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間話その5 響介の経過

響介、恋愛小説で盛り上がる。




「ふむ…」


 アングリフ城の響介達に充てられたかつての王族達の部屋、そこでは今響介の7日目検診が行われ


「ふんふん…」


 響介の検診を担当しているのは魔王アルフォンスが自らの吸血鬼特有の特異な身体の治療の為有り余る魔力を用いて現世に甦らせたことでスケルトンワイズマンと変異したグラットン。


「「ドキドキ…」」


 グラットンの検診をライミィとエリーは固唾を呑んで見守っておりステラはハラハラと落ち着かない様子でネロは黙って成り行きを見守っている。


「……」


 グラットンは生前神の手を持つ男と呼ばれ多くの命を分け隔て無く救ったとの逸話もある高名な医者。アルフォンスの魔法の影響もあり魔力が開花し今では優秀な治癒術師としての一面もありヒトを治すということに関しては誰よりも精通している人物だ。

 五感を始めとした必要な感覚は全て魔法で補っており今も魔法で右手骨の感覚を発達させて触診している。


「ほうほう成る程、そういう事でしたか。ありがとうございますじゃキョウスケ殿。お疲れ様です」


 そうしている内に検診が終わったようで響介に労いの言葉をかけるとグラットンはコホンと咳払いを一つし


「結果から申します。経過は順調ですじゃ」


 グラットンの言葉を聞いてライミィ達は顔を嬉しそうに綻ばせる。


「ホント!?」


「左様でございますエリー殿。ヒビが入り折れていた骨や破裂した内臓もほぼほぼ修復しており身体の外傷も跡こそ残りますが無事完治しております。それにしてもキョウスケ殿は実に興味深い」


「どういう事だよ爺さん」


「キョウスケ殿の凄まじい自然治癒力ですじゃ。キョウスケ殿を診させて頂きましたがどうやら気功術の影響を受けておりますな」


「気功術、ですか先生」


「はい。気功術とは本来自身の中に巡る気を使い強化する事に特化しております。ですがキョウスケ殿の気功術は大変珍しい。治癒功とは初めて聞きましたが自身の気を相手を癒す事にも扱う事からか御自身の肉体細胞がその影響を受けているようでして自然治癒力が常人離れしていますじゃ」


 自分の事を関心して聞いている響介と響介の容態を聞いて安堵するライミィ達。だがここでグラットンが釘を刺す


「ですが、まだキョウスケ殿は怪我人。また定期的に検診の席は設けその経過次第で判断をさせて頂きたいですじゃ」


 つまるところ、グラットンの検診結果からこのように言われた


 戦闘行為の厳禁は今まで通り

 激しい運動、鍛錬も同じく禁止

 歩く等比較的軽めの運動を解禁

 ピアノ解禁(但し連続演奏1時間迄)


 との事をライミィ達に告げるグラットン。しかし何故それを響介のみならずライミィ達にも告げたかというと


「キョウスケ殿は若年ながら人格者であり話しが出来る方でライミィ殿達をとても大切にしてらっしゃいます。ですからそのライミィ殿達の言葉ならしっかりと耳を傾け思い止めて頂けるハズですじゃ」


 ぐうの音も出なくなる程に的確な答えだった。余りにも的確過ぎてエリーから「サスガダァ」が出るとネロはそれに突っ込みを入れていた。

 

「では、私めはここいらで失礼致しますじゃ。キョウスケ殿くれぐれもご自愛ください」


「はい、先生ありがとう御座いました」


「先生ありがとうございます!」


 鴻上夫妻のお礼を受けてグラットンは何処か穏やかに笑うとステラはグラットンにお見送りをし部屋の前にいた亡霊騎士団のデュラハンに付き添われて退室して行った。静かに扉が閉まったのを見てから


「お兄ちゃん、ご自愛?ってなぁに?」


「自分を大切にしてくださいって意味だよエリー」


「キョウスケに一番大切な事だよ」


「何も言えねぇ」


「小○和○状態?」


「それを言うなら言葉にできないな、気に入ったのか?エリー」


「あんまり」


「あんまりかよ!?」


 マイペースなエリーにすかさず突っ込んだネロに部屋は楽しい笑い声が上がる。一頻り皆で笑いあったら響介がベッドから立ち上がると


「よし、景気付けだ。先生からお許しが出たし、弾くか!」


 そう言って響介は賢者の懐中時計を取り出すと中に収納されていたピアノを出して手慣れたようにチューニングを行う。


(ん〜ちっと狂ってるな、ここをこうしてと…)


 一週間ぶりに弾くピアノを心が躍るようにチューニングをする響介。そしてチューニングが終わると


「よぉし、復帰一曲目はもちろんこの曲だ」


 響介の演奏が始まる。選んだ曲は初めて弾いた、アルスの建国祭でも弾いた終始ハイテンポの1曲だ。最初のサビで一気に乗り始めるめ楽しそうに弾く、久しぶりの演奏に夢中になって弾く響介を見ながら


「そいえばこの曲って何て名前なんだろ?」


 今の今まで知らなかった。この曲の名前、ライミィは響介が弾くピアノの中でも一番好きな曲だが今思い返すも曲名は知らなかった。響介にも聞いたが覚えていなかったから諦めていたのだが


「ひょっとしたら、あるかな?」


 ライミィのひょんな一言が聞こえたのかエリーがアイテムバッグからスマホを取り出して動画サイトのアプリを開く。


「スマホですか?エリー様」


「うん。お兄ちゃん、言ってた。ここで覚えるまで聴いたって」


 そうして履歴を遡ると見つけた。見つけたがエリーは難しい顔をしておりたどたどしく曲名を答えた。


「えっと、ふぇいす、おぶ、らんど?」


「フェイス…、FAITH(信仰)か?」


「ランドってland(土地)と言う意味でしょうか?」


「直訳すっと土地の信仰って意味か?」


 ステラやネロが言葉の意味を拾って考えるが解らずにいるとライミィが


「なら、キョウスケのアビリティの事もこっち来た経緯もあるしこの曲『地母神信仰』って曲名にしよっか」


 地母神信仰と命名された曲をライミィ達は楽しそうに弾く響介を見ながら、そして弾きながらライミィ達の会話を聞いていた響介は弾きながらアレンジし、その原曲からアレンジしたものを地母神信仰と改めて命名したのだった。




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