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VS魔獣の群れ②




絵師の方にイラストを頂きました!

二話の最後に入っています、是非見てください!



 元の世界の二倍以上の大きさの狼が数十頭。毛皮もどす黒く、明らかにやばい雰囲気を放っている。


 そしてそのうちの十数体には、別の魔獣が乗っていた。二足歩行になったトカゲのような姿で、緑の肌はうろこに覆われ背中にはヒレが生えている。手には斧や杖を持っており、どの個体も革と金属でできた鎧を身に着けている。


「ねぇマリエスちゃん、あの二足歩行のトカゲは何? 被り物?」


「いえ、あれはリザードマンです。筋力は人間の数倍で、その上数も多い。二足歩行の種族はこの世界に6種類存在しますが、そのなかで唯一人類に敵対して攻撃を仕掛けてきます。他の魔獣を従える能力も持っており、魔獣の襲撃というのは殆どの場合リザードマンが引き起こしたものです。人類にとって最も脅威となる種族です」


 なるほど、確かに目を見ると知能や感情がありそうだ。きっと見た目以上に人間に近い生き物なのだろう。


(まぁ、こうやって人間様の街に攻撃を仕掛けている以上ぶっ殺すのに特にためらいとかないんだけどね)


「そして乗っているのがブラッディウルフ、特殊な能力は持っていませんが俊敏さと筋力は人間をはるかに上回る、強力な魔獣です」


 マリエスちゃんが杖を構える。


「なので私の魔力が封印されている今、この状況は結構危険なのです!」


 睨みあいの状況を破ったのはマリエスちゃんだった。


「金属生成・物質加熱 複合魔術 ランク4 ブリリアントスワロー!」


 杖の先から空中に魔法陣が展開され、一羽の白く輝くツバメが飛び出す。凄まじく熱く、近くにいるだけで肌が焼かれそうだ。


 優雅な曲線を描いて一体のリザードマンの方へ飛んでいく。ブラッディウルフが飛びかかるが、それを回転しながら悠々とかわしていく。


 狙われたリザードマンが斧を掲げてガードする。が、ツバメは急降下してそれをかわす。そしてリザードマンの鎧で覆われた腹に衝突。小さな爆発が起き、リザードマンの腹の部分が鎧ごと、跡形もなく蒸発した。


 仲間を失ったリザードマン達が目を見開いて固まっている。


「今のは、なに?」


「ああ、あやぽん様の世界には魔術が無かったのでしたね。あれが私の魔術です。金属生成と加熱の魔術を組み合わせて、2000℃以上に加熱した金属を生成して相手にぶつける、ただそれだけの魔術ですよ。ツバメの形をしているのは、複雑な動きをさせやすいからです」


 あっさりと敵を葬ったマリエスちゃんは、とても簡単そうに言う。


「魔術を扱う素質は、エネルギー源となる魔力の量と、それを扱う制御能力です。私は魔力は封じられていて、後ろに倒れている魔術師たちと同じくらいです」


 マリエスちゃんが杖から二体目のツバメを飛ばす。


 パニックになるリザードマンやブラッディウルフの足の隙間を鮮やかにすり抜け撹乱する。一度上昇してから急降下。今度はリザードマンの頭を吹き飛ばす。


「でも制御能力は落ちておらず、国の中で私よりうまく魔術を扱える人はいないです。普通の魔術師が同じ魔術を使うと熱い金属を球体の形で2,3メートル飛ばす程度が限界なのですが、私はツバメの形にして射程を10倍ほどに伸ばしつつ複雑な動きをさせて防御をすり抜けることができ、効果的にダメージを与えることができる、というわけです」


「ほぇー、マリエスちゃんはすごいなぁ。……ねぇ後ろで手当してる魔術師の人たち、あれと同じことできる?」


「「無理です!」」


 全員がすごい勢いで首を横に振った。


(国の魔術師の中で最強って、本当なんだなぁ。私より年下なのに、凄いなぁ)


「ちなみに、もしマリエスちゃんの魔力が封印されていなかったらどれくらい強いの?」


「今の攻撃を同時に10以上発動することができます」


 敵のリザードマン達もやられるばかりではなく、反撃を開始した。


 杖を持ったリザードマン達が私には聞き取れない言語で呪文のようなものを唱え始める。すると、それぞれのリザードマンの前に、

 炎の塊が、

 金属の槍が、

 そして刺激的な匂いを放つ黒い液体の塊が現れる。


 呪文を唱えるほどそれぞれの攻撃が膨れ上がっていく。そして、一斉に私たちめがけて放たれた。


「マリエスちゃん、こういう時はどうすれば!?」


「こうします!」


 パチン、とマリエスちゃんが指を鳴らすと私とマリエスちゃんの目の前で攻撃が全て弾けて消える。


「敵の魔術に自分の魔術をほんの少し割りこませることで、妨害することができるのです。小説の中に適当な文字を混ぜると意味が通じなくなってしまうようなもの、とでもいえばいいでしょうか? 制御能力によほどの差がないと中々出来ることではないのですけれど」


 もう一度振り返って他の魔術師たちに”アレ出来る?”と聞くと、さっきより激しく首を横に振った。


 繰り返し炎や槍や毒液が襲ってくるが、全てマリエスちゃんが無力化していく。


「ただ、こうして無力化している間は自分の魔術が使えません! あやぽん様、お願いします!」


「ほい来た!」


 味方の魔術攻撃を掻い潜って、ブラッディウルフに騎乗したリザードマン達が突撃してくる。


「さっきは殴っただけじゃ致命傷になってなかったな。だったら!」


 私は鞄を下ろし、宝物庫から持ち出してきた国宝”種の剣”を引き抜く。その時、手の中で剣の柄が脈打つのを感じた。


 剣がまるで溶けるように姿を変え、分裂して私の両手にくっつく。そしてメリケンサックに変形した。


「いいね。剣なんか触ったことないし、こっちのほうが使いやすい」


 先陣を切って突撃してくるリザードマンの腹に右の拳を叩き込む。内臓がつぶれる感触。吹き飛び、後ろで呪文を唱えていた別のリザードマンにぶつかる。殴られたほうのリザードマンはもう動かなくなった。


 左から別のリザードマンが斧を振り下ろしてくる、のを左のメリケンサックで受け止める。勢いを乗せた一撃が簡単に防がれた事が理解できなかったのだろう、リザードマンの動きが一瞬止まる。斧に側面から打撃を右こぶしで叩きこむとあっさり砕け散った。そして、絶望の表情を浮かべているトカゲ顔を左で殴り飛ばす。


 勢いを殺さず、足元から近づいてきて今まさに私の太ももに齧りつこうとしていたブラッディウルフの頭に膝蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。


「何なんだあの女の子、魔法も使わないのにあのパワーは!?」


「鎧も着けてない、首を攻撃されたら一発で死んじまう! なのに、全くビビってねぇ。なんて度胸だ! 俺なら絶対逃げ出しちまうのに!」


 色とりどりの魔術が飛んではマリエスちゃんが無力化していく。リザードマンとブラッディウルフの牙と斧をメリケンサックが全て受け止め、破壊していく。


 魔獣の攻撃に隙が生まれたときにはすかさずツバメマリエスちゃんがツバメの魔術を使い、魔獣たちを蒸発させていく。


 魔獣たちの群れを全滅させるのに、10分もかからなかった。


「流石あやぽん様、リザードマンごときには後れを取りませんね! あ、右手から血が出ていますよ? 少し見せてもらえませんか?」


 マリエスちゃんの小さくて柔らかい左手が私の手を握る。右手で握る杖の先を、そっと傷口に当てる。すると、杖が輝いて緑色の魔法陣が現れた。傷がみるみる塞がっていく。


「生体治癒の魔術です。これからも何か怪我をしたときは、遠慮なく仰ってくださいね」


「何でもできるなぁ、マリエスちゃんは」


「このくらい大したことないですよ。魔術の訓練さえ積めば、治癒魔術は誰でもすぐできるようになります」


「出来ませんよ!?」


 後ろで仲間に治癒魔術をかけていた1人の男が叫んだ。


「騙されちゃいけないぞ、怪力のお嬢ちゃん! マリエス様の”簡単にできる”は簡単じゃないから! マリエス様に稽古をつけてもらった時、何度騙されたことか!」


「マリエス様、前にも言いましたが何種類もの魔術をそんなに簡単に使えるようになったのはこの国であなただけです!」


 周りにいた魔術師達も何度も頷いている。


「……だそうだけど、マリエスちゃん?」


「本当に簡単だと思うんですけどねぇ……」





ツイッターの絵師の方にあやぽんのイラストを描いていただきました! ばんざーい!


二話の最後に入っていますので是非見てください!  めっちゃいい(語彙力)

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