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間話その8 お料理Time!Part2

響介一行、みんなで料理




 途中軽めの寸劇(コント)を挟み乗ってくれたジュリエッタとアンリエッタにお礼と良かったら食事のご同伴のお願いを言いつつも響介はいじけかけたネロに玉ねぎを切る時に目にしみない方法とあるものを渡して任せる事に、今度は


「じゃエリー、エリーはこのパンを削って粉状にしてこのバットに入れてくれないか?粗っぽくで頼むな」


「はーい♪」


 響介は日が経ってしまい固くなりかけているパンをエリーに渡すとエリーはパンをガリガリと削り始める。それと入れ替わるようにライミィが響介に声を掛けた


「キョウスケー、じゃがいもはどのくらい茹でるのー」


「串を刺して簡単に通るようになればオッケーだぞー」


「はーい、じゃ棒苦無貸してー」


「食い物に使うもんじゃありません」


 響介と軽口を叩き笑いながらライミィは寸胴一杯に茹でられているじゃがいもを確認すると縁の方にあったじゃがいもをフォークで刺し


「あっ、だいじょぶだ。キョウスケーだいじょぶそー」


「サンキュー、なら寸胴から挙げてこっちのボウルに移してくれ。それが終わったらこの油を鍋に入れてまたおんなじように火に掛けてくれるか」


「オッケー」


 手作りの付加魔法入りミトンを手にはめてライミィはおよそ20人分のじゃがいもはあるであろう寸胴を軽々持ち上げると全て大きなボウルへと移しながら尻尾を器用に使い油を鍋に入れていく、ボウルへ移し終わったと同じタイミングで油を入れ終わり先程の寸胴と同じように鍋を火に掛ける。


「小麦粉ととき卵の準備よし、キッチンペーパー代わりのじゃがいもの千切りよし、後は気を練って…」


 響介は集中して気を練り功掌(こうしょう)を作るとそれを右手に被せるようにはめると茹でたてで湯気が立つボウルを左手でしっかりと持ち右手を突っ込んでじゃがいもを潰し始めた。途中ライミィが塩胡椒を振り味を整えながら混ぜ合わせ


「ステラー、ベーコン入れてくれないかー」


「畏まりました!」


「サンキュー、悪いんだが使った物の片付けを頼む」


「はい!」


「ネロー、そっちはどうだー」


「もうちっと!」


 鍋に火をかけている横のコンロではネロが切った玉ねぎをフライパンで炒めていた。しかしネロの話す声は何処か鼻声で


「ネロ何時まで鼻栓してるの?」


 気になったライミィが指摘した。通った鼻筋にクリップタイプの鼻栓をする姿は異彩を放つが


「それこそもうちっと!今外しても玉ねぎがまだ生だから染みるんだよ!」


 不馴れな手つきで危なっかしい所もあるが玉ねぎを炒めているネロ。ステラは何故ネロが鼻栓をしているか気になった


「キョウスケ様、ネロは一体…?」


「玉ねぎはな切る時に粘膜を刺激する成分が出るんだ。個人差はあるけどそれが目や鼻の粘膜を刺激して涙が出るのが玉ねぎ切ると涙が出る仕組みってことなんだ」


「ほぉ、成る程」


「ネロの様子を見るに目は大丈夫そうだから鼻栓だけで大丈夫そうだ」


「本当にキョウスケ様は何でもご存知なのですね、私も精進せねば」


「いやいや、俺は自炊とかは嫌いじゃないし組の手伝いとかで料理もしてたしそれなりに出来る位だ。何よりもこういう事は知っとかないとな」


「何よりもとは?」


「ステラに出会う前なんだが何も考えずに玉ねぎ切ってたら鼻の効くエリーに被害が出た」


 その一言でステラは納得し響介は遠い目をしてその日の事を思い出していた。

 まだマルシャン公国にいた頃の、冒険者に成った頃の話しで最初の依頼を終えて宿へ戻りみんなでハンバーグを作っていた時ライミィが玉ねぎを切った瞬間エリーが鼻を抑えて悶絶した。今でこそ嗅覚スキルを習得しスキルのonoffが出来るが当時のエリーは匂いで判断するのが癖になりつつあっただけに切った玉ねぎをうっかり嗅いでしまったのだ。

 それはエリーにとって痛烈な刺激臭だった。

 その日以降エリーは玉ねぎを始め切るとそういった嗅覚を刺激する成分が出る物を使う料理の際はonoffが出来る今でも必ず鼻栓をするようになったのは言うまでもなく実は今回も最初から鼻栓をしていたりする。

 そしてステラと話す中でライミィが切ったとは決して言わない響介。


「ステラの場合は視覚、目にクるはずだ。玉ねぎ切る時はゴーグル付けないとだから気をつけて欲しい」


「お心遣いありがとう御座いますキョウスケ様」


 笑いながらステラと話していると


「お兄ちゃん、終わったよ」


 エリーがバット一杯になったパン粉を持って来た。


「ありがとうエリー。バットはそこのとき卵のバットの横に置いてくれないか?終わったら手を洗ってくれ」


「はーい♪」


「キョウスケー!終わったぞー!」


 エリーにお願いし終わったら玉ねぎを炒めていたネロから呼ばれる響介、炒めた玉ねぎは綺麗な飴色にやるまで焼かれており確認した響介は


「良しネロ、直接ここに入れてくれ」


「マジか!?これどちゃくそ熱いぞ!」


 傍から見ればアツアツのじゃがいもを素手で混ぜ合わせている響介はさらに炒めたばかりの玉ねぎを入れろと指示を出す姿はネロからすればトチ狂ってるとしか思えなかった。しかし


「功掌のお陰で全然熱くないから問題無い!心配してくれるなら一思いに全部入れろ!」


「お前気功術をなんて使い方してんだよ!?」


「しょうがねぇだろマッシャーがねぇんだから!いいからはよ入れんかい!」


「まっしゃー?」


「潰したりする調理器具だよエリー。使うことないと思って買ってないんだよね〜」


「分かったよ!入れればいいんだろ!」


 ネロはごもっともな突っ込みを入れながらフライパンの玉ねぎを全てじゃがいものボウルに入れると響介は顔色一つ変えず混ぜ合わせ始めた。均等になるように混ぜ合わせること5分


「よし、これで中の具は出来た。油もあと少しで温まるからこれからこれに衣を付けます」


 響介は混ぜたタネを楕円形に形を整えると小麦粉、とき卵、パン粉の順に付けて衣も作る。一通りの工程をみんなに見せると


「はいキョウスケ質問です」


 手を上げてライミィが質問をする。


「はいライミィ」


「キョウスケは気功術で簡単に作ってるけど私達はどうすればいいの?」


 至極当然な質問である。気功術を使っていなければ火傷必須、混ぜ合わせたタネは今も湯気を立てており一目見てもアツアツなのはライミィが熱探知を使わなくても明々白々である。

 しかし響介には考えがある。


「良い質問ですライミィ。今からみんなにも作れるようにします。みんな両手をこう合掌するように出して下さい」


 響介に言われるがままにライミィ達は手と手を合わせる。すると響介がライミィに合掌した手を覆うように両手を重ねた。すると


「あっ…」


 まるで温かい布に包まれたような優しい感覚が手の全体に広がる。それを順番に一人ずつ両手を重ね


「お兄ちゃん、これ、気功術?」


「そうだよエリー。今みんなにしたのは俺の功掌と同じように気で作った手袋みたいなもんだ」


「だからお前気功術をなんて使い方してんだよ…」


「細けえ事は気にすんなネロ、リハビリだ」


「そうですよネロ、だからちっちゃいんですよ」


「身長関係ねぇだろステラ!」


 これには警護でいたジュリエッタとアンリエッタが笑っていたのは言うまでも無い、そんなやり取りをしている横でライミィとエリーは気にせず


「ホントだぁ!全然熱くないよ!」

「うん、へっちゃら」


 響介の気功術を感動しながら響介が先に作ったようにタネを楕円形に形成して衣を作っていく、遅れてステラと突っ込み疲れたネロも加わりどんどん作り


「出来たー♪」


 タネが無くなる頃には100個をゆうに超えた衣が出来上がった。響介は熱した油にひとつまみのパン粉を入れて問題無いことを確認すると


「油準備良しと、じゃあ」


「じゃあ?」


「これを油で揚げます」


 響介は慣れた手つきで衣を熱した油の中へ入れる。


「おー♪」


 油の中へ入った瞬間、じゅわっと油で焼くような音とパチパチと水分が反応し弾ける音を立てて入れられた白っぽいタネが徐々に色が変化していくのをエリーが目を輝かせて見ていた。


「油跳ねるからあんまり近づいちゃ駄目だぞ」


「はーい♪」


 適度に入れながら響介はエリーに注意を促す。大きい鍋にある程度いれるとエリーやネロがやってみたそうにしていたので響介はライミィに監視をお願いし交代して後片付けをしているステラを手伝い手際良く片付けていく、洗い物が終わった頃には


「確か『キツネ色』ってこれくらいだよねっと」


 第一陣がカラッと揚がったようでライミィは油をある程度切り千切りされたじゃがいもに乗せてさらに油を落とす。ライミィが次々と出来たものを油から上げていく横でネロが新しいのを入れていく横で出来上がったものをエリーが食べたそうに目をキラキラさせて見ているのに気が付いたライミィが


「キョウスケー、エリーが味見したいってー」


「勿論。熱いから気を付けるんだぞー」


 はーいと嬉しそうに返事をするエリーにライミィは手頃な皿に出来たてを一つ乗せてフォークとナイフと一緒にエリーへと渡す。受け取ったエリーはお礼を言うと足早にテーブルに着き早速ナイフをいれる。


「おー♪」


 揚げたて特有のサクッと音を立て中を開くと湯気と共に出てきたのは鮮やかなじゃがいもの身と飴色玉ねぎ、そしてゴロッと入っているベーコンが顔を覗かせていた。食べやすいように切り分けエリーは熱々を口に運び一言


「ほくほく、美味しー♪」


 目をキラキラさせて笑顔で答えるエリーを見て鴻上夫妻はすかさずガッツポーズを決める。


「やったねキョウスケ!」


 手を挙げたライミィと思わずハイタッチを交わす響介。二人の様子を見ていたネロだが今の今まで気になっていた事を二人に質問した。


「思ったけど、今まで俺達何作ってたんだ?」


 今更な事だが響介がネロの質問に響介が答えた。


「コロッケだ。俺の元の国の代表的なじゃがいも料理」


「へぇ、なあ俺もいいか?エリーがすっげぇ美味そうに食ってて食べたいんだけど」


「いいぞ、みんなにも感想聞きたいからジュリエッタさん達も呼んで欲しい、ってかどうせならもうみんなで作りながら食べるか」


「「「さんせーい♪」」」


 そう言われネロは警護のジュリエッタとアンリエッタ、そして交代でやって来たアレッシアとアルヴァンも招き入れ作りたてのコロッケを中心にワイワイと賑やかに昼食を取り


「これだけじゃないぞ、はい油切り代わりに使ってた千切りじゃがいもを油にドーン」


 さらにコロッケの他にもフライドポテトを追加で作っていると匂いに吊られたクラリッサ達が来てさらに賑やかになるのだった。



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