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 8時15分。

 みんなが登校してくるピークだ。

 人が増えてくるにつれて、机が埋まってくる。

 教室が三十人ぶんくらいの活気で満たされる。ちょっとうるさい。

 私より早くに来ていた渡瀬くんも、二人の男子と楽しそうに話している。

 このクラスで、一人だけ浮いた存在。

 それが私。

 誰ともあいさつをしない。口を開くのは、先生に当てられたときか、授業中に隣の子とペアを組む時だけ。


 6月。

 入学から二カ月。私は早くも、さみしいなと思い始めていた。

 もちろん、友達がほしくないわけじゃない。というか、ほしい。

 確実に失敗した。高校デビューというやつを。



 4月、私は1年B組25番になった。

 入学式の時から、もうこの状況は決まっていたのかもしれなかった。

 周りの子たちが、初対面ながらも打ち解けていく中、私はその輪に入ることができなかった。

 原因は、出席番号の前後の二人が、男子だったからだ。

 二人とも身長が結構高くて、話しかけるのが怖かった。

 無理! 

 何を話したらいいの? 緊張するーとか、これからよろしくね、とか? 

 せめて片方だけでも女子なら。そうじゃなくても、背が低めで優しそうな男子だったら声をかけることができたと思うのだが、ちらっと斜め上を見上げただけで精いっぱいだった。

 それでも一応努力(と呼んでほしい)はしていて、入学式中、なんと声をかけたらよいのか悶々と考えていた。しかし努力は無駄に終わり、結局なにも話しかけられず、疲れただけだった。

 22番は女の子だったのだが、23番と24番の男子をわざわざ無視して話しかけに行くのは、男子に申し訳ないというのもあった。

 今思えば、そんな思いやりなんて持たずに、女の子にアタックすればよかったと思う。


 教室の座席は、出席番号順で決められている。

 前後はもちろん、例の話しかけられなかった背の高い男の子。

 右隣も男の子。男子に囲まれていて、最悪! というのが本音だったが、その隣の男子は「よろしく」と声をかけてくれた。

「こちらこそ、よろしく」

 緊張しすぎて、笑顔が変になっていたと思う。たぶん、それもあって、その男子と気軽にしゃべったりという仲にはなれなかった。

 左隣は、女の子だった。

 ほっ。

 最初はその子と、前から配られてくるいろんなプリントを眺めながら、お互い様子を見ながら話をしていた。

 ここまでは順調だった。中学のころの友達に似ているところもあって、友達になれそうな気がして、リラックスしかける。

 だけど、彼女が左隣の別の女の子とも仲良くしていることに気が付いた。

 何かが凍りついた。

 私は彼女と友達になれると思ったけど、もう別の子と友達になってたんだ。

 その証拠に、私としゃべっている時は遠慮がちな笑顔だったのに、その子と話している時のはち切れそうな笑顔は、本物だった。

 それで、邪魔しちゃ悪いかな、と思ったのだ。

 二人同時に話しかけたら、右を向いたり左を向いたり、大変だからだ。

 彼女の友達は、私じゃないのだから。


 そう思い始めると、もう誰にも話しかけられなかった。

 だって、みんなもう友達ができてるんだもん。

 いきなり話に入っていったら、「何こいつ」とか「邪魔するなよ」とか思われそう。

 そうやって、怖くなって、友達を作る機会を失った。


 それから二カ月。

 高校生になったのに、私は友達が一人もいなかった。




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