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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第5章 魔族領へ ~ピアニストと囚われの魔王~
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99話 ネロ編 半端者の意地

ステラ、ただただぶった斬る。




「よっしゃあ!気合い入れるか!」


 愛用の魔銃(ウェブリー)魔弾(バレット)生成で作った魔力を込めた弾丸を再装填し敵地へ侵入を再開する。俺が転送魔法で飛んだ先はフライオと仲間の十闘将ロブザスが逃げた先、今俺が潜り込んでるとこであいつらが拠点に使ってる遺跡だ。

 ルイナス襲撃後、魔王の座を乗っ取ったラヴァナや十闘将の連中の情報をまとめたキョウスケ達はラヴァナ達を『外道』と認定し改めて俺達に協力を約束してくれた。

 理由もそれだけじゃなくてどうやら魔族領のどっかにいるエリーの母親を探すにあたってラヴァナの部下のウィクル達に目を付けられているからいずれ何処かでぶつかる位なら最初に黙らせて安全に母親探しをしたいからだって言ってたな。

 それでも俺は嬉しかった。生まれや種族なんて気にもせずちゃんと話しを聞いてくれるキョウスケ達に、人間にも良い奴がいてラミアやダークエルフやターロスも捨てたもんじゃねえな。そういやキョウスケで思い出したけど


「やっぱりキョウスケおっかねぇよ、なんかアルフォンス様みてえだ」


 レオエッジ達に捕まって人質にされて殺された魔族の親子を見てキョウスケを取り巻くの空気がガラリと変わった。ありゃ純粋な怒りだ。

 吸血鬼公爵(ヴァンパイアデューク)であるアルフォンス様も冷酷な方で知られているけど俺やグラットンの爺さんや亡霊騎士団とか身近の信頼を置いてる者には慈悲深いんだ。ただその信頼してる奴に牙剥いた時が容赦無いだけで、それこそキョウスケの怒り様位にな


「あのヴーレがびびってたもんなぁ、まぁ気持ちは分かる」


 そう思いながら俺は身を潜めながら奥の部屋の入り口前に魔銃を構え引き金を引く、壁に設置されていた映像を記録する魔法具を破壊し近くにいた魔族が破壊音がした方を見るのを計って頭を射抜いて処理する。ここにいる奴らを考えれば魔法具は壊すに越したことはねぇ。それはそれとして


「それにしてもあの野郎散々嫌み言ってくれたからな、その分たぁっぷり鋼弾くれてやるぜ…!魔速装填機(クイックローダー)も稼働しとくか」


 俺そう言ってキョウスケが使ってるようなホルスターバック型のマジックバックから小さな魔法具を取り出し操作する。淡い光を湛えふわりと浮かび魔銃の側へ行くとあっという間に新しい弾丸が装填された。

 こいつは魔速装填機(クイックローダー)。これも俺が使ってる魔銃が発見された遺跡から発掘された魔導機だ。使い方は簡単雷属性の魔力をちょいと込めれば後は事前に接続登録された魔銃(ウェブリー)を感知して自動で装填してくれるって寸法さ。装填される弾丸はマジックバックの中に回収側の魔速装填機(クイックローダー)と弾丸が500発以上入ってるからまず弾切れの心配はねえ。でも


「先にいる奴らのこと考えるとこれだけじゃ厳しいからな」


 俺は安全を確認してから奥の部屋に身を潜めてマジックバックから適当に弾丸を取り出して付加魔法のエンチャントを行使する。魔法は面倒くさい詠唱が必要だからあんまり得意じゃないんだよな。


「あれ?」


 そういや、詠唱で思い出したけどキョウスケとかライミィとかエリーって詠唱無しで魔法使ってたよな?なんでだ?


「終わったら聞いてみるか、そういや確かラミアには無詠唱で魔法を扱うって爺さん言ってたっけな」


 グラットンの爺さんが言ってたことを思い出した。

 魔力が高く魔法を扱う事を長けたラミア。

 魔族の中でも魔力が高く魔法が得意な吸血鬼(ヴァンパイア)や高い魔力を持って生まれ魔法は勿論それから派生した魔術を操る魔女なんてのもいる。勿論アルフォンス様は無詠唱で魔法を使うが俺が見てきた他の魔力が高い魔族や種族も高速詠唱は扱えど完全に無詠唱はアルフォンス様以外に見たことがない。


「…うん。キョウスケはやべぇけど冷静になったらみんな揃ってやべぇな」


 今思えばおかしくなるな。

 この状況をどうにかしたくて、家族同然のみんなが殺されるのを黙って見たくなくて一人足掻いてたらそんなやべぇ奴らと出会えるなんてな。


「さ、俺は俺のやることやりますか!」


 感慨に耽るのは終わってからでいい。俺は遺跡の奥へ奥へと進んで行く。すると


「いたぞっ!こっちだ!」


「お?ようやくバレたか」


 非消音の魔銃を使ってるんだから当たり前か、どうせバレるのも早くか遅いだ問題だから気にしてねぇし。俺は敵が俺を捉える前に脳天目掛けて引き金を引く。遺跡は薄暗い所もあるが俺はダンピール。暗い所でも問題ねぇ。そうして俺は先見必殺、先に敵見つけ次第片付け進み奥の部屋へと差し掛かる。


「話し声が聞こえるな」


 聞き耳を立てるとどうやら通信用の魔道具を使っているようなノイズ混じりの声が聞こえた。ただここからだと遠すぎるのとノイズが酷過ぎて相手の声は分からないが部屋にいるのが一人。やるなら今か、そう思ったその時


「ウォータープレス!」


「!」


 バレてたか。

 奴は俺がいる方目掛けて水属性魔法で攻撃してきやがった。俺はなんなく避けると攻撃してきた奴を確認する。


「待ってたぜ!半端者!!」


 まあさっきから声聞いてたから確認する必要もねぇんだけどな、俺は奴を見据えて


「よぉ、卑怯者!」


「はははっ、いたぶってやるぜ。お前の事は前から気に入らなかったんだよ!」


「へぇ、気が合うな。俺もだよ」


 俺は魔銃を構え引き金を引く、銃声が合図となり戦闘が始まった。目の前にいる水属性魔法で攻撃してきやがったのは十闘将のフライオ。魔族の男でラヴァナの小飼、いや腰巾着って言った方がしっくりくるか


「生意気な奴めが!ラヴァナ様に逆らった報いを受けろ!!」


 そう言うとフライオは水属性魔法を唱えて攻撃してきた。奴は水属性魔法が得意で魔法を中心に戦いをするんだけど


「よっと」


 俺はもう一丁の魔銃を抜いてノールックで後ろの魔導機を破壊する。バチバチと火花を散らして時期にボンと爆発するのを見たフライオが顔を歪ませた。


「こいつ……!」


「へっへっーん、お前の魂胆は分かりきってんだよ」


 俺が壊したのは魔法を転送する魔導機名前は忘れた。魔法の転送ならエリーみたいに属性魔法と空間魔法を同時にやればと思えるけどそれは魔力もあってアビリティの恩恵があるエリーだから出来る事であって普通まず出来ない。アルフォンス様は出来るけどな。

 フライオの野郎は確かに腕の立つ魔導師だが卑怯者だ。俺は奴の手の内を知ってる。真っ正面から戦いながらあの魔導機を何個も敵の背後に設置して敵の背後を攻撃する。その戦い方故に奴は真っ向勝負が好きな鬼人族(オーガ)戦鬼族(トロール)から卑怯者と揶揄されていたんだよ。

 俺は周囲に引き金を引きまくりフライオが仕掛けていた魔導機を破壊する。


「まだやるかい?卑怯者」


「こいつ…!だが終わりだ半端者!」


 フライオがそう言うと俺の後ろからなんか飛んできた。俺は反射的に間一髪避けると飛んできた物を見た。飛んできたのは人の腕のようで腕の先にカニみたいな鋏が装着されていた。


「ギャギャギャ!なにチンタラやってんだフライオォ!」


 この腕にこの気味悪い笑いかたをするのは一人しかいねぇ


「ロブザスか」


「おいおいおいおいぃ!誰かと思えばネロじゃねぇか!ならフライオは引っ込んでろぉ!」


 現れたのは十闘将のロブザス。元はマーマンと呼ばれる魚人族に分類されその中でも身体中に甲殻を持つ甲殻族(クラストロ)と呼ばれる魔族の男。昔の戦いで重傷を負った時に足りない所を魔導機で補った結果精神不安定となり今では改造した鋏の腕で八つ裂きにして殺した奴の真っ二つにした断面を見るのが大好きな殺人狂だ。

 ロブザスは俺を見るなり血走った目で俺に襲い掛かって来やがった。


「ネェロォォ!てめえの断面見せろやぁぁ!ちゃんと半分か見てやるからよぉぉ!!」


「ロブザス!その半端者は俺が殺す!邪魔をするな!」


 魔法の射線上に入るロブザスに悪態つきながらもフライオは水属性魔法を唱え攻撃を再開、俺は攻撃を捌きながら一歩冷静に考える。


「やっぱこいつら相性がいいよな。ロブザスが来る前にフライオを殺りたかった」


 なんだかんだこいつらは相性が良い。

甲殻族(クラストロ)の特性により水属性魔法に強い耐性を持つロブザスはフライオの魔法を喰らっても何もなかったかのように攻撃を続ける。フライオはフライオでロブザスに水属性魔法が効かない事を良いことに防御力の高いロブザスを遮蔽扱いして絶対に俺に撃たれないポジションを維持している。


「しゃぁぁぁ!」


 ロブザスがまた腕を飛ばしてきやがった。奴の鋏の力はタイクンタイガーの噛む力をも越えていて即死級の攻撃、当たったら最後首チョンパだ。


「このっ!」


 鋏をかわしロブザスに魔銃を撃ち込む。しかし甲羅に弾かれる音が響くだけ


「ギャギャギャ!そんなもんが効くかぁ!早く断面を見せろぉ!!」


 奴の殻はかなりの強度を誇りただの弾丸じゃ手傷をつけるのすら難しい。

 だが俺もなんも考えてない訳じゃねぇ。奴の繰り出す攻撃をかわしながら俺は目に移った壊れた魔導機の破片を見て更に閃き、クイックローダーを接続した魔銃を一度しまいもう片方の魔銃の空薬莢を捨ててさっき付加していた弾丸を籠める。


「スプラッシュ!」


 その時にフライオの魔法が飛んで来る。スプラッシュは範囲内に幾つもの水の柱をランダムで生み出して攻撃する魔法だ。ただ、何処に柱を出すかがランダムで術者でもコントロールが出来ない魔法だ。俺はフライオの攻撃を掻い潜り魔銃の銃口をロブザスに合わせる。


「今度はただの弾じゃねぇぞ…!」


 フライオのお陰でロブザスは俺を一瞬見失った。


「一瞬ありゃ十分だ!」


 引き金を引いた。放たれた弾丸はロブザスに当たったが弾かれた。ここまではさっきと一緒だ。だが


「ギャァァァァァ!?!?」


 突然辺りをつんざくような電撃が走る。


「な、なんだ?!ロブザスどうした?!」


「もらい!」


 俺は狼狽えたフライオを見逃さずロブザスに撃ったスパークを付加した弾丸をお見舞いする。


「ガアアアアアアアアアア?!?!」


 効果は抜群!特にロブザスはフライオの水属性魔法のお陰で水びたしだから尚効果はあった。フライオにもスパークバレットをぶちこんだから足止め位にはなる。俺はすかさずロブザスにさっき拾った破片を投げてクイックローダーを接続している魔銃に切り替えて破片目掛けて撃つ。弾丸の推進力が加わり破片は運良くロブザスの殻の薄い場所に深々と刺さった。

 

「こんなんで死ぬか半端者があぁ!断面見せろやぁぁ!!」


 破片を抜いた痛みでスパークのダメージを振り払ったロブザスは俺目掛けて鋏を放ち殺しにかかる。


「舐めんじゃねぇーーー!!」


 俺は放たれた鋏をスんでのとこでかわしてロブザスに肉薄、魔銃を破片が刺さってた場所へぐりぐりと押し当てた。


「ロブザスよぉ、確かにお前の殻は弾丸が通らない位硬ぇよ。だがよ、この状態で撃たれたらどうなる?」


 俺のこの問いかけにさすがの殺人狂のロブザスは察したようだな


「跳弾……!」


「正解だよ!」


 俺はがむしゃらに引き金を引いた。俺が閃いたロブザスの倒し方。それはなんでもいいからあいつに手傷を負わせてから隙を付いて接近しそこから弾丸をぶちこむ事だ。

 奴の殻は硬い。鬼人族(オーガ)戦鬼族(トロール)が振るう武具や魔銃の弾丸を弾く程に、ならそれを生かせばいい。普通銃で撃たれた場合使う銃にもよるけど大体が身体に残らず弾は貫通する。

 しかしロブザスの場合体内に撃ち込まれた弾は殻のせいで貫通することが出来なく体内で跳ね返る。至近距離から何十発もの銃撃を受けたロブザスは声にならない断末魔を上げ穴という穴から血を噴き出させて果てた。


「よし!フライオ第2ラウンドだ!」


 ロブザスを倒した俺はフライオがいた方に向くと


「あっ、てめえ逃げんじゃねえ!!」


 あの卑怯者逃げやがった!死んだロブザスを担ぎ奴が逃げた先にへと走った。


「この野郎待ちやがれ逃がしゃしねぇぞ!」


 フライオが逃げた先にあったのは転送魔方陣。俺は迷わず飛び込んだ。





「待ちやがれ!」


 転送魔方陣を通り抜けるとフライオがいた。ロブザスの死体を担いで走った俺は息を切らしながらも魔銃を構えると


「あっ、ネロだー」


 …ん?


「本当だー。キョウスケー!ネロも来たよー!」


 んん?良く見るとライミィとエリーがいた。なんで?ってかフライオはフライオで呆然としてるし、ここどこ?


「ネロ、遅い」


「エリー酷くね!?なんだよ遅いって、え……?」


 俺は改めて周りを確認した。そしたら



 虫の息で磔にされてるレオエッジ、

 頭を潰されたグリズリア、

 標本みたいに壁に貼り付けられてるドライビーとスパイダス、(尚スパイダスは黒焦げ)

 氷付けになってるコンコード、

 彫刻みたいになってるホークロウ、

 左右真っ二つになったゼブラス、

 横真っ二つのハイエナーガ



「は、ははは…」


 この光景を先に見る形になったフライオは壊れたように笑い喚き始めた。


「ははははははははははははははは!有り得ない有り得ない有り得ない!これは夢だ!夢なんだ!栄えあるラヴァナ様がこんな化け物達に戦いを」

「もう黙んな」


 気持ちは分からなくはないが現実だよ。俺はフライオの頭に銃口を当て引き金を引いた。


「ふう」


「お、ネロも来たか」


 フライオを処理したらキョウスケが俺に気が付いて声を掛けてきた。


「お疲れさん。それ持ってくぞ」


 キョウスケは背負ってたロブザスを指差してきた。お言葉に甘えるか疲れたし


「ホントか?悪ぃな」


「気にするな。後血で汚れたな、クリーニングを掛けよう」


 そう言って俺にクリーニングを掛けてくれ返り血で汚れた服を綺麗にしてくれた。


「サンキュー、ってかここどこ?」


「ライミィ曰く奴らの前線基地らしい。ただライミィが燃やした後だから今は基地跡だ」


「キョウスケ様ー!準備が出来ましたー!!」


「わかったステラ!直ぐに行く!ところでネロ」


「なんだ?」


「これの使い方は分かるか?」


 キョウスケが手渡してきたのは魔導カメラだ。勿論使い方は知ってる。


「ああ、知ってるけどどうすんだ?」


「実はな…」


 これから何やるか知らされた時は心底びっくりしたけど、どうでも良いくらい興奮もした。

 ラヴァナよぉ、お前大変ヤバい奴に喧嘩売ったぞ


 そしてアルフォンス様、間違いなくキョウスケはアルフォンス様と仲良くなれますよ。




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