VS最強の盾&最強の剣②
6/17のポケモンDLC発売までにできるだけ更新していきたいです!
発売されたら絶対ペース落ちてしまう……
「ふ、ふざけやがって! 誰がハリネズミだと!?」
私は大股で二階堂へ間合いを詰める。立ち上がった二階堂の目の前まで迫り、右手で拳を握る。
「あやぽんクイズ第二問。あやぽんちゃんは優しくて平和主義者なので人を殴ったり蹴ったりしない。〇か×か?」
「殴る気満々じゃねぇか! ×だ×! 俺の鎧の顔面を右手で殴るつもりだろ!」
「ブッブー。正解は〇! 殴りはしない!」
「へ?」
私は握り拳をほどく。そして鎧の右腕を掴む。
「でもぶん投げたりはするよ!」
再び二階堂をぶん投げる。壁に勢いよく衝突して、鎧が”爆発”した。
「ほーら思った通り爆発した。グーで殴らなくって良かった。爆発に巻き込まれて私の腕が吹っ飛ばされるところだった」
「ど、どうして鎧が爆発したんですか!? なんであやぽん様は鎧が爆発するって分かったんですか?」
広間の真ん中で、マリエスちゃんが目を白黒させていた。
「簡単なことだよ、マリエスちゃん」
マリエスちゃんを縛っていた鎖を破壊しながら私は説明する。
「まずあの鎧がまだ盾だったとき、二つ星のマークがあったのは覚えている?」
「いえ、気付きませんでした……」
「スキルポイントを使って鎧変形スキルを獲得した時、星が一つ増えた。あの星は獲得したスキルの数を表しているとみて間違いないんだ」
「まったく気付きませんでした。凄い観察眼です、あやぽん様!」
(マリエスちゃんが褒めてくれた、嬉しいな!)
「じゃあ元々獲得していた二つのスキルは何か? 一つ目は間違いなく”永久不滅”のような盾の寿命を無限にするスキル。これを獲得しておけば、寿命を減らすあの剣を奪われて攻撃を受けても、盾を破壊される危険が無くなるからね」
「な、なるほど……!」
マリエスちゃんが尊敬のまなざしで見てくる、ような気がする。私はキメ顔を維持することを意識しながら説明を続ける。
「二つ目に獲得したのは攻撃ができるスキルだ。最強の防御力の能力をもらったら、次は攻撃力が欲しくなるのが人間だよね。それも借り物じゃなくて自分の能力で。爆裂反応装甲って言う、私が元居た世界の技術があってね。攻撃を受けた装甲が爆発することで衝撃を散らしてダメージを抑えるんだ。攻撃と防御両方に役立つ爆裂反応装甲のスキルを獲得したくなるのは当然のことだよね。ほら、爆発した本人は無傷でしょ?」
私が指さす先で、傷一つない鎧姿が再び立ち上がろうとしていた。
「そうだ、いいこと思いついた。マリエスちゃん、この建物に――とか、――ってある? もしあるなら一緒に来て案内して欲しい。怪我はさせないから」
「――と――ですか? ありますよ。ここは首都中央の、国の中枢機能を持つ城ですから。わかりました、まず――は、あちらの通路です」
引きちぎった鎖はマリエスちゃんに持っていてもらうことにした。
二階堂に近づいて、今度はマリエスちゃんが指差す方向へぶん投げる。
さっきと同じように壁にぶつかって爆発を起こし、壁が崩れる。二階堂が瓦礫に埋もれる。
「ス、スキルポイント消費! ”掘削”スキル獲得!」
腕の先に新しくドリルを付けた二階堂が瓦礫から飛び出してくる。ので、また別の壁にたたきつける。これを繰り返しながら、マリエスちゃんが案内してくれる方向へ進んでいく。
これを十二回繰り返したところで、巨大な扉のある部屋に辿り着く。
扉は鋼鉄製で、明らかに他の部屋のものより頑丈に作られている。そして、それが幾重もの錠前でロックされている。
本来は警備の騎士もいるのだろうが、今日は異世界人襲来で逃げ出しているようだ。
「あやぽん様、この奥の部屋が、我が国の宝物庫です。でもなぜ、こんなところに……?」
「こうするためだよ!」
二階堂を振り回して、鉄の扉に叩きつける。そして爆発。耳が痛くなる程大きい、ドラのような音が響く。
「こうやってさ!」
振り回して、叩きつける。爆発。
「何度もさ!」
また振り回して、叩きつける。爆発。
「鉄の扉に叩きつけてれば、流石にこの鎧もぶっ壊れるんじゃない?」
振り回して、叩きつける。爆発。
「それとも中身が目を回してゲロ吐くのが先かな?」
振り回して、叩きつける。爆発。
「お、ちょっと鎧にヒビが入った」
振り回して、叩きつける。爆発。
だがここで、鎧より先に扉の方が限界を迎えてしまった。扉のど真ん中に力士でも余裕で通れそうな大穴が開く。これでは扉の意味がない。
(実はこれも計算の内なんだなー)
「……スキルポイント消費、”自己再生”スキル獲得……!」
鎧の傷がみるみる消えていく。
大分目を回しているらしく、ふらふらとした足取りの二階堂が立ち上がる。
「好き勝手やってくれやがって、もう容赦しねえぞ……。俺の奥の手で、確実にあの世へ送ってやる……」
鎧が変形し、盾に戻る。
「あやぽん様、お気を付けください! 何か仕掛けてきます!」
「スキルポイント消費、”シールドバッシュ”スキル獲得!」
盾が変形し、棘が何本も生える。
「攻撃を防ぐだけが盾じゃねぇぞ! 盾には殴るって使い方もあるんだ! 喰ら――え?」
私は盾の縁の、棘が生えていない部分を掴んで止めていた。二階堂が渾身の力を込めているはずの盾は、そこから1ミリも進まない。
「いくら強力な武器でも、ここまで使い手のパワーに差があったら意味がないってわからない?」
「クソったれぇ!」
二階堂が後ろに跳んで盾を再び鎧に変形させた。
「どうしてだ、どうして最強の攻撃力と最高の防御力を持つ俺が、Fランクの能力者如きに圧倒されてる!?」
「そりゃ決まってるでしょ」
私は間合いを詰め、鎧の右足を掴む。
「お前が、弱っちいからだよ!」
今度は壊れてしまった扉の代わりに煉瓦の壁にたたきつける。すると穴が開いて、風が吹き込む。今私たちがいるのは城の最上階のようで、数十メートル下に中庭が広がっているのが見えた。
「さて唐突に本日三問目のあやぽんクイズ! 剣を壊され、盾も壊されそうになって、切り札も通じない。そんなみじめったらしい異世界人が次にとる行動はなんでしょう? 今回はマリエスちゃんに答えてもらおうかな?」
「ええ、私ですか!? え、えーと……”逃げる”ですかね?」
「ブブー、不正解! だけど戸惑いながら必死に考える様子が可愛いので、特別に正解ということにしちゃいまーす!」
「ええええ!?」
(驚く顔のマリエスちゃんもかわいいなぁ)
二階堂がまた立ち上がる。
「いいや、クイズの答えは”逃げる”で正解だぜ。悔しいけどよ」
鎧を一部解除し、懐からビー玉のようなものを取り出す。そして地面にたたきつけると、紅い光が溢れ出す。
「あやぽん様、あれは通信水晶です! あのように割ることで、仲間に信号や自分の居場所を送ることができるのです。何かを企んでいますよ!?」
突如、二階堂の後ろの空間が歪む。歪みは徐々に大きくなり、人一人通れるほどの裂け目が現れた。
奥にはぼんやりと、どこかの広い部屋と数人の人影が見えた。時空をゆがめて、別の場所と繋がっているのだろう。きっとこれも別の異世界人の能力だ。
「考えてみりゃ、お前らは十日後に寿命で死ぬんだ。これ以上俺が相手をする意味もねぇ、あばよ――何!?」
裂け目に飛び込もうとした二階堂が盛大にすっ転ぶ。理由は明白、私がさっき脚に鎖を巻きつけておいたからだ。マリエスちゃんを縛り上げていた鎖を、わざわざ持っていてもらったのはこのためだ。
這いつくばって歪みに逃げ込もうとするので、鎖の端を引いてこちらに引き戻す。
能力の時間切れのようで、二階堂の目の前で時空のひずみが元に戻っていく。
「という訳でクイズの正解は、”逃げようとするけど邪魔されてすっ転びベソをかく”でした~。……召喚された数時間後に他の国からこの国に来ているってことは、瞬間移動系能力の異世界人に送ってもらったって事じゃん? ピンチになったらその能力で帰るっていうのは簡単に予想できるよね」
「ちっくしょお……! だが! だが俺はまだ負けていねえ! 俺がこの鎧を着ている限り誰も俺を殺せねぇ! 俺はまだ負けていないんだ!」
「実はそうなんだよねー。その鎧は壊せない。どうしたものかと考えた。そして、閃いた」
悔しそうな声を上げる二階堂を鎖で縛り上げる。
「こんなもんがどうした! スキルポイントを消費して、鎧の外側にチェーンソーを付ければすぐに脱出でき――」
「おっと、それは止めたほうがいい。残り少ないスキルポイントはもっと有効なことに使うべきだよ。例えば――エラ呼吸とか」
「はぁ? 何を言って……まさか!?」
二階堂がやっと私の狙いに気づいたらしい。鎧の下の顔は、きっと真っ青になっているだろう。
「まさか、がんじがらめの状態で池に投げ込む気か!? 嘘だろ? 嘘だろおい!?」
「お魚の友達ができるといいね」
ありったけの力で放り投げた二階堂は、綺麗な放物線を描いて飛んでいき、頭から池に着水。ド派手な水しぶきを上げる。そして、沈んでいって見えなくなった。
「ふぅ。これで一丁上がり! あいつはもう、二度と浮かんでこれない」
「二度と、ですか?」
「うん。頭の回る敵だったからね。酸素発生、食料生成、汚物分解、あたりのスキルを残りのポイントで獲得して、しばらく……少なくとも一カ月くらいは池の底で生きてるでしょ。でもそれが限界で、とても鎖を斬って浮かび上がってくる余力はない。さんざんスキルポイントを無駄遣いさせたからね」
「なるほど……! 本当ですね、ずっと同じ場所に泡が浮かんできています。動く気配はありません」
マリエスちゃんが感心した顔で池を見ている。
「あーーーーー、疲れた! もう今日は帰って風呂入って寝たい!」
しかし、今やらなければいけないことがもう一つだけある。
「マリエスちゃん、ちょっとこっちに来てよ。手伝ってほしいことがあるんだ」
いかがでしたでしょうか?(量産される中身スッカラカンブログ風)