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1. プラネタリウム

コズミックBL、を考察してみる。

俺はゲイだ。隠れゲイだ。それがどうしたと言われるかも知れないが。今俺が非常に困っている状況を説明するにはその前提を知ってもらう必要がある。


唐突だが、俺は死んだ。日本で、という意味だが。

よくあること(?)で俺は異世界に転生した。


異世界に転生するとチート能力を得る。何故かそう決まっている。能力の詳細は後で話す。とにかく俺は能力を得た。


あの日、俺は神と出会った。





昨夜は週末ということもあり、職場の後輩と飲み、深酒をした。後輩は一昨年入社したばかりの23歳。俺は配属当初からそれとなく目をかけてきた。


短く刈り込んだスポーツ刈りに太い眉、純朴そうでやんちゃないたずらっ子ぽさも感じる瞳。爽やかな笑顔。俺より少し背は低いが、熱心にトレーニングしたのがわかる胸の厚みと腕の太さ。引き締まった腰、そしてーーー。


まあ端的に言えば奴はモロに俺の年下だったらこうあって欲しいってタイプだった。俺は奴に惚れた。

お互い競技は違うが体育会上がりと知ると、奴は一気に俺になつき、よく飲みに行くようになった。


職場近くの居酒屋では下世話な話題で大いに盛り上がり、ボトルを2本も空けてしまったので今夜はお開きとした。

千鳥足の奴と肩を組んで地下鉄の駅に向かう。かすかに香る奴の汗の匂い、密着した脇から伝わる奴の体温ーーー。

もちろん俺の体温も奴に伝わっている筈だ。何故か次第に、お互い言葉少なになっていく。

ホームに着くと、奴は急に俺に向き直る。数センチ先に奴の唇がある。俺はそれに見惚れる。が、奴は潤みを帯びた目で真っ直ぐに俺を見つめているのに気づく。


「ーーどうかしたのか。」


「先輩 、俺ーーーー」


その時、ホームに電車が滑り込み、奴の言葉はかき消された。




あいつはなにをいったのだろうーー

意識が戻った。俺は床に横倒しになっているようだ。床に触れた頬が冷たい。またアパートの玄関先で潰れたか、と思ったが、どうもおかしい。


いつもなら朝の街の喧騒に起こされていたが、今は静かすぎる。一切無音。自分の鼓動が煩く響いて感じるほどだ。


俺はなんとなく薄く目を開け、程なく慌てて上半身を起こした。まだ夢の中なのだと思った。


プラネタリウムに浮かんでいる様だった。俺は確かに床に腰を下ろしているのだが、上も、下も、周囲全てが星空に包まれていた。


俺の頭上に天の河が広がっている。遠い星はゆっくりと、近くの星は目まぐるしい速さで、星空は回転していた。

何十もの彗星が尾を引いて流れていく。ぶつかり合って砕けた隕石の破片が引力に引かれ、惑星の外周に幾重もの輝く輪を描く。


彼方から飛来した星雲が回転しつつ拡散し、俺の目の前に紅炎を噴出しながら赤く燃える恒星が一つ残る。

星の炎はやがて冷えて固まり、自転を止め小さく黒く萎んだ。かと思うや、卵の殻の様にヒビ割れ、青い閃光を発しながら音もなく爆発する。

破片はある一点を中心に、再び渦を巻き出す。次第にそれぞれが輝きだし、やがて幼い頃図鑑で観たような銀河が構成され、俺を置きざりにして流れていく。


一つの惑星を眺めていると、隕石がぶつかり、惑星は真っ赤に燃えた。程なく熱が拡散すると、その星は蒸気のようなものに包まれた。回転と共に蒸気は薄れ、雲と水で覆われた宝石のような星がそこにあった。


目の前で宇宙が生まれ、消えていく。俺はしばらくただ呆然とそれを眺め、かつて経験したことのない光の営みの美しさに、自然と涙を溢れさせた。


袖で涙を拭おうと腕を上げ、ふと自分が完全に裸であることに気付く。


全裸だった。昨夜身に纏っていたスーツも、お気に入りのタンクトップも、ローライズのボクサーもない。


まさか酔いに任せよからぬ場所に行き、ヤバイものをキメられたか、と背筋に汗が流れた瞬間、声が響いた。

音声ではなく、まさに頭の中に声が響いた。


低い男の声はこう告げた。


ーーー目覚めるのです、選ばれしものーーーん?、なんだ………、ニイちゃん、いい男だな?ーーー


続く


後輩をどうするか考え中

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