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125話 明朝 ライミィは尻尾ビンタを繰り出した!

エリー、響介とライミィの寝室に乱入する。




「ううん…」


 さんさんと注ぐ陽の光が差すベッドに身をよじり目が覚めた響介はベッドの側の机に置いてある懐中時計に手を伸ばす。

 短針は6の文字の直ぐ右横を指していることから大体0550頃だろう。起き上がり首の骨を軽く鳴らしつい数時間前の事を思い返した


「…昨晩は間一髪だったな、流石にエリーの教育上良くない」


 昨晩ライミィと一線を越えるいい雰囲気になっていた直前にまさかのエリー乱入という状況ハプニングに見舞われ急遽プロレスごっこと言い訳し誤魔化した鴻上夫妻。

 …判断を間違えたら母親アリスからの落とし前は避けられなかっただろうと思うと冷や汗が出た。


「まっ、いいか。急いては事を仕損じるっていうし。時間はあるんだ」


 そう言いつつ響介は改めて自分を律し気持ちを新たにする。昨晩のエリーの様子を見るにいくら安全が確保されているとはいえ今までみんなが直ぐ近くで寝ていたのもありいざ一人で寝させるのはエリーの心情上ハードルが高かったかもしれないと反省する。これはライミィと要相談だなと考えていると


「ん〜…」


 隣でもぞもぞうねうねとふと動き始める。ライミィが起きたようだと思っているとむくりと起き上がり


「あ〜、キョウスケおはよ〜」


 眠気眼を擦りあくびをひとつするライミィ、下半身が蛇だけに半ば変温体質なラミアは朝に弱い。特にライミィは弱く朝の寝起きは身体を暖める為誰かしらに抱き着いて体温を調整する為愛しの響介に抱き着く


「えへへ〜、キョウスケ温かい〜♪」


 響介の鍛えられた胸筋に頬ずりして背中に手を回して響介の体温を堪能する。その時


「ん?」


 抱き着く所までは何時もの事の響介だが今日は少し違和感が


「何の音だ?」


 聞き慣れない音を聞いた。そんな響介に気が付いたライミィは上目遣いに響介を見た。


「どしたの?」


「いやな、なんかパリパリ音しないか?」


 辺りを見回す響介。何か乾燥した薄い皮のような物が破けるような音。眠気眼を擦りながらライミィは響介に倣ってふと見回すと


「あっ」


 何かに気が付いたように声を上げた。しかし


「あ、あ、あ、あ、」


 見る見るうちに顔を赤くしてしまう。そんなライミィに気が付き何事かと響介は何事かと焦るとふとあるものが目に止まりライミィに確認しようと声を掛けようとしたら


「見ないでーーーー!!!」


「ぶっ!」


 べチーンッ!と大きな音と共に響介は吹っ飛ばされると1階から騒ぎを聞いたステラが右手にバスターブレードを握り左手にネロの首を握りと完全装備の状態で部屋に突入してきた。


「どうしましたかライミィ様!キョウスケ様!?どうされたのですか!?」

「ズデラ゛…、手ぇ離ぜ…、ジぬ゛……」


「みんな見ないでぇ!お願いだから出てってぇ!!」


 やって来たステラ達に気が付きライミィが顔を真っ赤にしマンガのように目をぐるぐるさせて錯乱してしまい一気に部屋の中の混沌カオスが加速する。


「ん〜、うるさい…」


 そんな中響介達のベッドで寝ていたエリーが騒ぎを聞いて目が覚めてしまった。起き上がったエリーの目に映ったのはライミィの白い大蛇の身体、しかしその大蛇の身体を見て


「あれ?お姉ちゃん、身体皮剥けてる」






「みんなごめんなさい…」


 落ち着きを取り戻したライミィが響介達に頭を下げて謝罪する。ライミィからの説明だとどうやら蛇の身体の脱皮の時期らしく響介が聞いたのは剥がれかけていた皮の擦れ落ちる音だったようで所々に皮が剥けた跡が見てとれた。ライミィの話によると成人したラミアは大体半年に1回脱皮の時期が来るらしく前回の脱皮が響介に出会う約一月半前だったことから周期的にその時期が来てしまったようだ。


「お姉ちゃん、痛い?」


「ううん、脱皮は痛みないからだいじょぶだよエリー。でもさぁ…」


「?」


 恥じらうようにカアァと顔を赤らめて


「恥ずかしくって…」


「キョウスケに裸見せんのに抵抗ねぇのに良く言うよ」


「それとこれとは別なの!」


 開放された首を撫でるネロに顔を赤くしてシャーと蛇が威嚇するように言うライミィ。そんな一触即発な二人を


「まあ落ち着けネロ。種族柄故の問題は然ることながら価値観の違いは良くある事だ。ライミィにだけ非があるわけじゃない」


 仲裁する響介。二人に諭すように宥めに入るが


「キョウスケがいいならいいんだけどよ、キョウスケ顔大丈夫か?」


「お兄ちゃん、いたそー」


 取り乱して振るわれた尻尾が顔面に直撃し響介の端正に整った顔はこれまたマンガのように赤い尻尾跡が顔に横断していた。それを改めて見たライミィが


「ホントにごめんねキョウスケ…」


「気にしなくていいライミィ。ライミィはワザとやったんじゃないんだから仕方ない事だよ」


 シュンと落ち込むライミィに優しく声を掛ける響介。そんな優しい響介に「キョウスケぇ…」と涙目になり響介に抱き着くライミィとそれを受け止め優しく頭を撫でる響介。朝っぱらからいちゃつく鴻上夫妻を見てクソデカ溜息を付いたネロは


「そういやステラ何処行った?」


「ステラお姉ちゃん、お風呂」


「風呂?」


「うん。お兄ちゃんの指示」


「キョウスケ様!準備出来ました!」





 沸かしたばかりで湯気のたつ浴室。もちろんここも身体が一番大きいライミィに合わせてリノベーション済みである。そこで


「ごめんね、迷惑かけちゃって…」


「それは言わない約束なんだろ?ライミィ」


「うん。ありがと」


「ライミィ様、お湯加減はいかがですか?」


「だいじょぶだよ〜、ステラもありがとね」


 身体を冷やさないように器用に上半身だけ湯船に浸かるライミィ。皮が剥がれかけている大蛇の背に当たる部分に響介とステラは良く濡れた熱いタオルが隙間なくかけていく


「こうやって温めたタオルなどを被せて湿度を上げてやれば蛇の皮は軟らかくなって剥がしやすくなるんだ」


「成る程」


「こういうのは脱皮不全って言ってヒトでいう皮膚の病気なんだ。脱皮が不完全になることで残った古い皮や鱗が炎症を起こしたり血行阻害の原因になったりするからしっかりと処置しないと危ないから放置はだめだぞ」


「何でキョウスケ様はそんなにお詳しいんですか?」


「実家の組で爬虫類好きで実際に蛇飼ってる兄貴分の人がいてな、話も面白くて色々聞いてたんだよ」


 関心しながら聞いているライミィとステラ。しかしライミィは湯船に浸かりながらなにやら考え込んでおり


「ん〜、何でなんだろ?今まで脱皮でこんな事なったことないのに…」


 何故今回脱皮不全になってしまったのかと考えていた。その様子を見るにどうやら脱皮不全は初めての事のようで原因はなんだろうと考え込む。すると響介が


「生活環境がガラリと変わったからだろうな。要はストレスだよ」


「ストレス?」


「旅していろんな事があったから知らず知らずの内にストレス溜まってたんだよ。特にライミィの場合は正体バレるわけにはいかないから俺以上に気を張ってたんだろう」


「ん〜。どだったんだろ?ずっとキョウスケと一緒だったから難しくは考えてなかったけどなぁ」


 ん〜と考えるライミィが「あっ」と思い出したかのように


「ストレス溜まったんならやっぱりキョウスケを討つってホザいてたあのクソ聖女かなぁ。今思い出したら腹立ってきた」


「おいおい…」


「大丈夫ですよキョウスケ様。その件なら私も勿論エリー様もご立腹で御座いましてエリー様も「次は溶かす」と仰ってましたし私も次キョウスケ様に無礼を働くなら全力でパワーボムを極めますよ」


「大丈夫な要素どこにもねぇぞ!?」

 

 あははうふふと笑うライミィとステラを見てやれやれと思いながらも笑みが溢れる響介。懐中時計を取り出し時間を確認し


「よし、ライミィ剥がすぞー、ステラそっち持ってくれ」


「はーい」

「畏まりました」


 パパッとタオルを回収してライミィの腰部の皮に手をかける響介とステラは「せーの」と掛け声をかけて引っ剥がす。


「ひうっ!」


 ライミィの色っぽい喘ぎ声が風呂場に響いたが響介は良からぬ下心を理性でねじ伏せてステラと一気に引っ剥がした。


「おー、すごいですキョウスケ様。綺麗に取れました」


 ステラの手にはまだら模様に穴が空いたライミィの白い大蛇の古い皮をステラの言う通り綺麗に一枚、丸々引き剥がすことに成功した。


「じゃあステラ。同じ要領で前もやってくれ」


「畏まりました」


「え〜、キョウスケやってくれないの〜」


「やりません!」


 先程の様子から一転すっかり調子を取り戻したライミィに顔を赤くして注意する響介はステラに後を任せて風呂場を後にする。


 新しい生活が始まって最初の朝、響介達らしい騒がしい1日の始まりだった。




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