第1話 定性的な、シュワルツシルト解の否定と等方座標系の肯定
―― 鬱蒼と生い茂る木々。暗鬱な雨空。陰鬱な建物。沈鬱な面持ちの男。
「鬱って言葉、使いたいだけじゃん」
くっ。人のモノローグに突っ込むとは。
まあいい。話を進める。
ブラックホール(以下BH)と思われる天体の詳細調査しようと送り込んだ八機の探査プローブが全滅した。
それについての原因究明が難航し、原因調査の募集があった。
それで、ここに……
「設定、せってー」
ええい。うるさい。小説の体をなしているため、前置きが必要だろうが。
まあ、そういった事情により、強重力場において問題が発生している。
だから、その原因は何か、を求めるにあたって、
一般相対性理論の間違い
を指摘しようと思う。
けど実際に数学的に間違いを指摘するわけではない。
数学的に間違っていたら誰ぞ指摘してるだろうし。
まあ、それは物理的にも同じだろうけども。
個人的には座標変換が気に入らない。
一般相対論は共変形式で記述され、座標変換に対して不変になるように作られている。
しかし、どんな座標でもいいからと言っても選ぶべきだと考える。
通常、デカルト座標、または直交座標、を使っているよりも地球の位置など球形のものなら極座標表示にした方がいいかも知れない、などのように。
円を x座標だけ半分にした座標で見たら楕円になってしまうし、楕円だと思って焦点も分かり難くなる。見た目的に。
そんな変な変換はしないだろうが。
ここでいう変とは長さが変わってしまうような変換のことです。
何かしらの優位になるためならば、そんな変換もありでしょう。
しかし実際にはそれを平然と行って気にしていない人のなんと多いことか。
シュワルツシルト(またはシュヴァルツシルト)計量を求めるときに角度成分の長さは面倒だからと極座標で一定と省略されて動径 r を伸び縮みさせればいいという理由で計算が進められて、結局、修正は一切しない。
特に、この部分は納得がいかない。上記のように長さが変わってくる、おかしな変換をしてるとしても気にしていないから、です。
しかし、シュワルツシルト計量を使った計算で観測との矛盾が見つかっていない。だからこそシュワルツシルト時空は正しいとされている。
ニュートン力学における計算と観測との違いを見事に説明した一般相対論の解が、シュワルツシルト解での計算だからだ。
だから、これを否定することは困難を極める。
定量的に否定するには、それ以上の精度を叩き出すか、未だ観測されていないような強重力における計算で違いを主張して観測されることを待って検証されることで理論の優位性を示すぐらいではないだろうか。
それ以外では理論的に、定性的に否定するしかない。
それでも一般相対論を否定することは難しい。
ということで一般相対論から出発します。
まあ、気に入らないのが座標変換だからですが。
そしてシュワルツシルト座標系を否定し、現状の一般相対論を否定する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一般相対論における時空の歪み、空間の歪みは何故発生しているか。
どのように考えていますか?
シュワルツシルト時空では空間は動径方向だけが歪み、縮んでいる。
個人的な考えでは時間の遅れが空間を歪ませている。
局所的に時間が遅れていたら、その部分に光が通ったら遅れていた、と。それに方向的に向きが偏っているとは考えられない。
つまりは方向には依存しない、と考えているわけです。
だからシュワルツシルト時空の空間の歪みが動径方向だけであるから気に入らない、と。
それなら座標変換すればよいと考えるかも知れません。
しかし、それは考え方からすれば違う。どんな座標系でも良いわけではないから。
考え方から、シュワルツシルト時空が間違っていると否定しているわけです。
さて、本当は否定だけでも良いと思うのですが、世の中、代替案を出せ、と詰め寄る人がいるために代わりのものを探さなければいけません。
それでは、まずはどのような座標変換をすれば、方向に依存しないか。
丁度良い、等方座標というのが、すでにあります。
シュワルツシルト時空から動径 r を次のように変換すると等方座標になります。
r = R (1 + a/4R)^2 ……(1)
あまり書きたくはありませんが、どいうものか示します。
◇◆◇ シュワルツシルト座標系 ◇◆◇
(ds)^2 = - (1 - a/r)(c dt)^2 + (1 - a/r)^(-1) (dr)^2 + r^2 {(dθ)^2 + (sinθ)^2 (dφ)^2} ……(2)
s : 世界線 ds :世界間隔
τ : 固有時間(試験粒子の辿る世界線に沿って動く時計で測った時間)
c : 光速
t : 座標時(質量源から無限に遠い静的な時計で測った時間)
r : 動径座標
θ : 余緯度座標(北極からラジアン単位で測った角度)
φ : 経度座標
a : 質量 M をもつ物体に対応するシュワルツシルト半径(M により a = 2GM/c^2 のように決まるスケールファクター。ここで G は万有引力定数)
R : 等方座標における動径座標
(2)に(1)を代入する。
◇◆◇ 等方座標系 ◇◆◇
(ds)^2 = - {(1 - a/4R)^2 /(1 + a/4R)^2 } (c dt)^2 + (1 + a/4R)^4 [(dR)^2 + R^2 {(dθ)^2 + (sinθ)^2 (dφ)^2}] ……(3)
もしくは極座標部分を直交座標系に直した場合
(ds)^2 = - {(1 - a/4R)^2 /(1 + a/4R)^2 } (c dt)^2 + (1 + a/4R)^4 {(dx)^2 + (dy)^2 + (dz)^2}
R = √{x^2 + y^2 + z^2}
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
漸く肯定すべきものの登場が出来ました。それでは本題に入りたい。
シュワルツシルト解の否定です。
しかしまだ準備不足。
ということで皆さんは「バーコフの定理」というものをご存知でしょうか。
◇◆◇ バーコフの定理 ◇◆◇
バーコフの定理(英: Birkhoff's theorem)は一般相対性理論において、真空場の方程式の球対称解は必ず静的で漸近的平坦であるという定理。即ち、外部解はシュヴァルツシルト計量によって与えられる。
バーコフの定理による別の面白い結論の例として、球対称な薄い殻形の内部解はミンコフスキー計量によって与えられるというものがある。言い換えると、重力場は球対称な殻の内側では消える。これはニュートン重力による予言と一致する。
(あとで使用するためついでに一部抜粋)
wikipediaより
2017年8月
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
上記のようなものです。
これは静的な場合大きさがある物体、天体など、であっても外部解はシュヴァルツシルト計量によって与えられる、と。
このことを記憶しておいてください。
それではシュワルツシルト解の否定を始めましょう。
まず、シュワルツシルト解は動径方向の縮み、歪みがあります。角度成分には歪みはありません。
ここである物体からの重力を求めるために、その物体を小片に分割して積分することを考えます。
ニュートン力学を学んだなら、その物体の重心に重力が向かうと分かるでしょう。
考えやすくその物体は密度の等しい球形になっているとしてみましょう。
それで一般相対論、シュワルツシルト解を用いて考えてみることにしましょう。
その物体、天体とでもしましょうか。
その天体を小片に分割して、その小片それぞれから、力が掛かっている。
今考えてる試験粒子から天体を見たとき、その天体の縁、天体に接する接線ですね。
天体の重心、ここでは中心、に対してその接線は角度を持ち離れてます。
天体との中心に結ぶ線上と直交する成分の力が、天体の中心を結ぶ線上以外の部分で発生してます。
しかしこれは反対からの力によって打ち消されます。
重力はベクトルで、反対向きの同じ大きさの力で打ち消されます。
ここで考えてもらいたい所は重力ではなく、シュワルツシルト解の時空の歪みです。
動径方向だけで角度成分には歪みはない。これは重力のベクトルと似てます。
さて、この動径方向の歪み。果たして、この歪みは重力のように打ち消せるのでしょうか。
例えば、反対方向から同じ大きさの歪みを持ってきたら、どうでしょうか。
これでは歪みが増幅しても、打ち消しは無理ですね。重力波なら局所的に打ち消せても、静的な重力の歪みは無理です。
そうです。静的な時空の歪みを打ち消せるものは知られていない。
つまり時空の歪みは打ち消せない。
大きさのある物体から、その小片からの時空の歪みを積分すれば当然角度成分にも時空の歪みは蓄積されなければいけない。
だがしかし、バーコフの定理より大きさがある物体でも球対称ならばその外部解、真空場はシュワルツシルト解に一致し、そしてシュワルツシルト解では角度成分には歪みはない。
これは矛盾していないだろうか。
これに対して、等方座標系の場合は方向に依存しないため、この問題は回避される。
一つの座標系で良くて、他の座標系では矛盾がある。
これはおかしくはないだろうか。事象の地平面のような局所的なものではありません。
等方的な座標系以外は、重力源に大きさがある場合すべて成り立たないでしょう。
物理的に、これはダメではないでしょうか。
大きさがある物体にシュワルツシルト解を適用したのが間違っていたのでしょうか。しかしバーコフの定理によると球対称なら外部解はシュワルツシルト時空になるはずです。大きさのあるなしは示されてません。
もしそうなら、特異点に潰れているBH以外不適格でしょう。バーコフの定理も間違っていることになります。
どちらにせよシュワルツシルト解が間違っているとなります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これで定性的にシュワルツシルト解を否定し、それに対して等方座標系を肯定した上で、座標選択の必要性を述べたつもりです。
さらに外部解だけでなく、それ以外の内部解などにおいても優位であることを述べましょう。
◇◇◇ 事象の地平面の内部と外部で符号が不変 ◇◇◇
等方座標系の(3)式を見てもらうと分かりますが右辺第1項である時間項はその係数が2乗であります。
つまり動径 R の大きさが変化して事象の地平面の内部でも、符号が変わりません。事象の地平面では 0 ですけど。
空間の項も動径 R が実数であるため、符号は変わりません。
符号が変わってしまって、時間的なのか空間的なのかと、物理的意味について悩む必要がないわけです。
◇◇◇ 事象の地平面で特異点ではない ◇◇◇
等方座標系はシュワルツシルト解の座標変換であるため、中心 R = 0 では真の特異点は残っていますが、事象の地平面には特異点となるものは存在しません。発散するものがないからです。
事象の地平面を考えるのに他の座標系にわざわざ変換する必要はありません。
◇◇◇ 事象の地平面の位置が座標変換で違う ◇◇◇
また事象の地平面の位置ですが、シュワルツシルト半径 a ではなく、その4分の1のところになります。
つまりシュワルツシルト解での位置 r = a ではなく、等方座標系での位置 R は R = a/4 のところになります。
これは(1)に R = a/4 を代入すればわかる通り、
r = R (1 + a/4R)^2
これに R = a/4 を代入
r = (a/4)[1 + a/{4(a/4)}]^2
r = (a/4)[1 + a/(a)]^2 (4が約分)
r = (a/4)[1 + 1]^2 (aが約分)
r = a (カッコの中が2で2乗で4となり、分母と約分)
となって座標変換上では同じ位置です。
ですが意味は違ってきます。
どちらの座標系を採用するかで、計算上、予想される事象の地平面の位置が違うことになるわけですから。
このことは、座標変換でテンソル方程式は不変だから、どちらでも良いとする一般相対論の考えでは、おかしなことです。しかし座標変換上では同じ位置だからと、このことを無視しているかのような扱いです。
大きさの変わるような座標変換をしているために数値が変わってしまう。
これは座標を選択すべきだという主張ならば当然です。
ただこの事象の地平面の位置の違いでは、シュワルツシルト解と等方座標系の、どちらが優位なのかは観測による検証が必要になってきます。
両方を同時に採用できない場合は現状の一般相対論が間違っているというように主張したい。
しかしこの主張ではうまく追い込めないでしょう。
ですから、シュワルツシルト解が間違っているという主張になっています。
次回はどういう近似計算の下で等方座標系がシュワルツシルト時空の計算に一致して、現状の計算結果から弾かれないのか、というところを計算で見てみたいと思います。
検証というより、私の主張が現状の観測値から間違っているというように弾かれないための安全対策ですね。
その次に強い重力場での検証用に座標系の違いでどんな違いが出るのかを見てみる予定です。