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123話 完成 鴻上邸、そして慰労会

響介一行、屋敷掃除をする。




 クラリッサ達亡霊騎士団の援軍もあり1日ぶっ通しとなった屋敷掃除という名の超突貫工事と化したリノベーションは侵略する烈火の如く進んだ


「こちら1階東側!清掃完了しました!」


「キョウスケさーん!これ何処運びますー!?」


「それは改装したダイニングキッチンのリビング側にお願いします!」


「こっちー、エリー案内するー」


「2階お部屋のお掃除終わりー!クラリッサさん達ありがとうございます!」


「よっしゃ!起動問題なし!直ったぞー!」


 あちらこちらで賑やかな声が聞こえガシャガシャと鎧の走る音が楽器のように響く中各々の作業は続く、そうしているとまた転送魔法の反応があったと思ったら


「ライミィさーん!エリーさーん!ご注文のお品でーす!」


「わぁ!ありがとうございます!」

「わーい♪」


 聞こえてきた声に反応し響介が見ると鎧の縁や袖部に一際目立つ装飾をしたデュラハンが映った。


「ハリエットさん?注文の品?」


 そしてよく見ると一緒に転送されたであろう後ろにいたデュラハン達が複数人で持っているものを見て響介はすぐさま


「ライミィー!何頼んだんだー!」


「キョウスケと一緒に寝る為のベッドー!一番大きいの余ってるってクラリッサさんから聞いたから貰ったのー!」


 嬉しそう笑いながらに2階から手を振り響介に報告するライミィにいつの間にと頭を抱えたくなった。まさかのキングサイズのベッドを見たらそうなるのも無理はないだろうがちゃっかりエリーもダブルサイズの天蓋付ベッドを頼んでいる辺り抜け目ないと思う響介はふと


「まぁ、たしかにベッドは無かったからいいけどな」


 目線を変えて古ぼけたベッドやソファが置かれている通称お焚き上げコーナーに目をやる。いくらクストーデがかかっていたとはいえあの類いの脚物家具が全滅だった為寝具は皆でマルシャンにでも買いに行こうかと考えていたのもあった。そんな響介にハリエットが


「気にしないで下さいキョウスケさん。あれらは元王族達の宝物庫代わりに使われていた地下倉庫に仕舞われていたものでキョウスケさん達にならとアルフォンス様も快く承諾してくれましたから」


 後ろで値打ちがありそうな家具をジュリエッタ達が次々に運ぶ中穏やかに笑うかのような声で響介に語りかけるハリエット、しかしそんな彼女や後ろにいたデュラハンのハンネマリもなにやら魔導機やら工具やらがごちゃごちゃに入った箱を運んでいた。ハリエットは響介の視線に気が付くと


「あっ、これですか?これはネロの私物です」


 表にぞろぞろとデュラハン達が現れた事に気が付いたネロはハリエットを見つけると


「サンキューハリエットー!俺の部屋に頼むー!」


「ネロの部屋?キョウスケさん、ネロの部屋はどちらに?」


「地下ですよ。階段裏に地下への階段あって調べたら状態の良い部屋が何部屋か見つかりそれを知ったネロが「俺一応半分吸血鬼だから日光当たらない地下がいい」って事で地下室半分の4部屋程くれてやったんです」


「ああ成る程。確かに城ではアルフォンス様や他の吸血鬼(ヴァンパイア)もいますから日光対策してましたからね。魔導機の作業も音大きいですしネロには丁度いいかと思いますよ」


 そう笑いハリエットも屋敷へと入る。結局亡霊騎士団を総動員した探索拠点もとい鴻上邸リノベーションは亡霊騎士団が『来る者拒まず、去るもの追い掛け回す』が社訓の鴻上組関連の建設会社の厳つい社員(もとくみいん)の如く怒涛の勢いで進めた。特にクラリッサ達の響介のライミィの部屋のリノベーションの熱の入れようを見れば理由は明々白々だろう。そして日没前には


「皆様、この度はご協力頂き誠にありがとうございます!」


「ありがとうございました!」

「ましたー」

「誠にありがとうございます」

「サンキュー!助かったぜ!」


 鴻上邸のリノベーションはほぼ完了した。朝から始まった作業だが約2名を除く人手が主に腕力に物言わせ全員一縷の無駄なく効率に効率を突き詰めたった半日で響介達5人が生活する上の整備が整ったのだ。まだ3分の2程空き部屋があり使用用途は決まっていないが今は頂いたテーブルを整備して貰った庭に運び軽い慰労会を開き


「いや〜、やっぱりキョウスケに教えて貰ったフライはいいね!美味しいしいっぺんにいっぱい作れるらこーゆー時は助かる〜」

「たいりょー♪」


 途中から亡霊騎士団に振る舞う為料理作りに専念していたライミィとエリー。協力してくれたクラリッサを始めとしたデュラハン達が次々とテーブルに作った料理を運び


「今日用意したのはコロッケ、フライドポテト、メンチカツ、スコッチエッグでーす!」


「皆様お手を拝借」


 響介の鶴の一声の如くの言葉に皆が手を合わせる。響介は改めて確認すると


「頂きます」


「「「「「頂きまーす!」」」」」


 食前の挨拶を皮切りに賑やかな食事が始まる。料理は合わせて100人前を超える量がある揚げ物だがここにいるのは


「「「美味しー!」」」


 女性ながらも身体が資本で幽霊故太る心配が皆無の亡霊騎士(デュラハン)達だ。生前から激しい訓練が当たり前の彼女ら全員は響介達並みの大食らい。特にハリエットを始めとした半数のデュラハンは以前コロッケを食べたクラリッサ達から話を聞いて楽しみにしていたようで皆嬉々として食が進む


「サクサクしていいですね〜」

「あのフェルの実にこんな料理あったんですね〜」

「こっちなんですか?」


 そう言いジャティナが伸ばしたのはフライはメンチカツ、コロッケとは形を変えていたので何だろうと一口


「ん!お肉です!美味しい!」


「それはメンチカツです!挽いたお肉で作るのでコロッケ感覚で作れるんですよ~」


 肉と聞いてデュラハン達はメンチカツが盛られた皿に集まり皆メンチカツを食べ始める。その様はまさに肉食女子、皆メンチカツに舌鼓を打っているのを見てそしてと前置きを置いてライミィは丸っこいフライが積まれた皿を2つ持ってくると


「この料理は私達ラミアでもどっちがいいか結論が出ないんですよ〜」


 ライミィが言った意味を考えながらまじまじとライミィが持ってきたフライを眺めるデュラハン達。その横からエリーが


「お姉ちゃん、『はんじゅく』、どっち?」


「右だよエリー、エリーは半熟好きだねぇ」


「うん♪」


「じゃあ俺は『完熟』を頂こうか」


「はーいどうぞキョウスケ」


 何だ何だと思い響介達のやり取りを見ていたハリエット達に響介とエリーは示し合わせたように一つ頷き


「じゃ俺のほうから切るか」


 そうするとおもむろに響介は丸っこいフライに音もなくナイフを入れて真っ二つに切り分ける。すると


「「「おお〜」」」


 行く末を見ていたデュラハン達から歓声が上がる。

 切り開かれたフライの断面は一番外の衣の茶色、衣の内側にあったしっかり火の通った肉の灰色、そしてさらにその肉の内側の茹でた卵の白身、最後に中心部の卵の黄身の黄色と色とりどりの層が現れた。それを見てテンションが上がるデュラハン達を見てやはり料理は見た目も大切なのが良く分かると再確認した響介は


「これはスコッチエッグっていう料理になります。ご覧のとおり茹でた卵にメンチカツのように下味を整えた挽肉で覆って衣を付けて揚げる料理で卵と肉が好きなライミィ達ラミアの皆さんには一番好評だった料理なんですよ」


 ざっと説明すると今度は横で


「うりゃー」


 謎の掛け声と共にエリーはスコッチエッグにナイフをザクッと音を立てて入れるとデュラハン達からの興奮混じった歓声が挙がった。

 ナイフを入れた瞬間とろりとソースのように出てきたのは黄身、そして切り開かれた中身は響介が切り分けたものとは卵の状態が違い白身も黄身も固まっておらず黄身に至ってはほとんど火が通っていないかのような鮮やかな緋色の身が現れた。


「「「美味しそー!」」」

「すごいわ!卵がトロトロよ!」

「あんなに美味しそうな卵料理があるなんて…!」

「どうやって半熟になるの?」


「半熟のやりかたは卵を少し茹でてから取り出して氷で長時間冷やします。が」


「が?」


「今回はエリーが氷魔法と空間魔法を駆使してカッチコチに凍らせて卵のみの時間を早送りした為8割半凝固状態となっております」


 先程とおなじように響介がざっと説明する横で得意げに金色お目々をキリッと決めるエリー。完熟と半熟が出揃ったところで唐突に


「じゃあハリエットさん。食べ比べてみて下さい」


「へっ?!私ですか!?」


 まさかの指名に鳩が豆鉄砲を食らったかの如く戸惑うハリエットだが亡霊騎士団の団員(なかま)達から


「団長早く食べて下さい!」

「私達も食べたいんです!」

「さっさと手を動かして!」


「ちょっ、ちょっと待ちなさい…!」


 そう言ってハリエットはふとライミィに目をやると何だろうと首を傾げているライミィが


(だっ、だって、これってキョウスケさんと、か、か、かかか間せ)


 決してそんな事は無い。無かったがハリエットは差し出された方ではなく響介がスコッチエッグを切る時にフォークを刺していた方のスコッチエッグを見ておりライミィでも考えない元貴族令嬢らしからぬ卑しい妄想を膨らませていたのだが


「ハリエット!早く!」

「そうですよハリエット!早くしないと半熟のスコッチエッグが完熟になってしまいます!」


 ハリエットの元お付きメイド姉妹のアレッシアとクラリッサの指摘に気が付いた事で邪念(みみとしま)が食欲に振れた事で我に返り気を取り直してまず完熟スコッチエッグを食べると


「〜〜!美味しい!メンチカツの物より肉の下味は濃いですがそれが茹でた卵で緩和されていて美味しいです!」


 花より団子とはこの事だろう、先程の卑しい妄想はどこぞの空へ失せ目の前のスコッチエッグに舌鼓を打っている亡霊騎士団団長。そして完熟スコッチエッグを味わうと次は半熟スコッチエッグにフォークを伸ばす。そして一口食べると


「…?」

「団長?」


 先程までのリアクションが嘘のようにシンと静まり返るハリエット、そしてパクパク食べるかのように食べ進め始め


「なにやってんだよ、だんちょー」


 どっかで聞いたことありそうな台詞を口にするエリーをよそに黙々と食べるハリエット。そして食べ終わり徐ろにナイフとフォークを置くと


「これは選べない…!」


 まるで苦渋の選択を迫られるように絞るように漏らすハリエット。しかしそれとは裏腹に嬉しい悲鳴と表したら最適なような声色だった。


「これは難しい…!完熟はしっかりとした肉や卵の旨味が、半熟は黄身がソースになって肉の旨味を引き立てて…!両方美味しいから悩みますね…!」


 このハリエットの様子を見てアレッシア達もスコッチエッグを食べ始めた。亡霊騎士団のデュラハン達は食べ比べてはどっちが美味しいかでワイワイ盛り上がる。それを


「悪ぃな、騒がしくて」


「気にすんな」


 完熟スコッチエッグをフォークでぶっ刺し丸かじりしながら楽しそうな女性陣を眺める響介とネロだった。



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