120話 終息 戦いの後は休息を(ネロ視点)
響介一行、カースドラゴンを討伐する。
「ほう、それで貴様達は我に永遠の忠誠を誓うと?」
「はい!その通りでございます!!」
あの戦いから次の日の夜、ラヴァナ達との戦いに決着が付き今アルフォンス様がラヴァナに付いて戦い投降した生き残りの魔族達、一万を超える様々な種族の魔族達は今玉座の間でアルフォンス様に這い蹲って許しを乞うていた。
玉座に腰掛けていたアルフォンス様は徐に立ち上がると控えてるグラットンの爺さんから王笏を受け取ると魔族達に歩み寄る。今も蹲って命乞いをする魔族達を皆殺しするかのような冷たい威圧を向けていたんだけど
「ならば今回のみ赦そう。此度の責は我にも非があるが故、貴様達に責を背負わせるのは些か不条理というものだ」
ふと威圧が和らぎ俺が分かるくらいの穏やかな表情になるアルフォンス様。
「あ、有難きお言葉を…!」
「だが、次はあると思うな」
「ははぁ!ありがとうございます!」
どうやらアルフォンス様は許したみたいだ。まぁこいつらもあのジャッカルがアルフォンス様の味方だって知ってるしアルフォンス様もある程度回復してるから簡単には逆らわないだろ。
ある程度見届けた俺は一足先に城内を歩く、城の中は先の戦いで至る所がボロボロで今はランガ達を始めとした戦鬼族達や鬼人族達が中心になって城の修復作業を行なってる最中だ。ヴーレ達の人狼族は取り残された残党の掃討で城の外出てるし当面はあの魔族達とは軋轢はあるかもだけどまあ奴等は外様扱いになるだろうし直ぐに落ち着くだろうな。
そう思いながら俺はある場所を目指して歩くと目的の部屋の前に着き
「ネロ、どうしましたか?」
部屋の前にいたのは亡霊騎士団のデュラハンのアレッシアとアドリアナの二人だ、二人は何処かそわそわしたような感じだったけど理由は分かる。
「取り敢えず様子見だよ。中入るぞ」
「ちっ、せっかくいいところだったのに…」
「まあまあアレッシア副団長…」
アレッシアに舌打ちされたが俺は気にせず部屋に入る。中は
「はい、キョウスケあ〜ん」
「あ〜ん」
「美味しい?」
「うん」
「良かったぁ、いっぱいあるからね」
「うん、ありがとうライミィ」
「お姉ちゃん、エリーもやりたい」
「ライミィ様、僭越ながら私も」
頭を始め至る所を包帯で巻かれてにベッドから起き上がってたキョウスケがライミィ達にされるがまま飯を食べていたとこだった。ボロボロだった服はクリーニングで綺麗にされていたが今はライミィが拵えたラミアの民族衣装風の鬼人族達みたいな着物を着て楽にしているみたいだ。
いや大変だったなぁあの後が、結論から言うとラヴァナ達には逃げられた。
「ば、馬鹿な、吾輩のカースドラゴンが……」
「貴様の負けだ、ラヴァナ」
虎の子のカースドラゴンが消滅した事で呆然としてたラヴァナにアルフォンス様はにじり寄った時
「ラヴァナ様!」
いきなりラヴァナの部下のリオレンが現れてフリーズランサーを飛ばしてきやがった。飛び退いて躱すアルフォンス様だったけどそのせいでラヴァナとの距離が空いちまった。
「くっそ!」
こんな時に腕が痺れてやがって銃が抜けねぇ…!やっぱこの銃反動やべぇぜ。他だとライミィはキョウスケ庇って満足に動けねぇし他はラヴァナから遠すぎる!
「アルフォンス…!ジャッカル…!必ずや貴様らを地獄に送ってやる!覚えておれ!!」
リオレンがテレポートを唱えるとラヴァナが捨て台詞を吐いてリオレンと消えてった。
「逃したか、くっ…」
「アルフォンス様!」
そう呟いたアルフォンス様は苦しそうに片膝を付いてしまったんだ!俺やグラットンの爺さん、ハリエット達がアルフォンス様に駆け寄ると俺達を制して
「我は大事ない、少々魔力を使い過ぎただけ、騒ぐでない」
そうアルフォンス様は俺達に言ってくれた時
「キョウスケ!キョウスケしっかりしてぇ!!」
ライミィが悲鳴みたいな声が聞こえたからそっちを見ると力無く項垂れているキョウスケと泣きながら必死に呼び掛けるライミィがいた。
「お兄ちゃん!」
「キョウスケ様!」
エリーもステラもキョウスケに駆け寄って今にも泣き出しそうにキョウスケを見てる。あんな声を聞いちまうと嫌でも気になっちまう。それは俺だけでなくてハリエット達も遠巻きながら心配そうだった。その時
「グラットンよ」
「は、仰せのままに」
アルフォンス様に声掛けられたグラットンの爺さんがキョウスケ達の元へ行くと
「失礼致しますじゃ」
爺さんはライミィに抱き抱えられているキョウスケを見て怪我の具合や首筋に手を当てたりして検診を始めると
「大丈夫ですじゃ」
爺さんがライミィ達に安心させるように一言で言い切る。
「ホント?」
「はいですじゃ。体力、魔力、気力、全て限界以上に使い切ったことによって過労で倒れてしまったようですじゃ。見たところ怪我も大事なく命に別状はありません。少しお休みになればまた目を覚まされますじゃ」
「良かった、良かったよぉ、キョウスケェ…」
爺さんの言葉を聞いて安心したのかポロポロと涙流してキョウスケを抱きしめるライミィ。それを見て
「ハリエットよ」
「はっ!」
「すまぬが動ける者でキョウスケ達に部屋を用意してやってくれ」
「はっ!直ちに!」
「アルフォンス様ーー!!」
その時表で戦っていたランガ達が玉座の間に入って来たって訳だ。アルフォンス様は俺がカースドラゴンごとぶち抜いた壁際に歩いていた。外はもうとっくに夜闇に包まれ空には満月が綺麗にかかり輝く月を見て
「美しい月だ。また、この月夜の元へ還れるとはな」
それからして今日の昼頃キョウスケは目を覚ました。ライミィ達に抱き着かれた時痛みを訴えたからグラットンの爺さんに精密検診をしてもらい診てもらった結果グラットンの爺さん曰くキョウスケの怪我はヤバかったらしい
『…肋骨5本骨折、胸椎及び頭蓋骨ヒビ、内臓破裂、左上腕二頭筋及び三頭筋断裂その他諸々、全治3ヶ月ですじゃ』
今思い出しても引くほどの大怪我だった。でも
『本来3ヶ月なのですがキョウスケ殿、類を見ない自然治癒力ですじゃ、これを鑑みると恐らく1ヶ月で完治出来るかと』
それを上回るキョウスケの回復力にさらに俺は引いた。現に上腕三頭筋が半ば回復してるらしい、でも一週間は安静だそうだ。それを受けて
『ならキョウスケ動いちゃダメだからね!大人しくお世話されなさい!!』
涙目のライミィ達にキツく言い聞かされてた。しかもエリーが治癒魔法を使うの拒否してたし響介は
『異議ありません。みんな迷惑かけてごめんなさい』
あの戦いっぷりや普段の調子から想像も出来ない程大人しくなっちまったよ。まあ心から反省してんだろうなってのは一目瞭然だ。あんなに無茶してライミィ達を心配させてたからかキョウスケがしゅんってしてた。あんなキョウスケ初めて見たぜ。
そんなことがあってキョウスケ達には昔この城の王族達の家族が使ってた広くて豪華な調度品で彩られたこの部屋を用意された。ハリエット達が人数分のベッドを運んだりライミィの「キョウスケに温かい食べ物を食べさせてあげたい」って要望でこの部屋で料理が出来るようにキッチン設備を整えたりと板競り尽くせりだ。だが俺は気にしないし
「別にいいか、キョウスケのお陰だからな」
今目の前での穏やかで微笑ましい光景を見て今は細かいことはいいかと思えた。ラヴァナ達の動向も掴んではいるけど今のキョウスケ達には何も考えずに休んで貰いたい。それに
『キョウスケ達は我の恩人だ。城に滞在中は我の客人として饗すよう』
このアルフォンス様の意思に異を唱える奴は今の魔族にゃいねぇから実質キョウスケ達はアルフォンス様の客人、城に滞在中は警護に立候補した亡霊騎士団のみんなが警護が付くことになってて部屋の外にアレッシア達がいたのもそれだ。立場関係無く交代して警護してるみたいだ。勿論それにも理由があって
「嗚呼、なんて麗しい…」
「クラリッサズルいわ、あんな甘々な光景を見てたなんて…」
この通りクラリッサの発作は姉のアレッシアだけでなくほとんどの亡霊騎士団のデュラハンが持ってるもんだからみんなキョウスケとライミィのイチャついてるのを見たさで警護のシフト回してんだよ。俺はやれやれと思ったけど
「ん?ネロか、どうしたんだ?」
されるがままのキョウスケが気が付いた。改めて見てもボロボロだ。ベッドの側にあった取り替えた血だらけの包帯を見てその凄まじさを再認識させられる。
「そんなとこで突っ立ってねぇでこっちこいよ」
だがキョウスケの奴は気にしてないみたいでケロッとしてやがる。感心半分呆れ半分で俺は誘われるがままキョウスケが休んでるベッドの側のテーブル席に腰掛けた。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!作者のみえだと申します。
この回で無事第5章終了です。目標のブックマーク登録数100も目標以上の120を越えられ読んで頂いている皆様には感謝しかありません。
次回は5.5章としてバトル控えめのほのぼの日常回をはさみたいと思います。
改めまして今回もここまで読んで頂いた皆様に沢山のありがとうを、また自身の都合で更新が不定期なりがちですがひっそりと更新していると思いますがまた読んで頂けると幸いです。
改めてありがとうございました!