⑲苦笑の独眼竜
(1)
その日、浩太郎は、夕刻の割と早い時間に奉行所を出て、佐助と一緒に八丁堀に戻ってきた。
屋敷前の道に到着すると、ちょうどそこに、治療場に帰ってきたと思われる、優斎と、おみよに出会った。
すると優斎が笑顔で、
「これは浩太郎さん。今、お帰りですか」
おみよと一緒に頭を下げる。
すると浩太郎が、
「おお、こちらこそ。先生、往診かい?」
「ええ、実は今日、お伺いしようと思ってた所です」
二人が頷く、
浩太郎は笑って、
「それはちょうど良い、実は、俺もちょっと、聞きたい事があってよ」
優斎も笑って、
「そんな気がしてました」
如何にも、急いで帰ってきたという様子だったからだ。
「それじゃ、屋敷で夕飯一緒にどうだい。その時聞こう」
「はい」
するとおみよが、一足先に屋敷に戻り、
「若様、お帰りで~す」
と、消えていった。
(2)
季節はちょうど十二月に入ったところ。
晩秋というところか。
二人は、向かい合わせで座ると、浩太郎は優斎に酒を注いだ。
佐助は向こうの部屋で、箱膳を正面に置き、既に始めている。
すると、おみよが嬉しそうに、
「旦那様、今日は久々に三味を引きましてね」
満面の笑顔で、浩太郎、おさよ二人に報告する。
その二人は、大層驚いた。
この時期、大っぴらに三味線弾ける所など、そうは無い。
当然ながら、おさよが、
「どういうこと?」
と、慌てて聞く。
すると、優斎が、
「実は、今日、伊達の上屋敷に、おみよさんと行って来まして……」
それには、浩太郎が大きく驚いた。
「え、上屋敷かい? たしか浜御殿の近くの」
「ええ、そうなんです。そちらの姫様のお具合がということで、兄、経由で話がありましてね」
「ほう、そうなんだ。それはおみよ。良かったな~。あそこなら何の問題も無い」 しかし、優斎は渋い顔で、一口、酒を呑む。
「しかしですね。その前に既に問題がありまして……」
浩太郎は、顎を少し前に出し、
「え? なんだい?」
「実は、上屋敷に行く前に、途中で、南の同心に止められましてね」
浩太郎と、おさよは眉が同時につり上がった。
「なんだと、南?」
「ええ、おみよさんに向かってです」
「なんと、またあいつか……。しつこいな~」
浩太郎は、頭を抱える。
しかし、優斎はその辺で笑顔に変わり、
「先日のお華さんのお話は伺っておりましたから、これは、お華さんの真似しようと思いましてね」
「真似?」
と言う、おさよの言葉に頷き、
「私は、伊達六十二万石の家中、医者の優斎と申す、このおみよはその助手。それと知って尚も取り調べというなら、伊達家の了承を取り付けてからにせよ! とね」
浩太郎は思わず手を打った。おさよと後ろの佐助でさえ、大笑いだ。
「そりゃいい。さすがにそれでは、妖怪自ら、伊達家に出向かなければならんからな。それでは何とも出来まい?」
「そうなんですよ、さすがにスゴスゴとどこか行ってしまいました」
「おい、おみよ。お前さんもいきなり伊達の家中になっちまった。これならもう安心だな」
おさよも、
「お華ちゃんは大奥。おみよは伊達家。凄いことになりましたねぇ」
優斎は、片手を頭に当て、
「お華さんみたいに、脅さなきゃだめだと思ったもんですから……」
浩太郎は、手を振り、
「いいんだよ。あながち嘘でも無いし。お華よりまだまともだよ」
するとおさよが、
「南はどういうんでしょうね。お華ちゃん時だって、恐れ多くも上様のお声が掛かったっていうのに、何を考えているのでしょう」
言いながら、首を捻る。
浩太郎は頷き、
「いや、本当にしつこいよ。先生、旗本の川路聖謨様って、ご存じかい?」
優斎は、ちょっと目を閉じて、
「ああ、お名前は聞いた事がありますね」
「あの方は、老中・水野様が見いだした、勘定吟味だったんだが、悪い事に、川路様、あの尚歯会に関わっていてね。まあ先生と一緒で、ちょっと関係があったっていう程度なんだが……」
優斎は、少々頷き、
「ああ、思い出しました。確か伺った事があります」
「だろ? ところがさ、妖怪に目を付けられちゃってな。これも先生と一緒だよ。大した繋がりも無いのに、内情を探られたり、そりゃ大変だったらしい。結局、水野様も庇いきれなくなって、佐渡奉行に飛ばされたりしてるからな。相手が誰でも、ホントにしつこいんだよ」
「佐渡……」
優斎は勿論、みんな、その執拗さに呆れている。
しかし浩太郎は、笑顔に変わり、
「だが、ここまでくりゃ、こちらの勝ちだ。さすがに手の出しようもあるまい」
酒を一気に呑む。
「おさよ、おみよ。これも亡き政宗公のおかげだ、ほら一緒に!」
と三人は、深々と頭を下げた。
さすがに優斎が、手を振り、
「やめて下さいよ。我が主君ながら恥ずかしくなります」
妙な顔で笑い、続いて優斎は、
「その後、私どもは、特別に家臣という事にして頂く様、伊達の留守居様にお願い致しましたので、もう、それ程の心配は無いかと……」
みんな頷く。
「それで、浩太郎さん。実は、例のお華さんの南町の話。なんと、お留守居様がご存じだったんですよ」
浩太郎は、大層驚き、
「え? お華って、上様からのご命令って話かい?」
「そうなんですよ。私も驚いてしまって……」
浩太郎とおさよは、目が白黒だ。
「な、なぜ、留守居様がご存じなのだ。あれは、どこまでも内々の事。瓦版屋だって知らん。佐助! 確かめたよな」
慌てた様に後ろの佐助に聞くが、
佐助も突然の事で驚いた顔で、盃を持ちながら、
「はい。あの時は走り回って、そういった連中が居なかったか確認しましたけど……」
優斎は、肩頬をあげ、
「お留守居様は、お小姓様にお聞きしたとおっしゃってました」
「小姓……あ!」
浩太郎は、目を大きく開けた。
すると、おさよが、
「お小姓って?」
「あの時、上様の書状をお城からお持ち下されたのが、小姓頭・高坂様だ。なるほど、あの方は、柳生新陰流の達人だが、あの時、お華の手裏剣見て、えらく驚いておられたからな」
「そうですよ。なんでも城内の彼方此方で言い回ってる様ですよ」
浩太郎は呆れた笑いで、
「これは、さすがに俺でもわからん」
と、大笑いだ。
「何でも、上様も酒の肴に大いに喜んでおられたと」
浩太郎とおさよは目を瞑るが、おみよは、
「お酒の肴ですか……流石、芸者のお華姉さんね」
嬉しそうに、声を上げて笑う。
しかし浩太郎は、
「困ったもんだよ」
と言いながら、酒を呷る。
すると優斎が、
「でね。お前、そのお華太夫って知っているのか? と留守居様に言われてしまいまして……」
「げっ、本当かい?」
「そうなんですよ。知ってるも知らないも、私は隣に住んでるし、だいたい、おみよさんは妹芸者ですからね」
おみよも、口を押さえて笑いを堪える。
「さすがに、知らんとは言えなくて。簪も知ってますとか言ってしまいました」
すると浩太郎は、不思議そうに、
「ちょっと待ってくれ、お華の件をご存じなのは納得したが、なにゆえ、お華に拘るのじゃ?」
優斎は、微笑み、
「それこそ、浩太郎さんが聞きたいって話しと繋がります」
浩太郎は、眉を上げ、頷きながら、
「そうそう、今日はそれが聞きたくて、早く戻ってきたんじゃ」
続いて浩太郎は、おさよに、
「昼過ぎ、内与力の加藤様が、嬉しそうに近づいて来て、お上と伊達様が大げんかじゃ! なんて、ちょっと言ったっ切りで、屋敷に上がっちまった。おそらく、俺が優斎先生と知り合いだから教えてくれたんだろうけど、あの方、詳しい事を教えてくれないもんだから、俺の方が、気になって気になって」
おさよが笑い、
「だから、佐助さんとサッサと戻って来たんですか」
「そうじゃ。しかし、先生。お華の喧嘩とどういう繋がりがあるんだ?」
優斎は頷き、
「皆さんにまず。喧嘩の話をしなければならないでしょう」
と、事の詳細を語ってみせた。
今年四月。
伊達の殿様は、跡目を継いだ初のお国入りと、参勤交代の道中を急いでいた。 ところが、古河において既に予約していた本陣を俄に追い出されてしまった。
そこには、上様日光参拝の御用取扱役として、跡部能登守良弼と佐々木という旗本が先に到着していて、彼らは同宿を許さず、殿様は追い出されてしまったのだ。
殿様は仕方無く、その辺りの野辺で夜を明かすことになる。
しかし、この振舞に激怒した、伊達家中は、
「当夜の責任者、跡部、佐々木の二人を引き渡す様に。さもなければ、今後、江戸への参勤は行わない」
強硬に、幕府へ申し立てたのだ。
それを聞いた、浩太郎は憤然とした顔で、
「跡部様と言えば、ご老中の弟様ではないか。全く、こんな時に詰まらん事をする。御家中でお怒りなさるのは当然じゃ!」
怒りの声を上げる。
「本当に困ったもんです」
と、優斎も頷く。
そばで聞いているおさよは、武家とはいえ、さすがに参勤交代の内容など知らないから、
「あの、普通はどうするんです?」
それには、優斎が穏やかな顔で、
「参勤の場合は、大抵、日程、道順などは分かっておりますから、奉行などが近隣の大名などの奉行達と相談して、日程を決めます。ですから、あまりそういうことはないはずですが、ただ旗本の使いなど、突然の事は、当日にならないと分からないですから、一緒の宿になってしまうことはあるようです。ただ、そう言った場合は普通、片頬打ちと言って、宿を半分に分けて泊まるのが、常套なのですがね」
「へ~、その辺は町人と変わらないですね」
おさよは、胸に手を当てる。
浩太郎は不機嫌そうに、憤慨する。
「上様のお使いも、参勤も同じ軍法によって動くもの。しかも、お国入りの若い、お大名を、野宿させるとは、無礼この上無い!」
しかし優斎は、少し困った様な顔で、
「確かにそうなんですが、留守居様は、そうも言ってられません。田舎の家中とは違い、毎日の様に城にも行かねばなりませんし」
そう、留守居には、留守居の立場がある。
「うん。それはその通りじゃ。喧嘩するにも程があるからの」
「そうなんです。そこで、お華さんなんですよ」
浩太郎も、それには多少動揺し、
「な、なに、どうしよと言うのじゃ」」
「つまり、お華さんは、大奥と昵懇だと思ってらっしゃるようで、ぜひ一言、上様に、上様ご自身に他意はございませんと」
「なるほど、お華に中に入れということか」
しかし、それには浩太郎、渋い顔で首を捻り、
「いや~それは無理じゃ。あのお華だぞ? 仲裁どころか、もっと喧嘩が広がっちまう」
さすがに、優斎以外は、全員大笑いだ。
すると優斎もニヤリとし、
「ご心配なく。既に私が断りました。さすがに、我が家中の事、私がお願いしてはご迷惑ですから」
ところが、おさよはニヤリと笑い、
「あ~ら、先生だったら、お華ちゃん喜んでやりますよ。ねえ、おみよちゃん」
おみよも大きく頷き、
「姉さんなら、止めろといってもやりますよ」
と、楽しそうに大笑いした。
浩太郎も、思い出した様に軽く笑うが、優斎は不思議そうな顔で、
「え? どういうことです?」
おみよとおさよに問いかけるが、
おさよは俯いて笑い、おみよは「あ、お酒が……」などと言いながら、台所に引っ込んでしまった。
浩太郎は肩に手をやり、
「まだまだ、お華に春は遠いようじゃ」
と言いながら、
「ちょっと待っててくれ」
一端、座を離れた。
(3)
浩太郎は、戻ってくるとまた座った。
丁度、おみよも熱燗を、佐助に一本渡し、何本か載せた盆と一緒にまた座った。 浩太郎は、優斎に、
「折角のお話じゃが、お華じゃまだ無理じゃ。お華は大奥、おみよも伊達様と、とりあえず後ろ盾が出来たばかりじゃし、まだまだ大名様の仲介なんぞ、恐れ多い事じゃ。なあ、おさよ。お前とて、姉小路様との繋がりが出来たと言っても、何を言っても良いとまではいかんじゃろ?」
おさよは、頷き、
「第一、まだお会いした事もございませんからね。いくらお華ちゃんでも、ちょっと難しいとは思います」
すると優斎は、慌てて、
「本当に宜しいのです。結局は伊達家の喧嘩。武家である以上、自分らで決着付けるのが当たり前なのですから」
浩太郎は頷きながら、
「分かって頂けて嬉しい。しかしだ、我が家もお世話になっている以上。おみよの為にもお礼をしなければならない」
と、言いながら、手元から一つの冊子を、優斎に渡した。
「本来は、奉行所に提出する物なのだが、既に写しは出来たから、あなた、いや留守居様にお渡ししようと思う」
優斎は、その、題名の無い冊子を眺めながら、
「これは何です?」
「これはな、お華が、神田の内、外。そして深川・本所で調べた、米の実売価格の一覧じゃ」
優斎は、その言葉に驚き、中を見て更に驚いた。
「すごい。こんな事、お華さんが一人で?」
「そうじゃ」
すると、おみよが、
「あ~、お華ちゃんが暫くやってましたね」
すると浩太郎が、
「本来は、同心が調べねばならんのじゃが、あいつ、こういう事が上手いからな。あっという間に深川調べちまったものだから、試しにやらせたら直ぐ出来ちまった」
それには、おみよが頷き、
「お姉さん。お座敷の時も、お客さんから、お家の事や、景気はどうだと聞き出すのが得意でしたから。お米の値段なんぞ、あっという間ですよ」
すると、後ろの佐助も、
「いや、おみよちゃんの言う通りです。米だけじゃなく、小間物屋や着物屋なんかあっという間に聞き出してましたから」
それには、浩太郎も大きく頷く。
優斎は、申し訳無さそうな顔で、
「いや、これは留守居様だけでなく、地元の兄上も大変喜びます。なんて言ったって、お米の実際の売値なんて、そうは簡単に調べられませんから。しかもこれだけあれば充分です」
と、頭を下げるが、
「でも、本当によろしいのですか、せっかくお華さんが調べた事なのに」
浩太郎は手を振り、
「構うもんか。言ってみれば秘密の事ではないからな」
そして、浩太郎はもう一言。
「それとな、これじゃ」
おもむろに、紙を一枚渡す。
渡された優斎は、それを見て目を白黒する。
「これは、一体、何です?」
浩太郎は笑い、
「これこそ、奉行所の恐ろしさじゃ。よく見てごらん」
「え?」
と、優斎は声を上げる。
その紙には、当然この時代だから、縦書きで、小さな文字一つに漢数字が並んで書かれている。
それが、4列だ。
浩太郎はニヤリと笑い。
「これは、江戸の大手呉服屋、天保十一年と十二年、六月の売上高じゃ」
「なんと!」
思いも寄らぬ優斎は、目を見開いた。わかりやすくすると、
越後屋(本店)11,666両→7,000両・40%減
同 (向店)3,500両→ 2,330両・33.4%減
大丸屋 7,666両→ 4,866両・36.5%減
白木屋 5,000両→ 1,330両・73.4%減
であった。
「こりゃ、凄い!」
優斎も驚きの笑顔だ。
「おさよ達も佐助も見てみよ。滅多に知ることは出来ないからな」
おさよ・おみよ・佐助も優斎の後ろに回ってそれを眺める。
おさよは、浩太郎に、
「これ、本当の事ですか?」
浩太郎は笑い、
「当たり前じゃ。これは我が奉行所の佐川様、おさよも知っているだろう」
「佐川様? はい確か今は、隠密同心の」
「そう、俺にしてもどうやって調べたんだか、さっぱりわからないが。さすが佐川様だよ。亡き父上御昵懇の事はある」
優斎は、先程より落ち着きを無くした様に、
「浩太郎さん、これは本当に大丈夫なのですか。確実にご迷惑がかかるんじゃ?」
「なに、佐川様はお華が子供の頃から可愛がってくれた方じゃ。そのお華のためなら文句など言わんと思う。しかし、どうだろう、これでお詫びの品と言うことで納得してくれるだろうか」
優斎は、大きく手を振り、
「とんでもございませんよ。こんな事、これこそ伊達でさえ、調べようったって出来ない事。駄目など言わせませんよ」
少々、興奮状態で喜んでいる。
すると、浩太郎が、
「不景気なのが一目瞭然だ。あの越後屋や白木屋でさえ、そんな売り上げなのだから。お大名様も、お台所事情は大変なはず。とてもじゃないが、大名貸しなど関わっている場合じゃないからな。上手く使ってくれると嬉しいよ」
すると優斎は、
「驚きましたよ。この状況があと二年も続いたら、みな潰れてしまいます」
後ろの佐助も、興味津々に、
「そういうものですか?」
「そりゃ、こんな売り上げでは、店の者、半分以下にしてもどうか? と言うところです」
すると、
「先生。先程の件だけど、加藤様に聞いた事じゃが、近々、旗本は、お沙汰があるんじゃないかと言っていた。問題は、伊達御家中だ。怒りの気持ちは理解出来るが、そうとなったら、なるべく早く手を引く方が良い。うかつに続けると、あいつらしつこいから、手伝いなど言いかねないぞ」
優斎も頷き、
「確かにそうですね。そう伝えます」
嬉しそうに、それらの資料を大事そうに懐に入れた。
すると、浩太郎が、
「そうそう、大事な事。これは決して、留守居様以外に、出所は絶対に内緒じゃ。お華もおみよも世話になった。今回は特別じゃ」
優斎も大きく頷き、
「承知しております。御心配下さるな」
美味しそうに酒を呑む。
すると浩太郎は、満面笑顔で、
「今夜は、独眼竜様に大変お世話になった。みんな。政宗様にお礼を」
一斉に笑ったみんなは、杯を上に上げ、
「ありがとうございます」
と、頭を下げた。
優斎は、また、恥ずかしそうに笑みを浮かべる。
~つづく~
今回は、シチュエーション。
そして、お華はおゆき保育の為、お休みです(笑)
さて、このお話は、伊達藩の実話。
しかし、ああいう場合、お付きの家来達は大変だったでしょうね。
駕籠に載っているとは言え、野宿ですから。
政宗なら、様々な合戦の中で、同じ様な状況になることもあったでしょうから、「若! 貞山公(政宗)も、合戦の最中、同じ様になされていた筈にございます」
とか言って、宥めたのかも知れません。
それに、これが六月だったから、北とは言え、まだ良かったと言う事でしょう。
しかしこの、跡部という旗本。
本文の中でも、水野忠邦の弟と触れていますが、かなり評判が悪かった様で、この件でも、悪いのは跡部と、諸大名は勿論、旗本でさえ非難していたようです。
とにかく、しくじりが多い。
この男、「大塩平八郎の乱」の時の大坂町奉行だったが、乱の原因はこの男とも言われ、その時、乱を阻止するため、乗った馬から、そのまま墜ちてしまうなど、笑い話さえ残っている。
しかし、この男は生き残った。
数々の失敗や、兄の失脚にも、上手くすり抜け、維新まで生きた。
それはそれで、大したものです。
それはともかく、越後屋と白木屋などの売り上げ、これも事実の様です。
本当に隠密同心が調べたと言われています。
今なら、当然オープンな話ですが、この時代にこの数字を聞き出すなど、凄い事です。
どのくらい酒、飲ませたんでしょう。
さすが、「死して屍、拾う者無し」といったところでしょうか(笑)
しかし、これだけで、天保の改革の実情がよく分かってしまいます。
では、また次回も、よろしくお願い申し上げます。




