VS魔獣の群れ①
まだ5話なのにものすごくポイント頂けてて嬉しいです!
これからもっと面白くしていきます!
一歩城の外に足を踏み出すと、絵に描いたような中世ヨーロッパ風の街並みが広がっていた。煉瓦つくりの尖塔に寺院。大通りの両脇には個人商店が並んでいる
私は歴史の授業は真面目に受けていた方だ。授業で習った中世のヨーロッパは糞尿を道に捨てるような不潔さで、それが原因でよく疫病が発生していたらしい。
ところが今の街は、パンの良い匂いが漂ってくるだけで全く不潔さは感じない。街並みは中世だが、文明レベルはきっとはるかに進んでいるのだろう。
「さて、これから敵の国――スライバーだっけ? そこへはどうやって行けば?」
石畳で舗装された道を歩きながらマリエスちゃんが支給された地図を広げる。
「私たちが今いるのがここ、首都ハイです。ここから都市ズネミを経由して港町ナマリに行き、船でスライバーに渡ります。船を下りればすぐにスライバーの首都です。そうですねぇ、待ち時間を含めると大体都市間の移動で四日、船の移動で三日、合わせて七日程度でしょうか」
「能力者を倒すのに三日あるね。なんとかなりそうだ」
「交通費は、二人合計で大体8万Gです」
支給された鞄の中を見ると、10万G入った財布が出てきた。
「そういえばこの世界の通貨の感覚が分からないな。1Gの価値ってどれくらい?」
「そうですねぇ。外食でお昼ご飯に1000G使ったらちょっと贅沢したなぁ、ぐらいの感覚でしょうか」
つまり、1円イコール1Gくらいか。
「宿泊費は宿で使える宿泊券があるからなんとかなるけど、食費なんかを考えると足りないね。どっかで稼がないと」
その時、突然遠くで爆発音がする。音のした方向では煙が上がり、何かが燃えるようなにおいがする。
「大変だ、魔獣の襲撃で街の関門が突破された!」
悲鳴が上がり、人が逃げてくる。私とマリエスちゃんは目を合わせる。
「行こう!」
「行きましょう!」
――
「あやぽん様、私の今の戦闘能力について話をしておきますね!」
逃げる人々とすれ違いながら、魔獣が侵入してきた方へ私たちは走る。
「私は先ほど鎖で拘束されたときに、一緒にこの魔力封印具を付けられています。鍵は二階堂襲来のパニックの中で破壊されてしまったので、効果が切れる二十日ほどの間は外れません」
マリエスちゃんの腕には黒い手錠のような輪がはまっている。
「私は国の中でも最高位の魔術師で、儀式のリーダーを任されていたのもそれが理由です。でも、今は力を十分の一も出すことができません。単純な火力で言えば、防衛に参加している並の魔術師と大して変わらないでしょう。なので、私は後方支援に徹します。すみませんがあやぽん様は前衛をお願いします」
「オッケー、任せといて。悪いモンスターは全員私がぶっ飛ばしてやる」
そしてあわよくば逃げ遅れた可愛い女の子達にかっこいいところを見せたい。
私たちが到着したのは、通常の倍以上の体格の狼が、逃げ遅れた年端もいかない女の子に襲い掛かろうとしていた時だった。
当然、考えるまでもなく狼の頭に拳を叩き込む。巨体が錐もみ回転しながら吹っ飛んでいく。
「あ、ありがとうございます……!」
「なぁに、礼には及ばないよ。それより早く逃げて」
女の子に一番格好いい角度で見えるようにキメ顔で言う。いつもよりもキリっとした声を出すことも忘れない。
関門での戦いは、既にほぼ決着していた。騎士たちと、マリエスちゃんがさっき言っていた防衛に当たっている魔術師は合わせて数十人ほど。ほぼ全員が、既に闘える傷ではない。
一方の魔獣の数は倍以上。殆どが大した傷を負っていない。私がさっき殴り飛ばした狼も起き上がってきた。タフなワンコだ。
「ここは私たちが引き継ぎます! あなたたちは下がって!」
マリエスちゃんが指示を飛ばす。
「おお、マリエス様が来てくださった!」
「これで安心です!」
マリエスちゃんの魔力が封印されていることをまだ知らないらしく、楽観的なことを言っている。
魔獣たちは、新しい戦力である私とマリエスちゃんを警戒しているのか遠巻きにこちらの様子を伺っている。しかしその眼には次の瞬間にでも飛びかかってきそうな殺意が満ちている。
感想・ポイントありがとうございます! やる気がモリモリわいてきますー!(腕の絵文字)