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間話その6 アルフォンスの状況整理

響介、怪我は順調に回復中




 ラヴァナ達との戦いから2週間が経った夕暮れ時のアングリフ城の玉座の間。そこでは


「ふむ、では反乱分子はカタが付いたと言うのだなヴーレよ」


 玉座に足を組んで腰掛けて目の前で跪く人狼族(リカントロープ)の戦士に語りかけるはこの城の現在の主、魔王アルフォンスだ。

 白銀を連想させる白い髪に端正な顔立ちは気品が満ち先の先まで見据えているような切れ長の赤い瞳は鋭さがある。陶磁器のように艶がある吸血鬼(ヴァンパイア)特有の白い肌を見るに幽閉されていた時のダメージは大分回復したようだと覗える。

 そんなアルフォンスに目の前の人狼族(リカントロープ)(おさ)ヴーレは跪いたまま報告を始めた。


「はっ、我が主申し上げます。ラヴァナに組みし反抗した魔族共は主からの命により串刺し刑なる処罰を実行し処された576人全員昨日死亡を確認したと報を受けております」


「ほう、およそ一週間は生きたか。実に興味深い」


「残党として残って抵抗を続けていた者共1024名は粛清、投降し我が主からの寛大な赦免により1万と965名は今反乱者の死体管理を始めとした雑務諸々に文句一つなく従事しているとスリガラより報を受けております」


 ヴーレの報告を一通り聞くとアルフォンスは玉座に腰掛けたまま


「御苦労だったヴーレよ。引き続き任せる。何かあればまた我に知らせると良い」


「御意、我が主」


 ヴーレは立ち上がり玉座の間から退室する。ヴーレが去るのを見届けると


「アルフォンス様、宜しいでしょうかの?」


 側に控えていたスケルトンワイズマンのグラットンがアルフォンスに声を掛けた。


「どうしたグラットンよ」


「御身体は如何ですかの?私めの見立てでは大分良くなったようですが」


「ふむ…」


 そう言われアルフォンスは夕焼けの日の光が差していない陰となっている裏庭に面している窓際へと移動すると


「グロズヌイハンマー」


 外に向かって雷属性魔法を放つ。

 グロズヌイハンマーはアルフォンス自身が魔導研究の中で生み出した最上位の雷属性魔法『インディグネイション』を超える雷属性魔法。

 その威力はまさに雷帝(グロズヌイ)の名の如し、雷が巨大な鎚を形成するかのように高圧縮され裏庭に投棄された反逆者達の死体に振るわれた。

 高圧縮された雷は熱の塊と言っても過言ではない、叩き潰された死体は一瞬にして焼かれ塵芥となるとアルフォンスは放った手のひらを力を入れて開いたり閉じたりする仕草をして感触を確認する。


「魔力は申し分ないな、ラヴァナの奴は我の操霊魔法(ネクロマンス)に固執する余り操霊魔法(ネクロマンス)全てと闇属性魔法の8割を奪ったが、我の雷属性、水属性魔法、空間魔法、錬金魔法等は手付かず。今のグロズヌイハンマーの感触を考えるに多少威力は落ちたが十二分に問題は無い」


「左様でございますか」


「奴の魔力が低くて助かった。あの神共から受け取った魔法道具(アーティファクト)も場当たり的に使ってくれたお陰で我の被害は少ない。だが」


 ここまで言うとアルフォンスの表情に影が落ちる、そのアルフォンスの心情を察したグラットンは


「はい、鬼人族(オーガ)のセイエイ殿始め多くの戦士達や魔族のイザベラ殿といった多くの魔導士達を失いました」


 失ったものはアルフォンス達からしても微々たるものではない。今回の戦いでは多くの配下、数多くの忠臣が犠牲となっており人的被害は大きい。アルフォンスは玉座の間から中庭が望める窓際へと移動し中庭を眺める。中庭には今回の戦いで命を落とした忠臣達の墓と兵達を弔った石碑があり静かに黙祷を捧げる


「あのような墓をキョウスケの国だと共同墓だと教えてくれた」


「左様でございますか」


「キョウスケが教えてくれたよ。人は組織とな」


「はい?」


 言葉の意味が解らずグラットンは首骨を傾げたがアルフォンスは口を開く


「いくら外見が良かろうと中身が伴っていなければ意味はない。組織を支えるのは人の力であり、信頼出来る者達の集まった結束力は堅牢な城に匹敵し組織を盛り立てると」


 グラットンはアルフォンスの言葉を聞いて納得していた。言葉の意味を思案しているとアルフォンスが続ける。


「それと、先日キョウスケに連れているダークエルフの娘エリーが持っていた端末の事を聞いてみたがやはりキョウスケは転移者のようだ」


「なんですとっ!?」


「だが、キョウスケをここに連れて来たのはアルテミスだと言っていた」


「アルテミス?まさか…!」

 

「アルテミス。地母神ガイアの眷属の一神にしてセレーナ、エリス、ピトリー、ルポセネに連なる神」


「なんと…」


「500年前地母神ガイアが邪神を道連れにするために起こした神災の際に共にあの五神に封印されたと思っていたが、どうやらアルテミスは逃れて機会を伺っていたようだな。だからキョウスケはライミィ達ラミアと出会ったのだろう」


 ここまで聞いたグラットンはハッとした表情を浮かべてアルフォンスに


「そういうことでしたか、確かにアルテミスは…」


 頷くアルフォンスはグラットンの言葉を遮り遠い目で空を見ると東の空はもう夜空が広がりつつあり


「今日は月は望めないか」




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