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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第5章 魔族領へ ~ピアニストと囚われの魔王~
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119話 一撃 こいつはとっておきだぜ

響介、打開策を閃く。




(面白い事を思い付くなキョウスケ)


(偶然だよ。それよか見てたろ?)


(うむ、だが後一手欲しい所ではあるな)


(何言ってんだ。ネロがいるだろ?)


(ネロか)


(ライミィでもう一声なら後はネロしかいねぇ。ネロならブチ抜けるだろ)


(うむ当然だ。だが)


(家族は信じるものさアル)


(何?)


(俺からすりゃ一緒にメシ食って笑い合えば家族みたいなもんさ。家族は信じるものだろ?)


(ふっ愚問だなキョウスケよ)


(あ?)


(ネロは我の息子も同然、いや息子だ。親は子に期待し、望みを託すものだ)


 アイコンタクトに有した時間は1秒未満、この響介とのやり取りを目でした後にアルフォンスはネロに念波を送るのだった。






 アルフォンスから作戦を聞いたネロは直ぐに行動を起こした。後方にいるエリー達に合流する。理由はラヴァナに悟られないようわざと射線を切りつつエリーからの指示を聞く為だ


「悪ぃみんな。今から魔弾(バレット)精製するから守ってくれ」


 いきなりの発言に困惑したデュラハン達だったがクラリッサは決意を固めたような表情をしているネロに何かを感じ取り


「分かりました。私が、私達が死んでも守ります」


「クラリッサ…」


「だからネロ、頼みますよ?」


「任せとけ!」


 背中をクラリッサ達に預けネロは持っていた2丁の魔銃(ウェブリー)をホルスターに納めると代わりに別の魔銃(ウェブリー)を取り出した。それを見たエリーは首を傾げる


「銀色?ネロ、それって、回復の?」


 ネロが取り出したのは最初出会った時に言っていた回復用と言っていた銃身の短い銀色の魔銃(ウェブリー)、ネロは銀色の魔銃(ウェブリー)の弾倉を振るようにして開き慣れた手つきで装填されていた弾を全て除外した


「そうだよ。普段は回復用の弾を撃つのに使ってた奴だ。それには理由があってよ」


「理由?」


 ネロは先程納めた黒色の魔銃(ウェブリー)を指差しながら説明する。


「こいつはこっちの魔銃(ウェブリー)より撃った弾の威力は段違い何だけどその分反動がきちぃし取り扱いがシビアなんだ。でも回復用の弾は例外で無反動で撃てるから普段こいつを回復用に使ってたんだ」


 するとネロは辺りを見て壊れた調度品を見つけるとネロはそれから銀の欠片を拾い上げアイテムバックからアルケミストキットを取り出し錬金魔法の準備を始める。


「しかも普通の弾じゃこいつは駄目なんだ。こいつの弾はこいつ用に錬金した弾じゃないと本来の力が出せない。いうなればこっちの魔銃(ウェブリー)が手数ならこいつは威力ってこった」


 説明したものの何となく理解しているようで理解していないエリーを尻目にネロはクリエイトアイテムを詠唱し、銀の欠片を媒体にし弾丸を作り始めた。






 カースドラゴンと戦いながらエリーとネロの会話が気になって二人の会話に聞き耳を立てていた響介


(成程、さしずめあの銀色のリボルバーはマグナムってやつか)


 マグナム。

 元の世界でのあの手のリボルバーでは一番知名度がありリボルバーと聞いたら直ぐに連想出来る拳銃だ。

 厳密にはマグナムとは弾丸の種類だがネロの言い方を要約するとどうやらあの銀のリボルバーは威力のあるマグナム弾を撃つ為に専用設計されたリボルバーのようだ。響介はそう推測しあの銀色のリボルバーに鑑定スキルを使って見てみると



コードライナー

アイテムランクS

魔法媒体不可

一撃で撃ち抜く事を念頭に置き極限まで威力を高める事に成功した魔銃(ウェブリー)。専用の弾丸で用い射撃すればドラゴンの鱗果てはオリハルコンすら容易に貫通させる事が出来日本が存分する世界ではM500に相当する性能を持つ。

ガンスミス、サミュエル・スウェッソンが晩年に製造した傑作の一丁の一つ。



(なら威力は信頼出来る…!)


 M500はハンドキャノンの異名を持ちかの有名な44マグナムの3倍の威力を誇ると言われ拳銃の中でもトップクラスの威力を誇るリボルバーの最高峰だ。その銃相当の銃なら必ず撃ち抜けると響介は確信し


(後は俺達だ…!)


 ラヴァナがけしかけたカースドラゴンを確実に叩き潰すにはまだ策を講じる必要がある。そのために


「ライトニング!」


「サンダーボルト」


「今度こそ!」


 響介とアルフォンスは雷属性魔法を詠唱しカースドラゴンにダメージを与えると共に属性魔法の反応作用を利用し磁場を作る。そしてそれに合わせてライミィが射る矢の一閃はカースドラゴンの身体を抉った。


「ウグォアアァァァァァァ!?!?」


左の骨だけになっている翼を吹き飛ばすとカースドラゴンから悲鳴のような悍ましい声を挙がる。


「ちょっ、なにコイツ!?アンデットじゃないの?!」


 ライミィが驚くのも無理はない。アンデットは本来痛覚が無いものでこのようなリアクションを起こすのは予想外だった。


「どうなってやがる?」


「ここに残っていた怨念は中々厄介なようだ。どうやら強過ぎる怨念故生前の意識が戻りつつあるのだろう」


「生前の意識?」


「この城の以前の主、亡国最後の国王だ」


 アルフォンスの説明を何となく理解した響介だったが痛みに苦しむカースドラゴンが自身をキズ付けたライミィを見つけた時


「ニンゲンモドキガァァァァ!ヨクモコノホマレタカキオウデアルワガハイ二イィィィィ!!!」


 カースドラゴンがその大口を開けライミィに喰らいつかんと迫る。それを見て


「俺の女にクセェ口を向けてんじゃねぇ!!!」


 響介の怒りのインターセプトが入る。カースドラゴンの下顎目掛けて蹴り上げて強制的に閉じさせる。あまりの痛烈な蹴りにカースドラゴンの巨体がのけぞらせるが


「オォノォォレェェェ!!!」


 怯んだ様子が見られずその大きな腕を響介に振り上げて来たが


「しつけぇ!しつけぇ奴は嫌われんぞ!」


響介はそれに蹴りを入れ文字通りキックアウト、強引に蹴り飛ばして距離を取る。


「オオオォォォ!!」


 するとまたカースドラゴンは肉塊を撒き散らしてドラゴンゾンビを産み出し始めた。


「ちっ…!」


 わざとらしく舌打ちをして響介はラヴァナの反応を確認する。しかしラヴァナは


「おのれ…!くたばり損ない共が…!」


 顔色が思った程よろしくない。顔中に脂汗をかき肩から息をしておりその様子を不審に思った響介だったが、


「どうやら、魔力欠乏症の症状が出始めたな」


 響介の疑問にアルフォンスが答えてくれた。


「奴は元々の魔力保有量は大した事がない。我から魔力を奪ったものの魔力保有量までは奪ってなかったようだな、大した事ない魔力保有量で使いこなせる程我の魔法は容易くはない」


 成程と響介は合点がいった。どうやらカースドラゴンの中の邪神魔具(エビルファクト)を破壊されないように空間魔法を使っていたが行使しすぎて魔力切れを起こしたようだ。

 だが油断は出来ない。追い詰められた時に真価を発揮する。これはラヴァナにも言える事で追い詰められた外道ほど何をしでかすか分かったものではないのを響介は良く知っている。

 外道という生き物はいつの世も外道であればある程ヤケを起こした時のたちの悪さは火を見るより明らかなのは万国は勿論世界共通なのだ。


「まだだ…!まだ吾輩はここで終わるような魔王ではない…!終わる訳にはいかんのだ!!」


 ゼェゼェと息を切らしてアルフォンスを恨めしく睨みつける。


「ふん、貴様の下らぬしがらみなどどうでも良い。ただキョウスケの言葉を借りるなら貴様に落とし前とやらをつけさせるのみ」


「黙れっ!イービルスフィア!!」


 ラヴァナは闇属性魔法のイービルスフィアを詠唱しアルフォンスを攻撃する。無数の黒い魔力弾が四方八方からアルフォンスに迫るが


「ライトニングアレスト」


 自身の周りに魔法の雷の網を展開するとイービルスフィアによって出来た魔力弾を全て絡め取り相殺する。


「怒りは冷静さを欠くぞ?そんな魔法が通用せんと何故気が付かん」


「黙れっ!やっとこの時が来たのだ…!神災より500年、人間共と魔族の領土が逆転し、一つに纏まらん人間を滅ぼすまたとない好機を、再び魔族を我が物にする好機を!」


 鬼気迫る表情で心から吐き出すように語りラヴァナは血走った目をアルフォンスに向ける。その表情は様々な怨嗟を含んだ悍ましさが滲み出るような邪悪なものだが


「くっだらなぇ」


 一蹴するようにラヴァナ言葉を遮る声が聞こえた。その言葉を口にした青い瞳の人間はカースドラゴンに土属性魔法のグレイブで怯ませると今度はスパークを詠唱しカースドラゴンの動きを止めるとラヴァナに対峙するように正面に向かい合う


「今何と言った人間!!!人間如きが魔王である吾輩を愚弄すると言うのか!!!」


 ラヴァナは興奮し吠えるかのように自分を否定した人間、響介に今にも噛みつかんとような勢いで反論したが


「くっだらねぇって言ったんだよ犬面が、盗っ人猛々しいとはこのことだな」


「何を…!」


「幾ら大義名分掲げようが他人におんぶにだっこのテメェがやってんのは他人を搾取してるだけだ。自分の力で成り上がれねぇ玉無しの腰抜けがいっちょ前に吠えるな」


『自分の力で成り上がれ』


 これも祖父に言い聞かされた教えであり鴻上組の教えの一つ。

 本当に自分に自信がある人間なら他者を喰い物にする必要は無い、そんな事に頭を使い策を練る暇があるなら己を鍛え他者を出し抜く為に日々精進を積めというものだ。

 他者を喰い物にすると言うことは弱者から搾取するという事を意味する。それは汚いシノギを良しとしない組ではNGであり仁義と侠気を重んじる鴻上家では忌諱とされる行為。

 つまり響介からしてラヴァナという魔族は他者を喰い物にしその力に笠に着てを我が物顔で振りかざしさらなる搾取を企てる外道であり敵でしかない


「テメェが誰だろうがどうでもいい」


 響介は静かに口にするがその口調とは反比例して響介から放たれる圧が強さが増し


「テメェみてぇな外道は完膚無きまで叩き潰す。それだけだ」


 まるで死刑宣告かのように冷たく言い放ち侮蔑の籠った、ゴミを見るかのような目でラヴァナを見据えていた。


「人間如きがぁ!!」


 響介の言葉にラヴァナは逆上しそれに呼応するかのようにカースドラゴンが不気味な咆哮を上げると響介とアルフォンスに襲い掛かる。これを受けて響介とアルフォンスは視線を合わせると


(キョウスケよ、上手くいったな)


(あの手のダボのヘイト集めは慣れてるからな)


(流石の手前だ。そのお陰で奴は我らに気を取られた)


(ああ、仕上げと行こうか…!)


(うむ…!)


 響介は視線を切ると刹那功を使いカースドラゴンの攻撃を回避し拳を入れる、アルフォンスも


吸血鬼(ヴァンパイア)音響(ソニード)


 刹那功と同等以上の瞬間移動で回避すると


「サンダーブレード!!」


 雷属性魔法のサンダーブレードを詠唱、最初以上の数の雷の剣をカースドラゴンに落とし攻撃し


「ライトニン…!」


 響介も続こうと魔法を詠唱しよう左手をかざした時だった。力が抜けたかのようにガクンと体勢を崩してしまう。


(しまっ…!)


 連戦に継ぐ連戦に加え普段使わない魔法を魔力を上げて連発した事で響介は魔力切れを起こしてしまった。このまま倒れると思われたがそうはならなかった。


「あ…」


 倒れかけた響介、しかし響介が倒れることはなかった。


「頑張り過ぎだよキョウスケ」


 響介は白い蛇の身体に支えられていた。言わずもがな


「迷惑をかける、ライミィ」


「それは言わない約束だよ」


 ライミィだ。ライミィは左手を響介に重ねるようにかざすと二人の薬指に付けていた群青の双環が淡く光る。響介は自身に魔力が入る感覚を感じ


「「ライトニング!」」


 ライミィとライトニングを詠唱、二人の魔法は上位の雷属性魔法に匹敵する威力だった。それにより今まで以上の属性魔法の反応作用が発生し強力な磁場が生まれた瞬間


「今お腹!」


 エリーが呪玉(カースオーブ)を感知するとそれにネロは即座に反応して精製した銀の弾丸を込めた魔銃(ウェブリー)を構え


「こいつはとっておきだぜ…!」


 引き金にかけた指を引く


「お待たせしました国王様!お夜食の時間ですよ!!!」


 一際大きな一発の銃声が響いた。魔銃(ウェブリー)から放たれた銀の弾丸は磁場を通り音速を超えた一発は大きく開けたカースドラゴンの口にぶち込むかの如く狙い澄ますように撃った一撃だった。

 あまりもの威力にカースドラゴンは貫かれた頭から尻尾の先まで綺麗に風穴が空き腹にあった魔石代わりの邪神魔具(エビルファクト)も粉々に破壊された事でカースドラゴンとカースドラゴンから産み出されたドラゴンゾンビは次々と崩れるように跡形もなく塵となっていった。





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