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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第2章 神聖王国 ~ピアニストと駆け出し勇者達~
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13話 朝 街の様子

2人、初めての朝




 夜が明け太陽が昇る頃ライミィは目が覚めた。朝が弱い為普段なら珍しい事だが今回は決定的に違う事があり


「うふふ、キョウスケの体温気持ちいい♪」


 ダブルベッドで一緒に寝ている響介に終始抱き付きながら寝ていたライミィは自身のワガママボディをしっかりと寝ている響介に押し付け頬擦りして響介の体温を堪能する。

 蛇には他の生物の体温を感知することが出来るピット器官というものがありラミアにもその器官は存在する。『人間化』していても『蛇の感性』は使用出来るのだ。響介の体温が心地いいライミィは起きるまで響介に抱き付くのだった。






「今日は何するの?」


 宿で朝食を食べながら2人は話合う、ちなみに朝食はハムサラダとブリオッシュにコンソメスープ。


「これからの旅の準備をしようと思ってる。必要なものも欲しいけどライミィはどうする?」


 響介はコンソメスープを飲みながらライミィに確認する。


「そだね。早めに準備するの賛成ー」


 ブリオッシュをパクつきながら答えるライミィ


「なら、最初はピーター商会だな」


「意義なしー、じゃご一緒に」


「「ご馳走さまでしたー」」


 朝食を食べ終わった2人は宿の従業員に挨拶もそこそこに街へ出る。中央広場に向かうライミィが


「ねえキョウスケ」


「どうした?」


「任侠って困ってる人を助けるって言ってたけど人助けするの?」


「うーん、その困ってる種類によるかな」


「種類?」


「ああ、例えば道に困ってたら街の人に聞けばいいし、何かトラブルなら憲兵が間に入ればいい。色んな人が役割を持ってるからただ助ければいいってことじゃないんだ。ライミィだって困ってないのに助けられたって困るだろ?」


「うん」


「俺は任侠者だ。俺が助けるのは理不尽だったりどうしようもない現実ってのに追いやられてる人だよ」


 感心して響介の言葉を聞いたライミィだったが、その時子供とぶつかってしまう。大体10歳位の少年だった。


「ご、ごめんね、大丈夫?」


 すると少年は何も言わず立ち上がりそそくさと行こうとする。しかし


「待て」


 響介がその少年の腕を掴んだ。


「ま、待ってキョウスケ!私は大丈夫だよ!?」


「少年、盗ったものを素直に出しなさい。じゃないと君を憲兵に突き出すことになる」


「え?」


「ライミィ、この子はスリだ」


 少年は憲兵という言葉と響介の剣幕に怯えてしまい大人しく盗ったものを出した。


「あっ!私のお財布!」


「ごめんなさい、お願いします。憲兵には突き出さないでください」


「どうしてこんなことをした?その理由次第で考える」


「えっ、えっと……」


「キョウスケ、顔が怖いよ。ごめんね君どうしてこんなことしたの?」


 財布を返してもらった2人はスリの少年から話を聞いた。少年には妹がおり病気で苦しんでいて母親がずっと看病しているが一向によくならず薬を買おうにも教会に診てもらおうにも家は貧しくお金が無くスリに及んだらしい。少年は憲兵に付き出されたら家族も教会に目をつけられかねないという話だった。


「ねえキョウスケ、どうにか出来ないかな?」


 響介は暫し考えて少年に向きあう


「そうだな、少年」


「な、なに?」


「君の家族の所に案内してくれないか?どうにか出来るかもしれない」


「ほんと!?」


「ああ、ライミィすまない。買い物は後でもいいか?」


「うん、ありがとうキョウスケ」


「すまないな。少年、案内を頼む」


「うん!」


 そうして2人は少年に案内されることに、案内されるまま向かったのは2人が宿を取ってる中央部寄りから街の東部に行ったところで先ほどの綺麗な街並みとはうって変わり


「なんだかおんなじ街なのに雰囲気違うね」


「下町って言えば聞こえはいいが、貧民街ってところか」


 大きな街ではよくあることだと響介は考える。どうしても貧富の差は出てしまうのはどこも一緒かと、それに気になる事もある。


(金がないから教会にも診てもらえないとはどういうことだ?)


 自分が思っていた教会というものは分け隔てなく困っている者に手を差し伸べるものだと考えていた。だが


(何だかキナ臭いな……)


 何だか裏があることは確かだろうなと、響介が考えるうちに少年の家に着いたようだ。


「ただいま、お母さん!」


「トム!どこ行ってたの?後ろの方は?」


 トム少年が玄関を開けたらいたのは初老の女性、恐らく母親だろう。そして奥には床に伏せている女の子がいた。


「お母さん聞いてよ!このお兄ちゃんがジーン治してくれるって!」


「えっ!?」


「待て待て少年。どうにか出来るかもと言っただけだ。診てみないとわからない」


「あっ、なら診てよ!お母さんいいよね?」


「え、ええ、こちらです」


 俺達は奥へと案内された。伏せている女の子は呼吸が苦しそうに見えた。しかし専門的なことはわからない。わからないので俺は


「ライミィ、この子に『ライブラ』を使ってくれ」


「え?いいけど意味あるの?」


「まだ予測の範疇だけど多分いけるだろう」


「わかったよ。ライブラ!」


 ライブラとは対象にした人間、魔物等のある程度のステータスがわかるようになる魔法だ。ただ使用出来るのは自分よりレベルの低いものしか対象に出来ないがライミィなら問題無いだろう。そしてそこに


「あっ!ステータス病気ってあるよ。肺炎?」

 

 読みが当たった。ライブラはその時の状態も表示される。ならと思ったが思った通りだ。肺炎ならなんとかなるな。


「多分いけるな。少し辛抱してくれ」


 俺は少女に『解病功』をかける。

 解病功は俺の健康な気を他者に与え細胞を活性化させるもので活性化した細胞にさらに気を与え病原菌を追い出すといったものだ。するとみるみるうちに少女の顔色が良くなり呼吸も落ち着いてきた。ライブラにもステータスは異常無しとなっていたので大丈夫だろう。


「ああ、余命幾ばくと言われたジーンが……!」


「お兄ちゃんすげー!」


「ありがとうございます!なんとお礼を言っていいか……」


「ご婦人、まだ娘さんは病み上がりです。しっかり休ませてあげてください」


「わかりました。あの、申し訳ありませんが…」


「お代はいりません。それより少し伺いたい事が」


「伺いたい事、ですか?」


「息子さんが『教会に診てもらうにもお金が』と言っていまして、少し気になりました」


「それが…」


 そして俺達は少年の母親から事情を聞くことが出来た。

 最近教会が高額の喜捨を要求するようになり只でさえ教会への寄付金が負担になっている下町の人間にとっては払えるものではない。

 それに加え本来、神官とは別に治癒術士と言うジョブがあり神官は神の加護とやらで回復魔法を行使するが、治癒術士は違い大地の加護で回復魔法を行使することが出来るのだが、神聖王国は神官の地位を上げる為国内にいた治癒術士を追い出したせいで治療の手が足らなくなり医者も追い付かないずこうした病気も治す事が出来なくて手遅れになるケースもあるとの事だった。


「なにそれ…」


絶句しドン引きするライミィ、無理もない。


「成る程、ありがとうございました。これはアフターサービスです」


 俺は家の中に範囲を決めてクリーニングを使い綺麗にした。感染症対策もしなければまた肺炎になってしまう。


「では俺達はこれにて、ライミィ行こう」


 俺は母親にお礼を言い頭を下げる。そしてライミィと家を後にするのだが問題が発生してしまった。


「えっ?なにこれ?」


 家の外にいたのは恐らく他の下町の住人達。俺達が出てくるのを待っていたようで


「ごめんお兄ちゃん。お兄ちゃんの事言ったらみんな」


と、トム少年が申し訳なさそうに言う。姿が見えないと思ったら外にいたようで、俺は察しがついた。


「なあ!あんた、病気治せるんだろ!?頼むうちの家内も診てくれ!」

「うちにもお願いします!もう子供が危ない所まできているんです!」

「お願いします!夫ももう何日も…」


 話を聞き付けた住人達が殺到していた。相当深刻な事態なのはバカでもわかる。

 さっきの女の子は肺炎だった。恐らく感染症の肺炎だと推測した俺は


「皆さん落ち着いてください。お一人ずつ診ますので近いところから案内してください」


 俺とライミィはその後、病人と怪我人の治療にあたる事に、その結果昼頃まで治療にあたったが、なんとか全員無事に治療を終える事が出来た。





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