?」
不可解な行動を取っているエリーにライミィが尋ねると
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ごめんなさい。ちょっと試したい事があるの」
「「試したい事?」」
「うん、クリエイトアイテム」
そう言ってエリーは拾ってきた枯れ葉を一つ取りクリエイトアイテムを詠唱する。すると
「3つも出来たー」
喜ぶエリーの錬金魔法により跡形も無く消えた枯れ葉の代わりにエリーの手の中にあったのは綺麗なガラス瓶に入った液体状のアイテム。響介が鑑定スキルを使い見てみると
「ハイポーション?」
現れたのはハイポーション。鑑定スキルを使い直しても表示された情報は変わり無くアイテムバックからハイポーションを取り出して確認した所紛れもなくハイポーションだった。
「えっ?ハイポーション?!」
「しかも3つも、ですか?」
「おいおいおい、どう言う事だ?」
皆困惑した。そもそもポーションは薬草を湯で通し抽出した成分を水に混ぜて作る薬の総称であり薬の一種である。使用する薬草、使用する水によってポーションもランクが上がり薬草は品質が良ければ良い程、水は純度が高ければ高い程効き目あるポーションが出来上がる。錬金魔法でも出来ない事は無いがそれこそ素材が複数個必要となり素材集めが手間でなおかつ魔力が高くないと高ランクのポーションが出来なく通常通りの方法以外だと割に合わなかったりする。
つまり枯れ葉一枚からハイポーションが3つも出来るなんて事は考えられないのだ。考えられるのはエリーが拾ってきた葉っぱ
「一体、何の葉っぱなんだろ?」
コテンと首を傾げるライミィ。余程治癒力の強い葉何だろうと考えていたら
「こっちも、ためすー」
「ちょっ、何であるのー!?」
今度はライミィの脱皮した古い皮の一部を何処からか取り出してクリエイトアイテムを詠唱する。すると
「お姉ちゃんが、付けてるの、出来たー♪」
エリーの手に握られていたのは何とラミアのアミュレットだった。