表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お華の髪飾り  作者: 本隠坊
21/37

⑲苦笑の独眼竜

(1)

 

 その日、浩太郎は、夕刻の割と早い時間に奉行所を出て、佐助と一緒に八丁堀に戻ってきた。

 屋敷前の道に到着すると、ちょうどそこに、治療場に帰ってきたと思われる、優斎と、おみよに出会った。

 すると優斎が笑顔で、

「これは浩太郎さん。今、お帰りですか」

 おみよと一緒に頭を下げる。

 すると浩太郎が、

「おお、こちらこそ。先生、往診かい?」

「ええ、実は今日、お伺いしようと思ってた所です」

 二人が頷く、

 浩太郎は笑って、

「それはちょうど良い、実は、俺もちょっと、聞きたい事があってよ」

 優斎も笑って、

「そんな気がしてました」

 如何にも、急いで帰ってきたという様子だったからだ。

「それじゃ、屋敷で夕飯一緒にどうだい。その時聞こう」

「はい」

 するとおみよが、一足先に屋敷に戻り、

「若様、お帰りで~す」

 と、消えていった。


(2)


 季節はちょうど十二月に入ったところ。

 晩秋というところか。

 二人は、向かい合わせで座ると、浩太郎は優斎に酒を注いだ。

 佐助は向こうの部屋で、箱膳を正面に置き、既に始めている。

 すると、おみよが嬉しそうに、

「旦那様、今日は久々に三味を引きましてね」

 満面の笑顔で、浩太郎、おさよ二人に報告する。

 その二人は、大層驚いた。

 この時期、大っぴらに三味線弾ける所など、そうは無い。

 当然ながら、おさよが、

「どういうこと?」

 と、慌てて聞く。

すると、優斎が、

「実は、今日、伊達の上屋敷に、おみよさんと行って来まして……」

 それには、浩太郎が大きく驚いた。

「え、上屋敷かい? たしか浜御殿の近くの」

「ええ、そうなんです。そちらの姫様のお具合がということで、兄、経由で話がありましてね」

「ほう、そうなんだ。それはおみよ。良かったな~。あそこなら何の問題も無い」 しかし、優斎は渋い顔で、一口、酒を呑む。

「しかしですね。その前に既に問題がありまして……」

 浩太郎は、顎を少し前に出し、

「え? なんだい?」

「実は、上屋敷に行く前に、途中で、南の同心に止められましてね」

 浩太郎と、おさよは眉が同時につり上がった。

「なんだと、南?」

「ええ、おみよさんに向かってです」

「なんと、またあいつか……。しつこいな~」

 浩太郎は、頭を抱える。

 しかし、優斎はその辺で笑顔に変わり、

「先日のお華さんのお話は伺っておりましたから、これは、お華さんの真似しようと思いましてね」

「真似?」

 と言う、おさよの言葉に頷き、

「私は、伊達六十二万石の家中、医者の優斎と申す、このおみよはその助手。それと知って尚も取り調べというなら、伊達家の了承を取り付けてからにせよ! とね」

 浩太郎は思わず手を打った。おさよと後ろの佐助でさえ、大笑いだ。

「そりゃいい。さすがにそれでは、妖怪自ら、伊達家に出向かなければならんからな。それでは何とも出来まい?」

「そうなんですよ、さすがにスゴスゴとどこか行ってしまいました」

「おい、おみよ。お前さんもいきなり伊達の家中になっちまった。これならもう安心だな」

 おさよも、

「お華ちゃんは大奥。おみよは伊達家。凄いことになりましたねぇ」

 優斎は、片手を頭に当て、

「お華さんみたいに、脅さなきゃだめだと思ったもんですから……」

 浩太郎は、手を振り、

「いいんだよ。あながち嘘でも無いし。お華よりまだまともだよ」

 するとおさよが、

「南はどういうんでしょうね。お華ちゃん時だって、恐れ多くも上様のお声が掛かったっていうのに、何を考えているのでしょう」

 言いながら、首を捻る。

 浩太郎は頷き、

「いや、本当にしつこいよ。先生、旗本の川路聖謨様って、ご存じかい?」

 優斎は、ちょっと目を閉じて、

「ああ、お名前は聞いた事がありますね」

「あの方は、老中・水野様が見いだした、勘定吟味だったんだが、悪い事に、川路様、あの尚歯会に関わっていてね。まあ先生と一緒で、ちょっと関係があったっていう程度なんだが……」

 優斎は、少々頷き、

「ああ、思い出しました。確か伺った事があります」

「だろ? ところがさ、妖怪に目を付けられちゃってな。これも先生と一緒だよ。大した繋がりも無いのに、内情を探られたり、そりゃ大変だったらしい。結局、水野様も庇いきれなくなって、佐渡奉行に飛ばされたりしてるからな。相手が誰でも、ホントにしつこいんだよ」

「佐渡……」

 優斎は勿論、みんな、その執拗さに呆れている。

 しかし浩太郎は、笑顔に変わり、

「だが、ここまでくりゃ、こちらの勝ちだ。さすがに手の出しようもあるまい」

 酒を一気に呑む。

「おさよ、おみよ。これも亡き政宗公のおかげだ、ほら一緒に!」

 と三人は、深々と頭を下げた。

 さすがに優斎が、手を振り、

「やめて下さいよ。我が主君ながら恥ずかしくなります」

 妙な顔で笑い、続いて優斎は、

「その後、私どもは、特別に家臣という事にして頂く様、伊達の留守居様にお願い致しましたので、もう、それ程の心配は無いかと……」

 みんな頷く。

「それで、浩太郎さん。実は、例のお華さんの南町の話。なんと、お留守居様がご存じだったんですよ」

 浩太郎は、大層驚き、

「え? お華って、上様からのご命令って話かい?」

「そうなんですよ。私も驚いてしまって……」

 浩太郎とおさよは、目が白黒だ。

「な、なぜ、留守居様がご存じなのだ。あれは、どこまでも内々の事。瓦版屋だって知らん。佐助! 確かめたよな」

 慌てた様に後ろの佐助に聞くが、

 佐助も突然の事で驚いた顔で、盃を持ちながら、

「はい。あの時は走り回って、そういった連中が居なかったか確認しましたけど……」

 優斎は、肩頬をあげ、

「お留守居様は、お小姓様にお聞きしたとおっしゃってました」

「小姓……あ!」

 浩太郎は、目を大きく開けた。

 すると、おさよが、

「お小姓って?」

「あの時、上様の書状をお城からお持ち下されたのが、小姓頭・高坂様だ。なるほど、あの方は、柳生新陰流の達人だが、あの時、お華の手裏剣見て、えらく驚いておられたからな」

「そうですよ。なんでも城内の彼方此方で言い回ってる様ですよ」

 浩太郎は呆れた笑いで、

「これは、さすがに俺でもわからん」

 と、大笑いだ。

「何でも、上様も酒の肴に大いに喜んでおられたと」

 浩太郎とおさよは目を瞑るが、おみよは、

「お酒の肴ですか……流石、芸者のお華姉さんね」

 嬉しそうに、声を上げて笑う。

 しかし浩太郎は、

「困ったもんだよ」

 と言いながら、酒を呷る。

 すると優斎が、

「でね。お前、そのお華太夫って知っているのか? と留守居様に言われてしまいまして……」

「げっ、本当かい?」

「そうなんですよ。知ってるも知らないも、私は隣に住んでるし、だいたい、おみよさんは妹芸者ですからね」

 おみよも、口を押さえて笑いを堪える。

「さすがに、知らんとは言えなくて。簪も知ってますとか言ってしまいました」

 すると浩太郎は、不思議そうに、

「ちょっと待ってくれ、お華の件をご存じなのは納得したが、なにゆえ、お華に拘るのじゃ?」

 優斎は、微笑み、

「それこそ、浩太郎さんが聞きたいって話しと繋がります」

 浩太郎は、眉を上げ、頷きながら、

「そうそう、今日はそれが聞きたくて、早く戻ってきたんじゃ」

 続いて浩太郎は、おさよに、

「昼過ぎ、内与力の加藤様が、嬉しそうに近づいて来て、お上と伊達様が大げんかじゃ! なんて、ちょっと言ったっ切りで、屋敷に上がっちまった。おそらく、俺が優斎先生と知り合いだから教えてくれたんだろうけど、あの方、詳しい事を教えてくれないもんだから、俺の方が、気になって気になって」

 おさよが笑い、

「だから、佐助さんとサッサと戻って来たんですか」

「そうじゃ。しかし、先生。お華の喧嘩とどういう繋がりがあるんだ?」

 優斎は頷き、

「皆さんにまず。喧嘩の話をしなければならないでしょう」

 と、事の詳細を語ってみせた。

 今年四月。

 伊達の殿様は、跡目を継いだ初のお国入りと、参勤交代の道中を急いでいた。  ところが、古河において既に予約していた本陣を俄に追い出されてしまった。

 そこには、上様日光参拝の御用取扱役として、跡部能登守良(よし)(すけ)と佐々木という旗本が先に到着していて、彼らは同宿を許さず、殿様は追い出されてしまったのだ。

 殿様は仕方無く、その辺りの野辺で夜を明かすことになる。

 しかし、この振舞に激怒した、伊達家中は、

「当夜の責任者、跡部、佐々木の二人を引き渡す様に。さもなければ、今後、江戸への参勤は行わない」

 強硬に、幕府へ申し立てたのだ。

 それを聞いた、浩太郎は憤然とした顔で、

「跡部様と言えば、ご老中の弟様ではないか。全く、こんな時に詰まらん事をする。御家中でお怒りなさるのは当然じゃ!」

 怒りの声を上げる。

「本当に困ったもんです」

 と、優斎も頷く。

 そばで聞いているおさよは、武家とはいえ、さすがに参勤交代の内容など知らないから、

「あの、普通はどうするんです?」

 それには、優斎が穏やかな顔で、

「参勤の場合は、大抵、日程、道順などは分かっておりますから、奉行などが近隣の大名などの奉行達と相談して、日程を決めます。ですから、あまりそういうことはないはずですが、ただ旗本の使いなど、突然の事は、当日にならないと分からないですから、一緒の宿になってしまうことはあるようです。ただ、そう言った場合は普通、(かた)()打ちと言って、宿を半分に分けて泊まるのが、常套なのですがね」

「へ~、その辺は町人と変わらないですね」

 おさよは、胸に手を当てる。

 浩太郎は不機嫌そうに、憤慨する。

「上様のお使いも、参勤も同じ軍法によって動くもの。しかも、お国入りの若い、お大名を、野宿させるとは、無礼この上無い!」

 しかし優斎は、少し困った様な顔で、

「確かにそうなんですが、留守居様は、そうも言ってられません。田舎の家中とは違い、毎日の様に城にも行かねばなりませんし」

 そう、留守居には、留守居の立場がある。

「うん。それはその通りじゃ。喧嘩するにも程があるからの」

「そうなんです。そこで、お華さんなんですよ」

 浩太郎も、それには多少動揺し、

「な、なに、どうしよと言うのじゃ」」

「つまり、お華さんは、大奥と昵懇だと思ってらっしゃるようで、ぜひ一言、上様に、上様ご自身に他意はございませんと」

「なるほど、お華に中に入れということか」

 しかし、それには浩太郎、渋い顔で首を捻り、

「いや~それは無理じゃ。あのお華だぞ? 仲裁どころか、もっと喧嘩が広がっちまう」

 さすがに、優斎以外は、全員大笑いだ。

 すると優斎もニヤリとし、

「ご心配なく。既に私が断りました。さすがに、我が家中の事、私がお願いしてはご迷惑ですから」

 ところが、おさよはニヤリと笑い、

「あ~ら、先生だったら、お華ちゃん喜んでやりますよ。ねえ、おみよちゃん」

 おみよも大きく頷き、

「姉さんなら、止めろといってもやりますよ」

 と、楽しそうに大笑いした。

 浩太郎も、思い出した様に軽く笑うが、優斎は不思議そうな顔で、

「え? どういうことです?」

 おみよとおさよに問いかけるが、

 おさよは俯いて笑い、おみよは「あ、お酒が……」などと言いながら、台所に引っ込んでしまった。

 浩太郎は肩に手をやり、

「まだまだ、お華に春は遠いようじゃ」

 と言いながら、

「ちょっと待っててくれ」

 一端、座を離れた。


(3)

 

 浩太郎は、戻ってくるとまた座った。

 丁度、おみよも熱燗を、佐助に一本渡し、何本か載せた盆と一緒にまた座った。 浩太郎は、優斎に、

「折角のお話じゃが、お華じゃまだ無理じゃ。お華は大奥、おみよも伊達様と、とりあえず後ろ盾が出来たばかりじゃし、まだまだ大名様の仲介なんぞ、恐れ多い事じゃ。なあ、おさよ。お前とて、姉小路様との繋がりが出来たと言っても、何を言っても良いとまではいかんじゃろ?」

 おさよは、頷き、

「第一、まだお会いした事もございませんからね。いくらお華ちゃんでも、ちょっと難しいとは思います」

 すると優斎は、慌てて、

「本当に宜しいのです。結局は伊達家の喧嘩。武家である以上、自分らで決着付けるのが当たり前なのですから」

 浩太郎は頷きながら、

「分かって頂けて嬉しい。しかしだ、我が家もお世話になっている以上。おみよの為にもお礼をしなければならない」

 と、言いながら、手元から一つの冊子を、優斎に渡した。

「本来は、奉行所に提出する物なのだが、既に写しは出来たから、あなた、いや留守居様にお渡ししようと思う」

 優斎は、その、題名の無い冊子を眺めながら、

「これは何です?」

「これはな、お華が、神田の内、外。そして深川・本所で調べた、米の実売価格の一覧じゃ」

 優斎は、その言葉に驚き、中を見て更に驚いた。

「すごい。こんな事、お華さんが一人で?」

「そうじゃ」

 すると、おみよが、

「あ~、お華ちゃんが暫くやってましたね」

 すると浩太郎が、

「本来は、同心が調べねばならんのじゃが、あいつ、こういう事が上手いからな。あっという間に深川調べちまったものだから、試しにやらせたら直ぐ出来ちまった」

 それには、おみよが頷き、

「お姉さん。お座敷の時も、お客さんから、お家の事や、景気はどうだと聞き出すのが得意でしたから。お米の値段なんぞ、あっという間ですよ」

 すると、後ろの佐助も、

「いや、おみよちゃんの言う通りです。米だけじゃなく、小間物屋や着物屋なんかあっという間に聞き出してましたから」

 それには、浩太郎も大きく頷く。

 優斎は、申し訳無さそうな顔で、

「いや、これは留守居様だけでなく、地元の兄上も大変喜びます。なんて言ったって、お米の実際の売値なんて、そうは簡単に調べられませんから。しかもこれだけあれば充分です」

 と、頭を下げるが、

「でも、本当によろしいのですか、せっかくお華さんが調べた事なのに」

 浩太郎は手を振り、

「構うもんか。言ってみれば秘密の事ではないからな」

 そして、浩太郎はもう一言。

「それとな、これじゃ」

 おもむろに、紙を一枚渡す。

 渡された優斎は、それを見て目を白黒する。

「これは、一体、何です?」

 浩太郎は笑い、

「これこそ、奉行所の恐ろしさじゃ。よく見てごらん」

「え?」

 と、優斎は声を上げる。

 その紙には、当然この時代だから、縦書きで、小さな文字一つに漢数字が並んで書かれている。

 それが、4列だ。

 浩太郎はニヤリと笑い。

「これは、江戸の大手呉服屋、天保十一年と十二年、六月の売上高じゃ」

「なんと!」

 思いも寄らぬ優斎は、目を見開いた。わかりやすくすると、


 越後屋(本店)11,666両→7,000両・40%減

  同 (向店)3,500両→ 2,330両・33.4%減

 大丸屋 7,666両→ 4,866両・36.5%減

白木屋   5,000両→ 1,330両・73.4%減

であった。

「こりゃ、凄い!」

 優斎も驚きの笑顔だ。


「おさよ達も佐助も見てみよ。滅多に知ることは出来ないからな」

 おさよ・おみよ・佐助も優斎の後ろに回ってそれを眺める。

 おさよは、浩太郎に、

「これ、本当の事ですか?」

 浩太郎は笑い、

「当たり前じゃ。これは我が奉行所の佐川様、おさよも知っているだろう」

「佐川様? はい確か今は、隠密同心の」

「そう、俺にしてもどうやって調べたんだか、さっぱりわからないが。さすが佐川様だよ。亡き父上御昵懇の事はある」

 優斎は、先程より落ち着きを無くした様に、

「浩太郎さん、これは本当に大丈夫なのですか。確実にご迷惑がかかるんじゃ?」

「なに、佐川様はお華が子供の頃から可愛がってくれた方じゃ。そのお華のためなら文句など言わんと思う。しかし、どうだろう、これでお詫びの品と言うことで納得してくれるだろうか」

 優斎は、大きく手を振り、

「とんでもございませんよ。こんな事、これこそ伊達でさえ、調べようったって出来ない事。駄目など言わせませんよ」

 少々、興奮状態で喜んでいる。

 すると、浩太郎が、

「不景気なのが一目瞭然だ。あの越後屋や白木屋でさえ、そんな売り上げなのだから。お大名様も、お台所事情は大変なはず。とてもじゃないが、大名貸しなど関わっている場合じゃないからな。上手く使ってくれると嬉しいよ」

 すると優斎は、

「驚きましたよ。この状況があと二年も続いたら、みな潰れてしまいます」

 後ろの佐助も、興味津々に、

「そういうものですか?」

「そりゃ、こんな売り上げでは、店の者、半分以下にしてもどうか? と言うところです」

 すると、

「先生。先程の件だけど、加藤様に聞いた事じゃが、近々、旗本は、お沙汰があるんじゃないかと言っていた。問題は、伊達御家中だ。怒りの気持ちは理解出来るが、そうとなったら、なるべく早く手を引く方が良い。うかつに続けると、あいつらしつこいから、手伝いなど言いかねないぞ」

 優斎も頷き、

「確かにそうですね。そう伝えます」

 嬉しそうに、それらの資料を大事そうに懐に入れた。

 すると、浩太郎が、

「そうそう、大事な事。これは決して、留守居様以外に、出所は絶対に内緒じゃ。お華もおみよも世話になった。今回は特別じゃ」

 優斎も大きく頷き、

「承知しております。御心配下さるな」

 美味しそうに酒を呑む。


 すると浩太郎は、満面笑顔で、

「今夜は、独眼竜様に大変お世話になった。みんな。政宗様にお礼を」

 一斉に笑ったみんなは、杯を上に上げ、

「ありがとうございます」

 と、頭を下げた。

 優斎は、また、恥ずかしそうに笑みを浮かべる。


~つづく~

 今回は、シチュエーション。

 そして、お華はおゆき保育の為、お休みです(笑)


 さて、このお話は、伊達藩の実話。

 しかし、ああいう場合、お付きの家来達は大変だったでしょうね。

 駕籠に載っているとは言え、野宿ですから。

 政宗なら、様々な合戦の中で、同じ様な状況になることもあったでしょうから、「若! 貞山公(政宗)も、合戦の最中、同じ様になされていた筈にございます」

とか言って、宥めたのかも知れません。

 それに、これが六月だったから、北とは言え、まだ良かったと言う事でしょう。

 しかしこの、跡部という旗本。

 本文の中でも、水野忠邦の弟と触れていますが、かなり評判が悪かった様で、この件でも、悪いのは跡部と、諸大名は勿論、旗本でさえ非難していたようです。

 とにかく、しくじりが多い。

 この男、「大塩平八郎の乱」の時の大坂町奉行だったが、乱の原因はこの男とも言われ、その時、乱を阻止するため、乗った馬から、そのまま墜ちてしまうなど、笑い話さえ残っている。

 しかし、この男は生き残った。

 数々の失敗や、兄の失脚にも、上手くすり抜け、維新まで生きた。

 それはそれで、大したものです。


 それはともかく、越後屋と白木屋などの売り上げ、これも事実の様です。

 本当に隠密同心が調べたと言われています。

 今なら、当然オープンな話ですが、この時代にこの数字を聞き出すなど、凄い事です。

 どのくらい酒、飲ませたんでしょう。

 さすが、「死して屍、拾う者無し」といったところでしょうか(笑)

 しかし、これだけで、天保の改革の実情がよく分かってしまいます。


 では、また次回も、よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ