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間話その9 鴻上家家族会議

響介一行、コロッケを作る。




 魔王城生活から4週間が経ったある日の響介達の部屋、響介はライミィ達3人とこれからの事で話し合い、否家族会議を開いていた。


「これからの事でみんなの意見が聞きたい」


 テーブルに付く響介は真剣そのものでライミィ達は思わず緊張感を感じた。だが


「これからってキョウスケ、エリーのお母さんを探すんでしょ?」


「そうだよライミィ、そうなんだけど俺が言いたいのはその後のことなんだ」


「その後?」


 首を傾げたエリーとステラに響介は教えるように語りかける


「エリーとアリスさんが再会した後の話しだ」


 響介が皆を集めて話し合いがしたかったのはこれからの事、エリーの母親を探し出した後の事だ。


 武装したエルフに襲われた。


 このエリーの言葉に只ならぬ予感を推察した響介はアングリフ城滞在中にネロに頼み情報屋ギルド『セフィロト』に接触してもらいエリーの母親アリスが収めていたエルフの国に関する情報を洗っていた。

 ネロの調べではこうだ。今のエルフの国には正統な王族の血を引く高い魔力を持つ者がおらずその跡継ぎ為に今エルフの国で悪政を布いている現在の国王つまりアリスの元夫とその家系の男達を宛てがい跡継ぎを確保しようと画策しているようで躍起になってアリスを捕らえようとしているようだ。


 その他諸々の報告をネロから聞いた響介は怒りのあまり持っていたコップを握り潰した。

 婦女暴行類いの案件が死ぬほど嫌いな響介からすれば唾棄すべき愚策であり、かつて『女は子供を産む機械』と宣う政治家に怒りを覚えたが今回はその時を怒りをゆうに超えた響介。

 それを踏まえて今のままではエリーとアリスが再会したとしてもエルフの国の連中が水を差すのは明々白々、連中がいる限りエリー親子の生活が脅かされるのは我慢ならない。


「エリーとアリスさんが再会して終わりじゃないんだ。勿論奴らがエリーやアリスさんを狙う限り俺は何度でもぶちのめし阿鼻叫喚の素敵な血祭パーティーも辞さんが10年追ってる奴らが簡単に諦めるとは思えない」


 大切な妹分であるエリーの為にも最善策を取りたい響介。その響介の気持ちを理解出来るエリーは呟くように


「エリー、お母さん、守る」


 口にした言葉は確かな決意が宿っており完璧に腹を括ったような表情をしてとても11歳の女の子がするような顔ではなかった。それを見てライミィは優しくエリーを抱き寄せると頭を撫で


「だいじょぶだよエリー」


「お姉ちゃん」


「みんな同じ気持ちだよ」


 ライミィの言葉に頷く響介とステラ、特に響介は


「ここまで追い詰められている二人に何もしないなんてのは任侠者の恥だ。鴻上の人間の端くれとしてじっちゃんにも兄貴衆、組員達に顔向けが出来ない。これは俺の誇りの問題だ」

「そしてそれはお姉ちゃんってエリーに慕われて、キョウスケのお嫁さんでもある私の面子の問題でもあるのです」


 そう言ってライミィは響介に示し合わせたかのようにウィンクをする。それを見た響介はつい笑みが溢れてしまい穏やかな表情へ変わる。が


「でも、キョウスケ様ライミィ様どうするおつもりですか?エリー様のお母様をお助けするにしても何か手立ては?」


 ステラの疑問は最もだ。それを受けた響介とライミィは


「問題はそこなんだよな」

「問題はそこなんだよね〜」


 二人は困ったように、響介は肩を竦めライミィはぐてーと机に突っ伏した。


「そうなると安全に暮らせる場所を提供しなければいけないんだが俺達はまだ魔族領を良く知らない、知るにしても時間が掛かる。助けて匿うにも準備が必要だ」

「ぶっちゃけエルフの国攻め落としちゃえば楽だけどそれはそれでエリーがいるって事でエルフ達が他のダークエルフ達を逆恨みする可能性があるからねぇ」

「向かって来る分は構わない。だがその向かって来る理由を必要以上に作ってはいけないんだ。それをしてしまうと奴らと同じになる」


 エリーとアリスは必ず再会させる。


 これは大前提であるが響介やライミィを悩ませているのはその後の事だ。

 住むところは?食べ物は?身の安全の保証は?

 全てが宙ぶらりんとしていて具体的な案が出てこない。そう鴻上家の面々が頭を悩ませていると


「話しは聞いたぜ!」


 突如部屋の扉がバァンと開かれる。部屋に入って来たのは


「ネロ?」


 魔王アルフォンスの秘蔵っ子で魔族である吸血鬼と人間のハーフ、ネロだ。ネロは何処か楽しそうに笑いながらテーブルに着くと


「そんなキョウスケ達に朗報だせ」


「朗報?」


「ああ」


 朗報なるものの情報を手土産にネロは響介達に今後アルフォンスが練っている計画を話す。その内容を一通り話すと


「嘘でしょ?アルフォンスってそんな事出来るの!?」


「たり前だろ?なんてったってアルフォンス様だぜ!」


 衝撃を受けたのはライミィだ、信じられないと言わんばかりに驚いている所へ響介が話しに入る。


「だが、本当なのか?空間魔法でルイナスを転移させるなんて」


「ルイナスだけじゃねぇさ、クラナダとかアルフォンス様を慕ってる魔族の街4つと農村や農地を全部この城を囲ってるダンジョンの内側に、ピュセル平野や裏手のダンジョンと街をごっそり入れ替えるのさ」


「入れ替える?」


「そ、ルイナスとかがあった場所からさらに」


 ネロは大陸図をテーブルに拡げ説明を続ける


「ここに、魔族領と人間領との境目にある森を挟んで向かいのとこに五神の一神を信仰してるコンバーテって国があるんだ。この人間の国はラヴァナ達が合流した魔族が合流前から争ってるんだけど地図でいうとここだな、それで何度も転移魔法を使ってこの当たりにピュセル平野を丸ごと転移させるのさ」


「ピュセル平野をですか?ですがピュセル平野には」


「わかってねぇなステラ、それこそアルフォンス様の狙いなのさ」


「アルフォンス殿の狙い?」


 ふふんと鼻を鳴らすネロは続ける


「ピュセル平野にはラヴァナの配下の死体がゴロゴロある。中にはもうアンデットになってるのもな、ラヴァナはアルフォンス様から奪った操霊魔法ネクロマンスがあるから当然死体を私度するだろ?それこそアルフォンス様の狙いなんだよ」


「どういう事?」


操霊魔法ネクロマンスはどれもこれも魔力を喰うのさ、だから魔力保有量の少ないラヴァナが使おうものなら一日に10体位私度するのが関の山、でも今のピュセル平野には」


「万を超える死体がありますね。この間串刺し刑にしていた死体含め」


「そう、ラヴァナは喜んで私度するだろうな、でも私度したからと言ってもすぐにこっちにはけしかけられない。向こうは人間とやり合ってるからそっちに戦力が欲しくて回されるってアルフォンス様に睨んでる」


 響介はネロの話しを聞いてアルフォンスのやりたいことが理解出来た。

 一見敵に塩を送るように見える。だがその塩は量が多くラヴァナしか消費出来ない厄介なもの。理に適っていると響介が考えていると


「で、アルフォンス様はキョウスケ達に協力して欲しいんだと」


「協力?何を?」


「ラヴァナは勿論だけどキョウスケ達が話題に上げてたエルフの奴らなんだけどさ、前々から俺達にちょっかい掛けててよ。どうにかしたいって思ってたんだよ」


「成る程ね〜、って事は私達とネロ達は共通の敵がいるから協力しよって事ね」


「早い話しがそういうこった」


 どうやら自分達とアルフォンス達の敵は同じようだ。利害の一致から他所と手を組むのは渡世ではよくある事だと響介は口を開こうとしたらネロが響介に向き直り


「アルフォンス様は協力してくれたあかつきにはキョウスケ達に便宜を図りたいってお考えだ」

 

「確認だがネロ、アルの要求はラヴァナを始めとした外敵の抑止力としての戦力が欲しいって考えでいいんだな?」


「間違ってはないな、後はアルフォンス様と話してくれ」


 そう言われ響介は暫し思案しネロに告げる


「分かった。俺も聞きたい事があるからその内アルとサシで話しをしよう」


 その後はネロを交えて家族会議は続行、今後の方針含めて全員で意見を出し合い擦り合せを行って会議はお開きとなった。



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