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第二話 拾われた子と拾った人達

目が覚め、起き上がると知らない場所に居た。


「ここは・・・」


今寝ている布団や壁、窓の外を見てもまったく見覚えがない。

僕の着ている服も見たことがない白の服で、身体のあちこちに包帯が巻かれている。

ただ、部屋が全体的にボロくは見えるのは気のせいだろうか。

辺りを見回し確認していると、扉が開いた。


「おっ、目が覚めたか。どうだ、具合は?」


スキンヘッドの白いひげを生やした白衣のお爺さんが、こちらに声をかけてきた。


「え、ええ。特に問題はないです」


取り敢えず体を動かしてみたが、体調ともに大丈夫のようだ。

特に何かをした覚えはない・・・?あれ、おかしいな。


「ふむ、血だらけで運び込まれた時は冷や冷やしたもんじゃが、実際は殆どが他の血じゃったからな。

多少の怪我をしていたが命に別状はないものじゃし、安心せいよ」


服装と今の話からしてお爺さんは医者なのだろう。

しかし血塗れ状態・・・、全く覚えがない。

いや、起きたであろう何かもそうだけど、僕自身の事が思い出せない。

名前や生まれ、家族や友人などの人物なども全く。

もしかして忘れているだけで、このお爺さんとも知り合いなのだろうか?


「あの、お爺さん。お爺さんは僕の事を知っていますか?」

「あぁ?何を言っておるんじゃ?」


僕が質問すると、お爺さんは怪しげにこちらを見ている。

お爺さんは少し考える様にひげに手を当てて、応える。


「今まで来た患者の事は全員覚えておるが、小僧の事は見たこともないな。

なんじゃ、知り合いにでも似とったか」

「いえ、そういうわけではないのですが・・・」


どうやら知り合いでは無かったらしい。

ううん。全く思い出す気がしないし、もしかしたら記憶喪失というものなのだろうか。

実際になったのは勿論初めてだけど、僕は落ち着いていた。

何故だかとてもすっきりした気持ちなのだ。理由は分からないけど。


「その。実はちょっと記憶が曖昧で。自分の事を思い出せないんです」


隠すことではないと思うし、もしかしたら怪我をしたのが原因だったらお爺さんも分かるかもしれない。

ということでお爺さんに記憶喪失(仮)について話した。


「ふむ・・・。切り傷や火傷はあったが、それが原因とは考えにくい。

だとすれば精神的要因が可能性としては高いじゃろうな。

血塗れになっていると言うことは何か事件が起きたのじゃろうし、お主ぐらいの年齢なら仕方ないことじゃろう。

まぁ、今の世界なら他にも可能性はあるのじゃが・・」


確かに何かしらの事件が起きたのは間違いないと思う。

怪我もそうだし、血塗れだなんてそう簡単に起きていい状態ではないだろう。

一番不思議なのはやっぱり僕自身の落ち着き様か。

何処か他人事のように感じている僕が居て、違和感はある。


「その、なんじゃ。そんな状態で頼むのは気が引けるのじゃがな。

実はお主をここに連れてきた奴らが居るのじゃが、そいつらが目覚めたら会わせろってうるさくてな」


お爺さんは頬をかきながら申し訳無さそうに僕に言ってくる。

そういえば連れ込まれてきたとお爺さんは話していた。

だったら僕をここに連れてきた人が居るのは当然だ。


「いえ、大丈夫ですよ。むしろお礼を言いたいのでお願いしたいぐらいです」


僕が言うとお爺さんは少し待っておれと言い残し、扉の向こうへ消えた。


そして数分も立たずに扉の先からドドドっと激しい音が聞こえてくる。

月日が過ぎているせいで脆くなっているこの建物が、ギシギシと怖い音を出している。

生き埋めなんて嫌だなぁと思っていると、音は段々と近づいてきてその勢いのまま扉が開かれた。

バアンと勢い良く開いた扉は幸いにも壊れてはいなかった。でも、確実に扉の寿命は削られたと思う。

扉を開けた人物は緑色の尻尾を揺らしながら僕を見つけて、顔がほころんだ。


「あぁ~・・・・良かったにゃぁ・・・」


気が抜けたかのように扉の前で倒れていく猫耳の女性。

動物の特徴を持っている、ということは幻界の住人という事だろうか。

その女性の奥からもう一人、赤髪の男性が近づいてくる。


「爺さんが大丈夫だって言ってたろうが。もう少し人の話を聞けっ」


そう言いながら女性の手を貸す男性は、見た目は普通の人に見える。

普通と違うのは服の上からでも分かるほどに筋肉質なぐらいだ。

恐らく、お爺さんが言っていた人物はこの二人の事なのだろう。

だったら言わなくてはいけない事がある。


「初めまして。お話から伺うに僕をここに連れてきたのはお二人ですよね?

助けてくれてありがとうございます」


僕は布団から身体を起こし、お礼を言うと二人は戸惑っていた。

もしかして勘違いしてしまったのかな。それならとても恥ずかしい。

あ、いやそれとも・・・。


「あのもしかして初めましてじゃ、なかったりしますか?」


知り合いだったら物凄く失礼な言い方だった。

しかし、二人の姿を見ても何も思い当たることは無かった。


「あぁ。爺さんが言っていたな。大丈夫だ、というのも変だが俺達と小僧は他人だ」

「にゃ~。そういえばそう言ってたにゃ。朝、君を見つけた程度と言えばそれまでにゃ!」


二人は僕とは知り合いではないと言う。

それが良かったのかは悩む所だけど、恥ずかしい勘違いをした訳ではなかったらしい。

しかし、それっきり二人は黙ってしまい二人でチラチラと目を合わせていた。

何か話したい、聞きたい事があるけどちょっと言うのは、といった雰囲気を出していた。


「あの。何かあるのでした聞きますけど」


助けてくれた恩もあるのだし、僕は何を言われようとちゃんと答えるつもりだ。

勿論、起きた事件の事や僕自身の事を聞かれても答えられないけど、

初対面だと言っているのでその心配は無いかな。

僕の言葉を聞いて迷いが消えたのか、猫耳の女性がこちらに問いかける。


「単刀直入に聞くけどにゃ。にゃーを見て何とも思わないのかにゃ?」


ううん、思う所・・。

強いて言うなら、語尾に「にゃ」と付けてるのは意識的なのか無意識的なのかが気になるぐらい。

でもそういった事ではなく、もっと真面目な話だと感じる。


「特には・・・ないですね。失礼ですが何があるのか教えて頂けませんか?」


思い付かなかったので正直に聞くことにした。

もしかして何か知らない内にやってしまっていたのだろうか。


「小僧、幻獣ってのは知っているか?」


僕の答えを受け、二人は顔を再び見合わせて今度は男性の方が問いかける。


「はい。幻界の住人で過去には人間の妄想とされていた様々な獣の事ですよね。

例えば貴方のような猫のような方とか」


猫耳の女性を指しながら僕は答える。

しかし、おかしな質問だった。

幻獣だけではなく、悪魔、神、人間の4種族が存在するのは今や常識のようなもの。

それとも僕は常識を持っていないと判断されたのかな。

そこについては幸いとしか言えないけど、自身の事やその周りの人物について以外の常識などは覚えていた。


「そ、それを知っててなお、何も言うことはないのか?人間と幻獣が一緒に居ることについて!」


二人は驚いた表情で僕を見る。

確かに人界統一以降、人間は三世界の住人サードと敵対しているけど全員がそうかと言われると違う。

決して多くないけれどサードと手を取り合って暮らしている人間も居る。だからおかしくはない。

まぁ、そういう人や三世界の住人サードは同族には嫌われているというのはよくある話。

人間からしたらサードは奴隷とも言うべき存在で、

サードからしたら人間は言葉にしがたいほどの憎しみをぶつけるべき相手とも言える。

人界統一なんてものが何故行われたかは王とその周辺しか知らないことだろうけど、愚策としか思えない。

話がずれてしまったけど、ようはそんな人間とサードが一緒にいるのは珍しい事ではある。


「お二人は凄く仲良しなんですね、としか」


それを聞いて女性の方は嬉しさ全開という感じで僕に抱きついてきた。

怪我自体は軽症だとお爺さんは言っていたけど、別に痛くない訳でじゃない。

火傷や切り傷に当たって地味に痛いけど、猫耳の女性はその事に気付いているやらか。


「あんた良い奴にゃ!にゃははははっ!」

「おいおい、一応怪我人なんだぞ」


と、言葉で止めはするものの男性の方も笑顔が止めれない様で、少し不気味な、いや素敵ですとも。

察するに二人は認めてもらえる相手が少ないのだと思う。

どうしても人間とサードの組み合わせは浮いてしまうものだから。

とはいえ、決して少ない数じゃなかったと思うけど。


「よし!決めたにゃ!どうせここに居るって事はあんた居場所がないにゃ?にゃー達が面倒見てやるにゃ!」


同じ程度の身長なのに信じられない力で軽々と振り回されていた僕は、少し気分が悪かった。

流石幻獣と思っていた所にこの発言だ。

というか反対意見が無いってだけで、面倒見てあげるってこの人単純なのかもしれない。

いや良いところではあるんだけど、何より男性の方が止めるのかな。


「おぉ、賛成だ。小僧さえ良ければ俺達が暫く面倒見てやるぞ。

記憶を失っては頼る所もないだろうしな」


そう思っていたけど、どうやら二人共単純なご様子。

それほど嬉しいのだと思えばこちらも笑顔になる。

だけど、だからこそ、僕はこの二人に世話になるのは遠慮してしまう。


「良いのですか?僕なんて素性の分からない他人ですよ?」

「そんなのは関係ないにゃん。何というかシンパシー?を感じたにゃ!理由なんてそれだけでいいにゃよ」


胸を張る猫耳の女性はその感覚を信じているようで、やんわりと断る事は出来そうにないようだ。


「俺達は小僧が居てくれると嬉しいんだよ。どうしても俺達は後ろ指刺されちまうからな」


いつの間にか近づいてきた赤髪の男性に頭を撫でられていた。

ごつい手だけど、その撫で方はとても優しく、こちらを見るその水色の瞳は穏やかだ。

きっと。確信は持てないけど。

僕が幻獣に対して余程の嫌悪感を持っていなければ、この二人は面倒を見ると言い出したんじゃないだろうか。

この人達に会ったのはついさっきだし、人となりを知るほどの時間も過ごしていない。

会話だってほんの少しだけ。

でも、この人達は超がつくほどのお人好しなんだろうな、って思った。

実際は違うかもしれないけど、僕はこの勘を信じよう。


「そう、ですか。でしたら、そのお誘い、ありがたくお受けいたします」


そういうと、猫耳の女性は立ち上がり、男性と女声の二人は笑顔で僕に手を出す。


「「これからよろしくな(にゃ)」」


敬語なんて使ったことないから全く分からない・・・。

でもキャラ設定的に主人公には敬語でお願いしたい。

見苦しかったり、間違ってたりする場合は修正いたします!

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